憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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ウィークエンド・シャッフル4

「真里野ってオレより少し高いから176センチくらいだろ?わざわざ高い下駄はかなくてもよくない?」

 

「むむッ......な、なんのことでござるか、江見殿。拙者はなんのことだかさっぱり......」

 

「金田一耕助の衣装勝手に着てるのもそうだけどさ、つまずいてるでしょ?右足が変だよ。ひねってない?怪我したら月魅が心配するよ?ただでさえ眼帯してて距離感掴めないんだから」

 

「し、しかしだな、江見殿。七瀬との身長差を考えるにこの方が良いと朱堂殿が教えてくれたのだ」

 

「あぁ......25センチくらいがいいって?男女の身長差は15センチくらいがいいって俺は聞いたけどなあ。月魅160じゃん」

 

「なんとッ!?もしそうならば何も履かぬ方がよいのか?」

 

「いや、月魅も内履き履いてるからね?」

 

「ぬう......身長差というのは難しいのだな......かたじけない江見殿。また助けられてしまったな」

 

「いや、それはいいんだけどね。なんでいるのさ、君。B組はお化け屋敷だろ?」

 

「せ、拙者は断じて誰かに会いたくてサボってきているわけではない!」

 

「ならB組にいる神鳳にかけあって《生徒会》に許可取りなよ。月魅も申請してうちのクラス手伝うの許可得てるんだからさ。なんでいるんだって次の巡回で指摘されたら迷惑だよ。そういうのちゃんとやるからね、月魅」

 

「なんとッ!!そうであったのか、すまぬ。ならばすぐにいってこよう」

 

「うん、頑張って説得してね」

 

「うむ、こころえた!」

 

今頃お化け屋敷の最後の井戸の中に待機しているであろう神鳳を見つけられるだろうか。あいつ、からかうの好きだからなー、真里野がんばれ。無責任に応援しながら私は更衣室からでていった真理野を見送った。

 

「翔チャン、翔チャン、そろそろ材料とってきてくれ、無くなりそう!」

 

「早いな、もう?」

 

「《生徒会》のみんなが食べたやつが欲しいってお客さんが多いみたいなのッ!」

 

「驚いたわ......ここまで宣伝効果があるなんて......」

 

「口コミってやつだな、行列ができるとそれだけ並びたくなる」

 

「なるほど、わかったよ。なにがたりない?」

 

顔を出した私はメモを渡された。ほとんど《生徒会》が注文したやつだとか宣伝効果すごいなこれ。やけに呼び子の声が聞こえないと思ったらそれすら必要ないほどの繁盛ぶりだとは思わなかった。

 

「すぐとってくるから!」

 

「早くしろよ」

 

「がんばれ、翔チャン」

 

キッチンは戦場状態である。私は客達のあいまをぬって調理室にかけおりた。借りているでかい冷蔵庫から3のcと書いてあるダンボールを手にする。これは何往復しないといけないんだろうか。まあ、これが全部無くなる頃には店じまいしないといけないわけだから、上手く行けば私が主役をする必要はないかもしれない。ちら、と時計を見た私は往復する頻度に冷や汗を浮かべつつ、階段をかけあがったのだった。何回も往復するうちに数える余裕すらなくなってくる。そのうち私は考えるのをやめた。

 

「おつかれさま~」

 

「翔さん、お疲れ様でした。お茶いります?」

 

「ああうん、ありがとう。更衣室にいってるね」

 

体育館でステージ発表がはじまったからか、明らかに人手が減った。ようやく客足が落ち着いてきたので、そろそろ名探偵皆守が始まるころらしい。

 

「茶くみを七瀬殿にさせる訳にはいかん。拙者がやろう!」

 

「またきやがったな、エロ侍」

 

「えっ......えろだと!?ふざけるな、皆守甲太郎ッ!今ここで叩ききってくれる!」

 

「あ、真里野じゃん。《生徒会》の許可は取れたの?」

 

「むっ、江見殿であったか。かたじけない、神鳳殿がどこを探しても見つからなんだのだ」

 

「そっか」

 

「うむ」

 

「お茶ありがとう」

 

私はお盆ごと受け取り、湯呑みをその場で飲み干して真里野ではなく七瀬に返す。

 

「ああ、七瀬殿はしなくてもよい!拙者が」

 

「あの、真里野さん。私は3のcの手伝いに来ているので......」

 

七瀬も名探偵皆守の登場人物にあてられているのだ。更衣室に向かう理由が取り上げられてしまいこまっている。

 

「許可とってないなら不法侵入だね。うちのウエイトレスはお触り禁止でーす。出禁」

 

「なんだとッ?!ご、誤解だ、江見殿!拙者は!」

 

「はーい、叩き出して」

 

ノリがいい男子生徒たちが真里野を羽交い締めにする。七瀬殿~っと声が遠くなっていく。お客さんの笑いが聞こえてくるのか月魅は恥ずかしそうだ。不本意な注目を浴びるのは好きじゃないんだからとんだ災難である。

 

「じゃあ、オレ更衣室に待機してるね。なんかあったらまた呼んで」

 

「はーい」

 

「おつかれ」

 

私はカーテンをしめた。さてさて、そろそろ死体役の準備をしなくては。予定時間よりだいぶ遅くなってるから大変だ。急がなくてはならない。

 

學園祭の寸劇なんだから倒れているだけでいいのが楽でいい。皆守と葉佩の組み合わせだと互いに牽制しあって話が破綻しないように脚本はなれてどんどん話が展開していくから、刺殺も絞殺もろくに決められないから返ってよかった。

 

いっかいリカかすどりんあたりに死体役のメイクアップをお願いしようかって意見もあったんだ。でもすどりんは朝から行方不明、リカはネイルの依頼が殺到して時間がとれないということでなくなってしまってよかった。

 

死体役って動いちゃいけない、死んでるように見えなきゃいけない意外と大変な役だ。

 

「みんな適当に荷物置きすぎだろ......」

 

殺人事件の現場にするからわざわざ広めにとってあることをいいことに、3のcのみんなの荷物がとっちらかっている。これじゃ私が寝っ転がってるとき潰れちゃうじゃないか。しかたない。私は自分が寝っ転がれるスペースを確保するためにカバンを横においていく。

 

「おっと」

 

足元に携帯が転がった。誰だよカバン閉めてないやつ。......皆守じゃん。うわっ、なんかなり始めた。

 

「甲ちゃん甲ちゃん、メール、メール。めっちゃ来てるよ着信」

 

私がカーテンあけて携帯をさしだすと皆守があわてて走ってくる。

 

「悪い悪い、ポケットに入れ忘れてたみたいだな」

 

携帯の画面をみた皆守はホッとした顔をした。心配しなくてもメール開いたりしないっての、葉佩がここでアイス作ってんだから《生徒会》くらいしかないじゃん。あ、そのうち一通はすどりんのポエムの可能性もあるのかな?

 

「ちょっと呼び出しだ。いってくる」

 

あ、これは《生徒会》ですねわかります。

 

「え~ッ、皆守クン、今行くの?!」

 

「わりいわりい、すぐ戻る」

 

「早く帰って来いよ、甲太郎!じゃないと主役はもらうからな~!」

 

「あァ、わかってるさ」

 

じゃあな、と皆守は出ていってしまう。私は更衣室に戻った。倒れてその場にあわせて白いテープをはっていく。これだけ空いてるタイミングなら調理場との往復はいらないかもしれないけどねんのため。

 

「よし、できたっと」

 

ハサミと白いテープをダンボールにしまう。ちょうど月魅が入ってきた。

 

「すいません、椎名さんにヒエログリフのネイル依頼があったようで、H.A.N.T.を借りたいんですが」

 

「あー、荷物動かしちゃったんだよな。九龍のカバンどれ?」

 

「H.A.N.T.鳴らしてみましょうか」

 

月魅はメールを送る。メールがとどきましたという電子音声が流れた。月魅はH.A.N.T.をひっぱりだし、メモしていく。そして去っていった。

 

「失礼」

 

「また来たのかよ、真里野」

 

「あー、ごほん。今回は違うぞ、江見殿。拙者はお使いに参ったのだ」

 

「お使い?」

 

「うむ、朱堂殿の頼みでな、H.A.N.T.の写真がとりたいのだ」

 

「九龍に許可とった?」

 

「無論とったとも」

 

「ならいいけどさ。そこのカバンにあるよ」

 

「かたじけない」

 

真里野はH.A.N.T.を手にする。

 

「ところで江見殿、写メとやらはどうすればよいのだ?拙者、借りてきてはいるのだが使い方がわからぬ」

 

「あー、はいはい。わかったよ。貸して?」

 

「ありがとう」

 

私はすどりんの携帯を借りて、H.A.N.T.をあらゆる方向から撮ってやった。

 

「はいどうぞ」

 

「すまぬ、恩に着る。ではこれにて」

 

カーテンがしまる。しばらくして。

 

「入っていいかしら?」

 

「どうぞ、白岐さん」

 

「そろそろ劇が始まるから、ここで何分か過ごさなくてはいけないらしいの」

 

「ああ、アリバイ作りだね、おつかれ」

 

「いえ、私より皆守さんや葉佩さんの方が大変ではないかしら。もちろん、あなたも」

 

「あはは、私は寝てるだけだけどね」

 

「でも息を止めていなくてはいけないんでしょう?」

 

「まあね。動いちゃいけないのはきついかも。でも死体役をずっと見てることはないよ。劇やるって告知はしてあるんだからさ」

 

「ふふ、それもそうね」

 

ちらちら時計を見ながら確認していた白岐はきっちり10分後に出ていった。

 

「さて、そろそろかな」

 

カーテンごしに様子をうかがっていた私はふと窓から音がして振り返ろうとした。

 

「───────え?」

 

脳天に強烈な痛みが走る。私は一瞬にして意識を失った。

 

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