憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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壊れ方指南3

「という訳だから気をつけて欲しいんだ」

 

私の忠告に葉佩はニヘラと笑った。

 

「あー、それもう手遅れだなァ、俺」

 

奇遇だな、私もだよHAHAHA。笑い話にもならない。ゲームの時点で宇宙人に無理やり遺伝子操作された古代の人間から生成されたモンスターと戦わされるシナリオなのだ。そこから食料品を調達して回復アイテムを調合するというぶっとんだシステムを採用している《ロゼッタ協会》である。葉佩九龍も江見翔も、きっと用務員の境玄道だってそのやり方に染まりきっており、私が江見翔の中の人になる前から別の遺跡で似たようなことをしていたはずだ。しかもこの世界はなにやらクトゥルフ要素ががんがんに出てくるので、ショゴスなんて可愛いレベルのゲテモノを食べていた可能性がある。現に私は以前クトゥルフ由来のシーフードカレー食べても体になんの異常もきたさなかった。葉佩のいうとおり、きっと手遅れなのだ。今更遺跡で回復アイテム調達するのをやめる縛りプレイをしたところで、最序盤たる葉佩は万年金欠に陥ってろくに装備を揃えられなくなってしまうだろう。そっちの方が困るのだ。

 

「......葉佩、まさか俺のカレーに入れたんじゃないだろうな」

 

皆守が同人誌や二次創作で一度は知らされて精神的ショックを受けるのは定番だが、さすがはカレーとラベンダーの匂いしかわからないと噂の皆守だ。ぶれない。

 

「日本の総理大臣からの依頼だったんだ、仕方ないだろー」

 

「おいまて、それどういう意味だ。今、たしかアメリカのどっかの大臣が来てるとかニュースでいってたぞ」

 

「そうなんだ、皆守詳しいな。じゃあたぶんそれだ。なるほどな~、日本が核兵器を持たない理由はこれか~」

 

「おいこら」

 

「嘘じゃないって、ほら~」

 

葉佩はなんの躊躇もなくH.A.N.T.を起動して、クエストを皆守に見せていた。ついでに《ロゼッタ協会》のシステムについて説明をはじめた。

 

《ロゼッタ協会》は現地調達が基本だが、人類の叡智とかいて銃火器や弾丸などの武器はネットで購入しなければならない。刀剣類はたまに遺跡でも入手できるが、今のところ葉佩のランキングの位置だと銃火器はネット購入オンリーだ。銃は敵の弱点狙って攻撃できるので、結構重要だが葉佩はプレイスタイルが合わないからガン無視している。化人に爆弾は有効な敵が多いがアサルトベルトの容量を圧迫するためあんまり持ちたくない。だが、壁を破壊しないとアイテムや江見睡院メモが入手出来ないので、定期的に補充しなければならない。

 

そして、「購入」と言うからには当然お金が必要だ。最初の持ち金は5万円。爆弾の定期的な補充にはウン十万かかる。遺跡探索で敵を倒してもお金は落ちない。世知辛い。敵を倒すことで、多少はアイテムを入手できるが、それを売っても大した金額にはならない。

 

では、どのように稼ぐか?

 

《ロゼッタ協会》ではクエストを受け付けており、それを達成することで報酬としてお金を受け取れるのだ。クエストは、依頼主にアイテムを渡すことで達成できるのだが、依頼されたアイテムを入手するには調合などをしなければならないわけだ。

 

依頼主は、日本国首相から大英博物館の館主、恵まれない少女、黒髪の未亡人などの多種多様だ。

 

「意味がわからないんだが、なんだこの《亡くなった主人の 追悼式で 思い出の品として 轟炎爆薬 を供えたいの》って。思い出の品が爆薬ってどんな思い出持ってんだよ。戦場で出会ったのか?実は、追悼式そのものを爆破したいとかじゃないだろうな?」

 

「あはは、皆守は想像豊かだな」

 

「お前にだけは言われたくないんだが、葉佩。つうか大英博物館の《新しい展示室の 古代美術展で 脇を飾る華として プリン を出展したいのです》って明らかに普通のプリンじゃないと気づいてるだろう、相手」

 

「そりゃそうだろ~。じゃなきゃプリンにこんだけ法外な値段つけるわけないじゃん。蒼き瞳の皇太子なんて《舞踏会で出逢った 偉大なる人物に 悪を挫く剣として ソーセージを 与えたいのです》だぜ?ソーセージで、どうやって悪を挫けるんだよって話だしさ。実は偉大な人物と言ってますが、心の中では見下してるじゃん、みたいな」

 

「ほんとに大丈夫なのかよ、こいつら」

 

「大丈夫だったらそもそも泥棒集団の《ロゼッタ協会》に依頼しないと思うよ」

 

「......開き直るなよ、お前の所属だろ」

 

「開き直ってないさ、これが当たり前なんだからさ。よくわからない理由で依頼をしてくるけど、依頼は一度だけじゃなくて何度でも依頼をしてくるよ。どんだけ普段困ってるんだって話だけどね。でも依頼主ごとにクエストを一定回数達成すると、お礼の手紙や、ご褒美・お礼の品を送ってくれたりするよ」

 

皆守はとうとうつっこみがおいつかなくなってきたのか、ため息をついたあとアロマを吸い始めた。

 

あのさあ、散々私たち宝探し屋をこき下ろしてなんだけど、君《生徒会》の人間だからな?取手やリカみたいに遺伝子操作の過程で体内にショゴスが入れられてるから体が超強化されてる可能性があることを華麗にスルーすんじゃないよ。いや、これは脳が理解することを放棄したパターンだろうか?SANチェックのダイスが乱舞しかねないもんな。

 

「とりあえず、お前にはカレーパンか通販で買ったことが確認できたカレーしかもらわないことにする」

 

「えええっ、なんだよそれめんどくさいな!?」

 

「やっぱり化人食わせるきマンマンだったじゃねーか!」

 

「仕方ないだろ、金がないんだよ!」

 

だから手遅れだって、皆守。私は何も言えないまま遺跡に乗り込むことになるのだった。

 

 

 

葉佩九龍の《遺跡》の探索は2回に分けて行われる。まずは化人の討伐をして行ける所までいき、罠やギミックの解除という具合にだ。まだ最序盤だから能力不足でH.A.N.T.がエラーを吐き出すことはまずないらしい。いつもは碑文をガン無視していくのだが、私が同行したことにより上昇する補正分により一気に攻略するつもりのようだ。定期的にメンバーを変えるのは取手が仲間になったことにより、2人にわけるのが難しくなったからだという。

 

扉をあけると中は四方を台座に囲まれた広い部屋だ。右手側に扉が見えたが、その扉は鍵が掛かっていた。

 

「まずは石碑だな~」

 

「初めて見るパターンだが明らかにこれが普通だよな」

 

「うるさいなあ」

 

皆守を人睨みしてから葉佩は私を呼んだ。おいおいと思いつつ、まずは基本に忠実になることにした。罠の解除方法は石碑に記された伝承や神話になぞられている事が多いからだ。葉佩はH.A.N.Tを起動させる。

 

「表面よりエジプト文字を検出」

 

ゴーグルを通して文字が浮き出る。わざわざ手で触れなくても文字を検出する機能だ。ただし、翻訳機能はないため解読は《宝探し屋》自身が行わなければならない。

 

H.A.N.T.にも表示されているため、私は葉佩に見せてもらったところを読み上げる。

 

「わくわく」

 

「わくわくすんな、本職。素人に解かせるなよ」

 

私はまさしく本職だけどな。それにしてもイスの偉大なる種族補正と私自身のステータスを加味したら葉佩にどれだけプラスされているのか気になるところだ。マイナス補正はないと思うけど、たぶん。

 

古代の日本語の習得は基礎中の基礎だ、解読は容易だ。近くにある壺や不自然な大気流動がある壁、中身を確かめる前にH.A.N.Tを起動させてもらうとその内の二つに生体反応あり。罠である可能性が高い。

ギミックを解除すると次の扉の鍵の外れる音がすると、動体反応があったツボが割れる音がした。

 

「よっしゃ、きたな!」

 

葉佩は剣を構える。後ろから眺めている度に思うんだけど葉佩はあれか。銃火器の禁止、弓矢の禁止、アイテムをとるため以外の爆弾は禁止みたいな縛りプレイでもしているんだろうかという気になる。

 

「敵影確認――移動してください」

 

H.A.N.Tが告げるまでもなく、葉佩は残骸に変えた。反射的に2体目の頭を切りつけた。

 

「!!」

 

相手の急所だったらしくいとも簡単に砕けた。 

 

「敵影消滅――」 

 

H.A.N.Tが戦闘の終了を伝えた。そして、遭遇した敵のデータをH.A.N.Tを通して協会のデータベースに手動でアップロードした。自分のためでもあるし、後続のためでもある。こうしたマメさと慎重さが葉佩が短期間で《宝探し屋》になれた理由だろう。

 

開いた扉を開くと廊下があった。しかし、奥に続く通路は高い場所に存在し、近寄って登ろうにも水路が邪魔している。泳ぐのは危険だ、水質が全く分からないのだから。にしては躊躇なくワイヤーガンをぶっぱなしているが。

 

「また碑文だ!翔クンッ!」

 

「あのさ、少しは読もうよ葉佩。なんかカッコ悪くない?」

 

「いーからいーから。俺は全然気にしないから」

 

「いや気にしろよ」

 

私は緊張を張り直し、石碑を読む。

石碑を読み終え、その通りに像を動かしてやると足場が出現した。

 

「どっちが宝探し屋かわかったもんじゃないな」

 

「さすがは翔クンッ!頼りになるぜ!ありがとうありがとう。さすがは江見睡院先生の息子さんだ!」

 

私はため息しかでないのだった。

 

「低域に大気流動を確認」

 

足場を渡った先にはH.A.N.Tのナビ通り、足下に通れそうな穴が開いていた。みんなで匍匐前進する。また鍵があり、施錠を完了すると開いた扉の向こうには、黄金の鎖で封印された扉があった。葉佩はもってきていた液体でとかしてやる。簡単にあいた。

 

「敵影確認――移動してください」

 

葉佩が飛び込んでいく。断末魔が聞こえるから大丈夫だろう。

 

「うーん、やっぱり2倍くらい敵がいるなあ。前の階層より狭くはなってるのに」

 

ぺたぺた葉佩が壁をさわっていると何かの作動音がした。

 

「――!!」

 

同時に私たちは強烈な敵意に襲われ、そしてH.A.N.Tが警告アラームを鳴らす。

 

「高周波のマイクロ波を検出、強力なプラズマを確認」

 

そして何事かと葉佩は剣を、私も電気銃を構えた。目の前にある壁が崩れ、降りてきた梯子も衝撃で崩れてしまう。壁から巨大な化物飛び出してきたのだ。

 

「よーし、面白くなってきたぜ」

 

 

 

 

 

「おい、待て!お前A組の椎名だな?」

 

「あら......、リカのことをご存知なんですかァ?ふふふ、そちらの方が噂の《転校生》さんですのね。はじめまして、A組の椎名リカと申しますゥ」

 

「これはこれはご丁寧にどうも。俺は葉佩九龍と申しますゥ」

 

「なにつられてんだよ」

 

「痛い!」

 

「まァ、葉佩クンとおっしゃるのですかァ。仲良くしてくださいですゥ」

 

「こちらこそ仲良くしてくださいましィ」

 

「ふふふ。こちらこそ、どうぞよろしくですの」

 

「よーし、これでお友達だよな、椎名サン。教えて欲しいんだけどさ、ここでなにをしてるんだ?」

 

「あァ、その事ですのォ?規則を破った悪い人は罰せられなくてはならないでしょう?だからァ、ここで準備しているんですの」

 

「あの爆弾はお前がやったのか?」

 

「えェ、そうですわ。リカはァ、なんでも爆発させることができるんですの。分子と分子をォ、ぶるぶる~っとさせて、蒸気がしゅわ~って出て、それでバーンですの。ふふふっ、試しにあなたたちもバーンってなってみますかァ?」

 

「がーん!そんなっ!せっかくお友達になったのにもうお別れなんて嫌だ!俺は君のことがもっと知りたい!」

 

「まァ......ふふふっ、怖いんですの?」

 

「死にたくないよ!」

 

「《死》ですかァ?それだったら別に構わないと思いますゥ~。だってお父様がいくらでも代わりを用意してくれましたもの。今までもこれからも」

 

「なにいってるのかわかんないですね。死んだら終わりだよ、椎名サン。ただの物体になるんだ。代わりなんていない」

 

「......どうしてそんな顔をするんですの?」

 

「......死ってのはな、そんなもんじゃない」

 

「皆守?」

 

「葉佩のいう通りだ。死んだやつには二度と会えない。誰もそいつの代わりなんてなれない。お前は本当に死の意味が分からないのか?」

 

「おっしゃる意味がよくわかりませんわァ。だってお父様が蘇らせてくれたリカのペットはここにいますもの」

 

「はい?」

 

「なにいってんだ、こいつ。嘘なんかじゃないさ。なあ、葉佩」

 

「嘘なわけないじゃん。残されたものの痛みをわかるはずの君がそんなこというなんて残念だよ、椎名サン」

 

「......お前も知ってるのか。その痛みを......」

 

「一体なんですの、急に出てきて訳のわからないことばかりいって!あなたたちの言ってることは全部でたらめですわ!リカはちゃ~んと知ってるんですの。死んだ人を死の国に迎えに行くことが出来るって!ここに書いてあるんですもの!」

 

「えっ、読めるの椎名サン」

 

「おいこら黙れ」

 

「イザナギの神様はイザナミの神様が死んだ時、ちゃ~んと死の国である黄泉の国まで迎えに行ったんですのよ。だからお父様はお母様やベロックやお友達もなにもかも全部リカの所に連れて帰ってきてくれましたもねか。あなたたちなんて大っ嫌いですわ!それでは、失礼しまァす」

 

「待って椎名サン!」

 

「やあ~です!」

 

リカと私達の目の前に巨大な石碑が立ふさがる。

 

「お約束とはいえ、よくぞまあ収まってたなあこんなでかいやつ!下がってくれ、2人とも!生体反応がある!しかもかなりでかいヤツ!シャレになんないレベルだ!」

 

葉佩は暗視スコープのコマンドを切り替え、H.A.N.T.を戦闘モードに切替える。剣がひらめいた。

 

「翔クン、右端のやつが電気弱点っぽいんだ。狙える?」

 

「わかった。任せてほしいな」

 

そいつはまるで犬のような雄叫びをあげる。白くて大きな犬を思わせる姿ながら背負う歪な機械とそこから漏れ出す液体が化人だと知らせていた。明らかに液体が弱点だろう、臓器らしきものがゆれている。私は電気銃を放った。

 

「よーし、俺も負けてらんないな!」

 

こいつもまた新手だった。ゲームでは見た事もないやつだ。若い女に見える化人である。両手の異様に長く伸びた鋭利な刃物をしならせて攻撃してくるが葉佩はそれを全部切り伏せた。

 

「うわっと」

 

「ぼーっとしてんじゃねえよ」

 

ふあ、と欠伸をしながら皆守が葉佩を蹴飛ばす。攻撃は葉佩の頭上を掠めた。白い犬は麻痺状態になっているようで動けない。私はすかさず電気をあびせてやった。葉佩も一気に間合いに入り込んで切り伏せる。

 

「......り、か......」

 

切ない声をあげて女の化人は消え去った。周りを見るがすでにリカの姿はない。

 

「あー......リソース使い切っちゃったな。そろそろ戻ろうぜ、みんな」

 

なんだかなにも話したくなくて、沈黙が私達を支配していた。葉佩は探索を明日に回すようで、私達はその場で解散したのだった。

 

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