憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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月光のさす場所2

受信日:2004年11月22日

送信者:転送メール

件名:FW:夜会への御招待

天香サーバに届いた阿門執事さんからのメールを転送します。

 

本日午後8時より、阿門邸にて恒例の夜会を開催致します。この招待状を受け取った生徒諸君の参加を心よりお待ちしております。

 

阿門執事という名前に私は目が点になった。

 

(......やっば、メルマガみたいに定例文を一斉送信してるんだと思ってたよ。これ......本人に直談判するみたいな形になっちゃった)

 

変な笑いが込み上げてきた私は携帯を握りしめた。

 

「どったの、翔チャン」

 

覗き込んでくる葉佩に私はメールをみせた。

 

「あ、俺んとこに来てるのと同じだな」

 

「..................?」

 

皆守は自分のところにきたメールと私の携帯画面を見比べている。そして眉を寄せた。うん、おかしいよね、1時間早いもんね。

 

「わッ、翔クンにも九チャンにも来たの~?すごいよッ!!2人は知らないかもしれないけど、夜会って毎年この日に《生徒会長》主催で行なわれるパーティなんだよ!その招待状には選ばれた人にしかこないっていうし、夜会は日付が変わるまで行なわれるから、参加者だけは大手を降って夜更かしできるんだよッ!」

 

やっちーは嬉しそうだ。1年生の頃から憧れていたという。みんなで参加できるかもしれないとわかって喜んでいる。

 

「あれれ~?おっかしいな~?夜会って9時からだけど1時間早いんじゃね?翔チャンだけ」

 

「えっ、あ、ほんとだ~。なんでだろう?」

 

「............なんか心当たりあるのか?」

 

「うん、たぶんだけどね。昨日もカオルーンにマスターの話聞きにいったんだけどさ、そのせいかも。《生徒会長》と一回話がしたいって雛川先生と世間話をね」

 

皆守は私を睨んだ。

 

「翔チャン、お前な。わざと話しただろ」

 

「もしかしたら、とは思ってたよ。オレのこと《生徒会長》はよく知ってるみたいだし。マミーズの手伝いもしてるマスターなら半年以上通いつめてるからそれなりに親しくはなってるしね。まさかここまで直球でお膳立てされるとは思わなかったけどさ」

 

「えーっとどういうこと?」

 

「たぶん、甲太郎はこういいたいんだよ、やっちー。翔チャンのやつ、このメールの差出人が千貫さんだって知ってるのにわざと《生徒会長》と話をしてみたいっていったんだな。なんて迂闊なんだ。學園祭の襲撃犯だってわかってないのに、ひとりでのこのこ行くなんて馬鹿なんじゃないかこいつ」

 

「......うるせえよ、阿呆」

 

「素直じゃないんだからも~ッ!心配だからついて行ってやろうか?っていえばいいだろ~、いつもみたいに」

 

「いつもってなんだよ、いつもって」

 

「図星だからってす~ぐ暴力振るうんだからも~ッ!いいかげん慣れてきたぞ!甲太郎っていつもそうだけどさ~、アグレッシブな好意をかえすほど、むきになって否定してくれるよな。ついでにいうなら翔チャンみたいにおざなりに返すとそれもムカつくのかアピールしてくるんだ。つまりそういうことだよ」

 

「なるほど~、九チャン皆守クンのことよく見てるね~」

 

「それだけ一緒にいるからな~ッ」

 

「へぇ?ならこいつはどうだ?」

 

「───────ッ!!!」

 

葉佩はぶわっと汗が吹き出した。

 

「ちょっ、やりすぎだって!急所はやめてくれよ、甲太郎ッ!ひくわ............さすがにひくわ......」

 

さすがに葉佩も避けるのに集中したためかおちゃらけた顔が真顔になる。ふん、と不機嫌そうに皆守は鼻を鳴らした。

 

「ありえないんだよ......俺が機嫌悪いのはそもそも、お前のせいなんだよ、九龍」

 

皆守は恨みつらみを吐き出すようにいうのだ。

 

「朝っぱらからどんどんドンドン叩きやがって、うるせえなァ。そもそもだ。なんだって俺はこんな時間にお前らと並んで登校してると思ってんだよ。いつもだったらまだまだ余裕で寝てる時間だってのに!俺の必要な睡眠時間返せよ」

 

「仕方ないだろ~!雛ちゃん先生から甲太郎の遅刻をとめないと単位が上げられないって言われたんだから~!」

 

「お前には関係ないだろうが......なんでお前の方が張り切ってんだよ」

 

「雛ちゃん先生に言われちゃ断れないって。馬鹿なの?」

 

「おい」

 

「それに~、みんなで卒業したいんだよ、俺はッ!そこに誰一人かけることは許されないッ!一人だけ在校生とか嫌だろ、甲太郎!」

 

「......はぁ?まったく、くだらないこというんじゃない。お前が来てから俺の生活は乱されすぎなんだよ......。やたら出欠にうるさい担任とか、夜中に妙な格好してウキウキ気分でぼちに出かけていく不審者とか......」

 

「えー、俺は関係なくない?最近呼んでないだろ?」

 

「大ありだ、馬鹿野郎。前まで翔チャンと連日駆り出してたのはどこのどいつだ。その前は真里野とだ。なんで俺ばっか固定なんだよ。おかげで目をつけられない程度にやってた勉強すらできなかった余波を今もろに食らってんだぞ」

 

「あっ......皆守クン......まさか......」

 

「中間テストのとき、点数見せてくれなかったのってまさか......」

 

「最近、どーもH.A.N.T.の能力補正に誤作動多くて、翔チャンとじゃないと探索上手くいかないのそのせい?」

 

「雛川先生が哀れみの目で甲ちゃん見てたのもしかしてそのせいなのか?」

 

「..................」

 

皆守は無言で葉佩を蹴飛ばそうとした。

 

「避けるなよ」

 

「避けるに決まってんだろ、甲太郎の蹴りいてーんだもん!だいたいさ、それって俺だけじゃないだろ?最近呼び出し多いのはどこのどいつだよ」

 

「ちッ」

 

このタイミングでまた着信が来たので、みんな一瞬固まった。必ず出席するように、とある。

 

「あれ?強制参加だっけ?」

 

「......泊まれ、か」

 

呟くなり皆守は携帯を閉じてしまった。

 

「......ホントに行くのか?お前ら」

 

意外だな、皆守のことだからここまで怪しかったらさすがについてくるもんだと思ったのに。最近、《生徒会役員》の呼び出しが頻繁にあるからなにかあるんだろうと思ってたんだけど。葉佩や私の監視より大事なことがあるんだろうか。《墓場》の監視か待機か指示されてるんだろうな。いつもなら嫌そうな顔をしてメールすらみないのに、今回はメールだけは確認してるし。千貫さんから直々にメールがきているのかもしれない。

 

「翔チャン、俺もついていってやろうか?1人じゃさすがにまずくない?」

 

「大丈夫だとは思うんだけどなァ。《生徒会》だって私にこのタイミングで危害は加えないでしょ。學園祭の襲撃は自分たちだって誤解されかねないよ?でもなー......どうしよう、ものすごく不安になってきたよ、オレ」

 

「でも行かないとお迎えがくるんだろ?なんだこれ。なあなあ、甲太郎行く?」

 

「関係ないね。そもそも選ばれる基準てなんだって話だ。どうして《生徒会長》の家に泊まりに行かなきゃならない?」

 

「それはわかんないけどさ~」

 

學園祭が終わってから、皆守はなんだかんだと不機嫌なことが多い。九龍たちと話す分にはいつもの皆守に戻るんだけど、メールで呼び出しが来る度にいなくなり、そのたびに苛立っている。そこを葉佩にちゃかされて喧嘩になって悪ふざけの応酬になっていつの間にか笑っているのだ。

 

まあ、これだけクトゥルフ神話に侵食された《遺跡》の墓守だ、私達の知らない気苦労があるのかもしれない。お疲れ様である。

 

「あっ、そろそろ急ごうよ、みんなッ!遅刻しちゃうよ!」

 

そう私たちにいったやっちーがトトにぶつかった。

 

「ごッ、ごめんなさい、大丈夫?」

 

「イエ......」

 

「馬鹿、道の真ん中ではしゃいでるからだ」

 

「だって......、あの、ホントにごめんね、大丈夫?怪我してない?」

 

「ハイ......。ボク、大丈夫、デス。ソレデハ、オ先二......」

 

「あー、待って待って、カード落としてる落としてる」

 

「ェ?」

 

葉佩はなにやらかき集め始めた。

 

「ァッ......アリガト、ゴザマス......」

 

それはタロットのカードだった。私たちはあわてて集めてやる。

 

「とりあえず拾ったけど......」

 

「これで全部か?」

 

「揃ってる?」

 

「わーわー、ほんとごめんね!無くしてたらどうしよう!?」

 

「エエト......大丈夫デス......ホントにアリガト、デス」

 

「えっと、確か君はトトクンだっけ?

3年A組の、エジプトの留学生の......」

 

「ハ、ハイ......ソデス」

 

「エジプト?」

 

あ、葉佩が反応した。

 

「へー、奇遇だなァ」

 

「?」

 

「俺、この學園に来るまでエジプトにいたんだよ」

 

「......ホントデスカ?」

 

「そうそう、君くらいの息子が日本に留学してる人にお世話になってさ~。すごい偶然だなァ」

 

「............ソウデスカ」

 

トトはどこか嬉しそうだ。

 

「ボク、トト、イイマス。タロット研究会所属ヤッテマス。××デヤテマス。デキタラキヤガッテクダサイ」

 

「おっけー、昼休みにでも行かせてもらうよ。俺、葉佩九龍っていうんだ、よろしくな」

 

「......葉佩サン......」

 

トトは一瞬呆気にとられた顔をした。僅かに表情が曇る。しかし、すぐに首をふって笑顔になった。

 

「ココデアッタガ百年目デス。楽シミニシテマス」

 

トトはぺこりとお辞儀をして去っていった。

 

トトは最後の《生徒会執行委員》である。異国ゆえの孤独に苦しむエジプトからの留学生で、微妙におかしな日本語を使う。さっきの会話のとおり、葉佩が前の任務で同行していたサラーという老人はトトの父親だ。磁力を使い砂鉄を操る能力を持つ。

 

両手を何時も合掌している為か生粋のエジプト人であるにも関わらず学生服の上から着た羽織がエジプトの民族衣装と思われる物であろうと、どうしても「アジア系の外国人で更に仏教徒?」と誤解されそうな容姿をしている。

 

ちなみにトトの信仰している宗教に関しては細かく語られていないため、どこの信者かは不明だ。

 

本来は「明るい性格」だがスッカリ陰鬱になっているから、葉佩の会話は嬉しかったに違いない。《転校生》だと気づいて絶望した顔をしていたけど無理もないと思う。これから敵対関係になるのだから。

 

「あっ、やばいよみんな!もうこんな時間ッ!急がなきゃ遅刻しちゃう!」

 

やっちーの声に我に返った私達はあわてて校舎に向かったのだった。

 

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