インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─   作:4696猫

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 前回から時間が開いてしまい申し訳ございません。試験期間でしたので...

 それでは、どうぞ!


第六話:戦鬼は新たな力に目を輝かせ

 第六話:戦鬼は新たな力に目を輝かせ

 

 ミステリアス・レイディのデータを手に入れてから始めての休み。景秋はエヴァンスエレクトロニクスへと赴いていた。

 

「久し振り...って程でも無いか。帰ったよ、昇さん」

「あぁ。おかえり、景秋。束博士なら開発部の方に...今一瞬でこっちに来たよ...」

「呼ばれて飛び出て束さんだよ~」

「あぁ...昇さんの苦労が目に見えますよ」

 

 景秋はそう言ってポケットに仕舞っていたUSBを束に放り投げた。綺麗な放物線を描いて飛ぶUSBを束は難なくキャッチする。

 

「危ないなぁ...USBは精密機械なんだからもっと大事に扱ってよ」

「束姉さんはその精密機械とやらを某猫型ロボット並みにポイポイ投げますけどね」

 

 景秋の言葉に笑いながら流れる様にUSBから情報を抜き取り、閲覧する。

 

「あれ?これって専用機の武装データじゃん!珍しい物手に入れたね」

「心優しいお姉さんが俺に譲ってくれたんですよ」

「嘘付くなよ、景秋。それ、ほぼ脅して手に入れたデータだろ」

 

 昇がそう言うと景秋はバツが悪そうになる。

 

「気付かないと思ったか?あれだけ変な録画、録音データを送ってくれば嫌でもわかる。全く...そんな交渉術、誰から習ったんだか...」

「多分...と言うか十中八九、私だよね~」

 

 昇の言葉に束はパソコンを弄りながら答えた。景秋はそれに反応すること無く、コーヒーを啜る。

 

「う~ん...」

「束姉さん、どうした?」

「このデータがあれば武州五輪はコピー出来る。そう思ってたの?」

「まぁ、少なからず思ってはいたよ。でもそれ以前に、情報が欲しかった。これから敵として現れるであろう人物の専用機のデータは持っていて損は無いからね」

 

 束がパソコンを見て唸っている所に景秋が声を掛ける。返って来た問いに景秋は答えた。

 

「コピーするにしても、実物を見てからじゃなきゃダメだよ。データだけでコピー出来たら、今でさえISキラーとして最強の武州五輪がいよいよ手が付けられなくなる」

「なら一緒に訓練してくれって言っとくべきだったかなぁ」

「なに言ってんの。実物を見ればコピー出来るんだぜ?束さんに任せなさいよ。この位の武装、試作品程度ならすぐに作れるぜ」

 

 束の言葉に景秋は苦笑いを溢す。

 

「試作品程度の物なら今日中......いや、3時間位あれば作れるかな。設計図もあることだし。クーちゃんはとてもご立腹だよ、話して来たら?」

「わかったよ...」

 

 景秋はそう言ってその場を後にし、束もそれに続くようにラボへ向かった。独り取り残された昇もコーヒーを啜り、一言呟く。

 

「青春...だな」

 

─────────────────────

 

「く、クロエ~...は、入るぞ?」

 

 景秋はクロエの自室の前まで行くとドアにノックする。けれど中からの声は同意ではなかった。

 

「連絡すると約束したのに、それを破る人なんて私知りません」

「......し、仕方無い...って言い訳するつもりは無いが...すまん...」

「本当に思ってますか?」

「思ってます...すみませんでした」

 

 景秋は頭を下げる。ドアを隔てている為、見えている訳ではない。だが、景秋は自身の持てる最大限の誠意を持って頭を下げた。

 

「今回は許します」

「ありがとう、クロエ」

 

 クロエはドアを開けながら景秋に告げる。頭を上げた景秋はそのまま中に入った。

 

「それで、目の方はまだ...」

「束様が景秋のデータも合わせて試作なら作っていましたが、半日が限度です」

「それでも半日も見えるようになったんだろ?リスク無しで」

「そうですね」

「ならもう半日見える様に完成させれば1日は見えるって訳だ。これでクロエの目は見える様に出来るって事が解った。それだけでも十分な進歩だ」

 

 クロエの言葉に景秋はそう言った。クロエは首を傾げる。

 

「何故です?いつも過程より結果を重視する景秋らしくない」

「確かに結果は大事だ。『これだけ頑張った』とか『俺は努力したんだ』なんて言い訳には...慰めしかない。

 俺はそんなのは嫌だ。結果は大事だ。けど、過程だって重視するさ。過程を慰めに使うか躍進の為に使うかの違いだけど...」

 

 景秋の説明にクロエは「あぁ、そういうことか」と心の中で納得した。

 

「どうしてそこまで親身になるのですか?」

「クロエには幸せに生きる権利がある。ISという物の為に産み落とされたクロエにだって幸せに笑う権利がある。そんな当たり前な事をする為に俺らはここにいる」

 

 クロエの問いに景秋はそう答える。

 

「辛気臭い話して悪いな」

「いえ、景秋の思いが聞けて良かったです」

「思いって程じゃねぇけどな」

 

 景秋は照れ臭そうに頭を掻く。クロエはそんな景秋を見てフフッと笑う。

 

「なんか変か?」

「いえ、景秋はもっと冷静で計算で物事を判断していると思っていたので」

「俺だって人の意思とか気持ちとかそういったモノはあると思ってるからな。

 確かに冷静に計算する事も大事だけど、それ以上に人の意思とか気持ちってのは大事だ。意思一つで計算を引っくり返す事だってある。人間の武器は意思の強さ、勇気の強さだと俺は思う」

 

 景秋がそう言って語った。そこで束が部屋に入ってくる。

 

「中々面白いことを言うね、かー君は。意思と勇気が強くても英雄になるか蛮勇になるか...若しくは道を踏み外して鬼になるか。だね」

「縁起でもねぇ事を...それで完成したの?」

「試作機程度ならね。ほらアリーナ行くよ」

 

─────────────────────

 

 束と景秋はテスト用のアリーナで模擬戦をすることになり、二人はアリーナに立っている。

 

「かー君、いったい何時から人の意思なんて曖昧なモノを大事に思う様になったのかな?君はその『人の意思』が怖くなったんじゃなかったのかな?」

 

 束は影秋へと問う。影秋は噛み締める様に言葉を発した。

 

「そうだ。俺は全てが怖くなった。......そんで逃げた。けど、逃げ続けて解った事もある」

「解った事?」

 

 束が聞き返すが、影秋はハッキリと自信を持って答える。

 

「あぁ、その人の意思とやらは良い方にも働くって事さ」

「やっぱり君は面白い。普通、そんな事解ろうとは思わないよ」

「だろうな。けど、それが俺だ」

 

 影秋の言葉に束はポカンとする。

 

「そうだね、それでこそ君だ。君はいつでもそうだった」

「話は変わるけど、束姉さんが乗るの?」

「うん。久し振りだなぁ~......それと......手加減は無しだよ

「ッ......!」

 

 お前を容赦無く殺す。そんな意思が感じられた殺気を最後の言葉が言い終わる前に放つ。殺気に怯みかけた影秋は半歩後退る。

 

「こんなので怯んでちゃ、話にならないよ」

「......」

 

 影秋は束に相対する様に下がった半歩では無く、一歩前に出た。

 

 ......そうだ...こんな所でビビってちゃ何も出来ねぇ......護りたい大切なものも手の隙間から零れ落ちちまう。そんなのは嫌だ...ッ!......

 

「覚悟は出来たみたいだね...なら行くよ。来て、バウンサー!」

「千日の稽古を(ちから)とし、万日の稽古を(まもり)まもりとす。以って此れ我が劔冑なり!」

 

 二人はISと劔冑を纏う。影秋はいつもと変わらず鎧武者であるが、束の纏うIS──バウンサーは全身白の装甲を持つISだった。

 

「先手必勝!」

「行け、ティアーズ!」

 

 束のビームライフルでの射撃を、放ったティアーズで相殺する。そして影秋は大太刀を握り締め、前に出た。

 

「零落白夜!」

「またそれに頼る。かー君の悪い癖だ。相手がISだから...そうじゃ無いでしょ。それじゃアレと一緒だよ」

 

 影秋の腹部に束は蹴りを入れた。ダメージを殺せず、地面を転がる。胃の中の物が逆流し、吐くのをなんとか堪えて息を吸う。

 

「一体、君はいつからそんなに弱くなったのかなぁ~」

「.........」

「君はIS学園と言うぬるま湯に浸り過ぎた。だからそんな綺麗事が吐ける。今までの君ならあんな綺麗事は吐かなかったよ。君はISで箒ちゃんと再会して思い出してしまった。『俺は正義の味方でなければならない』って」

 

 影秋は反論出来ず黙り込む。事実だった。IS学園では自分より強い相手はいない、本気で戦うと口では言いながらも、頭では知らず知らずセーブして戦っていた。それが解ってしまったから何も言えない。

 

「勝手だよ。正義の味方なんて幻想はありはしない。夢を見るのは君の自由だ。けど、その夢を周りに押し付けるのは良くないよ。影秋、現実を認識しろよ」

 

 束の一言は鈍器の様に影秋を襲う。影秋は深呼吸して立ち上がる。

 

「現実を認識しろ...か。中々にキツい一言だ。けど、目が覚めた」

「なら本気で来なよ。ISの産みの親に勝ちたいならね」

「勿論、勝たせてもらう」

 

 大太刀を八相に構えて束に迫る。

 

「さっきよりはまともになったじゃん!」

「あれだけボロクソ言われれば目ェ位覚める!」

 

 影秋の大太刀と束の刀が交錯し、金属音を鳴らす。

 

「目が覚めた気分はどうかな?」

「最悪だよ。こんな気分は最悪な気分だ」

 

 影秋の大太刀による横腹への突き。その突きは何かに軌道を反らされ、地面に刺さる。

 

「今のが......」

「そう。今のがミステリアス・レイディの武装、アクア・ナノマシン。意外と便利だよ、これ」

「武州五輪、コピーは?」

《可能だ、御堂》

「なら仕掛ける。俺らで勝つぞ、武州五輪!」

《応!!》

 

 影秋は自身の大太刀にコピーしたアクア・ナノマシンを纏わせる。

 

「刀に水を纏わせてどうするのかな」

「まぁ見てなって」

 

 振り下ろした大太刀から高圧水流で形成された刃が飛んでいく。

 

「へぇ...面白い使い方するね」

「行け、ティアーズ!」

「同じことの繰り返しに意味は無いよ!」

 

 束はなりふり構わずに影秋に突っ込む。影秋は笑ってそれを待っていた。

 

「同じことの繰り返しでも、誘導とフェイント位にはなるさ」

 

 影秋はナノマシンで作った水の檻で束を捕らえる。

 

「まぁ、IS相手にはこの技じゃねぇとな。零落白夜、発動」

 

 大太刀は青い光を放ち輝く。

 

「雲耀───一閃!!」

 

 大太刀の振り下ろしで束はIS解除を余儀無くされる。

 

「ありゃりゃ...まぁ、コピー出来たなら何よりだよ」

「姉さん......ありがと」

「どういたしまして~」

 

 束はそう言ってアリーナを後にした。

 

「これが新しい武器か...」

 

 一人残された影秋は呟いて拳を握り込んだ。

 

 

 

 




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