インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─ 作:4696猫
それでは、どうぞ!
第十二話:戦いに正義の二字を飾るの者達へ告げる
鈴とセシリアが医務室に運ばれたと耳にした景秋はボーデヴィッヒに呼ばれた時間の前に医務室へと足を運んだ。
「怪我の様子はどうだ?二人共」
景秋の言葉にセシリアと鈴はなんとか体を起こして景秋の問いに答えた。
「まだ少し痛いわよ...っ...」
「私もですわ」
「痛むなら無理せず寝ていろ。傷に障る」
景秋は二人にそう言って寝かせると、二人の寝ているベッドの間に椅子を椅子を置き、座った。
「二人のIS、ブルーティアーズは損壊レベルC、甲龍は損壊レベルDと言った所だ。対抗戦は出ない方が良い。尤も、その傷では出れないがな」
「そう......ごめんね、甲龍...」
「...ブルーティアーズ...」
「安心しろ。二人のISは俺の知り合いの整備士が完璧以上に直してみせる。国の方からも許可が降りたらしいからな」
景秋は持っている端末を見ながら二人に告げる。二人は納得したように頷いた。
「勝敗で揉めたのが発端らしいな、二人共。勝敗に拘るのは構わない。だがな。模擬戦の勝敗で揉めるのは阿呆だ」
「「......」」
景秋の言葉に二人は黙った。景秋は溜め息を溢して二人に告げる。
「俺は別に怒っている訳では無い。......二人にも少し話しておこう。戦いに正しさなど求めるな。正義と言う大義名分を掲げるな。正義と言う二字で戦いを飾るな。......戦いの醜さを隠さない為に...次ぐ戦いを生まない為に...」
「えぇ、わかったわ」
「わかりましたわ」
二人はそれぞれ返事をして、頷く。それに安心した景秋は椅子から立つ。
「俺はボーデヴィッヒに呼ばれているからこれで失礼するが、絶対に安静にしていろよ」
景秋はそう告げて医務室を後にして、ボーデヴィッヒの元へと向かった。
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「それで、俺になんの用件だ?俺は俺で忙しいのだ。手短に頼む」
「なぜあそこで止めに入った。あのまま続けていれば織斑一夏を殺しきれた」
校舎裏、話の内容を知らない人が見れば恋愛物の告白にでも見えるだろう。だが、話の内容は真逆の内容。景秋はボーデヴィッヒの問いに対して、淡々と答える。
「確かに、あのまま続けていれば織斑を殺せただろう。だが、一歩間違えれば、お前も殺されていた。知らない訳ではなかろう。
零落白夜、ISの絶対防御すら突破するエネルギー無効化の絶対攻撃の矛。
相手を殺しかねない、殺すまでいかなくとも今後の生活に支障が出てくる怪我を負わせかねない武器。...ヤツは躊躇いもなく振るうぞ。他人から与えられたISを自分のモノと勘違いし、信じて疑わない。そんな奴を殺せるのか?」
「......何が言いたい」
ボーデヴィッヒは景秋の言葉が気に食わなかったのか腰からコンバットナイフを景秋へと向けた。
「そんな矮小な刃物を向けられた程度で俺が怯むと思ったのか?だとしたらナメられたモノだ。......なぜそこまで織斑に突っかかり、恨みを持つ?織斑景秋失踪に関係でもあるのか?」
......正直、自分の旧姓を口にする事すら嫌になる。だが、仕方あるまい......
景秋の言葉にボーデヴィッヒは舌打ちをしながらナイフを鞘に納めて、事の顛末を話した。
「あぁ、そうだ。奴の兄であった織斑景秋が失踪したのだって奴がしっかりしていれば、防げた筈だったんだ。奴は兄を見捨てたのだ。教官も大切な弟を失わずにすんだのだ...」
「それは織斑景秋が失踪しなければ良かっただけじゃないか?つまり織斑景秋を恨むのが筋じゃないのか?」
......あの馬鹿姉が大切な弟だと言う訳がない。奴が大切なのは俺じゃなく、一夏の方の筈だ。...哀れだな、ラウラ・ボーデヴィッヒ。貴様の様な盲信者の末路は奴に利用され、捨てられる運命しか待っていない......
景秋は心の中で顔を歪める。そしてボーデヴィッヒに対しても少しの哀れみを持った。
「教官は国家代表で忙しかったと言っていた。気付いてやれるのが血の繋がった家族と言うものではないのか?」
「その意見には同意するが、あの家庭にはそう言った感情は無かったと俺は思う。当時のネットの掲示板の記録位、調べれば出てくるさ」
景秋はそう言ってポケットの中からUSBメモリーを取り出して、ボーデヴィッヒに放り投げた。
「これは...?」
「俺なりに当時のログを纏めたものだ。これだけヒントを与えたんだ、言われるままに動く人形じゃないのだから自分で調べて答えを見付け出せ。そしてもう一度考え直す事だ」
景秋はボーデヴィッヒにそう言って聞かせる。景秋の言葉にボーデヴィッヒは頷くも、去ろうとする景秋に質問を投げ掛けた。
「ま、待ってくれ!」
「どうしたボーデヴィッヒ。まだ何か用か?」
「お前はなぜ、そこまでする。お前から見た私は赤の他人だろう?なのになぜ?それに...お前は何を知っている?」
「随分と多い質問だな。まぁ、いい。答えよう」
景秋はボーデヴィッヒに投げ掛けられた質問に答える。
「俺がここまでする理由は...見てられねぇからだ。お前は織斑千冬の幻想に取り憑かれてる。そんな奴を放っておいたら利用されて捨てられる運命しか待っていない。だから手助けをする。そして最後に......俺は俺の知ってる事しか知らねぇよ」
景秋はそう答えると、踵を返す。一人取り残されたボーデヴィッヒは小さくなっていく景秋の後ろ姿を眺めて呟いた。
「...幻想に取り憑かれてる...か...」
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ボーデヴィッヒとの会話を終えた景秋。夕飯を終え、後は眠るだけ。そんな時、後ろからデュノアに声を掛けられる。
「ねぇ、東雲君。少し良いかな?」
「ダメだと言っても引き下がらないのだろう?」
「まぁ、そうだね。良いかな?」
「聞いてやるから早く話せ」
景秋は少し呆れの混じった溜め息を溢すと、デュノアの話を聞く為に、近くの休憩用のベンチに腰掛けた。
「実は...僕、女の子でさ...」
「知っていた。貴様がデュノア社からのスパイだと言う事も」
「えぇ!知ってて黙ってたの?!」
「当たり前だ。俺の様な奴が何を言っても周りは信じない。そもそも、言い触らすのが面倒だ」
デュノアの言葉や驚きに微動だにせず景秋は淡々と答える。
「大方、織斑にバレたから俺にも話す。と言った所だろう。若しくは織斑が役に立たないから俺に助けを求めに来た感じか?」
「......なんで東雲君はそこまで一夏を邪険にするのかな?」
「俺が織斑を邪険にする理由?...決まっているだろう。奴が薄っぺらな信念なんぞ掲げ、大切な事から目を反らし、ISとも向き合おうとせず、馬鹿な事をやっているからだ」
景秋はデュノアの問いに対して心底嫌っているかの様な渋い顔をして答えた。
「どういう意味...?」
「奴は自分のやっている事が正義だと言う。正義なんてものを掲げて何になる。戦いとは本来、凄惨なものだ。
それを誤魔化すかの様に正義なんて都合の良い言い訳を飾る。それがそもそもの間違いだ。
奴には正義なんて大層なものを掲げられる程の力も無ければ、責任感も無い。ボーデヴィッヒとの喧嘩とお前の始末に困ったのが最たるモノだ」
景秋はそうデュノアに伝える。デュノアは景秋へと更に言葉を続けた。
「何もしてない東雲君に言う権利は無いと思うけど?」
「あの二人の仲裁をしたのは俺なんだが。それにお前は自分の身分を話した。
つまり、暗に助けてくれと言ってる様なものだ。それに俺を頼る事しか助かる道は無い」
「理由は......聞かなくてもわかるよ。僕がスパイだからでしょ」
デュノアの言葉に景秋は頷いて言葉を続ける。
「あぁ、そうだな。お前が誰かに助けを求めるには自分がスパイだったと告白しなければならない。それが国にバレれば、強制送還を命令される......位なら御の字だ。
最悪の場合、お前は口止めの為に殺される。俺が国のトップなら殺す。自国の機密を持った人間だからだ。自白剤でも打たれてペラペラと機密を喋られても困る」
「なら僕はどうすれば良いのさ!どこにも居場所が無い僕はどうしたら......」
「知らん。俺は聖人君子ではない。助ける人間と見捨てる人間との線引きはする。
今のお前を助けたところで俺にとってなんの旨味も無い。それこそ織斑にでも助けを求めるんだな」
景秋は狂気的な笑みを浮かべてデュノアに告げる。デュノアは涙目になりながらも、言葉を漏らす。
「君は鬼だよ......人間の考える事じゃない!」
「何を今更......。俺は鬼だ。正義やら何やらは耳に挟むだけで吐き気がする」
「ッ......!」
景秋の狂気的な笑みにデュノアは涙目で睨み返す。その目が気に入った景秋は一つの条件を提示した。
「フッ......フフフフフ......アハハハハ!!良い。気に入ったぞ、貴様のその目!その目に免じて手を貸してやらんでもない」
「......信じられるもんか!」
「俺は一度口にした事は貫く主義だ」
「......本当に?」
「あぁ。だが、一つだけ条件を提示させて貰う」
景秋は人差し指を上に向け、デュノアの目の前に持っていく。
「じょ、条件......?」
「親が憎いか?自分を捨てた親が。妾の子と言うだけで迫害した親を恨むか?」
「......」
デュノアは黙って頷く。デュノアのその姿を見た景秋はまたもや笑みを浮かべる。
「なら俺が提示する条件は一つ。親を殺すのは俺じゃない。お前だ。自分の親に引き金を引く覚悟があるのなら手を貸してやる。猶予は個人対抗戦当日までだ。それまでに覚悟を決めておけ」
景秋は右手で顔を覆いながらクツクツと嗤う。
「鬼......」
「助けを求めた相手を間違えた自分を恨む事だ。シャルロット・デュノア」
「シャルって呼んで良いよ」
「どうしてだ?何故、俺に愛称で呼ばせる?」
「共犯者でしょ?僕達」
デュノアの答えに景秋は更に笑みを深めた。
「良いだろう。シャルと呼んでやる。......契約成立だ」
「うん...」
景秋とシャルは握手をした。
「一つ聞いて良いかな。どうやってデュノア社まで?」
「当日まで黙っておくつもりだったが...仕方がない。俺の姉が勤めている企業がデュノア社を買収したらしい。デュノア社に俺が赴いて視察して来いと頼まれてな。
その日が丁度、個人対抗戦の日。試合の途中で抜けても誰も気にしない。シャルは俺の秘書としてついて来てくれれば良い。
その時の服も今後の生活もこちらで支援させて貰う。どうだ?悪くない条件だろう」
景秋のその言葉にシャルは苦笑いを溢した。
「企業代表とは聞いてたけど...か、景秋って役職とかあるの?」
「あぁ。社長補佐やってる。まぁ、ほぼ雑用任されるだけだ」
「改めて君の凄さがわかったよ......」
「さて、俺は用事が残ってるから先に行くぞ」
景秋はそう言って自室へと戻って行った。
「さて、どうなることやら......」
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