我が名は、竜狩りの鎧   作:マリア様良いよね

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この私を欺けるとでも思ったか?






急転

 

 

———数分前

 

 

「先輩、間もなく先程の戦闘音と思わしき反応があった地点へ到着します。」

 

「結構近かったね。というか、このまま進んだらドクターが言ってた座標と………」

 

「………はい。完全に一致します。つまり、私達が向かっている目的地にて、何らかの衝突があったのだと思われます。」

 

「それは、前途多難というか、なんというか……」

 

私、マシュ・キリエライトは。先輩と合流した後、ドクター(Dr.ロマン)からの指示で霊脈地を目指していました。

最初の通信は乱れていて、通話も安定して行えず、状況の説明が完全では無かったので、現状の把握と状況整理が最優先されたのですが。

 

あともう少しで到着するという矢先で起こったこの問題に、流石に先輩も———

 

「でも、まだ敵だと決まった訳じゃないし。あんまりグチグチ言っても仕方ないか。少しだけ気楽に行こう。」

 

「!」

 

楽観的、といえばそれまでなのですが。何故か、先輩なら大丈夫だと思えるのです。不思議な感覚。でも、悪い気はしません。

 

「はい!肩の力を抜き過ぎず、適度な緊張を保って事と次第に当たりたいと思います!」

 

「頼もしいよ、マシュ。っと、そろそろか。ここを曲がった先だっけ?」

 

「その通りです。……何が起こるか分かりません。慎重にいきましょう。」

 

「了解———行こう。」

 

十字路を抜けて右折した先が目的地であり、戦闘音が聞こえてきた件のポイント。壁越しに覗き見るように様子を伺います。

 

その先に居たのは、

 

 

「あれは……巨人!?少し離れていますが、明らかに我々より体格が大きいです!」

 

「……見間違えじゃないね。今交通標識と並んだけど、あれはどう見ても……って、あれ?誰か抱えてる?」

 

「……え?———ッ!!先輩、まさかあの方は———」

 

 

「「オルガマリー所長!?」」

 

 

オルガマリー・アニムスフィア。人理継続保障機関「カルデア」所長である彼女を横抱き(お姫様抱っこ)で運んでいる巨人でした。

 

 

「ねぇ、あれはいったい、どういう状況なのかな……?」

 

「………外見(鎧姿)と背に負った大斧から察するに、先程の戦闘音はあの巨人の方が関係していると推測されます。」

 

「まぁ、そうだろうね。俺達の向かってた方向からこっちに来てる訳だし……って、そうじゃなくて。」

 

顔を横に逸らす(所長から視線を逸らす)ように横を向いて、(先輩とは逆の方を向きながら)答えます。いえ、先輩の顔は控えめに言って整っていますし、何より心が落ち着くのでずっと見ていることは可能です。

 

ただ、状況が悪過ぎます。

 

「……すみません、先輩。私の予想で良ければ。恐らく、先程の戦闘音も、オルガマリー所長が襲われていて、それを助けたのがあの方(巨人)だったと考えれば辻褄は合いませんか?」

 

「確かに。そう考えると、まるでマシュみたいだね。誰かを守ってあげられる、かっこいい騎士だ。」

 

「そ、そんな!私はまだまだ至らぬ所が目立つ未熟者と言いますか、デミ・サーヴァントですし……」

 

自信のなさから、思わず項垂れてしまう。私のこの力は、借り物である上に、本来の性能すらまだ発揮できてはいません。ここに至るまでの戦闘も、下級の敵対生物(モンスター)が相手だったからこそ遅れを取らなかっただけで。実際、相手が英霊(サーヴァント)やもっと上位の敵対生物だった場合、分が悪いにも程があります。私では、きっと………

 

 

「大丈夫。マシュならきっと、これから強くなれるよ。誰かと争うことは誰だって出来る。でも誰かを守ることは、難しいことだと思うんだ。俺を守ってくれるマシュだから、俺はハッキリと断言出来る———マシュは強いよ。俺が保証する。」

 

「———っ………先輩……!」

 

 

それとも、俺の言葉じゃ不安かな?そう続けた先輩に、私は全力で首を左右に振って否定した。

きっと、先輩が言ってるのは力が強いだとか、性能の話をしていた訳では無いと思います。もっと本質的なことで、先輩は私を———

 

「ん?ちょっと待って。なんかあの巨人の後ろに、黒っぽい影みたいなのが迫ってきてない?」

 

「……え?———!」

 

先輩の疑問を聞いて、即座に気持ちを切り替え戦闘態勢に移行。恐らく、あの巨人の方は気付いていないようですが。

 

「先輩、戦闘の準備を。アレは、()()()()()()()()()()です。」

 

「シャドウサーヴァント?」

 

「はい。サーヴァントの残留霊基、或いは英霊の霊基を模した影のようなものであり、恐らく我々の敵です。」

 

シャドウサーヴァントは、その土地で行なわれた聖杯戦争で散っていったサーヴァントの残滓が周囲の魔力や怨念と結びついて生まれたサーヴァント擬きと。召喚者の実力不足で実体を持つことが出来なかった、影のような者たちを指します。

 

今回の場合、特異点Fで起こった異変の原因によって生まれた可能性も有りうるのですが、少なくとも味方ではないでしょう。

 

「不味いよ、所長が危ない!?」

 

「……時間がありません。行きましょう!」

 

ビルの影から飛び出す様に、巨人の方が居る方向へ走り出す。

 

「先輩!やはり、あれは敵です!暗器と思われる物を取り出して、巨人の方へ向かっています!」

 

「あぁ!急ごう、このままだと所長も危険だ!!」

 

先輩と目を合わせ互いに頷くと、私は全力で走り始めました。

 

お願い……どうか間に合って……!!

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

影が迫る

 

己が手に馴染む黒塗りのダガーを手に添えて

 

影が迫る

 

その心臓を貫かんと

 

影が迫る

 

しかし竜狩りの鎧、悠然たる歩み止めることなく

 

影が迫る

 

盾の少女は間に合わない

 

影が迫る

 

影が迫る

 

影が迫る

 

影が迫り

 

そして、死が迫る

 

ついに、その凶器が首元を捕えんとした時———

 

 

 

 

「気付かぬと、思っていたのか?」

 

 

 

 

———蹴撃一閃

 

喉元を狙った死角からの暗殺はしかし、英雄たる竜狩りの鎧には通用しなかった。

 

「グゲェッ!?!!」

 

薙ぎ払うかの如く振り抜かれた蹴りの一撃をもろに頭に受けたアサシンのシャドウサーヴァントは。幸いにも即死は免れたものの、頚椎から胸椎が完全に潰れており、最早虫の息である。

 

「表面上は殺意も薄く、奇妙なことに存在も希薄だが。人の本質たるソウルが貴様の場合淀んでいる。私達を害そうという悪意をもっていたのが、直接見なくとも感じ取れたぞ。」

 

ゆっくりと

 

竜狩りの鎧が近付いていく

 

先のアサシンが取った行動とは真逆に

 

ひどく、酷く、ゆっくりと歩いて行く

 

まるで

 

「さて。未遂とはいえ、貴様は淑女(レディ)を襲ったな。眠ったままの女性を狙ったんだ、相応の対価を払ってもらうぞ?」

 

それは、死を与える断頭台へと運ぶ処刑人が如く

 

「対価は無論、貴様のソウル(身命)だ。」

 

「……グ…ガ………バカ……ナ……コォ…ワタ、シ……ガァ………」

 

足元に転がる、アサシン(シャドウサーヴァント)の頭部に片足をのせると、

 

「贖え。」

 

———ハッ!

 

一息の後、踏み潰した。地面が深く陥没し、クレーターとなるや、その振動がそれなりに離れた位置に居るマシュと、その更に後方にいる彼女のマスターにまで届く程の一撃。そんなものをまともに受けたアサシンの惨状は、言うまでもないだろう。

 

「私の主も騎士だったのだ。であれは、それに習うのは道理だろう。」

 

「シャドウサーヴァントを、一撃で倒すなんて……っ!?」

 

「む?」

 

———霊基の崩壊が始まったアサシンから視線を外すと。多少の距離を開けて、彼を油断なく見つめる大盾を持った少女と、やっと少女に追い付いた(鎧が仮借なくやった行動に若干怯んだ)ごく普通の少年が視界に映った。

 

「おぉ。遠望の先にて、会話をしていた生存者か。」

 

(ようや)く見つけたまともな少女少年に、穏やかに話し掛ける。軽く会釈する少年に対し、少女の警戒はまだ解けていないが。

 

「……貴方が仰っている生存者が、この街で起きた惨状のという意味であれば、私達は違います。」

 

「なに?然し、貴公等はこの娘を襲う不埒な輩共では無いのだろう?であるならば、貴公等は何者だ?」

 

「先輩……」

 

「ここは答えた方がいいと思う。この人は少なくとも、悪い人ではない気がするから。」

 

不安そうに、判断を仰ぐように少年を見つめる少女に、少年は毅然とした様で答える。

 

根拠が少ない(所長を守っている)けど、それでも十分だと思ったから。取り敢えず話そう。」

 

「……わかりました。先輩の直感を信じます。

———貴殿との会話中にもかかわらず、失礼しました。私はマシュ・キリエライトと申します。人理継続保障機関・カルデアに所属するデミサーヴァントです。こちらは先輩の。」

「初めまして、マシュのマスター兼先輩の、藤丸 立香です。よろしくお願いします。」

 

やや緊張した面持ちで自己紹介を始めたマシュと、それを見て微笑みながら朗らかに礼をする立香に、彼は内心二人の印象が好ましいものになっていた。

 

「うむ。マシュに、リツカか。覚えておこう。聞き慣れぬ組織の名もあったが、そこは後程詳しく頼む。では、私の名だな。」

 

「………ぅーん………ふわ…………?」

 

「む。少々失敬………目が覚めたか?」

 

「…………ここ……は……」

 

オルガマリーの目が覚めた。しかし、起きたばかりで状況が全く把握出来ていないようだ。

 

「私は、先程貴公を助けた者だ。今は新たに出会った生存者と会話をしていた最中であり、自己紹介をしていた。自らの名は思い出せるか?」

 

「……自己紹介………わたしは、カルデアの所長……オルガマリー・アニムスフィア……わたしは、レイシフトに、巻き込まれて……それから………それから…………」

 

ゆっくりと、意識が覚醒していく。

 

「………それから、竜牙兵に、おそ……われ………!!!?」

 

「よし。意識に欠如は無し。問題は無いな………否、一つ重大な問題があるか。それを解決する為にも———」

 

「さっきの竜牙兵はッ!?ここは何処!?私はどうなっていたの!?というかどういう状況なのこれ!!?何がどうなっているのよ!!!」

 

「所長。目が覚めたんですね、御無事で何よりです。」

 

「!? ま、マシュ!?貴女、デミサーヴァントに……って、なんで貴方がマスターになってるのよ!?」

 

「え、えぇ!?怒られるの俺ですか?」

 

「そうよ!貴方なんかがマスターになれるわけないじゃない!いったいその娘にどういう乱暴働いて……?貴方達、身長縮んだ?なんでこんなに差がある………の……」

 

「ははは!元気な事だ。この状況でそれだけ感情が動くのだ、心配は杞憂であったらしい。」

 

「っ!!!?!!?!?」

 

 

不意に顔を上げた際に、視線が合った竜狩りの鎧とのあまりの顔の近さに驚いた模様。

そも。今の会話は全て、竜狩りの鎧()両腕で支えられた(お姫様抱っこされた)ままの状態で起こった顛末である。

 

 

状況を少しずつ理解していった彼女は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁあぁあああああああああああああ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

恥ずかしさのあまり絶叫したのだった。

 

 

 

 








鎧「オラァ!淑女襲ってんじゃねぇぞゴラ!!それはそれとして何この可愛い娘……守らなきゃ(使命感)」

オルガマリーちゃん「///////」


先輩&後輩「所長……(暖かい目)」


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