我が名は、竜狩りの鎧   作:マリア様良いよね

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——————………——————………

薄暗い洞窟の中で、鉄を打つ音が響く

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熱く、赫く光る鉄を打つ音が鳴り響く

——————………——————………

鉄の熱さと裏腹に、心は冷たい硝子玉

——————………——————………

身を迸る熱へ従うままに、ただただ只管に鉄を打つ

——————………——————………

研ぎ澄まされた精神は、打てば打つ程に鋭さを増す

捻じ伏せられようと、血の海に沈もうと、灼熱の業火に焼かれようと、死を繰り返そうと、魂が摩耗しようとも

たった一つ、何人たりとて穢せぬ想い一つで、彼は進む歩を止めることなど無いのだから


——————……………… ピチャッ


不意に、赤い雫が滴ると共に、鉄の音は止んだ

雫は光と共に塵と化し、暗き影から火の粉が吹く

舞い踊る火の粉の最中、 が僅かに積もっていた





鉄を撃つ者

 

 

 

目標が定まったカルデア一行は市街地を抜け、柳洞寺に続く石段を登っていた。中途まで進んだところで、クー・フーリンが思い出したように竜狩りに尋ねる。

 

「そういや忘れてたが。あんた、ここに来るまで何体(シャドゥ)サーヴァントを蹴散らした?わかる範囲でいい、特徴も言ってくれると助かる。」

 

「あの黒い影を纏った者か?先の猛者以外には一人だけ。まぁ、後ろからオルガマリーを狙う愚か者だった故、すぐに蹴り殺したが。しかし、特徴と言えるものは……嗚呼、気配が全くと言っていいほど無かったことくらいだろう。」

 

「気配遮断スキル持ち、となるとアサシンか。……そっちの嬢ちゃんを狙うあたり、マスターと勘違いしたのかね?ハンッ。やり口がいかにも小物くせぇ。」

 

何気なく呟いたキャスターの言葉に、オルガマリーが不満気に頬を膨らませながら反応する。

 

「ちょっと、キャスター。仕返しかしら?まるで私と彼には繋がりが無いみたいに言うのはやめてちょうだい。」

 

「そうは言ってねぇよ。ただ、サーヴァントとマスターの関係で嬢ちゃんが契約してないことは見りゃわかる。繋がりが主従関係に近いのは変わらないとしても、マスターではないからな。そもそも、言っちゃ悪いがマスター適正が無いだろ?魔力は十二分過ぎるくらいにあんのに、呪われてんのかね。」

 

「……余計な事しか言わないのかしら?ふっ飛ばすわよ?竜狩りが。」

 

「ふむ。君が望むなら、応えよう。」

 

「あ?やるってんのかい?血の気が多いのは助かるねぇ!」

 

「お、お二人共落ち着いて下さい!一度、冷静になりましょう!」

 

竜狩りが大斧を取り出し、キャスターがルーンを刻む構えをとったことで本気で言ってることを即座に理解したマシュが慌てて止めると、渋々とキャスターは仕切り直すように咳払いする。

 

「……話を戻すか。あんたらが何の繋がりで主従関係を結んでるのか、それも一旦置いておいてだ。合流する少し前に、俺は影ライダーを仕留めてる。聖杯の力で影サーヴァント共は一定周期で復活しやがるが、それも今すぐって訳じゃない。つまり、残ってるのはセイバー、アーチャー、ランサーの3騎。」

 

「よりにもよって3騎士全員が揃って敵って、普通なら分が悪いわね。でも……」

 

オルガマリーがチラリと竜狩りを見ていることに気付くが、キャスターは努めてスルーする。

 

「………確かにそれも問題ではあるが、そうじゃねぇ。セイバーは大聖杯の前から動かねぇし、アーチャーはそいつの守りをしてる。なら、ランサーは?正直、いつどのタイミングで襲いに来てもおかしくはねぇ。だがなぁ、気付かねぇか?」

 

試すように、藤丸を見ながら問う。

 

「……間違ってたら、なんとも言えないんだけど。」

 

藤丸が自信なさげに手を挙げると、それにマシュは無言で頷き両手で握りこぶしを作って見守り。それを見た藤丸は小さく笑みを浮かべた。仲が良い。

 

「なんで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

「———そう、それだ。」

 

ニッと口に弧を浮かべたキャスターが思わず指を指す。話が進んだ事で気が乗ったらしい。

 

「奴さんからすれば、テコでも動かねぇジャジャ馬がやる気出した時点で仕掛けてれば、立ち回り次第で有利を取れる。リスクはあっても、堅実なのは確かだ。様子見なんて必要ねぇ、あとは俺さえ仕留めれば奴らの勝ちなんだからな。」

 

バーサーカーが形振り構わないとしても、暴れ回ってる間に出来ることなんて幾らでもある。バーサーカーだけで十分勝てると見込んで襲って来なかったと言えばそれまでではあるが、念には念を入れる気概は持っていたランサーが静観するなど有り得ない。

 

「それに、バーサーカーを倒してから全く襲撃がなくなった。一応遊撃もこなしてたらしいアーチャーが何もしてこねぇってことは、セイバーの守りに徹する判断を下した可能性が高い。」

 

考えられる可能性は2つ。

 

「セイバーの他にアーチャーとランサー、3騎士が大聖杯の前に揃っているのか。」

 

 

もしくは。

 

 

「ランサーが、死んだか。」

 

 

 

 

———————————————————————

 

 

 

 

「……………」

 

薄暗い洞窟の中。不気味な程、物音が何一つ聞こえてこない静寂に充ちた穴の中で、鷹の目の様に鋭い眼光を入口に向ける男が一人。

 

シャドウアーチャー。

 

セイバーに敗れ、都合のいい駒とされたサーヴァントの一騎。とはいえ、本人が聞けば皮肉と共に否定されるだろう。好きで従っている訳では無いと。

それが、本心かはさておき。

 

弓使いとして、ランクは低いが千里眼を有する彼は、視界が悪いこの洞窟の中からだろうと外の様子を把握することが出来る。

セイバーを守る為、彼女を害する輩を一寸先も見えぬ闇の奥から矢を番いて仕留める。入口に入ってからすぐの足元には、即席ではあるが罠も投影し設置済みという用意周到ぶり。

本来であればここまで万全を期すつもりなど毛頭無かった。ここに来るまでの間に、バーサーカーと戦闘を行えば大なり小なり消耗は必ずするだろうと予測していたから。だが蓋を開けてみれば、たった一騎の巨人の騎士に手傷も負わせることなく敗れるという、到底予想できるものでは無い結果だった。この地点でアーチャーの中で警戒度は最大となり、迎え撃つ覚悟は出来ていたのだが、状況はさらに悪化する。

 

バーサーカーのみならず、ランサーまでもが何者かに殺された。

 

当時、戦力分析も兼ねて、遊撃を自ら行っていた彼はその一部始終を目撃していた。不死殺しの槍を携えたランサーを完封した、もう一騎の正体不明なサーヴァントを。

 

「………やれやれ。招かれざる客ばかりだ。」

 

影と言えどサーヴァント。宝具の真名解放が出来ずとも、不死殺しの概念そのものが消えるわけではないのだから、一撃与えれば倒せたはずだった。その一撃が、致命的であった事にも気付かずに。

 

「忠告はしておこう。どのような理由であれ、この先に来るのであれば貴様を殺す。」

 

「……………」

 

 

洞窟の入り口に、()()は居た。

 

 

襤褸を纏っていると言っても過言ではない外套、傷だらけで擦れた痕が目立つ全身鎧。右手にロングソードと左手に中盾を携えた、雑兵の様にも見える装備をした()()()

 

「何もせず引き返すのならば見逃そう。賢明な判断を下すことを願うが、さて。」

 

「……………」

 

その見た目と装備故に、ランサーは油断していたのだろう。侮っていたのだろう。気持ちは分かるが、それは余りにも愚かに過ぎた。

 

話し掛け、見逃す素振りを装いながら両の手に宝具の贋作を投影(トレース)する。

弓に()を番い、狙い澄ますは鎧の隙間———首のみ

 

「……………」

 

生きて返すつもりなど毛頭ない

不確定要素は潰しておくに限る

ここで確実に殺して次に備える

 

そう、ただ、それだけ

 

 

 

「……………愚者は、貴公だ」

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「ッ!?」

 

目を一切離していなかったにもかかわらず、視界から突然消え失せた。直後、背後から濃密で純粋な殺気を感じ、考えるよりも先に前方へ飛び込むように回避すると外套が風切り音と共に斬られ宙を僅かに舞う。

 

「………」

 

「……!!チッ」

 

ロングソードを携えていたその掌には、いつの間にか身の丈を超えるほどの特大剣が握られており。確実に命を狩り獲らんとする意志が伝わった。

 

(……避ける寸前、風切り音とは別の風圧が過った。コイツは瞬間移動をした訳ではない、態々背後を取る選択を!?)

 

「……ッ!随分な、挨拶をしてくれるな!!」

 

「…………」

 

弓矢から切り替え、干将・莫耶を両の手に投影する。ここまで近付かれた以上、矢を番える暇すら与えて貰えないのは明白。

その判断は正しい。

 

 

「背後を取られるのは個人的に気に食わない。槍無しキャスターを思い出すからな」

 

「……………口だけ、達者だ」

 

「逆に貴様はお喋りが苦手なようだ。コミュニケーション能力はあって損は無いぞ?———活用する機会はもう無いがねッ!」

 

 

 

普通ならば

 

 

 

 

「ゴフ…ッ」

 

「……飛べぬ鷹など、興味は無い」

 

 

歪な形のダガーを左手に弄びながら、ソレは言う。

 

 

(……背後を取る以前に、すれ違いざまに()()で斬られていたのか。あの大振りに振るった得物自体、フェイクだったと……それに)

 

「………こ、れは……毒か?」

 

口からとめどなく溢れてくる血と、全身を瞬く間に蝕んだ苦痛から即座に察する。

 

「………終わりだ」

 

「ブッ……かはぁっ……!」

 

 

———甘く見積っていたのは、私の方だった

 

 

 

その思考を皮切りに、ノイズの掛かった仮初の肉体は粒子となり消え始める

 

「……………」

 

「…………すま……い………せい……ば……」

 

 

消え入るような声音で、無意識に呟かれた謝罪を最期に。汚染された英雄は力尽きた

 

「…………」

 

徐に、ソレは懐から煤れたコインを取り出し

思い出す(刻み込む)様に見つめ続ける

 

祈るように

悼むように

 

「……………貴公に、太陽あれ」

 

願いを込めて

 







名無しの灰「……(なにを話せば良いのだろう?)」

影アーチャー「……( ´ཫ` )」

名無しの灰「……………(毒、つよ)」
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