憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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かごの中の瞳3

「翔クン、あの時相談に乗ってくれてありがとう~ッ!あのね、あのね、九(きゅう)チャンが連絡先おしえてくれたよッ!」

 

お、やっちーの呼び方がとうとう九龍から九チャンになったぞ。私はつられて笑顔になった。

 

「え、連絡先?もう交換してるんじゃ?」

 

「天香サーバに登録されてるメルアドじゃなくて、《ロゼッタ協会》のサーバにあるメルアド。仕事する時の連絡先。あとね、九チャンの個人のメルアド教えてもらったのッ!」

 

「あ~......そういうことか、なるほど。よかったね、やっちー。いい返事もらえたんだ?」

 

「うえっ......ちょっ、やだなあ、まだだよ......卒業しても連絡取りたいっていうので精一杯だよ......」

 

「あ、そうなんだ。ごめんごめん、急かしたみたいで。でも勇気出してよかっただろ?」

 

「うんッ!」

 

えへへ、とやっちーは笑う。

 

「天香サーバのメルアドって数年後には削除されちゃうなんて知らなかったよ。でも、よく考えたらそうだよね。個人情報どうたらっていうし。危なかった~......ずっと使ってたから考えもしなかったよ」

 

「それは盲点だったね、やっちー」

 

「ほんとよかった......勇気出してよかった......九チャンと連絡取れなくなるところだったよ......。九チャンからあたしに連絡くるまで待つしかなくなるとこだった......。ありがとう、翔クン」

 

ちょっと泣きそうな顔をしてやっちーはいうのだ。ほんとうに怖かったらしい。

 

「九チャン、忘れてたって顔してたよ。そうだよね、《宝探し屋》ってお仕事してたら、《ロゼッタ協会》経由のサーバ使えるから、いちいち連絡取れなくなるかもなんて考えないよね。すごくない、翔クン。あたし達、九チャンの最初の普通の友達なんだよッ!忘れちゃうほど当たり前に思ってくれててさ、涙出ちゃった」

 

私はやっちーの頭を撫でた。落ち着いてきたのか、涙を拭ったやっちーは私を見上げる。

 

「一歩進んでよかったね、やっちー」

 

「うんッ!」

 

ほにゃっと笑ったやっちーは、あ、と我に返ったようにいうのだ。

 

「どうしたの?」

 

「九チャンだけじゃないよッ!よく考えたら、みんなの連絡先交換しなきゃッ!みんな出身地バラバラなんだから気軽に会えなくなっちゃうッ!あ~もう、なんで気づかなかったんだろ、あたしッ!」

 

「あはは。今気づいてよかったじゃん、やっちー。結果オーライだよ」

 

「そうだけどさ~......。ま、いっか、今から聞いて回ればいいよねッ!というわけで翔クンも教えて!」

 

「わかった」

 

赤外線通信とか久しぶりすぎるけど、15年前はあたりまえのやり取りだったんだから不思議なものだ。それがLINEにとってかわられるんだから時代の流れははやい。ところでこの携帯電話の端末、《ロゼッタ協会》からの支給品なわけだがこれからも継続して使えるんだろうか?任務ごとに回収なんだろうか?そこまで考えて、皆神山で保護された時あとから返された荷物の中にH.A.N.T.以外の端末がなかったことを思い出した私はやっちーを呼び止めた。

 

「どうしたの、翔クン」

 

「Googleのメルアドも教えとくよ」

 

「Googleって、あの検索サーチの?」

 

「今年の4月からメールサービス始めたみたいなんだ。そっちのが便利だしね」

 

「そうなんだ?よくわかんないけど、翔クンそっちの方がつかうの?」

 

「うん、まあね」

 

主にメール爆撃をする葉佩によりH.A.N.T.のメール機能がすぐいっぱいになってしまうせいなのだが。プライベートな話は機密情報が入らないならこちらをつかえと同僚に言われたことを思い出して私は苦笑いした。......待てよ、葉佩に見られたらバレるのでは?

 

「待って、今から登録するから」

 

「あれ、今も使ってるんじゃないの?」

 

「ふふふ、いいのかな~?やっちーとのやり取り全部宇宙人に見られてもいいのかな~?今使ってるやつ、監視されてるやつなんだけどな~」

 

「つ、月魅がいってたことってやっぱりほんとなの、翔クン!?」

 

「やっぱり月魅バラしてた......」

 

「も~ッカマかけるなんて酷いよ、翔クン!」

 

「やっちーわかりやすいからね。どこまで聞いたの?」

 

「え?えーっと、翔クンが皆神山で宇宙人に襲われて、他の宇宙人に助けてもらったかわりに協力しなくちゃいけなくなったっていってたような?お父さんを探し始めたのもそのせいで?えーっと、あとは......なんだっけ」

 

「あはは、だいたいあってるから大丈夫だよ、やっちー。細かいことを気にする必要はないから。ただ、卒業したらどこ行かなくちゃいけなくなるのかわからないんだよね。だから一応教えとくよ。海外だと携帯意味なくなるからね」

 

私がぽちぽちGoogleのメルアドを登録しているとどうやら七瀬の与太話が本当らしいと気づいたやっちーが不安そうな顔をしてくる。

 

「ね、翔クン。こわくないの?岡山県に帰れないかもしれないのに」

 

「う~ん......こわいよ?」

 

「じゃあなんで......九チャンは?九チャンなら助けてくれるかも......」

 

「まあ、殺されそうになったところを助けてくれたし、おかげでやっちーにも会えたし」

 

「翔クン......」

 

「こわいとは正直思うけどさ、岡山県に帰ってもまた襲われたときを思うとどうしてもね。それに九龍は《宝探し屋》であってゴーストバスターじゃないだろ?そこまで迷惑はかけられないよ。でも大丈夫、なんかあったら九龍にお願いするよ」

 

「翔クンがそこまでいうなら、あたしはいいけどさ......無理しないでね?あ、メールはしてもいいんだよね?」

 

「なんにも言われてないから、たぶん制限は無いと思うな」

 

「よかった~。翔クンにはいっぱい感謝してるんだ~。だからね、卒業してから連絡とれないってなったらヤダからよかったよ。まだ相談したいこともあるかもしれないし、翔クンに相談もされたいし!」

 

「あはは、わかったよ、やっちー。空メール送るから登録よろしくね」

 

「うん、わかった。試しにメールしていい?」

 

「いいよ」

 

ぽちぽち携帯電話を押しているやっちーをみながら、現役女子高生はさすが両手打ちが神がかっているなと思ったのだった。

 

 

 

 

 

 

江見睡院が天香學園に寄贈した膨大な数の蔵書の中には、日本神話にかかわるものが多い。間違いなく、《遺跡》について合法的に調べるためだったにちがいない。図書委員の人間に熱心な人間でもいたのか、きっちり持ち出し禁止の資料庫の奥底に眠っていたため劣化などはなく本の原型をたもったままのものが多い。

 

白岐から私の魂が怖いと言われてしまった日から、七瀬が集めてくれた蔵書を私は隙を見ては読みふけっていた。

早朝に来て、あるいは昼休みに、あるいは七瀬に頼んで古書を男子寮に持ち帰って。

 

學園祭の準備は主に真夜中に着々と進んでいる。文学部と図書委員の展示の準備は図書室で行われるからか、七瀬の手伝いをしていると認識されている私は、どうしても抜けられない時はやっちーたちに呼び止められるが基本免除されていた。

 

七瀬も七瀬で自分のクラスがリカたちがメインのネイルサロンをすることになってしまったせいで、あんまりクラスにいたくないらしい。やっちーに接客を頼まれたという建前でC組に入り浸っているか、図書室ににげこんでいた。

 

今朝もこうして図書室に入り浸っていると白岐がいた。

 

「あ、おはよう、白岐さん」

 

「あの......江見さん......」

 

「ああ、気にしないで白岐さん。だって気になるでしょ。私が呪われてる可能性を今の今まで見落としてたとか馬鹿すぎない?」

 

「えっ......」

 

「ここに来る前、皆神山でこの學園の《遺跡》をつくったらやつらに拉致されかけたのよ、私。そのときなにかされたのかもしれないと思って」

 

私の言葉に白岐が気まずそうに目をそらす。

 

「えーっと、まさか違う?」

 

「いえ......その......江見さんの魂魄に刻まれたそれは、1年や2年のものではないわ」

 

「マジすか......じゃあ私が知らなかっただけで......なんか因縁が......?いや、そんなはず......」

 

待って待って待って道教の思想が流布するこの世界だと輪廻転生は真っ向から否定されるわけだから、私がなにかしらの転生体ってことはない......はず?いや、魔人学園シリーズの場合は、普通に転生した人間いたはずだしうーん、あらゆるオカルトが実在する世界だとなんでもありすぎてわからん。

 

そもそも私がこの世界の人間じゃないんだから、いくらこの世界が奇天烈な世界だとしても私には適応されないはずだ。

 

そのはずなんだけどな......白岐は私の魂魄を見ることが出来る人間だ。それは七瀬と葉佩が入れ替わろうとも魂の方の対応をする、しかも肉体が入れ替わっている事実に気づいていなかったあたり、肉体的な部分が見えていない証でもある。そんな人間に直々に魂魄が怖いって言われた時点で嫌な予感しかしない。

 

「不愉快では、ないの?」

 

「いや、それどころじゃないからね?だって白岐さん嘘ついてないでしょ?事実なんだからどう足掻いても仕方ないじゃん。私はどうしてそうなったのか知りたいのよ。そうじゃないと対処のしようがない。私が皆神山で襲われた理由は間違いなくそこにあるはずなんだ」

 

しばらく考え込んだ後、白岐は口を開いた。

 

「江見さんは、本当はどこの出身なの?」

 

「私?生まれも育ちも茨城だけど」

 

「ご両親は?」

 

「父方も母方も地元は同じなのよね、中学時代の同級生らしいから」

 

「そう......なら、茨城でしらべてみたらどう?」

 

「まじすか......。普通の家なんだけどなあ」

 

 

この學園の《遺跡》は、逆さピラミッドだ。ピラミッドはもともと王の墓なので、埋葬された者が天に召されるように作られている。だが、この《遺跡》はその逆で、「呪われろ、地の底に落ちろ」という意味が込められたものになっている。その呪いと重なるものが私の魂魄に刻まれているというのだ。

 

普通に考えたら大和朝廷に滅ぼされた人たちにかけられた呪いと同種と考えるべきだろうか。

 

とりあえずアラハバキは違うはずだ、それはこの《遺跡》の化人だから。

 

土蜘蛛だろうか?それとも日立市あたりに拠点があったとされるアマツミカボシ?なにか根拠になるような資料がみつけられるといいんだけど。

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