インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─   作:4696猫

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 処女作ですので、暖かい目で御覧ください!

 それでは、どうぞ!


原作前
プロローグ.I


 プロローグ.I

 

 

 それは、ドイツで行われた第二回モンドグロッソの決勝戦。

 

 その日は姉の晴れ舞台だった。

 

 『白騎士事件』なる世界を震撼させた事件が7年前に起こり、IS──インフィニット・ストラトスと呼ばれる兵器が台頭した。

 その兵器は既存の兵器全てを凌駕し、圧倒した。そして、世界の新兵器になった。

 ただ欠点があった。それは女性にしか動かせず、乗れないという事。この制約のせいで女尊男卑なる風潮が横行し、男性にとっては暮らし辛く、生きにくい世の中になった。

 それは些末事だろう。今の状況に比べれば、どんなことでも些末事だ。

 目の前にはガタイのいい黒服の男が二人、オレンジ色のISを纏っている女が一人。

 そして俺こと──織斑景秋(おりむらかげあき)の腕には手錠をかけられ、その上から縄で縛られ、足にも拘束具。

 廃ビルということから、誘拐されたのだと思う。輝かしい姉の威光を曇らせるために。

 俺の姉はISによる国際大会、モンドグロッソの初代優勝者、二連覇がかかるこの試合で妨害してやろうという考えなのだろう。

 

 何故こうも落ち付いていられるのかって?

 

 どうせ、俺が死んでも代わりは居るからだ。双子の弟、織斑一夏っていう姉に愛され、大事にされてる弟がいる。むしろそっちと間違えられなくて良かったって言っても良い。

 一夏を好む人間は多い。姉の言うことを守り、剣道では優秀な成績を残し、顔も良い。この『顔も良い』と言うのが引っ掛かるのだ。

 俺と一夏は双子なのだから顔も似ている。なのに何故アイツだけが良いと言われるのか...。理由は解ってはいる。覇気や纏っているオーラが違うのだ。

 対する俺は剣道を辞めてから一気に変わったと言われる。幼馴染みの箒には「なってない」とか「全然ダメだ」とか色々言われた気がする。

 辞める前は結果を残していたけれど...、辞めてしまえば意味が無い。

 それに、やる気の無い俺を無理矢理連れていこうとするのは心底ウザかったし、殺意も湧いたものだ。

 そんな物思いに耽っていると、黒服の一人が景秋に声を掛ける。

 

「お前、静かだな。もっとリアクション取ったらどうだ?」

「この状況で騒いだ所で誰かが助けに来る訳でも無いですし」

「この坊主、随分と達観してんのな」

 

 景秋の言葉にもう一人の黒服が会話に混ざる。だが、ISを纏った女性が会話を止めた。

 

「喋ってないで、しっかり見張りなさいよ」

「「了解」」

「あの女の人に頭が上がらないんだな、あんた達」

「そりゃ...IS乗ってるからな」

「そうそう。ISにゃどれだけ戦車用意しようと勝てやしねぇんだ」

 

 景秋の言葉に黒服二人はそう答えた。景秋は黒服二人の言葉に何も言えなかった。

 

「それよりも、貴方は本当に人質として価値があるのか私は気になるのだけど」

「それは解りませんよ。...いや、最悪の場合は無いかもしれませんね」

「どういう意味よ。家族でしょ?」

 

 女性の言葉に景秋は少し黙って考え、言葉を発した。

 

「家族...ってなんですか?血が繋がっていれば家族なんですか?」

「...それは...貴方、何があったのよ」

「剣道が...怖くなったんです。...強くなっていけばいく程、周りとの差がはっきり見えてきて...俺が強くなればなる程、弟への風当たりが強くなった。だから俺は剣道を続ける気にはなれなかった」

 

 景秋が自身の思いを話す。黒服の男やISを纏った女性も黙って聞いている。

 

「そして、剣道を辞めた俺に待っていたのは罵倒と暴力の嵐だった。何をやっても「お前は弱い」「お前はそんなんだからダメなんだ」とかの罵倒を受けて、殴る蹴るの暴力は日常的に起こった。そんな家族の事だ、俺が死んだ所で喜ぶだろうな」

「酷いな、そりゃ家族とは言えねぇな」

 

 黒服の一人がそう呟く。他二人もそれに同意するかのように相槌を打つ。

 

「別にお涙頂戴で話した訳では無いので、同情とかは要りません。強いて言うなら最後に、幼馴染みの女の子に謝っておきたかった位ですかね。心残りがあるとしたら...その位なものです」

「そうか...まぁ遺言位は聞いてやるさ」

「ありがとうございます」

 

 黒服の言葉に景秋は頭を下げた。

 

「貴方達、準備しなさい。そろそろ時間よ」

「「了解」」

 

 女性がそう言うと黒服の男達が忙しなく動いている。男達が用意したテレビにはモンドグロッソの中継が映っている。

 

「何言ってんのか全くわかんない」

「英語で話してるのよ。簡単に言うと貴方の姉は凄いってさ」

「そうですか...」

 

 そこで男達の声が聞こえてくる。

 

「こっちには織斑景秋がいるんだぞ!ハァ!?ならこの声でも聞いて確かめるんだな」

 

 景秋は嫌な雰囲気に襲われる。男の言葉から察するに、イタズラ電話とでも思われたのだろう。

 男が胸から拳銃を取り出し景秋に向け、引き金を引いた。景秋の左太ももに被弾した。

 

「あ゛っ゛か゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ゛!!」

 

 ......熱い、焼ける様な熱さだ...それに痛い!......

  

 景秋は声にならない叫びを上げる。額から汗は溢れ落ち、涙も滲み出す。

 

「......これでも信じねぇのかよ!.......あぁ、そうだったな。お前ら日本人の一人がこんな世界にして、メチャクチャにしたんだったな!」

 

 男は半ば自棄になって電話を切って、パイプ椅子を蹴り飛ばす。

 

「落ち着けって!」

「これが落ち着いてられるか!アイツら、そんな名前の奴は居ないと抜かしやがった...。アイツら、コイツを無かった事にしやがったんだぞ!」

 

 そうしてテレビの中継には決勝戦に出る織斑千冬が映っていた。

 

「あぁ...俺はまた間違えた...俺はまた...失う」

「最後だ。遺言を聞こう」

 

 黒服の男が景秋にそう問う。激昂したもう一人は未だに壁を蹴っている。

 

「弟と姉には「地獄に落ちろ、クソッタレ」と。幼馴染みの篠ノ之箒には「ごめん」とだけ伝えて下さい」

「そうか。まぁ、約束は約束だ。その遺言は伝えてやる。それじゃあ...来世があるとしたら、こんな事にはならねぇように祈ってるぜ」

 

 黒服の一人がそう言って引き金を引いた。勿論、景秋は被弾した。だが、幸か不幸か景秋は息絶えなかったのだ。

 それを確認もせず、誘拐犯達は撤収していく。

 

「すぐに死ねないってのも辛いな...。それに...血が抜けてく感覚があるってのは...嫌なもんだ...」

 

 ......あぁ...これが...死ぬって感覚か...心地は最悪だ...チクショウ...それに...なんでIS引っ張って来てたんだよ......。ごめん、箒...約束...守れそうにねぇや......

 

 景秋は最後に箒への謝罪を心の中で呟き、自分の死を覚悟して目を瞑った。

 

─────────────────────

 

 ......暗い。......体は石の様に重く、歩くことも儘ならない。神経には何かしら詰まっているのでは無いかと思うほどに何かが邪魔をする。

 暗く、細く、長い道を只ひたすらに歩く。そして一筋の光が見えて手を伸ばした所で目を醒ました。

 

「......死ななかったのか、俺」

「目を醒ましたんだ、かー君」

「俺、死んだ筈じゃ?」

「ならここは天国なんじゃない?」

 

 目を醒ました景秋を待っていたものは白い天井と知った顔だった。

 

「束さん。冗談は止して下さいよ」

「アッハハ~ごめんね。」

「でも助かったのも事実です」

「そうだね」

 

 景秋の言葉に束は相槌を打つだけだった。

 

「怒らないんですか?」

「怒るとしたら君にではなくて、あの姉弟と箒ちゃんにかな。君は箒ちゃんの事を守ってあげていたのにね」

「昔の話です。でも、その約束ももう守れない。口だけの男だったって話で終わりです」

「それでも君は独りで戦ってきたヒーローだよ。誰にも助けを求められず、声の届かない孤独な世界で、一人の女の子を守ろうと戦ったヒーローさ」

「そうですか。まぁ...その一人の女の子の姉に言われるのなら嫌な気分では無いですね」

 

 束の言葉に景秋は少し笑った。

 

「さて、君は既に戸籍上では死んだ人間だ。社会もそう認識するだろう。君はどうしたい」

「俺に...俺に力を下さい!果たせなかった約束をもう一度果たせるだけの力を俺に!」

 

 景秋の叫びは束に届く。束は答え、景秋に手を伸ばす。

 

「ならおいで、君は...まだ生きなきゃならないからね」

 

─────────────────────

 

 こうして織斑一夏の兄、織斑景秋は再び生きる道を選んだ。その道が正しいか否かはまだ誰にも解らない。

 ただ、この選択が世界にとって大きな選択だと言えるだろう。

  




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