陽だまりシリーズ:小日向未来<帰還>   作:ヨザリイコイ

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chapter8.中毒

 国道74号線は、俗に言う酷道と化していた。

 至る所穴だらけで、走り難いったらありゃしない。サイクロンはオフロード車だからまだ良いが、普通の自動車なら碌に走れない状態になっている。

「おまけに周りは廃墟だらけ……。ジャマイカと違って、基礎が少し残っているだけだ。これが経済力と軍事力にものを言わせてきた超大国の末路だとすると、物悲しいな」

 これなら開拓時代の方が絶対に物があっただろう。何にもない荒野ではなかった筈。

「草一本すら生えてないですね。他の毒素も含まれていそうです」

「でも枯れ草も枯れ木もないよ。単純に焼き討ちか爆撃されたという線もあるかも」

「今となっては知る由もないですね。知ったところでどうにかなるわけでもないでしょうけど」

 

 

 

 

 

 オーク・リッジに辿り着くと、そこはもぬけの殻だった。あったのは、大きな煙突の付いた炉と制御装置だけ。私達が来る前に逃げ出したか、はたまた前に一杯食わされた時と同じで、これ自体がそもそも囮か。

 向こうとて、こちらがいつまでも毒ガスの中を動き回れる訳ではない事ぐらい把握している筈だ。それに私達がここに必ず来るとも恐らく踏んでいたに違いない。魔人との実力差を手っ取り早く埋めようとするなら、聖遺物が保管してあるここを捨て置かない訳がないから。

「聖遺物ももう無いだろうね」

「肝心の施設がこの有り様では、もう……」

 エルフナインちゃんが目を向けた先には、砂地が広がるだけで何も無い。こんな所探してもゴミ一つ見つからないだろう。

「仕方ないから機械だけでも壊していくか」

 制御装置の電源を落とし、蹴りを5発入れて使えなくする。残ったガス炉もアームドギアを投げつけて、煙突を倒壊させて破壊しておく。

「何処に行こうか?」

「手掛かりになる物でもあれば……、あれ? 装置の中に何か入ってますよ」

 制御装置にできた穴にエルフナインちゃんが身体を突っ込んで、四角い物を引っ張り出してきた。開けてみると液晶画面とDVD用のディスク挿入口が有る。ポータブルDVDプレイヤーだ。

「何でこんな物が」

「ディスクは……、入ってますね。でも何も書いてないから、内容は分かりません」

「一先ず再生してみる?」

「罠の可能性がありますが、現状では敵の行方が分からない以上、このディスクも調べないといけませんね。そうしましょう」

 こうして2人で砂の上に腰掛けて、DVDプレイヤーを起動させる事になった。こればかりは不発じゃないことを祈る。

 

 

 

 

 

 電源を入れると、10秒ほどしてから本編が始まった。

「よくぞ、ここをめっけたねぇ……、ヒッヒッヒ……」

 画面に出てきたのは、造花のような頭の魔人だった。見かけによらず、魔女みたいな話し方をする。

「でもねぇ……。アジトはここだけじゃないのさ……。ほれ、この通り……」

 そう言って地図を画面いっぱいに映し出した。見ると地図の上には、赤丸が付いた場所がここを入れて合計6箇所ほど有る。全部大西洋の近くに有るけど、南はジャクソンビル、北はカナダのプリンスエドワード島と範囲が広すぎる。

「アタシは、この中のどこかにいるよ……。でも1時間おきに移動するから……、アタシを倒したければ、よーく見極めて行動するんだねぇ……。ヒッヒッヒ……。全部のアジトを壊せば良いと思うかもしれないが……、お前たちにそんな時間はとてもないだろうさぁ……」

 映像はここで終わり、代わって10秒という表示が出た。

 嫌な予感がして慌てて投げ捨てると、プレイヤーは空中で爆発した。

「古臭い手を使う……。それよりもどうしよう」

 あんなにアジトがあったのでは、とてもじゃないけど手が回らない。

 一個一個潰したんじゃ、2人とも死んでしまうのは目に見えているから、そんな悠長な事はできない。

「恐らく近場には、逃げ込んでいないと思います。僕達を自滅させる為には、少なくとも9時間は逃げ回る必要があります。敵がそこまで把握しているとは思えませんが、なるべく長く僕たちを引っ張り回そうとするはずです」

「なるほど……。となるとここから近いアトランタとジャクソンビルは候補から外れるね……」

 残りはニューヨーク、ポートランド、プリンスエドワード島とかなり離れた場所ばかりだ。

「じゃあニューヨークに急ごう。ここからニューヨークまではどのくらいかかりそう?」

「直接行けば大体14時間かと……」

 14時間だと、制限時間をオーバーしてしまう。

「ボンベはどのくらい持つ?」

「3時間です」

 全然ダメだった。

「仕方がない。海を目指そう」

 

 

 

 来た道を引き返してノースカロライナ州に戻り、一路大西洋を目指す。

「エルフナインちゃん、呼吸の方は問題ない?」

「はい、なんとか。でもボンベ無しだと、もう1時間も持たないです」

「そう……。こっちもちょっとばかし危なくなってる」

 バイザーに50分以内にガスのない場所に行けって警告が出てる。なぜかは知らないが、シンフォギアを装着していても、こんな所に長く居るのは不味いらしい。酸素のない宇宙ではなんとも無いのに。

 

 

 

 

「やった、海だ!」

 残り20分で海沿いの街に辿り着けた。

 ほっと胸を撫で下ろしていると、空からヒューッと音がした。

 サイクロンを加速させてそこから離れると、後ろから爆発音が聞こえた。どうやらそう簡単には通してくれないようだ。

「エルフナインちゃん、ここの通行料はいくらだろうね」

「僕たちの命を差し出せば、大人しく通してくれると思います」

「確かにそうだね。でも私達貧乏だから関所破りといこうか」

 エルフナインちゃんを抱えて、宙に浮き、仰向けの状態でアームドギアから光線を乱射し、空爆できないように上空の兵隊を散らす。

 そのまま地面スレスレの状態で飛びながら闇雲に光線をばら撒いて東に急ぐ。

「未来さん! 前!」

 そう言われて前に目を向けると、道が二股に分かれていた。バイザーに近道と表示された右の道に進路を取り、猛スピードでそこに突っ込んだ。

 しかしこれがいけなかった。というのもこの道は両側に建物が連なり、道も少々細かったんだ。

 おまけに軌道修正したときに、対空攻撃を休めてしまった。それで態勢を立て直した兵隊達が、建物を崩しにかかったのだから堪らない。

 瓦礫にぶつからないように、巡航速度を落とさざるを得なくなるし、そのせいで相手に追い込みやすい状況を作ってしまっている。しかも毒が回ってきたのか、身体の動きが鈍くなっている。

「うわッ!」

「グッ!」

 遂に瓦礫の一つに頭から突っ込んでしまい、失速して地面に叩きつけられた。

「いつつ……。エルフナインちゃん、大丈夫?」

「未来さんが抱えていてくれたので、何とか……。でもスーツの損傷が酷い上に……」

「そこから先は言わなくてもいいよ。兵隊どもが私達を取り囲んでいて逃げられないでしょう」

 こっくりと頷いたエルフナインちゃんが目を向けた先には、20人の兵隊がアームドギアを構えて立っていた。そして私の目が向いている方向やその他の場所にも夥しい数の兵隊達が待機している。

「通行料の取立てってこんなに厳しいんだね。私、知らなかったよ」

「料金を支払っても……、見逃してくれそうにないですね……」

 

 

 

 

 兵隊達に捕まった私達は、アトランタに連行された。そこに魔人こと、ドクトルがいたんだ。近場ならかえって探しに来ないだろうって考えていたんだと。それを聞いたエルフナインちゃんは、愕然としていた。

「僕の判断ミスでした……。ごめんなさい……」

「気にしないで。私こそ、判断ミスで細い道を選んでごめんなさい」

 これが、別々の独房に放り込まれる前に交わした最後の言葉。この「最後」が「最期」にならないように、無い知恵を絞っているが、良いものが思い浮かばない。

 それに閉じ込められる前に吸わされたガスのせいで、手足に力が入らない。だから手足を縛っている縄を引きちぎることもできない。こういう時の為に用意していた道具を使おうにも、身につけているものは、ほぼ全て取り上げられたからそれも無理。飛行艇の話の時のルパン三世みたいに、下着しか残ってない悲惨な状態。

 でも早く逃げ出さないと、私もエルフナインちゃんも何をされるか分かったものじゃない。

「ふぬぬぬ……」

 何とか拘束を解こうと、私はひとり手足をばたつかせていた。

 

 

 

 

 

「お姉様ぁ、お飲み物持ってきましたよぉ」

 拘束を解こうと悪戦苦闘していると、見張り役のクローンがペットボトルを持って、監房の中に入ってきた。

「どうせ解けないんですからぁ、そんな御無理をなさらなくてもぉ」

「うるさい」

 自分と同じ声と顔をしたやつが、甘ったるい喋り方をするのは、気持ちが悪いったらありゃしない。

「どうせ明日には殺すつもりなんでしょ。もうほっといてよ」

「拗ねないでくださいよぉ、みっともない。それよりもこれぇ」

「いらない」

 そんなショッキングピンクの気泡の立っている液体なんか飲めるわけない。

 すると一向に飲もうとしない私を見たクローンが、ニタリと笑ってこんなことを言い出した。

「そっかぁ。それならあのチンチクリンに飲ませますねぇ」

「待って!」

 エルフナインちゃんに、そんな不気味な物を飲ませるわけにはいかない! 

「私に飲ませて!」

「それが人にものを頼む態度ですかぁ?」

「の、飲ませてください。お願いします……」

「そうそう。人に物を頼む時は、腰を低ーくするものですよぉ」

 そう言いながらペットボトルのキャップを開けて、飲み口を私の口の中に押し込んだ。

 ピンク色のどろっとした液体が、喉に流れてくる。

 味は意外な事に甘くて美味しかった。それに身体がなんだかふわっとする。

「これ、何?」

「教えるわけないじゃ無いですかぁ」

 空のペットボトルを片手に、クローンは出て行った。

 

 

 

 

 その後、6日間はあのジュースを飲まされ続けた。

 変な見た目なのに、美味しくて飲むのをやめられない。だんだん飲む量が増えてきて、最後には飲んでないと身体の節々が痛み、イライラするようになった。頭もぼーっとして、ジュースのこと以外は、何も考えられなくなった。

「もっろ……、もっろ……、くらさい……」

 ジュースをたくさん飲みたくて、呂律の回らない舌で懇願しながら、看守さんに縋り付く。

「でもねぇ、これ以上は飲ませるなってドクトルが」

「そんなのしらないよぉ。なんれもするから……、おねがい」

「あーあ、完全に依存症になってるよ。まぁ、良いや。分かった。明後日、お前と一緒に捕まえた奴を殺せば、好きなだけ飲ませてやるよ」

 一緒に捕まえた奴? エルフナインちゃんのこと? そんなのダメ。絶対に出来ない……、出来ない……。でも…………。

「いいよぉ。ころすからぁ、いっぱいのませてぇ」

 身体が言う事を聞いてくれなかった。ジュースがないともうまともに身体が動かないって。

「キャハハハ。1週間前は彼奴を守る為に飲んだのに、今度は飲む為に殺そうとするなんて傑作だねぇ」

 エルフナインちゃん、ごめんなさい。私、ジュースの奴隷になってしまいました。

 あの子への申し訳なさを感じながら、2リットルのペットボトルでジュースを注ぎ込まれて、私はうっとりしていた。

 

 

 

 堕落してしまった次の日、私は怪しげなカプセルが3台並んでいる部屋に連れてこられた。

「これ、らに?」

「調整器だ。ジュースの成分を増幅させる事ができる」

「すっごおい……、あら?」

 真ん中のカプセルにエルフナインちゃんが入れられていた。そっか、エルフナインちゃんも堕ちちゃったんだ。なら私も気兼ねなく深みにはまれるよ。

「お前はこのカプセルだ。早く入れ」

「ふぁい」

 カプセルの中に押し込まれて、生温いジュースに溺れてウトウトする。こんなことならもっと早く堕ちていれば良かった……。

 

 

 

 

 エルフナインちゃんを始末する日の朝、もっと入っていたかったけど、カプセルから出される事になった。

「ほら、ギアを装着してみろ」

「ふぁい……」

 ボケた頭のまま、聖詠を詠唱して、神獣機を装着する。

 エクスドライブモードになっていたのは有難いけど、何だか紫色が毒々しくなっていて、白の部分も所々ここの兵隊のギアと同じショッキングピンクが混じった趣味の悪い配色になっている。髪の毛も白とピンクの2色になっている。

 おまけに首に大きな枷が取り付けられていた。結構重いし、動き難い。

「これ、外してくれませんか?」

「ダメだ。逃げられたら困る」

「そんなことしませんから。これじゃ動き難いです」

「つべこべ言うなら、ジュースは今後一切やらん」

 それはやだ。あれがないと生きていけない。慌てて看守さんに頭を下げた。

「ごめんなさい。わがまま言いませんから、それは勘弁してください」

「ふん」

 枷に繋げてある鎖を持った看守さんに引き摺られて、刑場に向かう。

「エルフナインちゃんは?」

「彼奴ならお前と入れ違いでカプセルから出した。あとはぐっすり寝込んでいたから見張りが楽だった。今も刑場でおとなし……」

 その言葉が終わらないうちに、私が行こうとしているところから爆発音がした。

「な、何だ!」

 看守さんが鎖を手放して駆け出し、刑場に入ろうとした時に足に火炎放射が直撃して爆発した。

「何があったの?」

 私も中に入ろうとすると、鎖をぐっと引っ張られた。

「今、入っていけない」

 声の主を確かめようと振り返ると、どこかで会ったような白服の人がいた。

「お前の相方を暴れさせている。ドクトルの部隊ももう間も無く壊滅するから暫く待て」

「そ、そんなぁ……。それじゃ、ジュース飲ませてもらえないよぉ……」

「それならレシピでも探せば良いだろう。では……」

 そう言い残して、白服の人は消えてしまった。

 

 

 

 

「あ、あれ。ここは……」

 気がつくと、僕は壊れた金の竪琴を片手に、だだっ広い広場の真ん中で倒れていました。周りを見回すと、ドクトルや部下のコピー未来さんが息絶えています。何があったのでしょう。

「えっと、確か僕は……」

 未来さんとは別の独房に閉じ込められてから、怪しげな液体を目が覚めている間、ずっと飲まされていました。

 3日間飲まされ続けて、その後1日放置された後、禁断症状に耐え切れなくて、ずっとあれを飲ませてもらうことを条件に、未来さんに手をかける事を了承してしまいました。

 それからは3日間、液体で満たされたカプセルに閉じ込められて、未来さんと入れ違いで独房に戻されてから……、ダメです。そこからの記憶がありません。思い出そうにも、何にも出てこないです。

「敵の脅威は一先ず過ぎ去ったから、未来さんと合流しないと……」

 直ぐに未来さんを探そうとしましたが、身体が全く動きません。それどころか痛くて痛くて仕方ないです。

「グァァアッ! き、禁断症状が……」

 あの液体の呪縛からは、まだまだ逃れられないようです……。

 

 

 

 

 エルフナインちゃんの悲鳴が聞こえて、ボケた頭が覚めた。

 鎖を引き摺りながら急いで刑場に飛び込むと、そこでエルフナインちゃんが目を見開いて、体をガタガタ震えさせていた。

「エルフナインちゃん!」

「え、液体……。液体が……」

 譫言のようにジュースのことを呟くのを聞いて、私は急いでエルフナインちゃんを抱えてカプセルのある部屋に向かった。

 そして使われた形跡のない物を叩き割って、そこから溢れ出したジュースをエルフナインちゃんに飲ませた。

「禁断症状が治まればいいけど……」

 

 

 

 

 

 飲ませてから暫くすると、エルフナインちゃんが息を吹き返した。

「こ、ここは……」

「カプセル室だよ……」

「未来さん、無事だったんですか……」

「いや、無事じゃないよ。エルフナインちゃんと同じで、ジュース無しじゃ生きていけそうにない体だから……」

「そんな……」

 でもそんな事、今はどうでもいい。ジュースに取り憑かれていたとはいえ、とんでもない事しようとしていたのだから。エルフナインちゃんが暴れていなかったら、今頃取り返しのつかない事態になっていた。

「それよりもごめんなさい。ジュースと引き換えに、貴女を殺そうとしました」

「未来さんもそうだったんですか……。実は僕も同じ取引を持ちかけられて、乗ってしまったんです。ごめんなさい……」

 

 

 

 

 お互いにお互いを襲おうとしていた事が分かって気まずくなり、明かりのない部屋の中で2人して黙り込んでいた。何を話せば良いのか分からなくって。

「そうだ……」

 あの弾丸の事を思い出して、すっと立ち上がる。

「どうしたんですか……、未来さん」

「持ち物を処分されてさえいなければ……」

 通路を走って、私たちの荷物の置き場所を探す。

 闇雲にドアを破壊して回ると、14個目のドアを壊した時に私の目当ての部屋を見つけられた。

「良かった……。処分されてなかった……」

「はい。でも何で持ち物を?」

「今回みたいな事があった時に、うってつけの物があるんだ……」

 ワルサーP38の弾倉から弾を取り出して、一番奥にしまっていた弾丸を納屋で拾った9ミリルガー弾用のデリンジャーに装填して、エルフナインちゃんに手渡す。

「これは?」

「Korrosion 弾を装填しておいた。もし私がエルフナイン ちゃんに襲いかかるような事があれば、それを私に撃ち込んで。改造人間殺しの強力な弾だから、当たれば一撃で倒せる」

「そんな銃、受け取れませんよ……。未来さんを撃つなんて、僕にはとても……」

「いや、今回の事で自分がいつ獣に戻るか分かったものじゃないって十分自覚したから、絶対に持っていて欲しいんだ。何かあってからではもう遅いから。私の事を支えてくれているエルフナインちゃんには、絶対に手をかけたくないの。お願いだから持っていて下さい」

 返そうとするエルフナインちゃんに、無理矢理持たせる。自己満足なのは分かっているけど、この子には迷惑かけてばかりだから、これくらいはしておきたかった。

「分かりました……。でも条件があります。逆の場合は躊躇せずに僕を葬り去ること、あとこの銃を使わせないようにすること。この2つを呑んでください」

「分かった……。絶対に守る」

「絶対ですよ」

「うん」

 

 

 

 

 それからはアジトの中を2人で手分けして、例のジュースのレシピや成分表を探し回った。脳味噌をぐずぐずにしかねないあれを作るのは気が引けたが、2人とも禁断症状が酷いことになっているし、解毒剤を作るのにも必要だったから。

 1時間掛けてそれを見つけ出し、材料も残っていた物を掻き集めて、早速エルフナインちゃんが調合に取り掛かってくれた。

「エルフナインちゃん」

「何ですか?」

「魔人や兵隊達が黒焦げになって息絶えていたけど、あれはエルフナインちゃんが皆んな倒したの?」

「覚えてないです。カプセルから独房に戻された後の記憶が無くて……。フォークランド諸島で出会った人の声が聞こえた事までは、どうにか思い出せたのですが……。後は壊れたダウルダブラの竪琴を持って倒れていた所からしか記憶にないです」

「そうなんだ……。実はその男、私の前にも現れて、エルフナインちゃんを暴れさせたって言ってたものだから、ちょっと事情を聞いておきたくて」

「ということは、あの人が僕に何かしら細工をして……」

「あるいは、()()()が守ってくれたのかもしれないね。彼のカラクリか、或いはジュースが起爆剤になって出てきたとか」

 錬金術に関しては門外漢だからそんな事があるのかは知らないけど、あったらあったで悪い事ではない筈。エルフナインちゃん、放浪生活中も余った部品でそういう研究していたもの。

「そうかもしれませんね」

「きっとそうだよ。いつの日か会えるさ。それまでは……、絶対にエルフナインちゃんに、デリンジャーを使わせるような事はしない」

「お願いしますね」

「勿論」

 

 

 

 

 2人がジュース作りに精を出している頃、白神山地にてゼネラルは事の次第を首領に報告していた。

「アルラウネの奴は、あの2人を同士討ちさせようとしていたというのだな?」

「はい。しかしそのような事をすれば、貴方の目的の達成に支障を来すことになるのは、目に見えていました。その為、誠に勝手ながら、例の人造人間の中に眠る人格を暴走させ、ドクトル・アルラウネを始末させました。独断専行をしてしまい、申し訳ありませんでした」

「いや、気にする事はない。お前の言う通り、あの2人のうち1人が欠ければ、聖遺物全てを破壊することが不可能になる。それでは元も子もない。独断専行は決して褒められた物ではないが、私の目的に沿った判断ではあるし、影響自体も殆どと言っていい程ない。そもそも魔人同士の手柄争いも今に始まった話ではない。その事を処罰したところで話は進まんだろう。この件については、不問に処す」

「ありがとう存じます」

「但し、以後は慎め」

「肝に銘じます」

「それとゼネラルよ……。お前自身は、破壊されることを躊躇していないか?」

「それはどのようにお答えすれば宜しいでしょうか?」

「芯から思っている事を話して良い。ここでお前が吐露したことは、全て忘れる事にする」

「分かりました」

 一拍置いてからゼネラルは再び口を開いた。

「躊躇していない訳ではありません。道具と雖も一欠片も壊れることなく、最期を迎えたい物ですから。なれど……」

「なれど?」

「私を壊す人物がよく知っている者ならば、不思議と抵抗は無いのです。そしてただ壊されるのではなく、戦って壊されるともなれば、全くと言っていい程、恐怖も戸惑いも感じません。これが私の本心です」

「そうか。良く分かった。その日までに十分に準備を整えておけ。下がってよい」

「はい。失礼しました」




如何でしたか。
終盤に未来が取り出したKorrosion 弾ですが、ショッカー やその系列組織の改造人間は絶対に1発ずつは持っている特殊な弾丸です。これは、改造人間の身体をその名の通り腐食させて溶かしてしまう効果がある物で、自爆に失敗した場合に備えて、各々の拳銃に1発ずつ用意されています。未来は、ショッカー基地でワルサーP38を鹵獲した時に、これを手に入れました。
さていよいよアメリカを脱出して、次回からはヨーロッパに入ります。未来のパワーアップも間も無くです。
乞うご期待!
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