インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─ 作:4696猫
それでは、どうぞ!
第十三話:鬼は涙を流さない
翌日の朝、景秋は朝練をする為に5時に目を覚ました。赤色のジャージに着替えて外へと向かう。
「武州五輪。レールガンを応用した抜刀、どうやったら成功する」
《御堂よ。刀を弾丸と考え、鞘を砲身と考えてやってみてはどうだろうか》
「......それでやってみるか。千日の稽古を
景秋は劔冑を纏って居合いの構えを取る。前回と同様に鞘に雷が纏う。極限まで体の中で溜めを作り、一気に放つ。
「レールガンッ!」
前回とは違い、刀身が鞘と同じ様に雷を帯びていた。
「違う......疾さが足りない......もう一度だ」
それから1時間程、同じ事を繰り返したものの成功する事は無かった。
《御堂、やはり無茶だったのではないか?レールガンとは本来、銃器。抜刀に応用は難しいのではないか?》
「難しいって事はつまり、不可能じゃない。何かが足りないだけだ。何かが...」
「四苦八苦しているな」
景秋は声の主の方を見る。そこには先日、話をしたラウラ・ボーデヴィッヒが立っていた。
「お前には関係あるまい」
「レールガンは電磁誘導で加速させて発射する。それが弾丸だろうと刀だろうと変わりは無い。銃器だからとか刀だから出来ないとかややこしい事は抜きに考えてみろ。出来ると思わなければ、出来るものも出来んぞ」
「............武州五輪、次でラストにする。次で必ず成功させるぞ」
《諒解》
景秋は再度抜刀の構えを取る。鞘だけでなく、鞘を支える腕にまで雷が纏う。目に見えて先程とは違うのが明らかだった。
「...レールガンッ!!」
先程よりも加速した抜刀。景秋はそのまま刀を鞘に納めると一息着いた。
「ほぅ...。どうして急に出来るようになった?」
「お前の言葉がヒントになった。それだけだ」
景秋はそう言って武州五輪の装甲を解き、ジャージ姿に戻る。
「それで、俺に何か用か?連日、用事ばかりだが...」
「昨日、お前に渡された記録を見て考えた。あの罵詈雑言は事実なのか?」
「あぁ。俺も詳しくは知らんが、事実らしい。お前が盲信して止まない織斑千冬は...織斑景秋を見捨てて、家族である事を放棄したんだ」
ボーデヴィッヒの問いに、景秋は答える。問いに答えている時の景秋の顔は少し怒りを孕んでいた。
「それで、俺に何かあるのか?まさかそれを聞きに来ただけか?」
「いや、対抗戦のパートナーを申し込もうかと思ってな。貴様程、剣術に長けた者なら織斑の剣も見えるのだろう?」
「アイツのは剣術でもなんでもない。殺傷能力が高いだけの刀の形をした棒を振っているだけだ。技も何もあったもんじゃない。動きも直線的だしな。戦闘の心得が少しでもあれば簡単に捌けるさ」
景秋はそう言って、踵を返す。そこにボーデヴィッヒは景秋へと問う。
「どこに行く」
「走りに行くんだ。日課だからな」
「私もついて行って良いか?貴様の身体能力も知っておきたい」
「......まさか、もう俺と組む気でいるのか?」
「駄目なのか...?」
ボーデヴィッヒが首を傾げて景秋に聞き返す。景秋は断るに断れず、捨て台詞の様に言葉を吐いて走り出した。
「......勝手にしろ」
「なら決まりだな。お、おい!勝手に行くな!」
......はぁ...俺も甘いな......
景秋はボーデヴィッヒに追われる形で走っている最中、そんな事を考えていた...。
走り終えた景秋とボーデヴィッヒ。景秋は普段通りの事をしていただけなので普通にしていたが、ボーデヴィッヒが膝に手を着き、肩で息をしている。
「いつも......あんなハイペースであの距離を走っているのか......?」「あぁ。体力は多いに越した事はないからな。ボーデヴィッヒは...流石軍人といったところだな」
「貴様に言われても嬉しくはないがな......それよりも、ラウラで良い。パートナーなのだからな。私も景秋と呼ぶ」
「あぁ、わかった。ラウラ」
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景秋は朝練を終えて円香と共に食堂に向かう途中、ラウラと再会した。
「景秋。さっきぶりだな」
「あぁそうだな、ラウラ」
景秋は円香とラウラを連れて食堂に到着すると、朝食を乗せたトレーを持って席を探す。
「ん?鈴とセシリアじゃないか。もう体は大丈夫なのか?」
「あ、景秋じゃない。えぇ、私もセシリアももう.........なんで、アンタが景秋と一緒にいる訳?」
「まぁまぁ鈴さん。朝食を摂りながらでもお話は伺えますわ。ねぇ、ラウラ・ボーデヴィッヒさん?」
鈴はラウラに迫るもののセシリアが制止し、朝食を摂る事になったが、ギスギスした雰囲気で朝食となった。
「それで?なんでアンタが景秋と一緒にいる訳?ドイツの国家代表候補生さん?」
「トゲのある言い方だな。恨まれても仕方無い事をしたが......あの件についてはすまなかった。織斑にイラついていて、八つ当たりする様に攻撃してしまった。すまない...」
ラウラはそう言って頭を下げる。鈴は少しバツが悪そうに言葉を返す。
「別に謝って欲しい訳じゃないわよ。あれは私達にも非があるし......それよりも、なんで一緒にいる訳?」
「それは俺が答えよう。俺はラウラとペアで対抗戦に出ることにした」
鈴の問いに景秋が答える。景秋の答えに鈴とセシリアは声を上げた。
「な、なんで!?どうしてよ!」
「そ、そうですわ。なぜ!箒さんや円香さんがいるでしょう?!」
「誘われたからな。それにその二人はペアで出るそうだ」
景秋の一言で二人は黙ってしまった。
「それにお前らだって出れる状況じゃ無いんだ。ならラウラと出たって問題では無いだろう?」
「そうだけど......」
「そうですけど......」
「話は終わりか?」
景秋はそう言って席を立つ。そこで鈴が再度、ラウラに問うた。
「ドイツの軍人なら少なくても聞いた事はある筈よ、織斑景秋の事を」
「あぁ。だが、詳しい事は私も知らされていない。...事実が知りたいのなら私に聞くのは間違いだと言っておく。そして我が祖国が不甲斐ないも事実だ。申し訳無い」
ラウラの言葉を聞いた鈴は黙って席を立ってトレーを持っていった。
「私は間違えた事をしただろうか?」
「......鈴には酷な事をした...。あそこで止めておくべきだったな」
景秋もトレーを持って鈴の後を追った。鈴に追い付いた景秋は鈴に声を掛ける。
「大丈夫か、鈴。すまん、途中で止めておくべきだった...」
「なんでアンタが謝るのよ」
「それは......」
鈴の言葉に景秋は言葉に詰まり、黙り込む。それを見かねた鈴が景秋に言葉を掛ける。
「まぁ、良いわ。やるからには必ず勝ちなさいよ、景秋!」
「あぁ、勿論だ。必ず勝つ」
景秋はそう答えて、差し出された拳に拳を重ねた。
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放課後、ラウラと景秋は借りることが出来たアリーナでお互いの機体について話し合っていた。
「景秋のISはわざわざ口上を唱えなければ展開出来ないのか?」
「それが展開の条件だからな。面倒でもしなければならない」
景秋は言い終わると、武州五輪を纏う為に手を顔に当てて口上を唱えた。
「千日の稽古を
「やはり、そのISは遠距離武装が無いのか?」
「いや、ラウラのレールガンとセシリアのブルーティアーズ、鈴の衝撃砲もコピーしてある万能型だと思うんだが...」
ラウラの言葉に、景秋はそう答えた。景秋の答えに対して、ラウラは更に言葉を続ける。
「......確かにそれだけ聞けば万能型だと思うが、扱いきれるのか?」
「勿論、扱いきってみせるさ。俺だって剣術一辺倒の馬鹿じゃない。剣術には頼るが、勝つためならなんだって使う」
「武士道とやらはどうしたんだ?」
ラウラの問いに景秋は首を傾げて答える。
「そんなモノ、畜生にでも食わせたさ。
「加減がいるのか?」
「必要だ。相手が戦闘不能なのにいたぶるなんて事、俺はしない。人としての質が下がる。情けをかける......と言う意味ではないぞ」
景秋はそう言って言葉を続けた。
「まぁ、良い。タッグ戦はお前が前衛、私が後衛で良いか?」
「それでも良いが、一人ずつに分断した方が楽だと思うが?俺もお前もタッグ戦が得意な方では無いだろう?」
「それもそうだな......」
「なら無理にタッグとして戦わずとも、向こうもこっちを分断させようと動く筈だからな。それに大人しく従えば良い」
景秋の答えに、ラウラは頷く。だが、疑問を持ったのか景秋へと問う。
「必要最低限のコンビネーションは必要だと思うんだが...」
「面倒だが、その都度プライベートチャンネルで報告するしかないな。そうすれば少なくとも、味方への誤射は回避出来る」
「それもそうだな......ならお互いの戦闘スタイルを確認する位はするべきだと思うが?」
「そうだな。それ位の事はしておくか」
そうして景秋とラウラは個人対抗戦へと向けて動き出した。
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時は少し進み、夕食後。景秋はシャルと話していた。
「どうしたんだ?」
「......やっぱり君を頼るしか無かったんだなぁって思ってさ。癪だけど」
「逆にそれ以外に期待していたのか?織斑みたいな無能に人一人の人生を背負うなんて事、出来ない所か誰かにぶん投げるのがオチだ」
景秋は片手に持った缶コーヒーを傾ける。そして言葉を続けた。
「織斑から俺の考えより良いモノが出たか?......出る訳が無いか。出たとしても猿知恵だな、浅すぎて話にもならないだろう。
もしも、良い考えが出たとしたら、裏で誰かか一枚噛んでいると考えて良いかもしれないな。シャルの親の会社にはそれほどの旨味がある」
「前は旨味なんか無いって言ってたじゃないか」
「あぁ。シャル自身にはな。だが、デュノア社は違う。量産機ISのシェアが世界第三位の大企業......。普通のヤツはシャルを助けたとしてもその企業力が欲しいだけなんだろうな...」
景秋の言葉に落ち込んだ様子でシャルは景秋に問い掛ける。
「景秋、君もデュノア社の企業力目当てなの?」
「愚問だな。デュノア社は既に俺の企業に買収された。それなのに企業力目当ても何も無いだろう」
「じゃあなんでさ」
「以前言っただろう。貴様が俺を憎み、恨み、睨み付けた時の貴様の目。アレは俺の同類の目だ。俺も親に、家族に棄てられてる。その時、世界に向けていた目があんなだったんだよ。
お前は俺と同類だ。親に棄てられ、親への復讐を条件に助けて貰う道を選んだ」
「それは......」
景秋の言葉にシャルは言葉に詰まる。否定したくても事実なのだ。
「俺を鬼だと言ったな、人では無いと。......あぁ、そうだとも。俺は鬼だ!人を殺し、その後に流す涙などありはしない。それは醜悪な偽善に他ならない!俺にはもう、流す涙などありはしない。流す涙など、とっくの昔に枯れ果てたさ。貴様もそうなる。シャルロット・デュノア。お前は親を殺してどう変わる?俺と同じく鬼に堕ちるか?いや...どの道、親殺しをしたヤツが人間に戻れる訳もあるまい....。貴様は俺と同じ鬼とやらになるしかないんだよ!クックックックックッ...フフフハハハハハ!!」
景秋は飲み干した缶コーヒーの空き缶を握り潰して嘲る様に、狂気的な笑みを浮かべて高笑う。
「......やっぱり景秋はそう言う事、ハッキリ言うんだね」
「誤魔化して何になる。事実を歪め、誤魔化しの幻想を夢に見て何になる。事実を知った時に、貴様の心は耐えられず、粉々に砕け散る」
「............」
「......シャル。辛い時は辛いと言え。悲しい時は悲しいと言え。苦しい時は苦しいと言え。まだ人であるならば、弱音を吐く位は許される。鬼に堕ちてからでは、弱音を吐く事は出来ないからな......胸や背中位なら貸してやれる」
景秋は先程とは打って変わって、優しい声音でシャルに声を掛け、頭を撫でた。
「じゃあ、少しだけ貸してもらおうかな...」
シャルはそう言って景秋の胸に頭を置くと、子供の様に声を上げ、すがる様に泣きじゃくった。
「...グスッ...ごめんね...Tシャツ汚しちゃって...」
「いや、良いさ。楽になったか?」
「うん......景秋って意外と優しい?」
「鬼だ何だと罵ったヤツの言葉とは思えないな」
「それは......ぼ、僕だって考え位変わるよ」
シャルの言葉を聞いた景秋は微笑むとシャルの頭をポンポンと叩いて部屋に戻ろうとした。
「じゃあな、シャル」
「うん。おやすみ、景秋」
こうして一歩ずつ、シャルロット・デュノアは景秋と同じ鬼に堕ちていく。
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