憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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預言者たち7

蛇の頭を押して作動したトラップの先に《イザナミ》が現れる。最強の化人と呼べる能力を持っている。どんなに遠くまで逃げても《イザナミ》の攻撃は回避できないため、行動力を回復しながら一気に撃破するしか道はないのだ。

 

葉佩は背面に回り込む。そして阿門と皆守に《力》を使うよう叫んだ。

 

「この《墓》には斃す事でしか救えない奴ってのもいる。俺に任せておけ」

 

「たしかに、この《墓》は《墓守》である俺にも牙を剥く。《墓》とは死者を求めるものだ。だが、この《墓守》の《力》を甘く見ない事だ」

 

この《遺跡》を管理していた《墓守》ふたりの《力》が炸裂する。葉佩は炎属性の剣をぬき、きりかかる。

 

《イザナミ》はヒノカグツチを産んだ際に産道を焼かれて死んだとき黄泉の国に落ちた神の名を持つ。弱点は産道かと思いきや、顔の中央眉間のあたりなのだ。とんだトラップである。昨日はようやく弱点を把握したところでターンがつきてしまい、行動力を回復するアイテムもつき、仲間の《力》もつき、トドメをさすことが出来なかった。次のターンなど回ってこないことを葉佩はしっている。

 

《アビヒコ》により《イワレ》を倒すお膳立てがされた今、しかも雑魚まで倒されているとなれば、もう倒せる機会はないだろう。

 

「九ちゃん、なにぼうっとしてるんだ!」

 

真正面からの攻撃は皆守がすべて回避させてくれる。少々乱暴なのはいただけないが葉佩は皆守に背中を任せて《イザナミ》を屠ることに全力を注ぐのだ。

 

阿門たちの猛攻の果てに活路を見出した葉佩は《イザナミ》を解体していく。次に待ち受けるであろう《アビヒコ》の戦いにむけて、目指すのはひとつだけだ。

 

はげしい太刀音と怒号がひっきりなしにあがって来る。殺戮し合う葉佩と《イザナミ》は互いに叫びながら、紅となり、延び、縮み、揺れ合いつつ次第にその間隔はすり減っていく。

 

全身に血を浴びてもなお、葉佩は斬りまわった。双方からぶつかりあうたびに刃をあわせた。

 

「九ちゃんッ!」

 

皆守はまた途中からついていけなくなってしまう。目の前で胴体をピンク色の巨体が貫いた瞬間、たまらず叫ぶが飛び込もうとした皆守を引き留めたのは阿門だった。

 

「《鎮魂》の《力》をみせてやろう」

 

それは喪部銛矢の一族から阿門の一族に継承された正真正銘の秘技、そして詔だった。死者蘇生の奇跡を目の当たりにした皆守は葉佩を呼んだ。

 

「あっはっは、ごめんごめん。射程範囲間違えちった」

 

あまりにもおふざけがすぎた反応にたまらず皆守は葉佩を殴る。

 

「痛いっ!」

 

「今思い出したが九ちゃん、《心臓の護符》もあったなッ!?ああくそ、心配して損した!!」

 

「言ったそばからこれか。何度も連発はできんぞ、葉佩。いったはずだ、俺の《力》をあてにしすぎるなと」

 

「だ~か~ら、ごめんってば!くっそォ、別の《遺跡》だとこいつ倒した化人が出荷されたってまじかよ~ッ!マジで凹むんですけど!?」

 

軽口を叩きながら葉佩は回復アイテムを一気に消化して体勢を整える。そして《イザナミ》の背面から弱点をふたたび攻撃し始めたのだった。

 

そして───────。

 

「これでッ!終わりだッ!!」

 

葉佩の大剣が《イザナミ》を完全に解体してしまう。傷跡から炎が吹き出し、《イザナミ》の体がたちまち大火に包まれていく。内側から爆発を起こして《イザナミ》はたちまち粉微塵になって跡形もなく消えてしまったのだった。

 

《イザナミ》の身体に無理やり押し込められていた《アビヒコ》の息子の魂が天井の向こうに消えてしまう。

 

しばらく葉佩は静止していた。空間を揺るがす振動はこない。どうやら制限内に決着をつけることが出来たようだ。

 

「よっしゃあッ!!」

 

短いながらも確かな歓声があがる。

 

「やったな、九ちゃん」

 

「おう!」

 

「そうか……ついに、叡智と勇気でお前はここまで来たのだな」

 

阿門は感慨深げにつぶやく。葉佩がハイタッチを求めてくるものだから、戸惑いがちに応じた。皆守は嬉しそうに笑っている。

 

《許されている制限はあと10ターンといったところだろうか。さすがだ、葉佩九龍》

 

ぱちぱちぱち、と拍手をしながら阿部はやってくる。喪部銛矢とは違い、ほんとうに喜んでいる風でもあった。それだけで雰囲気は和やかなものとなる。

 

《スイッチを入れ、その先の訓練所のことも考えれば9ターン以内となろうな》

 

「そうだなァ、せっかく倒したのに初めっからになったら可哀想だし」

 

《うむ。ゆえに私との闘いはそれまで立っていられるかどうかになるだろうな》

 

「はい?なんだよ、それ。ずいぶんと足元見るんだな?大丈夫かよ、油断は命取りになるぜ?」

 

《ふふ、今の世になっても血気盛んな若人がいるのはよいものだ。そういうな、私をその気にさせてみせよと言っているのだ》

 

阿部はそういって右手を広げる。その上から螺旋をまく眩い光が現れた。どうやら周りの闇を反転させて光に変えているようだ。先程いっていた錬金術というやつだろうか。

 

《闘いは公平しなければならんな。受け取るがいい》

 

《アビヒコ》が葉佩たちに光のまばゆいオーラをむける。

 

「これは......」

 

「......!!」

 

「へえ、正々堂々か。いい趣味してんじゃん、《アビヒコ》」

 

葉佩は笑う。傷がみるみる修復していき、あっという間に葉佩たちは全快してしまったからだ。

 

《これでよいだろう》

 

「ありがとう」

 

《なに、当然のことよ。ニギハヤヒやレリックドーンの連中と一緒にしてもらっては困るのでな?あやつらとは違って、私は手負いの獣を嬲る趣味はないのだ。それに、お前の力はひとりではない、墓守たちさえも引き入れた寛容さにある。ならば全力で戦うにはそれ相応の準備が必要であろう》

 

「ズケズケと好き勝手言ってくれるじゃん。口の悪さだけは元上司に似てるよ、アビヒコ。いつまで余裕でいられるか、勝負だ」

 

《潔やよし、それでこそアラハバキの名を持つ男なり。さあ───────来いッ!!》

 

《アビヒコ》は高らかに宣言した。その直後。

 

「───────ッ!?」

 

葉佩は思わず肩を震わせた。そして笑ってしまう。感じるのだ。気配があるのだ。邪悪な、運命の力みたいなものが、目の前の《アビヒコ》からしみ出している。瞬き数回、前を見据えるとにやりと阿部は笑っていた。

 

「これはあれかな?もしかして、阿部を変生させることが出来たら、実質2連戦になるやつ?」

 

《ハッ───────》

 

《アビヒコ》は鼻で笑った。

 

《できるものならやってみるがいい。私は所詮人でありながら魔に堕ちた身だ。神でありながら魔に堕ちたあの男には到底及ばぬが......私すら倒せぬならば雪辱を果たすなど夢のまた夢よ》

 

「いってくれるじゃないか」

 

葉佩は獰猛に笑った。そして後ろを振り返る。そこには戦闘態勢に入っている阿門と皆守がいる。確かにいる、と思うと、いつだって涙が出るほど安心した。《魔人》を前にしともなお何か消えないものがあることを今の葉佩はしっている。これがある限り、葉佩は負ける気は毛頭ないのだ。

 

目の前の《魔人》にはどうすることもできない巨大な影を感じる。感じたくないのに、感じる。自分たちを非力だと、小さいと思わせる何かが。

 

だが、今の葉佩は恐るるにたらない。歪んだ《陰氣》のエネルギーに呑まれないように、気合いを入れ直すため葉佩は愛銃に力を込めた。

 

「俺は二度と負ける気はないんだよ。悪いけど、勝たせてもらうぜ」

 

《ならば見せてみるがいい───────その覚悟をッ!》

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