超人秘密結社元構成員『緑谷出久(21)』の活動記録 作:久路土 残絵
「というワケでデクさんは元の世界に帰りました」
レオナルドは、結社のミーティングに控えてやって来た銀髪褐色のチンピラ然とした男―――ザップ・レンフロに向かってそう告げた。
「―――あぁ?」
静謐としたミーティングルームに、呆けた声が溶ける。
ザップは顔面に『何言ってんだコノ陰毛は』とありありと書き記して、古いテレビの調子でも見るように、ぺしぺしとレオの頭を叩く。
「……」
考えていることは明らかだが、口に出していないものを咎めるわけにもいかない。レオはこめかみに血管を浮かばせながらも心を落ち着けると、ザップでも理解が及ぶよう猿に言葉を教える心持ちで懇切丁寧に経緯を説明した。
ザップはレオが言葉を継ぐたびに瞳を見開き、蒼褪めていく。そして遂に帰還が真実だと理解すると、力なく膝から崩れ落ちるのであった。
「ウソ、だろ……」
両の手を床につき、吐き零したのは
大袈裟―――とは言えないだろう。
なにせ、別れを告げることも出来ずに訪れた永遠の離別だ。
生きているとはいえ、それは世界の壁を隔てた向こうの話。ある意味で、それは死にも等しい。
ましてやザップにとって出久はただの同僚ではない。経緯はどうあれ同じ師に師事した弟弟子でもある。
きっと―――レオとはまた違った大きな感傷があるのだろう。
「ザップさん……」
滅多に見ることのない、ザップの弱々しい姿にレオナルドの涙腺が刺激される。
しかし―――。
「今度鍛え直すつって
「知ってましたアンタそういう人ですよ!」
よくよく考えれば―――否、考えるまでもなかった。
この極めて自己中心的な女
深く溜息をついたレオは、行き場を無くした涙を拭い、ザップの代わりとばかりに自らが感傷に耽る。帰還の一因を作ったのはレオナルドとはいえ、彼もまた、突然の別れを消化しきれたわけではないのだ。
視界を閉ざせば思い起こされる出久との記憶。
思えば変人奇人狂人の見本市であるライブラにおいて、彼は貴重な常識人だった。レオが新人として結社に入った時、世話を焼いてくれたのも出久だ。
説明はちゃんとしてくれるし。
理由のない暴力を振るわないし。
危機に陥った時には、ヒーローのように助けてくれた。
「……」
―――レオナルドはふと、今後のヘルサレムズ・ロットでの生活を想像した。
「デクさんカムバァァァァァック!」
「うるっせぇ!テメェが蹴り落としたんだろうが
レオとザップは共に己の今後を考え、頭を抱えて絶叫するも、その声が出久に届くわけもない。
「はぁぁ……。でもやっぱ一番大変なのはデクさんっすよねー。見た感じアッチの世界も結構物騒な感じだったし。この前の事件も無事解決してればいいけど……」
叫び疲れてソファに体を預けたレオは、そう溢した。
出久の故郷は『個性』と呼ばれる超常能力がひしめく異世界だという。もちろん、危険度は
「ま、そこんとこぁ問題ねぇだろ。アイツは」
しかしザップは、不安を膨らませるレオの横で、極めて楽観的な口調でそう断じた。
ともすればテキトーに答えただけなのかもしれない。しかし、それでもレオは驚きのあまり普段糸目に閉じている瞳を真ん丸に見開いた。
少なくともレオが結社に入ってから、ザップが出久を認めるような言葉を吐いたのは、嘘だろうが冗談だろうが、これが初めてのことだったからだ。
「ぁんだ?そのツラ」
「なんでもありませ――って
「蹴られたそうなツラしてたからだ」
「どんなツラだよ?!」
ザップは微笑ましいものを見るような視線からその内心を察したのか、レオの尻を蹴り上げた。そしてソファへ乱暴に腰を下ろすと、拗ねた子供のように窓の方へそっぽを向いて話さなくなった。
「この人ホント素直じゃねぇな……」
再び溜息を吐いたレオは、ザップの視線を追うように、特に意味も無く窓の外へと目を遣った。
(まぁ、実際。ザップさんの言う通り、あの人なら上手い事やってるよな)
*
「やらかした……!」
―――レオ達の信頼を他所に、出久は両手で顔を覆い、消沈していた。
出久が七年を過ごしたH・Lは、この世の混沌を煮詰めたような場所である。
建物や人がブッ飛ぶのを見なかった日は無かったし、『あ、トンボだ』くらいの感覚で弾丸やロケットランチャーが飛び交っている。酷いときには何の前触れも無く、完遂されれば数十億人が死に絶えるような上位存在の
出久自身、不意にエンカウントしたゴロツキに内臓をカツアゲされそうになったこともあるし、酒場で騙されて首と胴体を切り離されて売りに出されたこともある。
そんな異常が日常となった世界で、出久は多感な少年期を過ごしたのだ。
人間たかだか一、二年海外に留学した程度でカブれて帰ってくることもあるというのに、よりによってあの魔境で七年だ。ならば元の世界に帰還した際に、多少意識に差異が生まれている事もあるだろう。
…………元の世界の常識を一つくらい忘れていることもあるだろう。
「私語を慎むように。10-9番」
「……はい」
―――出久は逮捕されていた。
『公共の場において個性の無断使用及び戦闘行為を禁ずる』。
出久が爆豪救出のために行ったことは、この世界において、れっきとしたとした犯罪だったのだ。
しかし、無断使用にしても爆豪を救出するためだったことは、誰の目にも明らかであり、ヒーローでも手を
身分証の提示を求められたのが運の尽き、そして馬鹿正直にH・Lで使っていた免許証を提示した出久も出久だ。
『普通異界二輪運転免許証』。
いったい何が普通なのか。
当然、そんな珍妙な書類がコチラの世界で通用するはずもなく。
―――罪状上乗せ。『有印公文書偽造、同行使容疑』。
あまりに現実的な罪状を前に、出久は『ああ、帰ってきたんだな』と妙な実感を得たのだが、こんなことで感じたくはなかったと留置場の床に溜息を溢す。
治癒力が高いというのも今回ばかりは考え物だ。
本来、昨日の出久ほどの重症ならば入院は必至。逮捕されるとしても快癒後となるはずだった。
しかしH・Lの幻界病棟までとは言わずとも驚異的な、医療系個性による治療と出久の血法由来の高い治癒力が相乗してしまい、即日『帰っていいよ』との診断を受け、豚箱へと直行するハメになった。
しかし、不幸中の幸いか出久は微罪処分として、既に釈放が決まってる。
個性の無断使用については、現場にいたヒーローの一部が結託し、『人命救助を最優先と考え、
それがあの解決劇に
また、文書偽造についてもH・Lの免許証とコチラの世界の免許証とでは様式が大きく異なったため、『たとえ偽造だとしても何か悪質な行為に利用できたとは思えない』と判断され、厳重注意で済んだ。
しかし、ならば何故、出久はこうして項垂れているのか。
それは釈放の段になって、出久の事情だからこそ発生する問題があることに気が付いたからだ。
そもそも微罪処分とは、情状酌量の余地アリと判断された被疑者を、刑事手続を行わずに釈放することなのだが……。
当然、身元引受人が必要となる。
そして出久の場合、それは母しかいない。
―――さて、今の自分の姿を見て母は一体どんな反応をするだろうか。
良くて卒倒。
最悪、息子ではないと警察の前で訴え出られるかもしれない。
「……」
最早脱獄した方が簡単に済むのではという考えがチラつくものの、出久はそんなH・L流の思考の危うさに思い到り踏みとどまった。
早々にコチラの感覚に戻す努力をしなければ、更に取り返しのつかない失態を犯すことになりかねない。
そうこう気を揉んでいるうちに、看守が出久を呼びに来た。
どうやら母が迎えに来たようだ。出久は付き添いの警官に連れられて、一晩過ごした格子を後にする。
世話になった他の警官にも挨拶し、正面玄関へ向かう途中の階段を下る。
すると、最後の曲がり角の先から声が聞こえた。
「すみませんこの度は息子が―――」
それは七年ぶりに聞く母の声だった。
心臓が早鐘を打つ。出久はそれを血流操作で強引に静めた。
センチメンタルに浸るのは後でいい。まずはどうにかして自分だと気付いてもらわなければならない。
アイコンタクト。それでもダメなら血法か。
その他に、何か打つ手はあるだろうか……。
なんとか母に察してもらえるように全力を尽くさなくては……。
出久はブツブツと自問自答を繰り返しながら歩く。
そして意を決し角を曲がると、出久は祈るように母へと視線を送った。
(頼む!母さん気づい……て…………)
―――きっと、一晩帰らなかった息子を案じていたのだろう。母の目にはクマが浮かび、泣き腫らした跡があった。
「出……久?」
不安げに、自らを呼ぶ声が
瞬間、それまで考えていた
出久は気が付けば、記憶よりもずっと小さくなった女性を、
*
昨日、息子が帰らなかった。
部活動をやっていない息子は、特に用事がなければ18時には必ず帰宅する。それが、昨日に限って21時を回っても連絡一つなかった。
担任の先生に連絡を取ったところ、下校したことは確からしい。
同級生の家に電話をかけてもみたが、一向に行方が分からない。
幼馴染の爆豪君の家にも電話をしたけれど、あちらはあちらで今ニュースで持ちきりの事件に巻き込まれたらしく、それどころではないようだった。
鳩尾を少しずつ押されていくような不快な圧迫感。
行動すればするほどに、何事もない可能性だけが潰れていき、自らで自らを追い詰めていくことになった。
爆豪君のニュースに紛れて流れた、通学路の側で廃ビルが消失したというニュースが、嫌に耳に残ったのは偶然だろうか。
私にはそれが、虫の知らせのようなものに思えてならなかった。
出久が廃ビルに行く理由なんてない。出久が関係している筈がない。そう思いつつも現場に向かう足は止められなかった。
廃ビルの跡地は規制線によって立ち入りが禁止されていた。私は中の様子を窺うため、その周囲を何度も歩いた。
―――そして、息子のノートを見つけた。
それは、息子が研究と称してヒーローの個性やプロフィールを記していたノートだ。
吐きそうだった。意味もないのに、その場にノートを投げ捨てて、見なかったことにして現場から逃げ帰った。
息も絶え絶えに辿り着いた玄関先の鏡で見た自分の顔は、とても見れたものでは無かった。
酷い寒気に
夫に連絡をしなければとも思ったが、『大丈夫』と自己暗示のように自分に言い聞かせ、精神の均衡を保つので精一杯だった。
だから深夜、警察から息子が保護されたと連絡が入った時には、本当に、本当に、心底に安堵した。
何か良くないことをしたとかどうとか言われた気もするが、生きてさえいればそれでいい。
そうして私は一睡もしないまま、朝一番で警察署へと迎えに行ったのだが。
一日ぶりに会った息子は成人していた。
何を言っているか分からないと思うけれど、私も分からないのだから説明しようがない。
「……」
私は処理限界が近づいた脳を癒すため、ストローでアイスティを啜る。
ここは警察署から程近い喫茶店。目の前では随分と大きくなった息子を名乗る青年(21)が、困ったような表情で今もこちらを窺っている。
「ええと……要約すると、昨日の学校帰りに違う世界に迷い込んで、そこで七年冒険して帰ってきた……?何とかと神隠し、みたいな……?」
私の解釈に出久は僅かに不服そうにしたが、概ねそうだと頷いた。
私はジッと出久の顔を見る。
確かに、仕草や表情は記憶の息子の面影を色濃く残している。
出久か出久じゃないかと問われれば、間違いなく出久だ。
けれど私の心は未だ半信半疑でいる。
異世界だのなんだのと、そんな荒唐無稽な話に『なるほどお疲れ様』と納得できるほど私の肝は据わっていないのだ。
……もしやビルを消失させた犯人が、現場で攫った出久になりすまして、何か良からぬことを企てているのでは?そんな可能性が脳裏に過る。
何せこの『個性社会』。他者に変身する個性を持つ人は少なくない。
少し発想が飛躍した気もするが、昔テレビの特番でもそんな事件を取り上げていた。現実にありえない話ではないのだ。異世界がどうのこうのよりはよっぽど。
……だけど、成長した姿で現れた意味は何なのか。
あえて大きな違和感を作ることで他の違和感から目を逸らさせようとしている、とか?
何れにせよ、疑ってかかるべきだと思う。
もし想像が現実で、私がまんまと騙されたとあれば、本物の出久はどうなってしまうのか分からないのだから。
「あの、出久……好きな食べ物は?」
「カツ丼だよ?」
試しに質問を投げると、間を置かず答えが返ってきた。
その他にも、家族しか知らないような昔の思い出なんかを聞いてみるものの、何れも淀みなく答えられた。
やっぱり、本物……?
けれど、心を読める『個性』が世に存在する以上、過去のエピソードは根拠として少し弱いかもしれない。
そう思った私は、相手が見せている大きな隙。異世界について問い質してみることにした。
「この首の傷?前に二ヶ月くらい胴体を失くしてた時期があって―――」
「目が覚めたら僕の体が食材として売りに出されててね―――」
「一番の大怪我?寄生された異界生物に中から体を食べられ……違うなそれと同じくらいのは他にも二十回くらい―――」
胃が痛くなってきたので聞くのをやめた。
いや、どう考えても作り話なのは分かっている。けれど、妙に描写に実感があるというか……。おえぇ。
胃の中身が込み上げてきた。出久は席を立ち、私の背中を
「……そりゃあ、信じられないよね」
「出久、えっと……」
「ううん。簡単に信じられたら逆に心配になっちゃうって。……暫くはどこかホテルにでも泊まることにするよ」
そう言って、出久は立ち去ろうとした。悲しげな笑みに心が痛む。
引き留める言葉が喉元までせり上がるも、腹の底に沈殿した違和感や疑念がその足を引いてしまう。
「そうだ。最後に1つだけ。お母さんにどうしても言いたかったことがあるんだ。僕ね、個―――」
出久が最後に立ち止まり、何かを言いかけた。
しかし、それを遮るように―――爆音が轟いた。
まるで間近で大太鼓を叩かれたような、腹の底に響く重低音。
周囲の客が慌ただしく立ち上がり、窓の外を指さした。
私の視線も音源へと無意識に吸い寄せられる。
音と衝撃の発生源。それが先程までいた警察署で起きた爆発だと視認した頃には、飛来した大きなコンクリート塊が、店の窓際に面した通りを走る車の一台を圧し潰していた。
一拍遅れ、爆発炎上する車。
後続車はソレを避けようとして、思い切りハンドルを切ったのだろう。速度を落とさないままに車の鼻先はコチラを向き、瓦礫をジャンプ台にして飛び込んで来た。
突如襲い来る『非日常』。
視界を埋め尽くした黒い鉄塊。隔てるものはガラス一枚。
―――走馬灯が実在するのだと、そのとき初めて知った。
目の前で。フィルムの早回しのように私の人生が流れていく。
その大半が出久との思い出だった。
赤ん坊の出久。保育園の出久。小学生の出久。中学生の出久。
そして、最後。
引き延ばされた時間の中で見たのは、私を庇おうと身を乗り出した『今』の出久だった。
―――ああ、そうだ。こういう子だった。
小さい頃からオールマイトの真似をして。
そんな力も無いのに……そんな力をあげられなかったのに、困ってる人を助けるんだって、青タンこさえて誰かを守ろうとしていた優しい子。
私が、守らなきゃ。
違和感だとか、不信感だとか、その瞬間にはどうでも良くなって体が動く。
私もまた、出久を庇うべく飛び出した。
破滅的な破砕音が鳴り響き、世界が揺さ振られるような振動が全身に伝播する。
私は真っ白になった頭のまま、馬鹿みたいに早くなった呼吸を必死に整えた。
(呼吸、呼吸……?私、まだ、生きてる?)
私は恐る恐る瞳を開くと、自らの命を脅かした原因、その結末を探した。縮こまった首を伸ばし、通りの方へと目を向ける。
庇うために飛び掛かった私を受け止めた状態で、高く蹴り上げられた出久の脚。
その先では、ガラスを破り店に鼻先を突っ込んだ車が、外壁ごと氷漬けになっていた。
「大丈夫!?お母さん……!」
切迫した声につられて顔を上げる。
出久の顔は、焦燥に満ちていた。
それは昨晩、散々鏡で見た私の顔によく似ている。
しかし決定的に違うのは、そこに頼りなさだとか、危なっかしさだとかが一切感じられないこと。
こんな事故に遭ったばかりなのに、息子が居る今この場所が、世界で一番安全なのではないかという不可思議な確信を覚えた。
そして、私の無事を確かめ、安堵した出久の表情は酷く大人びていて。
それらは半信半疑だった息子の七年を私に信じさせるに足るものだった。
だが、
(それ、よりも)
「出久、これ、個性……?」
「うん」
「ホントに……?」
「向こうにいるときからね、ずっと伝えたかった」
「ありがとうお母さん。僕はヒーローになれるよ」
急激に、瞳が熱を持つ。
かつて私は、この子の前で無様にも泣き崩れた。
息子に夢のスタートラインに立つ資格すら与えられなかった事が悔しくて、それでも諦めないこの子が痛ましくて、泣き喚き、赦しを請うたのだ。
今思えば私が苦しみから解放されたかっただけだったのだろう。きっと出久には、自分のせいで母親を泣かせてしまったという傷を与えてしまっただけだ。
歪んでしまっても……おかしくはなかった。
だけど、それでも真っ直ぐに成長した息子が今、目の前にいる。
「うえええええええええええええええええん」
「お、お母さん!?」
「無事でよかったよおおおおおおおおおおお」
理屈なんて全て置き去りにして、感情だけで全ての疑念が氷解する。
私はようやく、一切のわだかまり無く息子の無事を喜ぶことが出来たのだった。
しかし――その喜びに水を差された。
警察署の方角から禍々しい
それを見た出久は表情を険しくして立ち上がる。
「ごめん。お母さん、行かなきゃ」
「出久……?」
「大丈夫!あんなもの、お母さんの所には絶対に行かせないから!」
安堵したのも束の間、遠ざかっていく背中。
待って。危ない事はダメだよ。一緒に逃げよう。
口を突いて出そうになる言葉は無数にある。
けれど、今かけるべき言葉はそのどれでも無い気がした。
「頑張って!」
振り返った出久は、驚きに目を瞬かせている。
―――もう、この子は私の許を巣立っている。私が守ってあげなきゃいけない存在じゃない。
その成長を傍で見守ることが出来なかったことは悔しいけれど。
もう手を引いてあげられないことは寂しいけれど。
帰る場所になってあげることくらいは今でも出来るだろう。
「カツ丼!作って待ってるから!」
「うん……!行ってきます!」
*
「Holy shit……!」
時を同じくして、警察署。
No.1ヒーロー、オールマイトは崩落した警察署の中で、異形のヴィランと対峙していた。
ヴィランの姿は『腕』としか表現しようがない。
人間の腕を肘から切断したようなソレが、五指を虫の足のように踊らせ、歩いていた。
肘の切断面からは無数の触手が伸び、その全てが署内に居る警官に突き刺さっている。
触手が震えると、ギュボと水音が響き、数多の悲鳴が轟いた。血液を吸い出した触手がバレーボールのように膨らみ、それは触手の中を進み、やがて『腕』の中へと取り込まれた。
死によって作り出された静寂の中で、異形は静かに呟いた。
「タri無ィ」
《Profile》
name:ザップ・レンフロ
birthday:11/25
height:178cm
like:金
love:女
ability:
◯金と女にだらし無いぞ!
◯常に借金まみれだ!
○主な収入源は女性からのお小遣いだ!
○仲間達からは『
○でも戦闘に関しては超天才だ!
○『火』属性の血液を自在に操る『斗流血法・カグツチ』の継承者だ!
◯エスメラルダ式血凍道を習得した出久を面白がって、斗流血法を教えようとしたぞ!(時給100ゼーロ)
○だけど天性と感覚で教えるザップの指導は、努力と理論で習得しようとする出久とクソほど相性が悪くて三日で飽きたぞ!
○最終的に自分を連れ戻しに来た師匠に、継承者候補として出久を生贄に捧げたぞ!