英雄が医者なのは間違っているだろうか?   作:クロウド、

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はい、もう一作書いてみました。
実はかなり前から考えてたものです。


彗星は地の底で輝く

「盾、構えぇーーー!!」

 

 小柄な少年ーーー小人族が無数のヒューマン、亜人の軍団を指揮する。彼の名は『フィン・ディナム』。迷宮都市オラリオ、2大派閥《ロキ・ファミリア》団長。《勇者》の二つ名を持つ者だ。

 

「ティオナ! ティオネ! 左翼支援急げ!」

 

「あ〜んっ! もう体がいくつあっても足りない〜!」

 

「ごちゃごちゃ行ってないで働きなさい」

 

 フィンの支持を受けた二人のアマゾネスは三体のモンスター一気に切り伏せる。

 

 しかし、戦況はロキ・ファミリアの劣勢。どこからともなく現れるモンスターの大群、一体一体がファミリアの人間の数倍の巨躯で攻め入ってくる。一種の悪夢だ。

 

「リヴェリア〜ッ! まだぁ〜!?」

 

 アマゾネスの少女が前衛組が守るその背後控え、『詠唱』を紡ぐエルフへと声を上げる。

 

「【ーーー間もなく、焔は放たれる。忍び寄る戦火、免れ得ぬ破滅。開戦の角笛は高らかに鳴り響き、暴虐なる争乱が全てを包み込む。至れ、紅蓮の炎、無慈悲の猛火】」

 

 その一撃をなんとしても無事に放つために前衛達は歯を食いしばり交戦する。

 

 しかし、向こうも突進の勢いを衰えさせることはない、盾の一角を団員もろとも薙ぎ払う。

 

「ーーーベート、穴を埋めろ!」

 

「ちっ、何やってやがる!?」

 

 こじ開けられた防衛戦。遊撃を務めていた狼人が急行するが、そこに更なるに異常事態が発生する。

 

「団長ッ、上を!!」

 

「!?」

 

 一人の団員の声にフィンだけでなく他の者も自身の頭上を見上げる。それを前線で戦う金髪の女剣士もまた見ていた。

 

「ダンジョンに、彗星?」

 

 彼らの目には一筋の光を放つ何かがまるで箒星のように尾を引いて頭上を走り抜ける光景が映っていた。ダンジョンは元々地中にあるもの、空などあるわけがなく星は愚か、彗星などない。

 

「綺麗……」

 

 だからこそ、その光景は幻想的で彼らの目を惹きつけた。

 

 しかし、やがてその星は地に向かって降りてくる。

 

「おっ、落ちるぞッ!?」

 

 爆発音のような激しい音が鳴り響き、その衝撃によって生まれた衝撃波がフォモール達を吹き飛ばした。その星は、丁度崩れた防衛戦に被害が出ない場所に墜落した。

 

 やがて粉塵が晴れ、そこにいたのは黒いローブに身を包み口には烏のくちばしのように尖ったマスク。そして、肩に担いだ十字のやり。

 

 青年は爪先をコンコンと地面を突き槍を構えると、

 

「フッ……!」

 

 一瞬にしてその場から姿を消し、その次の瞬間フォモールの群れから鮮血が舞う。

 

「速いッ!?」

 

 彼らロキ・ファミリアの目には彼の姿がしっかり映ってはいない。目に映ったと思った瞬間その姿はかき消える。あまりの速さに残像が見えているのだ。

 

 遠目にその姿はまるで閃光がモンスターを切り裂きながら戦場を駆け巡っているように見えた。

 

「まさか、このタイミングで帰ってくるなんてね……」

 

「ガハハッ! どうやら、旅は無駄になってはいなかったようじゃのう」

 

「え? もしかして、アレって? ーーッスか!?」

 

 戦場を駆け回る閃光を見て、その正体をよく知るファミリアのメンバーは歓喜の表情を浮かべる。

 

「あの人は一体……」

 

「……ッ!」

 

「え? アイズさんッ!?」

 

「ちょっと、アイズ!」

 

 アイズと呼ばれた金髪の少女は体に風を纏い、加速しながら閃光を追いかける。

 

 風では光に追いつけない、そんなことはわかっている。それでも、追いかけずにはいられなかった。

 

 また、置いていかれてしまうことが怖かったから。

 

 閃光は後ろから追いかけてくる風に気付いたのか周りのフォモールを一気に切り伏せその場に立ち止まる。二人が合流し、互いに背中を預けながら、アイズは背中越しに声をかける。

 

()()……」

 

「話はあとだ、そろそろリヴェリアの詠唱が終わる。さがるぞ」

 

「え? ベルッ!?」

 

 ベルと呼ばれた少年は背中に槍を担ぎ、アイズを横に抱く、所謂お姫様抱っこというやつだ。

 

「こっちのほうが速い」

 

「そういうことじゃなくて……」

 

「口は閉じてろ。舌、噛むぞ」

 

「え? ひゃっ!?」

 

 ベルはアイズを抱っこしたままフォモールの頭を踏み台にし、ジャンプしながら陣営の元まで下がる。

 

「【焼きつくせ、スルトの剣ーーー我が名はアールヴ】!」

 

 その瞬間、弾ける音響とともに魔法円(マジックサークル)が拡大し、《ロキ・ファミリア》、フォモール、両陣営の足元に広がる。

 

 戦場全域が彼女の魔法の効果範囲。

 

 白銀の杖を掲げ、エルフの魔導師リヴェリアは己の『魔法』を発動させた。

 

「【レア・ラーヴァテイン】!!」

 

 魔法円から吹き出した幾本の炎柱がファモールの全身を飲み込み、無数の絶叫が鳴り響く。

 

 やがて、その声も消え。残ったのは《ロキ・ファミリア》の面々とフォモールだった燃えカスのみだった。

 

 それを確認すると、ベルはアイズをおろす。

 

「あの、ベルーーー」

 

「そこの貴方!!」

 

 アイズが声をかけようとした瞬間、山吹色の髪のエルフの少女が怒りを顕にしてベルに詰め寄る。

 

「いきなり現れて、アイズさんをお、お姫様抱っこするなんてどんな神経しているんですかッ!? そもそも、貴方は……」

 

「落ち着け、レフィーヤ」

 

「アタッ!」

 

 ベルに対して色々言いたいことを言っていたレフィーヤだったが、背後から近づいてきたエルフの女性に杖で頭を小突かれて振り向く。

 

 そして、その後ろには他の《ロキ・ファミリア》の幹部達が集っていた。

 

「ですが、リヴェリア様こんな得体の知れないヒューマンにアイズさんが……」

 

「それなら、心配はいらない。彼はウチの団員さ」

 

「え?」

 

 フィンの言葉にレフィーヤは目を丸くする。

 

「《ロキ・ファミリア》所属レベル6、《彗星》ベル・クラネル。それが彼の名前さ」

 

「え? 《彗星》って、世界最速兎(レコードホルダー)の?」

 

「そう、アイズの同期で所謂君の先輩だね」

 

「ええぇぇぇぇえーーー!!!?」

 

 レフィーヤは絶叫に近い声を挙げるが、その原因となったベルはレフィーヤはおろか団長であるフィンや既知の仲である団員にすら目を向けず陣営に向かって歩き出す。

 

「おいッ、どこ行くつもりだ!?」

 

「怪我人の治療に決まっているだろ」

 

 ベルは復活した狼人の言葉に振り返りもせず、怪我人たちの方へと歩き続ける。

 

 その言葉に一瞬ポカーンとする一同。しかし、その言葉の意味を知っている者達は苦笑いを浮かべてその後を追いかける。しかし、その意味を知らない者達はそのまま立ち尽くす。

 

「……良かった」

 

 アイズはその背中を見てどこかホッとした。口調も外見も変わってしまっていた。だが、その芯だけは変わらない少年の姿が彼女には見えた。

この作品でのフィルヴィスさんは怪人化していることにするかしないか。している場合、奇跡的に完成した蘇生薬で生き返る。していない場合、ベルに救われ精神的に安定し『豊穣の女主人』で働く。絶望して壊れることもなかったのでディオニソスに脱退を許可されてもおかしくないんじゃないかと思う。

  • 正直、しんどいけど怪人化している
  • やっぱ、鬱展開はきついので怪人化してない

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