憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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幻影の構成5

「あ~、ダルい。よォ、翔チャン。寮から出てきたとき、部屋の前で大和と会ってな。だいぶ具合いが悪そうだったが、お前を探してたぜ。なんでか俺までお前の力になってやってくれと頼まれたよ......。なんだって九ちゃんや翔ちゃんの力になれってなるのか意味がわからねえんだが......。力になれっていっても俺が出来ることなんてないだろ、特に翔ちゃんの場合」

 

「あはは」

 

「んだよ」

 

「いや、いつもの甲ちゃんだったら《力》がないから見守るだけだっていうだろうなって」

 

「......」

 

「自分の意見いうとき、他の人引き合いに出す癖治せるといいね」

 

「......うるさい」

 

「でもうれしいよ、ありがとう」

 

「......なんだよ、九ちゃんや大和ばっか頼るくせに」

 

皆守がなんかいった気がしたが、私は聞こえない振りをした。

 

「来てくれたか、翔」

 

「瑞麗先生からも大和からもメールあったからね」

 

「それはよかった。実は九龍とは朝のうちに話したんだ。君もと思ったんだが部屋から出てこなくて驚いたよ。どこにいたんだ?」

 

「あ~......図書室に泊まり込みしてたんだよ」

 

「泊まり込み?なにか調べ物か?」

 

「いんや違うよ。月魅がひとりで本の修繕するって聞かないから付き合いでね」

 

「おいおい......それは......。仲がいいとは思っていたがそれ以上の関係だったのか?」

 

「何を想像してるのか知らないけど、ちがうよ。困ったことに《生徒会》が許可出しちゃってるから聞いてくれないんだ。女の子ひとり校舎に残すわけにはいかないだろ?ただでさえファントムの干渉が強くなってるのに」

 

「だから君が囮になろうってか?あんまりおすすめしないな......」

 

「あはは」

 

「九龍にも話したんだが、俺が墓守として《墓地》を巡回していた時に、喪部銛矢やファントムが出入りしているのを見かけたんだ。学園敷地内を満遍なく調べ回っていたようだから気をつけろよ」

 

「わかった。ありがとう」

 

「まあ、君なら大丈夫だとは思うがな......くれぐれもミイラ取りがミイラになるなよ?邪な儀式に手を出しているみたいだが」

 

「やっぱわかる?」

 

「あたりまえだろう。俺がなんの呪いにかかっているのか思い出してからいうんだな。月の魔力が込められたブローチなんかつけられたら嫌でも気づくさ」

 

「うーん、大和には叶わないなあ」

 

「それに俺は手伝わせてはもらえないのか?」

 

「えっ」

 

「前も言ったがな、翔。俺は友達として君を心配しているんだ。君はほっといたら何度でも死にかけるじゃないか、なのに一直線だからほっとけないんだよ。俺の身にもなってくれ」

 

「あはは......そっか......うん、わかった」

 

「で、何を目論んでいるんだ、君は?」

 

私は諦めて正直に白状することにした。

 

「───────本気か?」

 

「本気じゃなかったら話さないよ。このことはもう忘れてくれていい」

 

「いや、そういう意味じゃないんだ。俺がいいたいのは、江見睡院にどうしてそこまで入れ込むことができるのか正直理解に苦しむんだ。君は江見翔じゃないだろう?ブローチに江見睡院を愛した女の思念が詰まっているというのなら、洗脳されているんじゃないか?大丈夫か?」

 

「大丈夫だけど大丈夫じゃないね。他に被害が最小限になる方法が見つからないから仕方ないとも言える。宇宙人にも《ロゼッタ協会》にも掛け合ってみたけど、それ以外には別の問題が発生したり、甚大な被害が出たり、時間が絶望的に足りなかったりで選択肢がないんだ」

 

「そうか......。瑞麗先生あたりは?」

 

「相談した瞬間に止められるからダメ。代替案が欲しいんだ、私は」

 

「思ったより事態は深刻なんだな。やれやれ......九龍の仲間になれてよかったというべきか......あやうく爪弾きにされるところだったな」

 

「九ちゃん、大和のこと気に入ってたから遅かれ早かれ仲間にはなってたと思うよ」

 

「はははッ、確かにそうだな。あいつは面白い男だよ、ほんとうに。君が頼りたくなる理由もわかる気がする」

 

「でしょ?」

 

「でも、九龍が仲間を誰よりも死なせたくない人間なのは、翔だって知ってるだろう?神なんぞに頼るくらいなら自分の守れるやつはなにがなんでも守るってやつだ。アラハバキが守護神じゃないかって聞いた時の怒りは尋常じゃなかったからな、きっとなにか深いわけがあるはずだ。九龍があそこまで怒ったのは見たことがない。あれは大切なものを守ることができなかったやつがする目だったからな。悪いことは言わないからやばくなったら頼れ。俺や九龍、ほかのやつらにも。いいな?」

 

「......そうだね。九ちゃんいつもいってるんだ。《宝探し屋》はバディを必ず生きて帰す義務がある。ほかには、考えることをやめた瞬間に人間は終わりだって。なにがあったのかはわからないけど、察してはいるつもりだよ。H.A.N.T.のハッキングの件だって怒った俺がいうのもなんだけどものすごい凹んでるし......」

 

「ああ、なるほど......だから仲間になった瞬間にメールボックスがいっぱいになるほどのメールが来たのか。気を遣われているのかと心配になってたんだが、責任感じてるんだな......。まあ、翔の呪殺未遂だってあったんだ、九龍ならあれくらいするか」

 

「《レリックドーン》がやばすぎる組織で、喪部銛矢が危険人物だからってのもあるよ。九ちゃん、前の任務で《遺跡》の出口で待ち伏せされて、人質とられたらしいから。人質をなんとか救い出して逃げるために砂漠を突っ切る羽目になって死にかけたらしい」

 

「そうなのか......あの九龍がそんな危険をおかすってことは、相当追い詰められていたんだな。わかった。メール、また読んでみるよ」

 

「是非そうしてくれ。私、喪部銛矢に目をつけられてるからなァ......」

 

「挨拶がわりの呪殺だもんな......君がこの《遺跡》と深い関わりがあることを除いてもなにかあるのか?」

 

「喪部はないと思うけど......《レリックドーン》はあるね」

 

「ほんとうか?」

 

「うん。皆神山の《遺跡》の《九龍の碑文》を巡って《レリックドーン》や《墓守》とやりあったらしいんだよ、江見翔は。もろとも全滅して生き残ってるんだ。因縁つけられてもおかしくは無い」

 

「いわゆる弔い合戦か......。九龍も前の任務で《秘宝》を守りきったわけだから、君と似たような感情を抱いていてもおかしくはないな」

 

「でしょ?だから困るんだよ......。《九龍の秘宝》を狙ってるのは九ちゃんも同じだけど、あいつらなら絶対に《タカミムスビ》の解放に全力でくると思う......。すでに下準備は終わってたし。九ちゃんと《生徒会》に連絡したから最悪の事態は防げたけど」

 

「なるほど、そういうことか」

 

「なにが?」

 

「いやな?《生徒会役員》や元《執行委員》の連中が生徒会室に呼び出されてるから、なにかあらたな動きでもあるのかと思って警戒していたんだ。そういうことなら安心した」

 

「うん、安心してテスト受けにおいでよ」

 

「......ああ、そうだな。思い出したくなかったが、九龍の力になるのは受けそこねたテストを受けたあとだな......はは」

 

「こればっかは同情しないからね。大和と神鳳のせいで1日目は地獄を見たんだから」

 

「ああ、本当にすまなかった。そこまで頭が回っていなくてな」

 

「気持ちはわかるんだけどね、完徹で挑んだからね私達」

 

「九龍にも甲太郎にも散々怒られたよ。君が一番優しい」

 

「ほんとに?」

 

「ああ、特に甲太郎にはめちゃくちゃ怒られてしまってな......」

 

「私も九ちゃんも巻き添えくったからね、探索に連れていくせいだって。よくいうよ、成績悪いのは授業まともに受けないから当然なのにさ。授業受けないでテストの成績良くなるほど高校は甘くないでしょ」

 

「はは......頭が痛いな......」

 

「大和はホントの体調不良だから仕方ないよ。今の時期夜の方が長いし、月がどんどん満月に近づいていくんだから」

 

「そういってもらえると助かる......。年中寝不足でな」

 

「いえるわけないもんね」

 

「まあな......だが結果的にはよかったかもしれない。瑞麗先生が雛川先生に話してしまったらしくてな......卒業できるようサポートするからがんばろうと励まされてしまったよ」

 

「あはは、よかったじゃん。大和、ほんとは雛川先生みたいな人が好みなんでしょ?」

 

「んんっ......ちょっと待ってくれ、何故そうなるんだ?」

 

「わかるよ、白岐さんと噂になってるけどそんなんじゃないだろ?それに大和のタイプとは明らかに真逆だし、白岐さんと大和、好きな食べ物かすりもしてないのに食事にさそうとは思えないし」

 

「結構ズケズケとものを言うんだな......はは」

 

「で、ホントのところはどうなの?」

 

「現在進行形で七瀬と無断外泊してる君がいうのか、それを。俺としてはそっちの方が気になるんだがな?」

 

「あはは」

 

「翔、正直に話した方が気が楽になるぞ?」

 

「あはははは、やだなあ、大和。オレと月魅はそんなんじゃないよ」

 

「はたしてそうかな?」

 

「えー?」

 

「君が鈍感なのは抜き差しならない事情があるからだし、七瀬もわかってるから言わないだけだろう。今に始まったことじゃないが、程々にしないといつか刺されるぞ」

 

「月魅はそんなんじゃないよ、きっと」

 

「悪いが俺は男女の友情には否定派なんでな。この件に関しては生暖かい目で見守らせてもらうよ」

 

まあ頑張れと肩を叩かれてしまった。

 


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