インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─   作:4696猫

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 これからも頑張りますので引き続き、暖かい目でご覧下さい!

 それでは、どうぞ!


第七話:乱入者

 第七話:乱入者

 

 休日を終え、クラス代表対抗戦当日。景秋は円香や箒達と観戦する為に観客席に座っていた。

 

「なぁ、景秋。一夏の奴、勝てると思うか?」

「無理だ。初戦が確か...鈴とだったな。なら尚更無理だ」

「仮に零落白夜を当てられたとしても、一回だけだ。一回じゃ削りきれない。最大出力なら別だけどな」

 

 箒の問いにそう答えて景秋は腕を組む。

 

「始まるな...」

 

 景秋の一言で周りはアリーナに視線を向ける。言葉を発した景秋の視線は空を見詰めている。

 

「鈴、お手並み拝見といこうか。お前の専用武装...貰う為にもな」

 

 景秋は誰にも聞こえぬ声でそう呟いた。

 

─────────────────────

 

 鈴の前には白いISを纏うもう一人の男性IS操縦者──織斑一夏がどこから来るのか解らない自信に満ち溢れた表情をして立っていた。

 

 

 ......似ているけど、やっぱり違う。景秋はあんな自信のある表情はしてなかった。あんなに無神経じゃなかった......あんなに希望を持ってはいなかった......

 

 鈴は心の中でそう感じる。覚えている景秋の表情は全て暗いものだった。似ても似つかぬその顔に段々と苛立ちを覚える鈴。

 

 ......つくづく腹が立つ...なんでこんな馬鹿が伸う伸うと生きてて、景秋が死ななきゃならないのよ......

 ......景秋がなんであぁなったのか知ったとき、胸が裂けるかと思う位に痛かった。剣道を辞めた途端に態度を変える...そんなのが本当に家族なのかと疑問に思った。剣道一つでそこまで変わるなんて景秋も思ってなかった筈なのに......

 

 その時、過去に一度だけ景秋から言われた言葉を鈴は思い出す。【鈴、勝ちが決まった勝負なんてありはしないんだよ...。ルールや当人の才能や能力...そんな戦況の中で変わってく前提条件が一つでも多く勝っていれば勝てる。そんはものなんだよ】

 

 ......わかってる、景秋。私は目の前のバカを殺してでも勝つ......

 

 そこで試合開始のブザーが鳴り響く。織斑一夏はいつもと変わらず、ただ突っ込んで雪片を振り下ろす。

 

「そんな攻撃...私に効くと思った?」

 

 鈴は双天牙月の二刀流を左右交互に振り下ろす。戦況は一変した。織斑が攻撃の主導権を握ったと誰もが思っていた。だが、実際は鈴が織斑を押している。左右交互に振り下ろされる双天牙月の猛攻が織斑を襲っている。

 

「......殺す気か...鈴」

「殺...え?」

「鈴の奴、殺気だだ漏れだ。あんなの、私は相手を殺しますよと大っぴらに言いながら戦ってる様なもんだ。何を思ったのか知らねぇが、あんなのはただの八つ当たりだ」

 

 景秋の呟きに箒が反応する。景秋は答える様に言葉を続けた。

 

「見てれば俺の言葉の意味が解る」

 

 実際、目に見える試合はそう見えた。憤りを晴らす様に双天牙月を振るい、それでも近付いて来れば蹴りを入れる。戦闘とも呼べない一方的な蹂躙に影秋は心底イラついていた。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!」

「待つ訳無いでしょ!......オラァ!」

 

 鈴は双天牙月で雪片を上に吹き飛ばしてバランスが崩れた所に蹴りを入れて蹴り飛ばす。

 

「プライベートチャンネルにしたわ。あの時、モンドグロッソであった事を全部話なさい」

「な、何を...話す事なんか...」

「居なくなってたらしいけど、何も思わなかったわけ?」

 

 鈴の言葉に織斑は叫んで答える。

 

「思うわけねぇだろ、あんな奴がいなくなろうと!」

「書き置きがあったってのは?」

「俺が政府の人に言われて書いたよ。なんでも証拠だかなんだかに使うってよ!」

 

 織斑の答えに鈴は呆れて何も言えなくなる。それを隙だと勘違いしたのか織斑は相も変わらず突っ込んでの振り下ろし。

 

「隙だらけだぜ!」

「ハァ......あんたら家族はつくづく腐ってるわね...」

 

 振り下ろしを回転する様に避けて回し蹴りを放つ。

 

「アンタは詳しい事知らなそうね」

「詳しい話は千冬姉が全部してたからな。でも俺も千冬姉もあんな奴が居なくなって清々したよ!」

 

 織斑は答える。鈴は見下す様な目で織斑を見ながらまたも問う。

 

「そう......なら最後の質問よ、本当の事を話なさい。兄さんが居なくなって、どう思ってたの?」

「あんなの兄でも家族でもねぇよ。誰よりも強くて才能持ってたのに、何が「飽きたから」だ。ただ飽きたってだけで剣道辞めたクソ野郎の事なんて何とも思う訳ねぇだろうが!」

 

 織斑の答えを聞いた時、鈴の中で何かが切れた。人として越えてはいけない最後のラインを越えてしまった。

 人間としての最後のライン───人を殺してはいけないと言うラインを越えた。

 

 ......ふざけるな...お前のせいで景秋は剣道を辞めたんだ...お前が弱いから剣道を辞めなくちゃいけなかったんだ...お前らが...お前らが...お前らが......

 

「お前の...お前の...お前のせいでぇぇ!」

「な、なんだよいきなり!」

「うっさい!お前のせいで!」

 

 鈴は我を忘れる事なく純粋な殺意と怒りだけで織斑へと攻撃していく。織斑の反撃は空しく避けられ、逆に双天牙月での連打を食らう。織斑が距離を取った瞬間、景秋が待ち望んでいたものを放った。

 

「これでも食らって沈め」

 

 激しい衝撃音を伴って織斑が吹き飛ばされる。

 

「漸く出したな...武州五輪、コピーしろよ」

《諒解した》

 

 景秋は誰にも聞こえぬ様に呟く。実際、全員が試合に夢中であった。

 

「な、なんだよそれ!」

「言うと......冥土の土産に聞かせてあげるわ。衝撃砲って言ってね、空間そのものに砲身を作る砲台とでも考えれば良いわ」

「反則だろ、それ...」

「反則もクソもないわよ。どこかの誰かさんとは違ってね」

 

 鈴はそう言って織斑へ迫ると双天牙月を振り下ろす。織斑は寸での所で避け、反撃するも衝撃砲で吹き飛ばされる。

 

「ウワァッ!」

「その程度で私に勝てると思ってたのかしら?」

「ま、まだ負けてない!俺は勝てる!」

「ハァ......アンタとのお遊びももう飽きたわ。さっさと止めを刺して終わりにするわよ」

 

 地面で膝を着き、肩で息をしている織斑へと鈴は一歩づつ近付いていく。

 その時、上空からシールドバリアを破り、何者かがアリーナに現れた。

 

「セシリアと箒、観客席にいる生徒全員避難させろ。非常時ならIS使っても良いぞ、責任は俺が持つ。ほら行け!」

「兄さん、私は?」

「俺と一緒にアイツの相手だ。俺らじゃねぇと相手出来ねぇ」

 

 景秋と円香は二人でアリーナへと向かう。だが、そこで箒の声が響く。

 

「ドアがロックされてて外に出れない!」

「ッ......円香。頼んだ」

「わかった。...世に鬼あらば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。ツルギの理ここにあり!」

 

 円香はそのままドアに近付き、太刀を構えた。

 

「皆、下がって。......朧・焦屍剣!」

 

 極限まで熱された太刀でドアを焼き斬ると皆が避難していく。

 

「ありがとう、円香」

「ッ...うん。速く逃げて...」

 

 円香はそのままアリーナへと向かう。箒は逃げる前に景秋へと声をかける。

 

「景秋...気をつけて...」

「箒...あぁ、行ってくる」

 

 景秋はそう答えて円香の後を追う。

 

「お前、何者だ!」

「僕は狭間、狭間悠騎(はざまゆうき)と申します...。一応、君達の敵ですね...はい...」

 

 狭間悠騎と名乗った男は頭を下げる。そこで息を整えた織斑が突っ込んでいく。

 

「よせ!お前じゃ無理だ!」

「ウルセェ!俺ならやれる!」

「おやおや、元気の良い事で......あまり調子に乗るんじゃねぇぞ、クソガキ!」

 

 狭間は歪に笑って織斑の頭を部分展開したISの腕で掴むと地面に叩きつける。

 

「グァァ」

「ヒャハハハハ!!面白れぇ声で鳴くじゃねぇか」

 ......まずい......あの男の能力が解らない以上、迂闊に近付く訳には......

 

 景秋がそう思って距離を取ろうとした時、鈴と円香が突っ込んでいく。

 

「おい、よせ!」

「ハァァァァ!!」

「私と円香ならなんとかなる!」

 

 太刀と双天牙月二刀流の振り下ろし。それを難なく掴む。

 

「この地べた這いずってるクソガキと同じ様にしてやって良いんだぜ?ヒャハハ」

「.........千日の稽古を(ちから)とし、万日の稽古を(まもり)とす。以って此れ我が劔冑なり!」

 

 景秋が劔冑を纏って二人を助ける為に大太刀を担ぐ様に構え、接近する。

 

「.........コイツらに比べりゃ、面白そうなヤツだなお前」

「そうかもな。ソイツらよか俺の方が強いぜ」

 

 景秋は狭間を指で挑発する。

 

「ヒャハハハハ!良いぜ、お前ェ!ウロボロスゥ!!」

 

 狭間は黒に緑のラインが塗装されたISを纏う。だが、ISにしては小さく、景秋達と同じ、劔冑の様にも見えた。

 

「これが俺の専用機、ウロボロスだ。さぁ...行くぜぇ!」

 

 狭間がバタフライナイフを両手に握り景秋に迫る。景秋も中段に構え直し、攻撃に備える。

 

「お前以外に仲間は居ないのか?」

「居るには居るが、この場にいるのは俺だけだぜ。オラ、余所見すんな!」

 

 狭間のナイフと景秋の大太刀が金属音を鳴らす。鍔迫り合いになり、絶え間なく金属音が流れている。

 

「オイオイ、時間稼ぎは詰まんねェぞ!」

「これが時間稼ぎに見えるか?」

 

 景秋は狭間の体を支える軸足である右足を引っ掛けて後ろに転ばせる。バランスを崩した所に、そのまま大太刀の振り下ろしを食らわせる。

 

「ウロボロスの武装はなァ...ナイフだけじゃねぇんだよ!ウロボロス!」

 

 ナイフを手放した狭間の腕の装甲の隙間から鎖が飛び出し、大太刀の振り下ろしを防ぐ。

 

「アブねぇ...ヒャハハ!良いぜ、良いぜ!」

「畜生...ッ!」

「良い作戦だったが...一歩及ばなかったなァ」

 

 狭間がバランスを立て直し、鎖がギシギシと軋む。

 

「今のが決まってりゃ......」

「オイオイ、今更後悔すンなよなァ。白けるだろうが」

「こんな博打に出なくて済んだのによぉ!」

 

 景秋は一瞬で距離を取る。狭間も後を追おうとするが体が動かなかった。

 

「生徒会長殿に感謝だな...。その拘束、生半可な力じゃ解けないぜ」

 

 透明な鎖で体を拘束されていた。

 

「生徒会長殿の武装のアクア・ナノマシンを散布、その後に鎖に形状変化させてお前を拘束。ハァ...こんな博打は二度としたくねぇ」

「クソがァァァ!!」

 

 景秋は大太刀を構え直し、警戒態勢に入る。

 

「鈴、円香。大丈夫か?」

「大丈夫だよ、兄さん。織斑も回収済み」

「助かったわ、景秋」

 

 警戒しながらも景秋は二人に連絡を取る。狭間からは目を外さずに会話を続ける。

 

「.........チッ...わーったよ!」

 

 狭間も誰かと会話していたのかぶっきらぼうにそう言った。

 

「この拘束外してくんねぇか?」

「誰が外すと思ってる」

「何もしねぇよ。相方が仕事終わったから撤収だとよ」

「......させる訳ねぇだろ」

「なら良いぜ、自力で壊すからなァ」

 

 景秋の答えに狭間は納得せずに力を込める。すると鎖は音を立てて千切れた。

 

「中々の鎖だが、俺のには及ばねぇなぁ.........それではまた会いましょう」

 

 狭間はそれだけ言い残して去って行った。

 

「狭間悠騎......三人目の男性IS操縦者...俺や織斑以外にもいたのか...」

 

 アリーナに一人残された景秋はそう呟く。

 

 

 

 今回の件に関わっていた、景秋・円香・鈴・織斑は学園長室へと呼ばれる事となった。

 

 

 




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 次回、インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─

 『戦鬼は真実を語る』
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