陽だまりシリーズ:小日向未来<帰還>   作:ヨザリイコイ

1 / 18
ようやく帰ってこられた未来さん。しかし元の世界は、どうも様子がおかしいようです。


chapter1.フォークランド諸島

 ゲートを通過して辿り着いた先は、抉れた月が空に浮かんだ何処かの草原だった。

「時間帯は夜みたいだ……。何処の国だろう」

 やけに冷え込む。時計を見ると2018年6月20日午前1時54分と書いてある。それで冬みたいに寒いってことは、ここは多分、南半球だ。もしそうだとしたら冬みたいどころか、冬そのものだ。

 コートを取り出して羽織り、寒さを凌ぐ。それからふたたびサイクロンに跨り、草原を後にした。

 

 

 

 

 

「人家はあるにはあるけど……」

 街の中にある建物は、全て壊れていた。しかし見たところ地震で崩れたわけでも、ガタがきて崩れたわけでもないようだ。なぜならあちこちに焦げや溶かされた痕が見られるからだ。どうみても人為的に壊したとしか思えない。

「普通の道具や兵器でこんなことが出来るはずがない……」

 じゃあ聖遺物絡みか、と言われても腑に落ちない。ピンポイントで壊れることの説明がつかないから。大抵、広範囲でおかしなことになるし。

 そして一番、気になっているのが、人が一人もいないことだ。人の気配が感じられないんだ。

「これの理由はわかった。見てきた建物のあちこちに血の痕があるもの」

 つまり殺しだ。でも誰が何のために。

 考えていると遠くの方から誰かがこちらに歩いて来るのが聞こえた。数は2人くらい。

 急いで建物の横にあるゴミ箱の陰に隠れた。直ぐに逃げ出せるようにするために。

 

 

 

 

 

 

「こんな島、もう誰も来ないよ」

「本当、首領も何を考えているのやら。あの技師なんか逃がしたところでどうってことないのに」

 物陰から見ていると歩いてきたのは、2人の私だった。恐らく、前に鹿児島のドライブインで私を襲った彼奴と同じ奴。悪夢だ。この世界は、あの首領に攻撃されたらしい。

「折角、帰ってきたのに……」

 しかし動揺している暇なんてない。急いでギアを装着して、2人を追いかけた。

 

 

 

 

 

 2人が別々の方向に移動したのを確認して、私は近くにいた方にショルダータックルを叩き込んだ。

 転倒して起き上がろうとしたところで背中を蹴り飛ばし、上にのしかかって起き上がれないようにする。

「静かにしろ」

 アームドギアを取り出して頭に10回ほど叩きつけ、動かなくなったのを確認して、死体を仰向けの状態にさせる。本物の私と違いがあるか確認する為だ。

「右胸にハーケンクロイツが描いてある。どうやって誤魔化そう……」

 戦闘員みたいに、簡単にすり替わる事ができる訳ではなさそう。どうする? 

 

 

 

 

「サインペンで無理矢理描いてみたけど……」

 ところどころ歪んでいるから怪しまれそう。まぁ、それでも構わない。情報だけ聞き出せば、もう1人には用はないから。

「取り敢えず、彼奴がどこに行ったのか見ておこう」

 バイザーで探るとまだそんなに離れていないことがわかった。直ぐに追いつけそうだ。

 

 

 

 

 

「へぇ……、ここでエルフナインちゃんと二対一で鬼ごっこしていると。お話聞かせてくれてありがとうね」

 左胸に腕を突き込み、絶命させる。戦闘員相手には散々やったけど、自分と同じ顔の人間にこれをするのは、やっぱり気がひける。

「まさかS.O.N.G.が壊滅していたなんて……。しかも生き残りは、どうもエルフナインちゃんだけみたいだし」

 これからどうしよう。

「先ずはエルフナインちゃんを見つけないと。あの子だけだと危ないから」

 さっき聞き出したけど、ここは東フォークランド島といって、大昔のいざこざの時に作られた地雷原がある島らしい。エルフナインちゃんがわざわざ地雷原に飛び込むような馬鹿な真似はしないと思うけど、何かの拍子に入り込んでしまっているかもしれないから急ぐに越したことはない。

 

 

 

 

 

 サイクロンであちこち走っているうちに、破けたユニオンジャック旗が掲げられた場所に出た。

 建て看板を見ると、イギリス空軍マウント・プレザント基地と書いてある。確か普通の空港にもなっている場所だ。

 基地の中に入ると地面のあちこちが凸凹していた。おまけにそこら中に飛行機の残骸が転がっている。手酷く荒らされたようだ。

「軍事基地だから狙われたんだ……」

 あちこち見回っていると、二階から上が吹き飛んでいる建物の中で、窓越しに何かが動いているのが見えた。

「あれは……」

 

 

 

 

 

 建物の中に入り、懐中電灯を照らすと其処には久々に会うあの子がいた。

「久しぶり、エルフナインちゃん」

 ビクッと震えてこちらを振り向いたエルフナインちゃんは、私を見て警戒していた。無理もない。私と同じ顔の二人組に追いかけ回されていたのだから。

「み、未来さんの偽物? あれ、二人連れじゃない……」

「二人連れってこいつらのこと?」

 サイクロンで引っ張ってきた二人組を、エルフナインちゃんのところに放り投げる。

「大丈夫だよ、其奴ら死んでるから」

「えっ、じゃあ……貴女は……」

「信じてもらえるかわからないけど、本物の小日向未来だよ。ついさっきこの世界に帰ってきたの……」




さてさて帰ってきたと思いきや、飛ばされた場所は何と南大西洋のフォークランド諸島。これからどうなることやら。
次回乞うご期待!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。