憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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月光のさす場所10

突然、何かが静電気を発したかのような、怪しい音が響き渡る。女子生徒が重力を失ったかのように宙を舞い、シャンデリアに磔になった。

 

「うわあああッ!?な、なんだ、アレ!!」

 

「お、女がッ、浮いてる───────!!」

 

「見てッ!!か、髪が......シャンデリアにくっついてる......?」

 

「何なのあれッ......ねぇ、何がどうなってるのよッ!!」

 

私はシャンデリアの真下にかけつけた。

 

「甲ちゃん、瑞麗先生に連絡頼むよ」

 

「おい、どうするんだ!?」

 

「いいから早くッ!」

 

「ちッ」

 

やっちーがカーテンの向こう側に人影をみたと葉佩に叫んでいる。葉佩はすかさず窓を開けた。

 

「誰だッ!」

 

トトらしき人影が去っていく。やっちーはトトの周りの物体が浮遊しているのを目撃したようだ。トトが力をといたせいかシャンデリアから落ちてきた女子生徒を私は受け止めた。さすがに高さがあったから尻もちをつく。やっちーと葉佩が後を追う。葉佩たちが心配になったのか、墨木たちがあとから追いかけていくのがみえた。あたりは異様な雰囲気に包まれていく。

 

「犯人が逃げたッ!みんな外に出ないで、何されるかわからないよッ!!」

 

パニック状態になり屋敷の外に出るなんてとんでもない死亡フラグをぶったてようとする一般生徒を牽制する。大声で叫んだ私に誰もが息を飲んだ。

 

また携帯電話が鳴り響く。

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:(空欄)

ころろ ころろ

天神様のこの坂は

五人で通らにゃ抜けられぬ

 

ひとりは、髪を縛って置いてきた

ふたりは、歯を折って置いてきた

さんにんは、剣を刺して置いてきた

よにんは、桃を投げて置いてきた

 

ころろ ころろ

誰が抜けたかこの坂は

ひとりが、石で塞いでぬけたとさ

 

また来た。

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:2人目はお前だ

 

「───────ッ!?」

 

「どうした?」

 

「このメールって......まさか5番目の童謡の......」

 

「1人目の女の子はシャンデリアに髪の毛が絡まってて......次はってまさか」

 

「作り話じゃなかったのかよッ!お......俺、帰るわッ!」

 

「おい、どうしたんだよ、おいってば!」

 

私はすかさず叫んだ。女子生徒を受け止めて尻餅ついたせいで動けないのだ。

 

「落ち着け、周りをよく見ろよッ!みんなおなじメールが来てるだろッ!外に犯人が逃げたっていってんのに、わざわざ襲われに行くやつがあるかッ!!」

 

「でも送信者がッ!!」

 

「返信か転送のボタン押してみろッ!非表示になってるだけで送信者がわかるからッ!」

 

「───────......学校のパソコンから来てるッ!!今の時間帯に誰がパソコン室にいるっていうんだよ!」

 

「誰がいようが問題じゃない。心霊現象じゃなくて人間がやったのが問題なんだよ。誰かが《夜会》を台無しにしようとしてるってわかっただけで十分だろうが。時間差なんて初めから設定しとけば送れるよ。パソコン使ったやつとさっきの犯人と2人もいることがわかったじゃないか。お前、二人がかりで外に出て襲われたいのか?馬鹿なのか?」

 

こういう時にはでかい声でそれっぽいことを叫んだ方が勝ちとなる。女子生徒が超常現象で襲われたとしても、犯人が外に逃げていて、葉佩たちが追いかけていった今となってはここにいた方が安全だ。そう力説する私にだんだん周りが落ち着いていく。外に出ようとしていた男子生徒はおちつかないのか、携帯電話を握ったまま不満げな顔をしてちらちら窓の外を見ていた。

 

「何をさっきからうっておるのだ?」

 

真里野だった。男子生徒が携帯電話でなにかしているのが気になったらしい。

 

「な、なんだよ、いきなり!」

 

「ふうむ?なぜさっき来たメイルに返事をしようとしておるのだ?」

 

「なんだと?」

 

皆守がよってくる。

 

「もしパソコン室にまだ犯人の仲間がいたら危ないじゃないか。戻ってくるかもしれないぞ」

 

「そっ......それは......その......」

 

「......よく見りゃお前、うちの探偵喫茶で食い逃げした野球部だったな?あんときの腹いせか?」

 

「それは誠か?」

 

「あァ、九ちゃんときっちり回収したから覚えてるぜ」

 

瑞麗先生に連絡が終わったらしい皆守が男子生徒の腕を締め上げる。

 

「いたいいたいいたいっ!」

 

「なるほど、爆弾魔騒ぎの首謀者と同じ野球部か」

 

「あいつと仲がよさそうだったが、まさかお前もファントムの信奉者か?」

 

その言葉に男子生徒の態度が豹変した。

 

「なにもかも《生徒会》が悪いんだッ!ならファントム様に學園を変えてもらってなにがわるいッ!!」

 

「なるほど、じゃあ共犯者だと認めるんだな?陽動するつもりで騒ぎを起こして」

 

「まさか歯を折る2人目になるつもりだったのかよ......どこまで阿呆なんだ......」

 

「なにをいうんだッ!そのためなら全部の歯を折ったとしても構わないッ!当然の犠牲だッ!」

 

ファントムの信奉者。皆守の発言で一瞬にしてダンスフロアにおける男子生徒に向けられる視線が冷たくなった。皆守と真里野に捕獲され、さらに元《執行委員》たちに囲まれ、往生際悪く男子生徒はあがいている。興奮しているせいか、さっきからいってることが支離滅裂だ。

 

あいかわらず《生徒会》に対する風当たりは強いままなのだが、一般生徒に深く浸透してしまい潜伏しているファントムの信奉者による騒動はつづいている。元《生徒会執行委員》が解決する小競り合いが続いているせいか、ファントムに対する一般生徒の風当たりも悪くなってきているのである。

 

武装闘争みたいな合法的手段によらず、暴力で敵を打倒するなんて平成の世になってからはあまりにも時代錯誤な方法である。生徒たちを味方に付けたいならもっとうまくたちまわればいいものを。やいつの時代も末端の教育がなってないのは世の常なのかもしれない。

 

「厳十郎」

 

阿門の言葉に誰もが静まりかえった。

 

「はい」

 

真後ろにたっていた千貫さんが返事をする。

 

「つれていけ」

 

「了解いたしました」

 

「ひっ......」

 

男子生徒は硬直したまま動かなくなる。あーあ、知らないぞ。イギリス空挺部隊にいた境のじいさんと因縁があるあたり千貫さんもただものじゃない雰囲気がびしばしするから、どんなイギリス仕込みの拷問をされるのか想像するだけで怖すぎる。男子生徒は無抵抗なまま千貫さんに連れていかれてしまった。戦々恐々とした様子で生徒たちは様子を見守っている。

 

すると空気を読まない携帯電話がありとあらゆる方向から鳴り響く。

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:3人目はお前だ

 

メールの着信だけでなにも起こらない。

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:4人目はお前だ

 

やはり、なにも起こらない。安堵の雰囲気が広がり始める。

 

「やはり時間で設定しているようだな」

 

「すごいでちゅね~、江見クンッ。僕とっさに思いつかなかったでちゅよ~」

 

「デ部部長が思いつかないなら、誰も思いつかねえな」

 

「昔取った杵柄だよ。人間の恐怖を換気させるには、得体の知れないものや静かに忍び寄ってくる方が怖いだろ?テレビや映画であるじゃないか」

 

「貞子とか?」

 

「そうそう」

 

しばらくして、千貫さんが戻ってきた。瑞麗先生を呼んできてくれたようだ。

 

「シャンデリアに磔にされたっていう生徒はこの子かい、江見」

 

「はい、そうです。気絶してるだけみたいなんですが、一応動かないようにはしてました」

 

「ああ、見ればわかるよ。受け止めるのに精一杯だったようだね。じゃあ、適当な部屋に運ぼうか」

 

「ではこちらに」

 

千貫さんが女子生徒を抱き起こす。瑞麗先生は未だに目を覚まさない女子生徒をつれて、ダンスフロアから去っていった。

 

ようやくダンスフロアが落ち着きを取り戻したころ、阿門が《夜会》の終了を宣言した。そして、千貫さんが客人たちを来客用の部屋に案内していく。さてどうしようか考えていた私の携帯電話がなる。

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:5人目は私だ

 

嫌な予感がしてメールを読み返す。

 

「どうした、翔」

 

 

受信日:2004年11月22日

送信者:(空欄)

件名:(空欄)

ころろ ころろ

天神様のこの坂は

五人で通らにゃ抜けられぬ

 

ひとりは、髪を縛って置いてきた

ふたりは、歯を折って置いてきた

さんにんは、剣を刺して置いてきた

よにんは、桃を投げて置いてきた

 

ころろ ころろ

誰が抜けたかこの坂は

ひとりが、石で塞いでぬけたとさ

 

私はいてもたってもいられず阿門邸を飛び出したのだった。

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