憑依妖魔学園紀(九龍妖魔学園紀✕クトゥルフ神話)   作:アズマケイ

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オディプスの恋人2

生徒達は思い思いの場所で噂話に興じている。

 

「先生なかなか来ないと思ったらやっぱり自習になっちゃったね、翔クン」

 

「そうだね。石川先生、具合悪かったのか?」

 

「どうだろ~?でもこのまま行くと休校とかになっちゃいそうだね」

 

「保健室満員みたいだしな.....。月魅大丈夫かな。昼休みは大丈夫そうだったんだけど」

 

「あたしも気になって今メールしたら大丈夫だっていってたよ?今、図書室なんだって~。A組も自主になっちゃったから本の整理したいみたい」

 

「そうなんだ?よかった」

 

「このまま次の授業も休みにならないかな~。でも夕薙クンも皆守クンも白岐さんまでいないなんてつまんない...... 翔クン以外誰も構ってくれない......寂しい」

 

「あはは......よしよし、可愛そうに。愛しの九ちゃんは夕薙と白岐さんが気になるっていっちゃうし、月魅は本の整理にいっちゃってるもんな」

 

「ううっ......言わないでよ~......余計凹んじゃうよ......」

 

「でも白岐さんと友達になれてうれしいから、複雑な乙女ごころなわけだ」

 

「......うん」

 

「恋ってそういうもんだよ、やっちー」

 

「そうなの?」

 

「今までとは違うっていったのはやっちーじゃないか」

 

「はああ......そうなんだよね~。あーもう、今日はこれからどうなっちゃうんだろ?誰もいないこのクラスの心の友は翔クンだけだよ~ッ!」

 

「オレもやっちーがいてくれてうれしいよ」

 

「えへへッ、やっぱりこういう時、翔クンとはなんか気が合うんだよねッ!ん~、これからどうしよっかな~。月魅にはお喋りしちゃうから整理に集中できない。終わるまで来ないでくれって言われてるんだよね......。うーん、チャイムなるまで結構時間あるね、翔クンはこの後どうする?月魅の手伝い?温室いく?マミーズ?」

 

「いやいや、それだとやっちーひとりになっちゃうだろ。寂しい寂しいいってるやっちーおいてくほど、オレって友達がいないやつに見える?」

 

「ほんとにいいの?あたしは寂しくないから嬉しいけどさ」

 

「じゃあ決まり」

 

「う~んと......じゃあ......せっかくだから思い切って聞いちゃおっかな~、いっつも翔クンにからかわれちゃうし。今の翔クンは女の子と男の子とどっちが好きなの?」

 

「やっちー、前話したよね、オレ」

 

「うん。あの時は女の子が好きで、瑞麗先生みたいな人がタイプって話は聞いたけど。それって今もなの?だいぶ男の子になってきてたのに、このまえの御札のせいで元に戻っちゃったんだよね?どんな感じなのかな~と思って」

 

「うーん......ぶっちゃけいうなら、今のオレは女の子より男の子の方を好きになる可能性はあると思うよ。ただ問題があってさ」

 

「え、なになに?」

 

「オレは18歳だとしても、私ほんとは30代なんだよね。やっちー、よく考えてくれ。6歳の子は恋愛対象に入るか?」

 

「えっ、そうなのっ!?」

 

「そうなんだよ。瑞麗先生や雛川先生の方が歳が近いんだ。それでも10近く下ではあるんだけど。その場合、オレはよくても相手が未成年に手を出すことになるだろ?オレ、九ちゃんほど常識捨てきれないからさ、どうしてもね」

 

「そっかあ......わかってても意識しちゃうようになったらつらいね」

 

「そうなんだよな......まあ、そんときはそんときだよ。なんとかするさ。双樹さんがいってたけど理性なんて脆いもんだからね、あてになった試しがない」

 

「翔クンが時々すっごい大人なのってそういうことだったんだね~、なんか 納得しちゃった。さ~ってと、お礼になにか奢ってあげるからマミーズ行こうよ、翔クン」

 

「ほんとに?ありがとう」

 

「あ、そーだッ!やっぱり月魅も誘おうよ。頭ばっかり使ってたら疲れちゃうし、甘いものが一番だしねッ!」

 

「月魅に怒られそうだけど、様子を見に行くくらいなら大丈夫かな。よし、いこうか」

 

私達は図書室に向かった。

 

この時期、本来なら月魅は《長髄彦》の干渉が強くなり毎晩のように誰かに呼ばれる夢をみる。初めはどこか遠くから聞こえてきていたのに、やがて耳元でささやくように聞こえてくる。それは自分の口から出ていたという具合にだ。取り憑かれている状況となる。一心不乱になにかを探している何かの霊だとしかわからないため、協力することで學園の謎にまた1歩近づき、葉佩に協力できるのではないかと考えてしまうのだ。自分にしかできないことなのだと。人知を超えた大いなる力が何かを伝えようとしているとロマンすら感じていた。

 

だが、現時点で月魅は瑞麗先生からファントムに干渉を受けている。しかも悪霊であり、《遺跡》に封じられた悪しきものだと名言されている。そいつは私を襲撃したことがある存在だと知っている月魅はそこまで無謀なことはせず自衛してくれていた。

 

ブローチこそ手放してしまったが今は瑞麗先生の塗香がお守り代わりだ。一応、気にするに越したことはない。

 

「八千穂さん、翔くん。どうされましたか?」

 

月魅がそこにいた。

 

「それはこっちのセリフだよ、月魅」

 

「どうしたの!?」

 

「嫌な予感がしたんです。来てみたらこの有様で......」

 

月魅はため息だ。誰かがおそらく無意識に本を散らかしていったらしく、月魅は片付けが大変そうだ。修復が大変そうである。

 

「誰かがまた《鍵》を探しているのかしら」

 

「わかるの、月魅?」

 

「はい、そんな感じがします。声は聞こえないんですが、なにかしなければならない焦燥感はあいかわらずで」

 

「手伝うよ、月魅」

 

「ありがとうございます」

 

「あっ、見てみて、月魅。書庫があいてるよ。月魅があけたわけじゃなさそうだけど大丈夫?」

 

「───────ッ!?本当だわ!」

 

「まずいな......。月魅の時みたいにマスターキーを手にしたやつがいるのかもしれないね」

 

「私以外の誰かが......」

 

「なにかとられてたら大変だねッ、調べてみようよ!」

 

私達は書庫に入ってみた。とたんにぴしゃんと音をたてて扉がしまってしまう。

 

「!?」

 

やっちーがあわてて力を込めてみるが微塵も動かない。

 

「ま、まさか霊障ッ!?」

 

私は足元が揺れていることに気づいて叫んだ。

 

「やっちー、月魅、あぶないっ!」

 

「えっ!?」

 

「きゃああっ!」

 

ブック・エンドを不意にはずした書籍のように、本棚が次々と倒れてくる。2人を庇って倒れ込む。背中に激痛が走る。どうやら本棚の角が直撃したらしい。

 

「こんのっ!」

 

渾身の力を込めて横に押して起動をずらす。横に棚が逃れた瞬間に、下から突き上げるような衝撃が私達を襲った。本気で校舎が倒壊するんじゃないかと錯覚しそうになるレベルの揺れだ。書庫にあるありとあらゆるものが揺れて、壊れ、散乱し、壁や床や天井全体がガタガタと揺れる。やっちー達の顔が三つか四つにダブって見える。

 

床がやわらかくなり、ゆっくり溶けてくずれていく感覚に陥る。

 

「なにっ!?え、なんなの!」

 

「2人ともその場にうずくまって頭抑えてっ!じっとして!」

 

「ポルターガイストです、八千穂さんっ!」

 

「えええっ!?」

 

次第に揺れは収まっていく。だが私はかすかな揺れであっても、じつは大地震が来るまえの予震で、いまこの瞬間にも地響きが聞こえて大揺れが起こり、部屋の隅までふっとばされるんじゃないかと身がまえる。

 

「また来たっ!」

 

みしみしと細かく家のきしむ音がしたかと思うと、部屋が揺れ始めた。揺れは最高潮に達した。ドーンと重く部屋全体が揺れた。

 

音が消えた。黄金色に輝く小さな粒が、視界を舞って床に降り積む。それがホコリだと気づいたときには霊障はおさまっていた。

 

「2人とも大丈夫?」

 

「こ、こわかったあ~......」

 

「ほ、ほんとに死んじゃうかと思いました......。まさか、図書室があんなに散乱しているのはこのせいなんでしょうか......」

 

「たぶんね」

 

私はドアをあけた。あっさり開き、外は全く揺れていないことを確認する。

 

「随分とアグレッシブな悪霊だな......」

 

「翔くん、大丈夫?」

 

「さっき棚が......」

 

「ああうん、わりと激痛が......。あれ?」

 

体がなんともない。私はまさかと思って内ポケットを探った。

 

「なになに?あ、それ九ちゃんが持ってるの見たことある!」

 

「真っ二つに割れていますね......」

 

「《心臓の護符》が割れてる......」

 

私は冷や汗がつたった。

 

「それ、どんな《秘宝》なの?」

 

「瀕死時に自動回復だったかな」

 

私の言葉にやっちー達はひきつった。

 

「ひ、瀕死ってそんな軽くいわないでよ翔くんッ!背中大丈夫!?痛くない?」

 

「もしかして、このお守りがなかったら翔くん、私達のかわりに大怪我を!?」

 

「大怪我どころじゃないよ、月魅ッ!」

 

「まあまあまあ、落ち着いて、落ち着いて、ふたりとも。オレ、なんともないだろ?ほら」

 

「でも心配だよ~っ!瑞麗先生のところいこうよ、翔くん!」

 

「そうですよ!」

 

「ああうん、そうだね......。2人は大丈夫?」

 

「あたしは大丈夫だよ!月魅は?」

 

「はい、私も大丈夫です。翔くんが庇ってくれたので」

 

「よかった。それじゃ、保健室に行くとしてだ、一応図書室には鍵をかけていこう。なんの意味もないんだろうけど」

 

「あたし、九ちゃんにメールしとくね。次化学だから気をつけてねって言わなくちゃ」

 

「私は......」

 

「そーだ、月魅。月魅も一緒に翔くんの付き添いに保健室行こうよ、もしかしたら瑞麗先生がなにかわかるかも」

 

「そうだな。ポルターガイストがもし月魅に取り付きたいのに塗香のせいで近づけない悪霊の仕業なら対処法がわかるかもしれない」

 

「や、やっぱりそうですよね......おかしいとは思っていたんです。翔くんが当番の昼休みの時には何も無かったのに、嫌な予感がして私ひとりで来てみた途端にこれなんて......」

 

「朝から体調不良の人が多かったり、重苦しい雰囲気だったりするのってやっぱりこのせいなのかなあ?」

 

「勘違いじゃないと思うよ。本来《遺跡》に集約されるはずの氣の流れの一部が逆らう形で校舎に流れ込んでる。月魅が夢遊病で校舎に行こうとした時と同じだ。あの時とは比べ物にならないくらいの規模だけど。誰かが意図的に氣の流れをおかしくしてる。こういうとき、浮遊霊なんかの下級霊は集まりやすいんだ」

 

「え、えーっと、つまり、今の學園には幽霊がいっぱいってこと?」

 

「お化け屋敷状態ですね」

 

「や、やだ、學園祭のお化け屋敷思い出しちゃったよ~ッ。昼間なのになんで幽霊でるのッ!?」

 

「えっ、やっちーB組のお化け屋敷いったの?」

 

「うん、いったよ?すっごくこわかったけど、1番怖かったのは神鳳クンが井戸からちん・とん・しゃんっていいながら出てくるところでね~」

 

「さすが八千穂さんです」

 

「さすがやっちー。月魅、これからはやっちーと一緒にいるといいんじゃないかな」

 

「はい、そんな気がしてきました。白岐さんも八千穂さんといたらいいのではないでしょうか」

 

「女の子だし、3人で一緒にってのもありだね」

 

「え、あの、なんで?うれしいけど」

 

「あはは、お化けが一番苦手なのはやっちーみたいに元気いっぱいで明るい女の子なんだよ」

 

「???」

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