陽だまりシリーズ:小日向未来<帰還>   作:ヨザリイコイ

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エルフナインと合流できた未来。しかし前途は多難です。


chapter2.これからどうする

「S.O.N.G.の皆は、本当に海の底に沈んだの……」

「はい。僕は運良く脱出できて、この島に流れ着く事ができました……」

 エルフナインちゃんから何でこの島にいるのか、あとS.O.N.G.の皆がどうなったのかを聞いた。さっき私の偽物を締め上げて、ある程度の情報は引き出したけど、それだけじゃ不安だから。

 それで聞いてみたところ、状況は思ったよりも酷かった。

 まずS.O.N.G.がエルフナインちゃん以外、生き残りがいないのは確からしい。私の偽物がS.O.N.G.に入り込んでいて、気付いた時には職員は殆ど偽物にすり替えられていたそうだ。

 それと響がS.O.N.G.壊滅の数日前から行方不明になっているらしい。端末に付けてあるGPSも壊れているのか反応せず、探しようがなかったとか。

「エルフナインちゃん、確か響は居なくなるまで()と一緒にいたんだよね」

「はい」

「其奴に拐われたんだ……。そして生死不明……」

 最悪の事態も想定しておかなければいけなくなった。もしかしたら響が土に還っているかもしれないなんて。帰ってきてこれか。いや、元はと言えば……。

「私が興味本位でショッカーの後をつけたから……」

 あんなことしなければ、私の偽物が出回る事もS.O.N.G.の皆が居なくなることも、響がどこに行ったかわからなくなることもなかったのに。

「ごめんなさい、エルフナインちゃん……。私が迂闊なことをしたばかりに……」

 自分の迂闊さからこんなことになってしまったことに、自責の念から涙を流して謝った。

 いっそのこと、死んでしまいたい。この身体じゃ、迷惑かかるだけだからそれもできないけど。

「お、落ち着いてください。いきなり頭を下げられても、何のことだか分かりません」

「そ、それもそうだね……」

 ただ泣いたってエルフナインちゃんには、訳がわからないだろうし。

 

 

 

 

 

 

「それでその組織が未来さんを捕まえて……」

「頼みもしないのにサイボーグにされて、細胞と神獣鏡のデータを盗まれたらしくて、偽物が作られたの……。本当にごめんなさい。あんな連中の後をつけなければ良かった……」

 これまでの経緯を説明して改めて頭を下げる。

「事情はよく分かりました。頭をあげてください。確かに後をつけたのは不味かったですけど、お話を聞く限り、ショッカーは元々、貴女を狙っていたようですから、未来さんだけに責任があるとは思えませんよ」

「そういってもらえると嬉しいよ」

「それよりも僕の方もごめんなさい。並行世界を3年近く彷徨っていた上に、そこまで過酷な目に遭っていたなんて……」

「それこそ気にしないで。あの場合、他の方法なんてなかったし、私自身の被害は自己責任の部分も多いから。それよりも……、これから2人でどうしようか。S.O.N.G.の皆は行方不明の響以外もういないし、島の外は正体不明の怪物のせいでめちゃくちゃ……」

 エルフナインちゃんから教えてもらったんだけど、少し前に、聖遺物の研究機関とパヴァリアの残党やそれとは無関係な錬金術師を狙ったテロが続発していたらしい。ただ犯人の見当が誰にもつかないうちに、パッタリとやんだそうだ。

 そして私が帰ってくる3日前に、航空戦力のある施設が一斉攻撃を受けたんだ。そしてその犯人が私の偽物だった。一つの施設につき、90人くらい襲いかかってきたらしい。

 そいつらが散々踏み荒らした後に、明らかに人間ではない怪物が私の偽物の第二波とともにあちこちを襲撃して、世界の主要な軍事拠点は軒並み壊滅。救援要請を受けて、対処に向かう途中だったS.O.N.G.も大西洋で息の根を止められた。

「世界中が怪物と私の偽物に踏み荒らされているのは間違いない。蹴散らさないといけないけど、どこから手をつけたものか……。それに響の行方も気になるし……」

 問題はそこだ。南大西洋の離れ小島から脱出したところで、怪物退治をしないと響を探すどころではなくなるのは、火を見るよりも明らかだ……。でも何処から手を付けたものか。

「未来さん、襲撃された場所は世界各地にありますが、被害状況がどこも同じかどうかはわかりません。場合によっては、荒らしたまま撤収している可能性もあります。まずは其処から調べてみましょう。組織の規模が大きくても、地球全体を占領するのは無理がありますから」

 袋小路に陥っていた私にエルフナインちゃんが助け船を出してくれた。考えてみれば、ショッカーは必要がない拠点をあっさりと放棄していたし、この島にも2人しか兵隊がいなかった。そんなに重要じゃない所には、大した兵力を置いていない可能性が高い。

「要するに、この島みたいに無人になっているような所は放っておくってことね」

「そうです。それに敵の拠点の周辺地域は、戦力が厚くなっている筈ですから」

「なるほど。でもそれをどうやって調べるの?」

「衛星写真です。ただ敵が衛星を破壊していなければできる話ですから、上手くいくかどうかは申し訳ないですが分かりません」

「あぁ……、そのまま残してるかどうかはわからないものね……」

 でも人工衛星ともなるとないと困る物が多いから、多分そのままの可能性の方が高い。流用した方がどう考えても安上がりだから。

「とりあえずパソコンのある部屋を探しましょう。もしかしたら壊れずに済んでいるものがあるかもしれないから」

 

 

 

 

 

 

「駄目ですね。自家発電機も壊されているようでは……」

 盲点だった。予備のバッテリーまでも破壊されているなんて思わなかった。

「どうしよう……」

 私の胸を開けて、中の原子炉を電源代わりに……なんて考えたけど、危ないからそんなことできるはずがない。もし扱い方を間違えて爆発でもさせたら洒落にならない。

「出発の時に携帯バッテリーは貰ったけど、数に限りがあるし……、そうだ!」

「どうするんですか」

「何とかなるかもしれない! ダメ元で頼んでみる!」

 急いで端末でプラネテューヌへ連絡を入れる。出発前に動作チェックで親父さんとも通話できたから、異次元のプラネテューヌでも通話はできる筈。

 

 

 

 

 

 

 

 30秒後、聴きやすい声がスピーカーから聞こえた。無事、繋がったようだ。

「もしもし、イストワールさん。未来です。緊急事態発生です」

「何があったんですか」

「以前、プラネテューヌに私が来た時に話した組織が、私の世界を制圧しています。私が所属していた組織は、2人を除いて全滅。そのうち1人は、行方不明です」

「何ですって! 状況はかなり悪いようですね。こちらに退避しますか?」

「ちょっと待ってください。同行者と相談するので」

 流石に直ぐに退避するかどうかを私の一存で決めるのは不味い。エルフナインちゃんの意見を聞かないと。

「エルフナインちゃん、どうする? 一度、この世界から離脱する? 私は離脱してもいいと思うんだけど。流石にこのままだと形勢不利だから」

「本来ならそうした方が良いのでしょうけど、放置しておく余裕もありませんし、次にこの島に降り立った時に、ここに戦力が集まっている可能性がありますからやめた方がいいと思います」

 それもそうか。確かに私が帰ってきたことは、遅かれ早かれ気付かれるだろうし、万全の状態で戻ってきたところでそこを叩かれたら意味ないし。最低でも響を見つけてからでないと、逃げ出しても意味がなさそうだ。

「分かった。ここはエルフナインちゃんの意見に従うよ」

 電話を待機状態から元に戻して、通話を再開する。

「お待たせしました。今すぐに退避することはしません」

「では代わりに必要な物資をお送りします。他に何か必要なことはありますか?」

「そうですね……。ダメ元でお願いしますが、そちらからこの世界の様子を探ることってできますか?」

「具体的には……?」

「衛星写真や監視カメラなどで、此方の世界の様子を見るという感じです」

「監視カメラは無理ですが、衛星写真なら可能ですよ」

「本当ですか。助かります。この島から出ようにも状況が探れず困っていたんです」

「こちらの時間で3日ほどかかりますが、それでも大丈夫ですか?」

「それくらいなら大丈夫です」

 この後も必要な物資の供給についての取り決めなどをして通話を終えた。

 

 

 

 

 

 

「取り敢えず、情報と物資に関しては、外部からの支援は受けられそうだよ」

「それは良かったです。焦土作戦を取られる可能性もありますから」

「ただ少し時間がかかるから、直ぐにこの島を出るのは無理みたいだ」

「ではそれまでにこちらでも使えそうなものを探しましょう。といっても、この島では大したものはないようですが……」

 太陽が出てきたところで、サイクロンを動かして軍事基地から離れる。確かに何にもない。あるのは原っぱと穴ぼこだけ。オフロード車だから問題ないけど。

「それにしても未来さん。いつの間にバイクに乗るようになったんですか」

「記憶喪失になった時に免許取ったんだ。筋がいいってことで、レースにも何度か出させてもらえてね、最後の方では2位か3位くらいまで食い込めるようになったんだ」

「凄いですね……。ただ空を飛べる神獣鏡を装着して、何でバイクに乗っているのかは疑問がありますが……」

「それは考えないでちょうだい」




如何でしたか。
流石に支援無しでは無理がありますから、出来すぎている設定ですがイストワールの支援はある程度受けられるようにしました。現場の方では、2人でどうにかしてもらわないといけませんから、このくらいの助けがあった方がいいと思いまして。これから戦力が増える予定は、今のところ一切ありませんし。増えたら戦闘要員としての未来の存在意義が薄れますから。
次回、ようやく島の外に出ます。
乞うご期待!
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