憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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ウィークエンド•シャッフル

私が保健室から帰ってくると、ちょうど皆守が葉佩を詰問しているところだった。

 

「もう一回いってみろ、九龍。今なんていった?返答次第によっちゃ蹴るのは勘弁してやらんこともない」

 

「だから~、タイゾーちゃんに頼まれたんだって~ッ!まさか學園祭で使うとは思わなくてさ~ッ!信じてくれよ、俺は無実だッ!」

 

「へえ?さっきもってった食材の量みてまだいうか。肥後一人でダンボール10個分も食うわけないだろうがッ!どんだけエンゲル係数あるんだよッ!」

 

「だってタイゾーちゃんお得意様なんだよ~ッ!」

 

「まさかとは思うがほかのクラスにも依頼されてるんじゃないだろうな、お前?」

 

葉佩は目を逸らした。

 

「おい、九龍。俺の目を見てもう一回いってみろ」

 

ひきつった顔のまま、皆守がいう。えー、そのー、あのー、と葉佩はもにゃもにゃいうだけで要領を得ない。ぐにょ、と口を掴まれて葉佩が変顔になる。しばらく待ってみたものの埒が明かないと思ったのだろうか?183センチの葉佩が175センチの皆守に胸ぐら掴まれて壁に叩きつけられた。

 

「伸びる~っ!頭が縦に伸びる~っ!暴力反対~ッ!」

 

「言えっていってんだよ、阿呆」

 

「痛い痛いやめて脳細胞ガチで死ぬからやめてッ!だって昨日の試食会の片付けしてたらさ~、タイゾーちゃんに頼まれちゃったんだよ~ッ!射撃喫茶で使う的はでかい方がいいのに予算が足りないっていうからさ~!」

 

「おまっ......」

 

「中庭の露店とかやってる後輩たちがタイゾーちゃんと俺の話聞いてたみたいで、安く食材手に入るなら利用させてくれって頼まれちゃってさ~」

 

「おいッ!」

 

「最初で最後の學園祭だからみんなの力になりたかッ」

 

「そんないいわけ通用するとでも思ってんのか!」

 

「ぎゃっ」

 

「そりゃ安くあげられるよなァ、調達するのは俺たちなんだから」

 

「いたいいたいいたい」

 

「おかしいとは思ってたんだよ、毎晩毎晩蝶の迷宮連れてかれて。どんだけ用意する気なんだと」

 

「首、首締まってるってば!」

 

「こちとら10時間は寝ないといけないってのに毎晩毎晩呼び出しやがるし、授業には連行しやがるし、學園祭にお前が不穏な食材持ち込まないか監視しなきゃなんねーから睡眠不足におちいってるってのに」

 

「やめ、まじでやめてくれ、いたいいたい」

 

「喫茶店の装飾作りくらいなら問題ないだろと放置してたら、その隙に學園中のクラスから依頼請け負うとかいい加減にしろよお前」

 

「なんでだよ~ッ!《遺跡》からとってきたんじゃなくて、クエストの報酬なのは甲太郎も見てるじゃないかッ!」

 

「お前が大量に獲得した食材を料理してあの女に献上してるのは知ってるが、ありあまるくらい余ってるのもしってる。肥後がもっていったダンボールはそれを管理してたやつだってこともわかってんだが?下処理手伝わせといて、よくもそんな嘘がつけるな、九龍?」

 

「なんだよ~ッ!最近はそっちで作った料理も食ってるくせに~!」

 

ぴしっと皆守は固まった。

 

「背に腹はかえられんって諦めたのは誰だよ!地上最強カレーに屈したのはどこのどいつだ!」

 

「それは......」

 

「美味いってくってたじゃん!」

 

「そのだな......」

 

「別にいいんだよ?俺は甲太郎にカレーパンでも」

 

「いや、それだけは......」

 

「今まで誰も食中毒になったことないのが安全な証だろ!」

 

「ぐっ......だがな、それは九龍の腕が確かだからだろッ!ほかのやつが作ったらどうなるかわからないじゃねえかッ!」

 

「え~、それいっちゃうのかよ、甲太郎~ッ!依頼人からの辛さを求めんクエスト、横取りしてんのだれだっけ~?」

 

「うっ......」

 

「石油王が美味かったって絶賛する手紙くれたっていったら喜んでたじゃん!」

 

「..................クソっ」

 

あっ、負けた......。 好きにしろっていいながら皆守はだまりこんでしまった。おもむろにメールをうってるけど、このタイミングでメールか。

 

まさか《生徒会》に密告して謎食材を一斉摘発する気だろうか?さすがに保健所ってわけにはいかないだろうし、《生徒会》も《黒い砂》の影響を受けた超人たちなんだから、謎食材食べたくらいで体調不良になるとは思えない。原材料だって原型がないくらい普通の食品になるまで葉佩は懇切丁寧に作業をおこない、傍から見たら取り寄せた冷凍してある食材にしかみえないわけだ。味見したところで最高食材にしかならない訳だが、《生徒会》は摘発するんだろうか。ものすごく気になったが携帯を覗き込むわけにもいかず、私は調理室に入った。

 

「ただいま。なにしてんの、2人とも」

 

「おかえり、翔チャンッ!聞いてくれよ、甲太郎のやつ酷いんだぜ~?」

 

「チッ......それより早く食えよ、翔ちゃん。試食楽しみにしてただろ」

 

ラップがしてある皿を指さす皆守に私は待ってましたとばかりに向かうのだ。

 

「で?今頃重役出勤か、大和」

 

「いやあ......もう一眠りしたかったんだがな、八千穂から来ないと試食させてやらないと来たからでてきたよ」

 

「は?八千穂がだと?」

 

「おや、聞いてないのか?今日から寸劇の打ち合わせだぞ」

 

「え?」

 

「うん?」

 

「あれ?」

 

「どういうことだ、大和。俺たちは裏方だろ。料理と仕込み、その上接客までやれってのか」

 

「なんだなんだ、ここにいるってことはもう話は通してあるのかとばかり思ってたがちがうのか?」

 

「へえ~、劇するんだ接客。当日、調理室と教室の往復大変だと思ってたんだけど、期待されちゃやらない訳にはいかないよな~」

 

あ、葉佩が復活した。私は小皿にとって試食しながら話を聞いていた。夕薙に俺もくれと言われたから小皿を渡してやる。

 

クランベリー初恋パフェとアロマカレーと高級オムレツ、チーズハンバーグ、やけに種類が多いアイスクリーム。どれも安定でおいしいから困る。葉佩に毎日おいしい料理振舞ってもらえてるのが幸福だと考えるか、蝶の迷宮に毎晩連行されるのだから帳消しだと考えるのか、評価がわかれそうだ。

 

ちょこちょこつまんでいるとあっというまになくなる。うん、これなら問題なさそうでよかったと考えながら片付けをしているとやっちーと月魅がやってきた。

 

 

 

「どういうことだよ、八千穂。接客は任せろっていったのはお前だろ。なんで俺たちまで巻き込んでんだ」

 

「そんなこといっちゃって、乗り気なくせに~」

 

「ほんとにな」

 

「うるさいッ、外野は黙ってろ!主張させてもらうがな、俺達はちゃんとやるべきことをやってるはずだ。なんだっで接客までしなきゃなんね~んだッ!」

 

「ごめん、ほんとごめん!2人ほど足りないの!」

 

「はあ?寸劇するだけだろ?役が足りないってなんだよ」

 

「それが~......」

 

「ごめんなさい、私のせいなんです」

 

「七瀬が出てくるってことはまさか、劇が大規模になったのか?演劇部に脚本借りてくりゃいいだろ、お前な......」

 

「八千穂さんに頼まれて、張り切りすぎちゃいました。最後の學園祭ですし、どうしてもオリジナルでやりたかったんです」

 

「あたしが悪いの、せっかく探偵喫茶やるんだから月魅にお願いしようって無茶振りしたあたしが!」

 

「..................あ~......すまん、いいすぎた」

 

しょんぼりしているやっちーと月魅に皆守はトーンダウンする。

 

「なーなー、月魅。とりあえず脚本見せてくれよ。俺興味ある!」

 

「......たしかにそうだな。話はそれからだ」

 

「月魅、脚本ある?」

 

私たちの前に渡されたのはやたらと分厚い台本だ。やばい、思った以上にずしっときた。私達は無言のまま顔を見合わせ、渡された冊子をぱらぱらとめくっていく。内容は探偵喫茶で殺人事件がおこり、犯人を推理するというドラマCDそのままである。問題はどの配役も渡る世間は鬼ばかり並に長文の台詞が乱発されることだ。

 

「......で?誰が足りないんだ?」

 

「えーっとォ......誰の手も上がらなかったのは~......探偵役と死体役」

 

「主役じゃね~か!」

 

「だってみてよ、これ。探偵が犯人なんだよ!?」

 

「はあ?」

 

「探偵と犯人が同じ人なので、どうしてもほかの配役より台詞が1.5倍になってしまうんです。ごめんなさい、ついつい筆がのってしまって......」

 

「まあまあ、さすがにこのままじゃやらないよね、月魅?これを1週間で覚えるのは無理あるしさ」

 

「あ、はい。だいたいの流れだけ同じで骨格だけは決まっているので1時間に収まるように台本はかえました」

 

「な、なんだ......これじゃないんだな?」

 

「末尾の冊子です」

 

「......やっぱ探偵役台詞多いな」

 

「あたしね、ここの犯人がお客さんを共犯者にしたてあげるシーンみたいんだー!」

 

「共犯者だ?なんでまた」

 

「いわゆる参加型を意識してみました」

 

「客の中に共犯者を呼んどく感じ?」

 

「それは各担当に任せようかと」

 

「かく」

 

「たんとう?」

 

「せっかくやるんだから、3回くらいできるでしょ?」

 

「もしかして、俺たち呼んだのはそのためか?」

 

「おもしろそうじゃん、甲太郎。仕入れの時間は休憩もかねれるしラッキー。あれだろ?料理は盛り付けだけできるように準備しとくんだろ?なら問題ないじゃん」

 

「あはは......さすがにオレ、探偵役は無理かな~。死体役なら途中しかで出番ないだろうけど、図書委員とか文芸部の手伝いとかあるし......」

 

「あ、大丈夫ですよ、翔さん。当日は後片付けだけ手伝っていただければ」

 

「でも、ほかの演し物見に行きたいし......」

 

「1時間くらいで終わるから、それ終わったら順番で回ろ?」

 

「オレ、3回とも死体役がいいなあ」

 

「え~ッ、ずるいぞ翔チャン!オレ、1回はやりたい!」

 

「なんでそんなにやる気なんだよ......普通、死体役は嫌がるところだろ。大きなカブのカブ役かよ」

 

皆守は呆れ顔だ。

 

「へえ、意外と乗り気なんだな、甲太郎。探偵役も満更じゃなさそうだが」

 

「そうこなくちゃな~ッ、お前ならいってくれると思ってたぜ!へへっ、残念だったな、翔チャン。1対2で決定だ!よし、それなら甲太郎が探偵するとき、俺死体役しよっと」

 

「えええっ!?」

 

「やったー!皆守クン、九チャン、ありがとう~ッ!というわけで~、翔クンは諦めて衣装の採寸にいこっか~!」

 

「待ってよ、やっちー!オレ、台詞覚えられる気がしないんだけど!」

 

「大丈夫ですよ、翔さん。アドリブ部分多めに変更しておきますので」

 

「難易度あがってない!?」

 

「......いやまて、違うぞ。俺は一般論をいっただけであってだな......」

 

そそくさと逃げようとする皆守を夕薙が捕まえる。

 

「今更なにいってるんだ、甲太郎」

 

私も皆守の肩をつかんだ。

 

「甲ちゃんさ......心配してくれるのは嬉しいけど、白岐さんとのやり取り夕薙に見られてんじゃないよ......」

 

おっと力が。

 

「!?」

 

「ははっ、うかつだったな」

 

「おかげで宇宙人だってバレたじゃないか。あやうく絶交するところだったんだけど?」

 

「......いや、その......あれはだな......」

 

「いい訳ならあとで聞くから採寸いくよ」

 

「みんなで教室に移動だ~、レッツゴー!」

 

私達はやっちーたちに強制連行されたのだった。

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