憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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ウィークエンド•シャッフル3

今朝から天香學園がなにやら不穏な空気に包まれているのは、《墓地》で謎の爆発があったり、故障中のはずの時計塔の鐘が急に鳴り出したりしているからにちがいない。

 

あとはB組が本格的すぎるお化け屋敷のセッティングをしているせいで、気の早いマジモンの幽霊が蛍光灯をちかちかさせたり、ガラスや鏡をポルターガイストしたり、停電させたりしているせいか。

 

それともD組が停電対策に黒塚のもってきた謎の石にコンセントさしたら抜けなくなり、片付けを手伝う羽目になったからだろうか。

 

A組は別の意味で男子共が騒がしいが《生徒会》書記の双樹咲重(ふたきさきえ)という巨乳美女にメロメロになって自分から進んで下僕になっているからだ。コミュ力を上げたいからと接客に手を挙げた取手は双樹にあれこれ注文されて下っ端状態になり、羨ましがられてえらいことになっている。

 

いよいよ今日が學園祭当日だというのに大丈夫だろうか、と普通なら不安になるところだが、台詞暗記に必死の私はそれどころではなかった。

 

「よう、瑞麗先生から預かってきたぞ、江見。君の犯行動機」

 

「non、そうじゃないんだ......あ、ありがとう夕薙」

 

「江見、いっそのこと自分のいいやすいように変えたらどうだ?台詞」

 

「ぐっ......夕薙までそんなこという......」

 

「だってなあ......もう半日たったら君の番だぞ?」

 

「考えとく......」

 

「そろそろ準備したらどうだ?死体役さん」

 

「仕込みをね」

 

台本を隅の方に山積みにされているカバンにしまう。これから午後まではひたすらに死体役兼調理室の冷蔵庫と教室の往復は地味にきついが仕方ない。

 

「お、騒がしいと思ったら......江見、ちょっと来てみろよ」

 

「へ?」

 

更衣室のカーテンをあけてみる。探偵喫茶は探偵の特殊機材や調査報告書の展示はもちろん盗聴発見や指紋採取なども体験できるアミューズメント性も抜群!ネタみたいな広告と看板だが、意外と気になるのか野次馬はちょくちょくいる。

 

テーブルには、実際に“浮気調査”で提出される浮気現場の一部始終をまとめたレポートのレプリカが置いてあり、臨場感満載だ。

 

昼ドラ並みにドロドロした話ばかりかと思いきや、こんなほっこりする美談も。ある案件で、定期的に深夜帰りする夫の浮気を疑う妊娠中の妻からの依頼で、探偵さんが実際に尾行してみたところ、その夫は女性の元ではなく、なぜかひとりで繁華街へ。目的は、出産資金を少しでも稼ぐために居酒屋でアルバイトをするためだったそうだ。

 

ちなみに調査依頼で2番目に多いのが、“人探し”。「初恋の人を探してほしい」という、年配の方からのロマンチック(?)な依頼もけっこう多い。

 

指紋鑑定や精液鑑定キット、振り返らなくても背面が見えるサングラスなど、探偵ならではの専門グッズも満載で非日常気分を味わえる。

 

もちろん全て宇宙探偵からの借り物である。

 

「おや、見回りにしては随分と大所帯だな。あれが《生徒会役員》か......さすがに《執行委員》とは貫禄が違うな」

 

「《生徒会》相手にそんなこといえるの夕薙だけだよ」

 

「人のこといえるのか?噂になってるぞ、君が《生徒会長》に話かけられるほどとんでもない人間だってな」

 

「どんどんカオスになってくね、オレの噂。あはは......。ま、たしかに三人揃ってるときは近寄りたくないかなあ。貫禄ありすぎ」

 

「甲太郎みたいなこというんだな、江見も」

 

「お前が言うなって言葉がこれほど似合う言葉もそうそうないよね」

 

「ははッ、江見ならそういうと思ってたよ。情報収集は大切な戦略のひとつだからな。君のもってる情報のひとつにでもあやかりたいもんだ」

 

「私たちに危害を加えなければ考えるよ」

 

「葉佩にまで手を出すなといわれると困るんだがな......」

 

カーテンの向こう側には《生徒会》のみなさんが勢揃いである。見回りに来たのかと思ったがどうやら様子が違うようだ。

 

「あのさァ~、なんでもかんでも俺のせいだと思ったら大間違いだからなッ!今日のためにどんだけ準備してきたと思ってんだよッ!少なくても、今朝の時計塔と《墓地》の爆発は俺とは無関係だよ!」

 

びしっと指をたてる葉佩に神鳳が意外そうにいうのだ。

 

「學園祭を楽しもうという気概があるのですか。噂の《転校生》もこうして見る分には普通の学生さんですね」

 

「ふふッ、いい男はなに着てても様になるわ......」

 

「うちのワトソンを疑うのはやめてもらえるか?こいつとは朝から打ち合わせしてたんでな、証人はこのクラスの誰もがなるぜ」

 

「ふん......《転校生》、どうやら俺の忠告はお前には意味をなさなかったようだな。俺の言葉を忘れたわけではあるまい?」

 

「《転校生》は《転校生》らしく大人しくしてろって話だろ?忘れたわけじゃないさ。現に今日は學園祭楽しむつもりで頑張ってるんだし」

 

「なるほど......なかなかに侮れん。威勢だけはいいようだ」

 

「予想以上に天然ですね。それとも処せ術に長けていると見るべきでしょうか?はたまた礼儀正しいのか、迷うところですね」

 

「ふふッ。いいじゃない、どっちでも。可愛い子だって事に代わりはないわよ」

 

「で、みなさまなんの用?まさか俺を警戒しに巡回でもきたのかな?」

 

「《生徒会》に匿名の通報がありましたので、抜き打ちの検査をさせていただきますね。出店するメニューを見せていただけませんか?」

 

食中毒が出ないよう細心の注意をはらいながら準備してきた料理をみながら神鳳がそういうものだから3のCに妙な緊張感が走った。

 

「どうして今年だけするの?今まで、そんなことしなかったよね?」

 

やっちーが不安そうにいう。

 

「他意はありません。規則により通報があった場合は《生徒会》が判断しなければならないので、なにもなければ悪戯でしょう。こうして飲食を扱うクラスすべて回っているので、なにもこのクラスだけではありませんよ」

 

「そ、そっかァ......よかった」

 

「じゃあ、さっさと食ってでてってもらおうか。ご注文は?」

 

「皆守甲太郎君、君は《生徒会》に対して言葉が過ぎるのではありませんか?」

 

「いや、やめておけ」

 

「......わかりました」

 

「ご注文は?」

 

試食するだけかと思ったら普通に1人1品、しかもデザートまで注文するとか実は調査にかこつけてみんなの料理食べたいだけでは?私は怪しんでいたがボロが出るのは嫌なので奥にひっこもうとした。

 

「翔チャン、翔チャン。超低温パネル出して」

 

「え、アイスのまだストックあるだろ?」

 

「ここまで喧嘩売られたら買わなきゃダメだろ?だからよろしく!」

 

「わかったわかった、ちょっと待って」

 

私はあわてて葉佩の荷物を探る。超低温パネルを装備する(つかう)ことで特殊な料理を作ることができるようになるのだ。効果は一律AP&HP80回復

校内MAPで誰にどれを渡しても好感度大などの特徴がある。どうやら《生徒会》のみんなはアイスを頼んだらしかった。

 

私は葉佩に渡す。葉佩はエプロンつけてやる気満々でキッチンにたった。

 

あのー、たしかにメニューには初恋パフェってあったけど、このアイテム使うと同じヨーグルトと非時香果使ってもジュヴナイルRっていう特殊なアイスになるんですがそれは。

 

やたら種類が多いアイスは全部これで作ってたらしい。まじかよ、後半みんなにあげるアイテム大盤振る舞いしてたのか葉佩!?

 

夕薙に呼び出されていて知らなかった私は驚くしかない。まじっすか。

 

「あら、《転校生》が作るの?」

 

「そうだよ~、先に料理楽しんでてね!」

 

そんなんずるいわ。私が食べたい。出来たて食えるとかズルくない?私以外にも思ってる人はいるようで、やっちーや白岐さん、月魅あたりは葉佩をガン見している。皆守はラベンダーがないのが残念そうだ。

 

ストックがあるから料理自体ははやくに提供できる。アロマカレー誰も頼んでないのが皆守は残念そうだ。それにしてもマダムバタフライに毎晩すさまじい量の料理を献上している葉佩の腕を仲間でもないのに思い知るのか《生徒会》。

 

皆守が通報したのかと思ってたけど違うのかな、これ。

 

「ふッ……。おかしな男だ」

 

注文した料理も葉佩作だと知って阿門が笑ってる。そりゃ笑うわ。

 

「僕はこれに目がなくてね」

 

神鳳が敬語忘れてる件について。

 

「私の好きな物を持ってきてくれるなんてやさしいのね」

 

なんか声がエロい。

 

しばらくして、葉佩がアイスを配った。

 

「ありがとう……。あなたの気持ち、ちゃんとこの胸に届いたから」

 

「これは随分と精がつきそうですね」

 

「さすが《転校生》だと褒めてやろう」

 

態度がものすごく軟化している。葉佩はやったぜとばかりに私にピースしてきた。

 

「どうやらただの悪戯だったようですね。問題なさそうでなによりです。それではまた」

 

《生徒会》は去っていった。そーいや夷澤凍也がいないけど先輩に喧嘩売られてんのかな?

 

「また来てくれよな~!」

 

葉佩は手を振って見送った。

 

「お前ってやつは......」

 

皆守は呆れ顔ながら笑っている。

 

「ところでさ、甲太郎」

 

「なんだ?」

 

「俺阿門しかしらねーんだけど、あとの二人誰?」

 

「お前な......知らないのに料理出してたのかよ」

 

「學園祭は《生徒会》主催なんだろ?クレーム対応までするなんてすげーじゃん。なら敬意は払うべきだろ?次はただじゃおかないけどな~」

 

にへらと葉佩は笑った。

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