我が名は、竜狩りの鎧   作:マリア様良いよね

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どうやら、目障りな異物が混ざりこんだようだ

万が一にも我らが王の壁になぞなりはしないだろうが、忌々しいことには変わりない

持ち腐れた駒を動かす理由には十分だろう

さぁ、行け—————。





急転直下

 

 

「では、改めて。我が名は竜狩りの鎧だ。読んで字の如く竜の尽くを屠る為、神より鋳造されし鎧である。如何なる導きに寄るものかはさて置き、こうして巡り会ったのだ。世界の危機に抗う貴公等に敬意を表し私も協力しよう。これからよろしく頼む。」

 

「はい、こちらこそ。あの、申告されたプロフィールについて失礼を承知で指摘させていただきますが……俄には信じ難いものばかりです。」

 

 

あれ(所長の絶叫)からしばらく経ち、漸く互いに目的と今の状況について簡潔にだが共有を終えたところで、竜狩りの鎧が何者なのか。これを当の本人から説明を受けていた。そして出身や本人の能力について語られたが、いずれも不明なものばかりだった。

 

 

「ロスリックという地名も、火継の儀式や薪の王と呼称される存在についても、私の知識不足なのかもしれませんが、どれも聞き覚えがありません。」

 

「……………なんと。」

 

「特に、世界そのものだったという古龍に関しては本当に謎があります。そんな蓋世たる存在であれば、どこかで見聞していてもおかしくないはず。それに竜種が登場する伝説や神話においても、世界を脅かすほどの古龍は確かに居ますが、概念レベルで世界と同一視されるような化け物は竜種どころか、いくら幻想種の枠組みといえど流石に有り得ません。」

 

「……そう、なのか。」

 

「……すみません。実際に体験した当人である鎧さんに対して、無礼極まりない物言いでした。」

 

「気にすることは無いさ。私は元々過去の遺物。人々に忘れ去られようと、私が私で在ることに変わりは無いのだから。」

 

 

それでもわかることはある。この竜狩りの鎧と名乗る彼は、高潔な人格と穏やかな気性を兼ね備えた、生粋の武人であり英霊なのだと。英霊とは死後、生前に成した功績を讃えられ精霊にまで至った、世界の崩壊を防ぐ抑止の守護者。

彼は、神話や伝説、物語の中で語り紡がれてきた英雄の理想的な在り方を体現している。

 

 

「私の事はいい。それよりも、先に成すことがあるのだろう?」

 

「あ!……失念していました。先輩、カルデアとの連絡がまだです!」

 

「言い訳するつもりはないけど、状況のインパクトが色々大き過ぎだったからね……早くロマンに無事を報告しよう!」

 

そう意気込む2人をみて微笑ましく思う彼だが、()()()()()()()()女性の状態を見てため息をつきたくなった。鎧だから、呼吸の必要も意味もないが

 

「………………………ふんっだ………」

 

「………この様相ではな。」

 

 

目が覚めた後も、オルガマリーは未だに彼から離れずにいた。否、離してもらえなかった、が正しい。

言うまでもなく彼女は取り乱してからすぐに、竜狩りの鎧に離すよう言ったし何なら多少は抵抗(暴れたり)もしたが……

 

「必要な処置がまだ済んでない。もう暫く我慢してもらう。」

 

この一点張りで決して離すことは無かった。

 

結果、為されるがままではあるが、完全につむじを曲げてしまったという訳だ。

世は無情である。

 

(……悩みの種というものは、どうしてこうも積み重なるのだ。)

 

呼吸を必要としない彼がため息をつきたくなる理由はこれだけでは無い。ふと、彼が視線を背後に向けると。気配を巧妙に隠し、此方を見つめる()()()()()()()()()()が居るのを感知した。

 

(敵意は無い。だが味方にしては、彼等を注意深く見過ぎだ。)

 

私と同じ、訳ありか?そこまで思考を巡らせた辺りで、前方が何やら騒がしいことに気付く。どうやら、事が終わったらしい。

 

(……まぁ、敵対しないのであればそれに越したことはないが、念の為だ。警戒は怠らん。)

 

瓦礫の影に隠れようとしていたフード姿の何者かに、意図的に視線を合わせる。

 

「………!」

 

目線の先に写っていることに気付いたようだ。

 

 

(彼等に害を齎すならば———殺す)

 

 

挨拶代わりに殺気を送ると、それに応えんと殺気が返って来たが。何故か名残惜しげに霧散した。

 

(…………こちらと戦う意思は無いのか?否、()()()()()()と言うことか。)

 

水を差されぬ死闘をこそ望む英雄の類とみえる。だが、敢えてそれを望まないのであれば、一先ず保留にしても問題は起こらない筈。

 

(出来ることなら応えたいが、今はそれどころでは無い、か。己の目的の為か、あるいは。まぁ、彼等には特に害はないのだ。私が気を使っていれば、それでいい。)

 

そう結論付けると、騒がしさが一層際立ってきた前方へと足を向けた。

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

「………随分と濃ゆいの飛ばしやがる。思わず血が騒いじまったじゃねぇか。」

 

ルーンを刻みかけた手を止め、再び歩み出した巨人の騎士の背を見て思わず悪態をつく。

 

「今の殺気、師匠に並ぶか?………いや、まさかね。」

 

巨人の騎士を気配を極力消した上で観察していたフード姿の男の正体は、サーヴァントキャスター。

真名クー・フーリン。ケルト神話の大英雄、アイルランドの光の御子。此度の聖杯戦争に置いて唯一まともなまま生き残った、類稀な猛者である。

 

「にしても、あの鎧どっかで見た様な……」

 

首を傾げながら考えるのは、やはり巨人の騎士について。ただ、実力を測るだとか、その正体は兎も角。何故か、一度たりとて鎬を削った記憶が無いどころか、生前にも見た覚えすらない筈だというのに、妙な既視感を抱いている己の感覚そのものに疑問を感じている。

 

「……っ!?……なんだ、アタマが……!」

 

そして、一番の違和感はこれだ。あの騎士に関することに紐付けて過去を思い出そうとすると、まるで身体が拒否するかの如く痛み出すのだ。

頭、鳩尾、膝関節。特定の部位がランダム且つ急に痛みを訴えてくる。彼奴()のスキルか鎧そのものが宝具なのか?幾許か考えてはみるものの、如何せん情報が少ない。断定出来ない上に、これ以上の詮索は得策では無いと結論付ける。

 

「……あぁ!やめだ、止め!コソコソ動くなんざ俺の性に合わねぇんだよ。霊基がキャスターになっちまってる所為で、やり口が後ろ向きになってんじゃねぇか?今からでも遅くねぇ、槍寄越せ、槍!そうすりゃ、うだうだ悩むことなく吶喊してや———」

 

———突如、地響きが鳴り響く

 

 

街から辛うじて見える山の向こうから轟いてきた爆砕音に、クー・フーリンは思わず瞠目する。

 

「! 今のは……あり得ねぇ。どういうことだ?()()は下手に近付かねぇ限りは、全く襲ってこねぇ筈だろ!?」

 

驚愕の声ともに思わず振り向くと。

()()は、冬木に根ざしていた魔術師が存命していたならば、誰もが知るであろう始まりの御三家が一角、アインツベルンが所有していた城が立地している方角から向かってきていた。

 

暗い靄に全身が覆われた人の形をした化け物(英雄)

 

加速と比例するように周囲を破壊し進撃する

 

(シャドウサーヴァント)

 

 

 

「なんで、()()()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

 

此度の狂った聖杯戦争に於いて、純粋な戦闘能力に関して言えば最強だった英雄(サーヴァント)

 

シャドウサーヴァント・バーサーカー

 

真名、ヘラクレス

 

 

堕ちた暴虐が牙を向くのは、さて。

 

 







オルガマリーちゃん「……つーん。(´^`)プイッ」

鎧「なんか拗ねてるし……辛たん。つか誰だよさっきからジロジロ見てくる奴ァ!?あとで相手してやるから首洗って待ってろ!」

キャスニキ「鎧……師匠……影の国……うっアタマg……ヽ(;゚;Д;゚;; )ぎゃああああああ!?バーサーカー!?バーサーカーナンデ!?」


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