陽だまりシリーズ:小日向未来<帰還>   作:ヨザリイコイ

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早速出発した2人。しかしそう簡単に旅はできません。


chapter3.改造魔人

 白神山地にある遺跡に、異形の集団ダーク・エンジェルスが集まっていた。

「これで皆揃いましたな。それでは乾杯」

 白服の男の音頭に合わせて、ワイングラスの腹がぶつけられた。

「地球全域の征服も完了したことだ。後は我々の支配領域の分割でも考えようではないか。ゼネラル、貴方の意見をいただきたい」

 ワインを飲み干した大男が、ゼネラルと呼ばれた白服の男に呼び掛ける。

 彼はワイングラスをテーブルに置き、直ぐに口を開いた。

「確かに参謀の仰る通り、制圧には成功した。しかしながらまだ我々に抵抗しうる者は残っている」

「ほう、それは」

 集まっていた者が、ゼネラルを注目した。

「小日向未来。神獣鏡の使い手だ……」

 その答えを聞いた一座は、皆笑い出した。

「誰かと思えば、あの改造人間か」

「恐るるに足らん。墓の副葬品ごときに何ができる」

 ひとしきり笑った後に、誰が討伐しに行くかが話し合われた。

「俺に任せてもらおう」

 胸を叩いて名乗り出たのは偉丈夫の参謀。しかし直ぐに横槍が入った。

「小日向未来を討伐した者は、現状、功績がどんぐりの背比べである魔人達のリーダーになれる」というルールをゼネラルが出したためだ。この条件ならば我も我もと名乗りをあげるのは、当たり前だ。

 結局、最初に名乗り出た参謀が討伐を担当することになり、会議はお開きになった。

 不満気に遺跡を出て行く魔人達を見て、1人残ったゼネラルはほくそ笑んでいた。

「存分に潰しあえ」と……。

 

 

 

 

 

 

 帰還から3日後、イストワールさんからの情報と物資が届いた。

「現状、まとまった戦力が駐屯しているのは、え……日本だけ? 他はなし。あれ、意外と敵さんは展開していない?」

 どういうこと? 日本以外は荒らすだけ荒らして、後はもうほったらかし? 何考えてるんだ、一体……。

「先ずは近場の南アメリカ大陸を目指しましょう。此処よりは物資もある筈です」

「うん。敵はいないようだしね」

「それはどうかな」

 声がして後ろを振り返ると、いつぞやの白服の男が立っていた。咄嗟にエルフナインちゃんを庇う。味方じゃないらしいから。

「確かに大した戦力は置いていないさ。今はな」

「今は?」

「一つ忠告しておく。命が惜しければこの島から出るな」

 そう言われてもね……。響を探さないといけないし。

「ご忠告どうも。でもそれは無理。響を探さないといけないから」

「そうか……。ならば好きにするがいい」

 白服はくるりと背を向けて、そのまま何処かへ行ってしまった。

「何しに来たんだろう……」

 彼が敵なのか味方なのか本当によく分からない。鹿児島で私を暴走させたかと思えば、命令とはいえ早く帰れるようにゲイムギョウ界へと連れて行ってくれたこともあった。

 でもあんな格好の知り合いはいない。誰だ? 

「未来さん、お知り合いですか?」

「いや、向こうは私をよく知っているそうだけど、誰だかわからないんだ。どうも敵らしくて私を暴走させた事もあるけど、手助けした事もあるからよく分からなくて……」

 エルフナインちゃんの質問にも、歯切れの悪い答えしか返せない。本当に覚えがないから仕方ないけど。

 それよりも島を出るなってどういうこと? 恐ろしい奴でも来るわけ? 

 この疑問の答えは、大陸で明らかになった。

 

 

 

 

 

 

 港に繋留されていたモーターボートをマニュアル片手に動かして、大陸のどこかの町まで辿り着いた。それはいいんだけど……。

「えーっと、此処どこ?」

 置いてあるのは、スペイン語の標識や看板だから此処がどこだかわからない。アルゼンチン辺りだと思うんだけど……。困ったな、英語かドイツ語の標識さえあれば……。

「リオ・ガジェゴスというらしいですよ」

 あたふたしているとエルフナインちゃんが読み上げてくれた。有り難いけど、ちょっと恥ずかしい。あの時、無理してでも一文字さんにくっついていけばよかった。

「地図によると……、かなり南の方のようですね」

「南か……、此処から北アメリカの方まで行くのか……。オートバイだとかなりかかりそう」

 ガス欠とかの心配はないけど、舗装されている道路だけじゃないだろうし、サイクロンの最高速度にエルフナインちゃんが耐え切れるはずが無いからかなり時間はかかると見ていい。でも現状では他に移動手段はない。

「エルフナインちゃん、何日かかるかわからないけど、北を目指そうか……」

「はい……。それよりも未来さん。妙だと思いませんか?」

「何が?」

「ここ、とても暑いんですよ。冬なのに」

「言われてみれば……」

 確かにこの街、妙に暑いんだよ。海の上なんか寒かったのに。上着を脱いでもまだ暑い。いっそ全部脱ぎたくなる。

「この街だけが暑いなんてことある?」

「ありえませんよ」

 

 

 

 

 

 

 

「ここから離れてどこかで涼もうよ」

「そうですね」

 サイクロンを走らせて街から離れようとした時だった。

 道路に偽物の私が5体飛び出してきたんだ。ファイアパターンが入った真っ赤なものが。

「暑苦しい見た目だ……。エルフナインちゃん、下がっててね……。変身……」

 ギアを装着しながら、早速1人目に食らいつき、顔に左手でパンチを叩き込む。

 ぶっ飛ばしたところで、すぐに首にコードを巻きつけ、斜め後ろから飛びかかってきた2人目掛けて投げつける。

 3人組を近くの建物のショーウィンドウに叩きつけてから、アームドギアできついのを1発浴びせてから残り2人を探す。するとエルフナインちゃんが捕まりそうになっていた。

「ちょっとグロテスクだけど……、エルフナインちゃん伏せて!」

 ミラーデバイスを取り出して、刃を展開させ手裏剣のように投げつける。

 しかし伏せてほしくない2人まで伏せてしまい、空振りに終わった。だが問題ない。アームドギアを二挺取り出して、2人にビームをお見舞いしたから。

 残り2人が停止したのを見て、エルフナインちゃんに駆け寄った。

「大丈夫だった?」

「はい、なんとか……。未来さん、いつのまに格闘戦が出来るようになったんですか……」

「改造人間相手に戦ううちに覚えたんだよ。そんなことより、早く離れよう。ここも安全じゃない」

 サイクロンのエンジンを吹かせて、改めて街の外へ急いだ。

 

 

 

 

 

 

 街から離れても暑さは変わらなかった。異常気象か? 

「暑い……」

「何だか、街から離れるほど暑さが増してませんか……」

「そんな気がするよ。タンクトップに着替えたのに……、これ以上暑くなったらどうしようもないよ。それにしても、何で曇り空でこんなに暑いの」

「確かにそうですね。それに熱もどちらかといえば、近くにあるような感じなんです。ストーブのように」

「じゃあ私達は焚き火に近寄る羽虫みたいなもの? 此の先に大きなストーブみたいなものがあると」

「もしかしたらそうではないかと」

「まいったな……」

 ボリビアの方に抜ける道は、此処が最短ルートなのに。

「仕方ない。遠回りになるけど、パラグアイに抜ける道に行こう」

「その必要はない!」

 2枚目の張りのある声とともに、鉄のロボットのような物が出てきた。誰だ。

「お前が小日向未来か?」

「そうだけど、貴方は?」

「首領直属の精鋭部隊ダーク・エンジェルスの1人、参謀だ」

 随分とファンシーな名前の組織だ。ダーク・エンジェルスって。子供向けアニメにありそう。

「その参謀さんが、私に何の用?」

「お前よりもお前の首に用がある」

「賞金首ってこと?」

「その通り!」

 答えるや否や、参謀は肩に背負っていた鉄球を投げつけてきた。

 急いで飛び退くと、私の立っていたところはアスファルトが盛り上がっただけでなく、溶けていた。

 空中でギアを装着し、相手の正体をバイザーで探る。どう考えてもただの人間じゃない。聖遺物を使っている人間かあるいは……。

「解析完了……、ブリーシンガメン。聖遺物……」

 ネフィリムやゴライアスのように聖遺物そのものが動いてるみたいだ。

 インカムマイクを通して、エルフナインちゃんに情報を伝えて、参謀に向き直る。

「聖遺物なら神獣鏡の力でどうにか出来るはずだ……」

 

 

 

 

 

 

 こちらに目掛けて飛んできた鉄球を躱して、懐に飛び込みショルダータックルを食らわせる。すると肩にジュッと嫌な音と嫌な臭いがした。焦げている。

「未来さん、ブリーシンガメンは炎を操る聖遺物です! 無闇に近寄らないで!」

 なるほど、だからこうなったのか。もっと早く知りたかったが、そうそうそんなことは言ってられない。

 アームドギアを取り出して、数発軽いのを撃ちながら距離を取る。しかしこの程度じゃ、倒れてくれなかった。

「分かってはいたけど、大技を叩き込まないと駄目か……」

 展開したアームドギアに光を集め、参謀目掛けて発射する。普通に撃つよりも威力は強いからどうにかなるはず。なのに……、全く堪えている気配がない。

「これでも駄目だなんて……」

 嫌な予感がして、エルフナインちゃんにサイクロンに乗って安全な場所まで退避するように指示した。運転はこちらの自動操縦で何とかすると言って。

 

 

 

 

 その後、あれこれ試してみたけど、何一つ通用しなかった。

 おまけにミラーデバイスは熱で溶けてしまうし、アームドギアも鉄球が直撃してヒビが入ってしまった。

「神獣鏡の光程度では、俺には傷一つつけられん!」

「そ、そんな……」

 聖遺物相手には滅法強い神獣鏡が効かないなんて……、打つ手なしじゃない。

「今度はこちらから行くぞ。覚悟しろ!」

 火の玉になった鉄球を振り回して、こちらに突進してきた参謀。アームドギアを脚に投擲してひっくり返そうとしたけど、蹴り壊されてしまった。

 半ば自棄で突進して、右腕のアームカノンを胸元に突きつけ発射するも、案の定全くダメージが入らない。

「せめてこれくらいは効いて欲しかったなぁ……」

 乾いた笑いが漏れた後、鉄球を手放した参謀に掴み上げられ、地面に頭から叩きつけられた。

 気絶する間も無く、ジャイアントスイングされて転がっていた鉄球に背中からぶつかった。

「あがぁ……」

 焼け焦げる肉の匂いがして堪らない。

 その臭いと痛みに顔を歪めながら立ち上がるも、もう勝ち目がないのは火を見るよりも明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 もう駄目だ……。両腕は壊されて、両脚も潰された。抵抗できない。

 頭を掴まれて、まな板の上の鯉のように何もできずにいる。

「このくらいすれば、問題なかろう。では連れて帰ることにするか」

「私を……どうする気……」

「ゼネラルに引き渡すだけだ。後は知らん」

 ゼネラルとかいうのに引き渡されてからどうなるのかは、大方の予想は付いている。殺されるか、再改造されて操り人形にされるかの二つに一つだ。可能性としては命がなくなる方が高い。

 死にたくないよぉ……。まだ響に一度も会えてないのに。

「では行くぞ」

「あ……、あ…………」

 自分の行く末を予想して、身体が震え出した。今までに死にかけたことなんか何度もあるのに、今度ばかりはどうしようもないと自覚したからだろうか。怖くて涙まで出てきた。

「こ、殺さないでください……」

 怖さのあまり、情けなく命乞いまでしてしまった。あの人達に顔向けできない……。

 そのまま私は連れさらわれ、参謀の捕虜になってしまった。




如何でしたか。
流石に今回ばかりはどうしようもなかった未来。やはり魔人相手では、分が悪かったようです。
しかも捕まっても逃げ出しようがありませんから、これからの自分がどうなるのか想像して、ああいう行動に出てしまったのも無理ないと思います。
次回どうなることやら。乞うご期待!
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