憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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10万光年の追跡者4

森をぬけて葉佩と皆守がいるはずの《墓地》に向かった私たちを待っていたのは、月夜に照らされた陰惨な報復現場だった。

 

ドゴォ、バキイ、ガアン、と目を背けたくなるような音とぎやあああというやたらドスの効いた断末魔が《墓地》中に響いていた。取手が驚いてリンチしているやっちーと無言で六法全書の角でぶん殴っている月魅を止めようとしたが皆守にとめられた。

 

「やめとけ、やめとけ。今止めに入ったら、八千穂と七瀬に覗き魔の味方をするのかってキレられるぞ。明日、まともに登校したいならやめろ」

 

「えっ......いったい、何があったんだい?」

 

「話せば長くなるんだがな......」

 

足元に散らばる盗撮と思しき写真をゲットトレジャーしようと虎視眈々と狙う不届き者を蹴りつつ皆守がため息をつく。首根っこひっつかんで私達の所によこしてきた。

 

「俺、すどりん倒すの頑張ったのにさァッ!扱いひどすぎないか、皆守ッ!」

 

「うるせえよ、オカマと意気投合したのはどこのどいつだ、きもちわりい。こっちにくるな」

 

「なんだよ、すどりんと同じ空間にいたくないからって《墓地》入口で待ってたくせに!皆守なら1人で捕まえられただろッ!」

 

「馬鹿いえ、なんで俺がんなことしなきゃいけねえんだ。だいたい来るのが遅いんだよ。なんで武器持ってこいって言ってから1時間もかかるんだ」

 

「仕方ないだろ!新しい武器揃えるにはそれなりに時間がかかるんだよ~ッ!」

 

「かかりすぎだ、馬鹿野郎」

 

はあ、と皆守は深深とため息をついて、肩をすくめる。

 

「......葉佩君じゃなくて、皆守君に連絡をいれたらよかったんだね......メールしたら追いかけるのに忙しいってあったからてっきり......」

 

「───────はァッ!?てめー、葉佩ッ!ふざけるのもいいかげんにしろ!」

 

「ごめんてば、皆守ッ!ぐあっ、ちょっとは蹴るところ考えてくれよ!」

 

気を取り直して、皆守は私たちを見た。

 

「まず、こっちに宇宙人はいなかったぜ」

 

ドヤ顔で言われても困るんだが。

 

「まずは女子寮を覗き見してる不審者が二人いたからシバいといた。用務員のエロジジイだろ」

 

「ああ、境さん?」

 

「あの人......そんなことまでしていたのかい......?」

 

「あァ。そんでだ、次はグラサンに髪染めてるヤンキーみたいな派手な出で立ちのおっさんな不審者がいてだな。そいつは探偵らしい」

 

「探偵?」

 

「行方不明になってる生徒の親が學園に不信感を抱いて大枚はたいて依頼したらしい。それを俺たちが生徒だってわかるやいなや、ぺらぺら喋るやつだ。実力なんてたかが知れてるぜ」

 

「ん~、どうかなあ。だって鍵、勝手に入手してたじゃないか」

 

「それをどさくさに紛れて頂戴するんじゃねえよ、このコソドロが」

 

「痛い!」

 

「そっか、なら内通者がいるのかもしれないな」

 

「あァ、俺もそれは考えてた。まったく迷惑な話だぜ」

 

一言でいえば、やっちーによる血祭りが行われていた。おかしいな、あれはやっちーをバディに選ばなければ発生しないイベントだったのに。不思議に思って聞いてみると、なんと七瀬がやっちー唆して連れてきたのだという。宇宙人と会える歴史的瞬間の証言者になりたいとかなんとかで。

 

ドン引きしている葉佩たちを捕まえて事情を聞いたところ、いろいろと教えてくれた。

 

宇宙人騒動の犯人が一見マスクを被っていると思わせる地顔と俊足の脚が特徴。 嫌いな物は軟体動物の触手のいわゆる体と心が一致しない男子生徒、自称我等がビューティー・ハンター、朱堂茂美(すどうしげみ)、通称すどりんと判明した。

 

遺跡の奥で追い詰められたすどりんは自分が《生徒会執行委員》の一人である事を明かす。 彼女もまた生徒会長・阿門帝等によって呪われた力を自身の宝と引き換えに与えてもらった人物。

 

引き換えにした宝はコンパクトミラー。美しくなるために初めて自分で買った宝だとか。 それを代償とし得た力は『筋肉の超精密動作』の力である。

 

彼女の攻撃方法はその力を利用したダーツ投げ。ただダーツを投げるだけだが、彼女の精密動作によって全く同じ場所にダーツを命中させることが出来るという恐ろしい精度を誇る。やっちーのスマッシュの威力には劣り、やや控えめなためやっちーが《生徒会執行委員》だったら詰んでたとは葉佩の談である。

 

倒したら《墓地》に出てきて、なぜそんなことをしたか教えてくれた。彼女が女子寮を覗いていた理由は自らの女らしさを磨くため、女子の仕草、言葉遣い、男に好かれる性格、化粧、ファッションなどのデータを集める為だった。理由に呆れてしまった葉佩と皆守は女子にすどりんを突き出すのを止めて彼女を見逃そうとしたら、やっちーたちと合流した。それが悲劇の幕開けだった。

 

 

すどりんはやっちーたちに女子達が羨ましかったと自分が女子になれなかった悲しみを吐き出す。その悲しみを理解したやっちーたちは彼女を許し和解するがその直後、すどりんは男子生徒から頼まれていた女子の隠し撮り写真を落としてしまい、すどりんは激怒したやっちーに殴られている。というわけである。

 

「うわあ」

 

取手もどんびきである。最後の一撃がやっちーから炸裂したのはほぼ同時だった。とりあえず女性陣を怒らせてはいけないとみんなの共通認識になったのはいうまでもなかったりする。

 

「あれ?」

 

私達の視線が集中する。なにやら採掘キットをもっている男子生徒が現れた。

 

「おかしいなあ?」

 

そこにいたのは黒塚だった。キョロキョロと辺りを見渡している。

 

「あれ、黒塚クン。どうしたの?」

 

「もしかして起こしてしまいましたか?」

 

「いやあ、すごい悲鳴だったねぇ。男子寮は大騒ぎだよ。女子寮の電気もついてたから、たぶん似たようなものじゃないかな?」

 

「やりすぎちゃったかな......」

 

「いえ、まったく」

 

「そうだよね。警備員の人に突き出さないだけマシだと思ってもらわなきゃ」

 

果たしてどちらが幸せだっただろうか。私はなぜだろうか。すどりんだったものを見ていると警備員に掴まって覗き魔として警察に突き出されて退学処分になった方がマシな気がしてならない。

 

「ふふふ、石はなんでも知っている~」

 

「黒塚は騒ぎが気になって出てきたのかい?」

 

「やあ、奇遇だね江見君。君の秘密の場所がようやく分かったよ。葉佩くんから誘われたのさ!これでようやく楽園に僕は到達することが出来るというわけだね。楽しみだなあ」

 

「こいつまで勧誘したのかよ、葉佩」

 

「そりゃそうだろ~、だって俺遺跡研究会の部員だぜ?部長も話がわかるやつなら勧誘しない手はないだろ?」

 

「おいおい......夜遊びにさそわれてないなら待機してろよ、黒塚」

 

「ん~、いやそれはそれで残念だったんだけどね。今回は別件さ」

 

「はあ?みるからに発掘調査に行くみたいな格好しといて?」

 

「えっ、違うのか......どうしてここに?」

 

「石たちに呼ばれたんだけど、急に声が聞こえなくなってしまったんだよね。眠いのかもしれない。おやすみ」

 

「ああ、うん」

 

なぜだろうか、いつもの黒塚の決めゼリフが異様に怖かった。そういえばミ=ゴも鉱物収集に協力してくれる人間を協力者にすることがあるんだっけ......?

 

なぜか今のタイミングで思い出してしまった私はこのことに触れるべきか否か悩んでいるうちに、葉佩にそれはなんだとミ=ゴからの戦利品に食いつかれてそれどころではなくなってしまった。

 

取手からミ=ゴとショゴスの大乱闘を聞かされた皆守が魂抜けたのも、葉佩が調合して新たなオーパーツ武器を生成しようと意気込んでいるのも、黒塚が明らかに怪しいムーブをしているのも気のせいだよね、たぶん、きっと、めいびー。

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