インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─ 作:4696猫
それでは、どうぞ!
第十一話:放つ一撃──電磁抜刀
織斑が乱入し特に意味の無い訓練を終えて、景秋はシャルルの元へ来ていた。
「デュノア。少し話がしたいんだが、時間はあるか?無いなら出直そう」
「ううん、大丈夫だよ。どこで話す?」
「あまり人に聞かれたくないからな。ついてきてくれ」
景秋はそう言ってシャルルを連れて屋上へと向かう。屋上に着くと、景秋はドアを塞ぐように背にして寄り掛かる。
「それで、僕になんの話かな?」
「そう警戒するな。と言っても無理な話だな。別に只の世間話をしに来ただけだ」
景秋はそう言ってシャルルの方へ向かうとシャルルの肩に手を置いた。
「ッ......」
「おいおい、俺は肩に手を置いただけだぞ。そこまで警戒する意味が解らないな」
「話す気が無いなら僕は帰るよ」
シャルルは機嫌が悪そうに言ってドアへと向かうも、肩を掴まれた腕を振りほどけなかった。
「まぁ落ち着け。元気良いな、何か良いことでもあったか?」
「それで、話って?」
「そうだな。お前、妹か姉いるか?」
景秋の言葉にシャルルは表情を強ばらせた。
......顔に全て出ているぞ、シャルル・デュノア。たかが兄妹の有無を聞いただけだぞ?腹芸が達者な様には見えないし、良くこれでスパイなんてやろうと思ったな......
「双子の姉ならいるけど、どうしたの?」
「少しデュノア社の事を調べていたらシャルロット・デュノアという君そっくりの人が出てきたからな。更にその人が代表候補生の筈だ。なぜ弟の君がこの学園に?」
景秋は至って普通の疑問を口にする。だが、シャルルは動揺を隠せない。その一瞬を景秋は見逃さなかった。
「え?あぁ、姉さんはデュノア社でテストパイロットもやってて忙しいからね。だから適正が見つかった僕に白羽の矢が立ったって訳さ」
「そのペンダント、専用機か?」
「うん、僕の専用機のラファール・リヴァイブカスタムだよ」
「姉と同じ専用機を使うなんて、姉想いなんだな」
......なんて、コイツに姉がいないことなんて端から解ってる。目的が分かるまでもう少し泳がせるか。俺や俺の周りの奴等に害がなければそれで良い......
景秋の言葉に戸惑いながらもシャルルは言葉を返す。景秋にはその全てが見えているようだった。
「う、うん...まぁね...」
......目を反らすなよ。笑顔がぎこちない。こういう時こそ笑わなきゃな...だからどこかボロが出る......
「ISの設定とかも姉と同じなのか?」
「流石にそれは無いよ。武装とカラーが同じなだけ」
「まぁ、確かにその方が整備はしやすいだろうな」
景秋はそれ以上の事は言わなかった。いや、言えなかったのかもしれない。だが、結果として何も言わなかったのだ。
「僕からも一つだけ良いかな?」
「俺が答えられる範囲の事なら」
シャルルは景秋の答えを聞いた後、じゃあ...と言葉を続けて質問を投げ掛ける。
「東雲君は助けを誰かに求める事はある?助けを求められたとして、助けようと思う?」
「随分と面白い問いだな。禅問答をしたい訳ではなさそうだし、正直に答えよう」
景秋の長い髪が風に吹かれ揺れる。それを気にする事なく、手摺を背凭れに座り込んだ。
「俺は助けを求めた事は無い。この言葉だけ聞けば俺は相当強い人間だと思われるだろう。だが、違う。
助けを求めた事が無いんじゃ無い。助けを求める事が出来なかったんだ。誰にも声が届かない孤独な世界で、独り孤独に耐えていただけだ。だから求めた事はない。
助けを誰かに求められたとしても、俺はその人を助けたとは思わない。その人が勝手に助かるだけなんだよ。俺はあくまでも、手助けをするに過ぎない」
景秋はそう言って立ち上がる。そこでシャルルは少し笑って景秋に言葉を掛けた。
「面白い考え方するんだね、東雲君って」
「あまり考えたことはない。だが、言葉にしなければ、解らない事と言うのはこの世の中沢山あるんだ」
景秋はそう言って屋上に唯一の出入口であるドアへと向かう。
「貴重な時間を割かせて悪かった」
「良いよ、僕も有意義な時間を過ごせたから」
景秋はその言葉を聞いて屋上を後にする。そして帰り道、景秋はどこかへ電話を掛けた。
「もしもし......あぁ、あの件だけど、念のために進めといてくれ。あぁ、俺の口座から引き抜いてくれて構わない。頼んだぞ」
景秋は電話を切るとポケットに携帯を捩じ込む。
「さて、どうなることやら......」
景秋は歪に笑った。
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翌日、教室に入ると何やら教室がざわついている。言葉の断片は聞き取れても、内容の把握までには至らない。
「随分、騒がしいな。何があった?」
「なんでも今回の個人対抗戦で優勝したら男子の誰かと付き合えるらしい」
「要は俺らが知らない所で景品にされている......って事か、箒?それにしても俺ら男子の人権無視も良いところだ」
「まぁ、そういう事だな。誰が言い出した事なのかわからないが、実際そうなっている。噂の一人...なんて事かもしれないが...」
「そうである事を祈っている...」
箒の言葉に頭を抱えながら景秋は答えた。箒は何かを言いたげにしている。
「どうした、箒。何か言いたいことでもあるのか?」
「あぁ、いや、別に急ぎの用でも無いから大丈夫だ」
「......そうか。わかった」
箒と会話しているとセシリアと鈴が景秋の元へやってくる。
「その顔、例の噂聞いたわね?」
「あぁ。誰が言い出した事かわからないが、もしも知っていたら頭を真っ二つに割っている」
「ぶ、物騒ですわね...随分と」
「これでも優しい方だ」
セシリアの言葉に景秋は答えて席に座った。
「ほら、そろそろ時間だ。席に座れ。鈴も自分のクラスに戻ったらどうだ?」
「そうね、それじゃ放課後、模擬戦よろしく!」
「あぁ、わかったよ」
景秋の日常はそうして過ぎ去っていく。その後に起こるであろうハプニングを知らずして......
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放課後、景秋は鈴達との模擬戦の為にアリーナへ向かっていた。
「あの馬鹿教師め...俺になんの恨みがあるんだ。いや、恨みしかないか...」
景秋は千冬にISパーツの運搬作業を強制的にやらされ、集合時間に間に合わず、駆け足で廊下を進む。
「し、東雲君!」
「なにか用か?」
廊下で見かけた事がある生徒に景秋は声を掛けられる。景秋本人は急いでいる時にと内心で毒突く。
「お、オルコットさんと鈴さんが、ボーデヴィッヒさんに!」
「落ち着け、落ち着いて状況を話せ」
「う、うん。景秋を待ってたらしくて、そしたらいきなりボーデヴィッヒさんが二人に模擬戦を...速く行ってあげて!二人共もうボロボロなの!」
生徒の言葉を聞き終えるより先に体がアリーナへと動いた。1分でも速く、1秒でも速く、アリーナへ辿り着く為に──
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「間に合ってくれ──ッ!」
肺だけでなく身体中が酸素を求める。口の中に血の味が滲み、顔を歪める。そんな事に今は構っていられない。ただ目的地であるアリーナへと疾走する。アリーナの観客席への入り口を通り過ぎ、景秋は倒れる様にアリーナの様子を見た。
「──ッ!」
凄惨だった。専用機の装甲があちこちに散らばり、その専用機の持ち主であろう二人はアリーナの端で倒れていた。
景秋は息を整えながら箒や円香の元へ駆け寄る。
「これはどういう事だ。なんで織斑とデュノアがボーデヴィッヒと戦っている」
「兄さん...これは織斑とかデュノア、ボーデヴィッヒだけじゃなくてセシリアと鈴にも原因が...」
「それを聞いているんだ」
景秋が迫って漸く円香は話した。
「鈴とセシリアが勝敗で少し揉めてたみたいなんだ。そこにあの二人が乱入。そこから2対2の模擬戦に発展。そしたらボーデヴィッヒも参戦してぐちゃぐちゃになった感じだよ」
「止めには入ったのか?」
「私のISの武装じゃ二次被害で余計に怪我人を増やす様なものだよ」
円香の答えを聞いて景秋は劔冑を装甲する。
「なら俺が止めに入る。武州五輪、ボーデヴィッヒのレールガンをコピーしろ。見ているのだろう?」
《急な指示だな。御堂》
「良いから速くしろ!」
景秋の怒号がアリーナに響く。武州五輪は景秋の言葉を了承した。
《諒解だ、御堂》
「千日の稽古を
武州五輪を纏った景秋はボーデヴィッヒと織斑の間に飛び込んで小太刀と脇差しの二刀流で二人の攻撃を受け止めた。
「この場にいる全員、ISを解除しろ」
「はぁ?!なんでだよ!悪いのは勝手に入ってきたラウラだろ!」
「話は聞いた。貴様らも元々はセシリアと鈴の模擬戦に乱入した側だろう」
「揉めてる感じだったから止めに入って......」
「そうしてまたお前は零落白夜に頼って、人を殺せる程の刃を振るうってのか?」
景秋はそう言って、武州五輪越しに織斑を睨み付ける。
「な、なんだと!千冬姉の技が人を殺す訳ないだろ。それにISに乗ってるんだ、死ぬ訳が無い」
「自分の武器の特性すら解らねぇほど馬鹿だとはな。テメェの零落白夜はISのシールドをも斬る。その特性故に人を殺せる刃だって事を肝に命じとけ、馬鹿が」
「それだったらお前だって一緒じゃないか。それにラウラだって鈴とセシリアを痛め付けて......」
景秋は織斑の言い訳に沸々と殺気が沸く。そして一言だけ言い放った。
「織斑、お前......少し黙れ」
「ッ!」
「良いから、ISを解除しろ」
景秋の殺気を感じたシャルルと織斑はISを解除するものの、ボーデヴィッヒはISを解除しなかった。
「俺の言葉を聞かなかったか?それとも日本語がわからないか?『俺はISを解除しろ』と言ったんだ。俺はお願いしてるんじゃないぞ。命令してるんだ」
景秋の言葉にボーデヴィッヒは驚きを隠せず、声を漏らす。
「ど、ドイツ語ッ!......喋れたのか?」
「ん?なんだ、日本語が解らないのかと思ってドイツ語で話してみたが......話せたのか。なら俺の言った言葉も解る筈だ。なぜ解除しない?」
「敵を目の前に武装解除などするものか」
「......」
景秋は黙ってボーデヴィッヒを睨む。ボーデヴィッヒはそれに対して煽る様に言葉を掛けた。
「あの二人も、そこの二人も、相手にならなくてな。準備運動にもなりはしなかった」
「......そうか。その安い挑発、乗ってやる」
景秋は少し間を取って、大太刀を構えた。
「フッ......貴様ごときが私を倒せるかな?」
「知るか。少なくともお前に負ける自信は無い」
景秋の大太刀とボーデヴィッヒのプラズマ手刀が交錯する。景秋はすれ違い様に小太刀での攻撃を与え、再度距離を取った。
「武州五輪、さっきコピーしたレールガン。抜刀に応用出来るか?」
《不可能では無い。が、ぶっつけ本番でやるには危険過ぎる。相当な賭けだぞ》
「それでもだ。勝つためならなんだってやる」
《......諒解だ。失敗しても文句は無しだぞ、御堂》
ボーデヴィッヒと景秋はその後も剣戟を演じる。数十回切り結んだ所で、景秋の振り下ろしがボーデヴィッヒを捉える。だが、景秋の動きが止まった。
「う、動けん......」
「どうだ。私の停止結界は。指一つ動かせないだろう」
ボーデヴィッヒは動けない景秋にワイヤーブレードで攻撃する。
「仕方ない。勝つためには、レールガンでの抜刀を使うぞ」
《応ッ!》
景秋は大太刀を鞘に納める。武州五輪の装甲が黒と赤に変色。鞘に雷が纏う。景秋はその状態でボーデヴィッヒへと迫る。
「抜刀、レールガン!」
景秋のレールガンで強化された抜刀がボーデヴィッヒを襲う。だが、実際は強化される事は無く、不発に終わった。
「クッ......」
景秋は大太刀を構えて、武州五輪の中で顔を歪める。そこに千冬がやって来て、景秋とボーデヴィッヒを止めた。
「そこまでだ。個別対抗戦まで一切の模擬戦を禁止する。これ以上、他の生徒への被害が出ることは看過できんからな」
ボーデヴィッヒはISを解除せずアリーナのピットへと飛んでいき、景秋はその場で武州五輪を解除した。
「何が足りないって言うんだ......」
アリーナに一人残された景秋は悔しそうに拳を握り締めた。
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