インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─ 作:4696猫
それでもいいよという方は、どうぞ!
第十四話:男装貴公子の涙
時の流れは早いもので、学年別個人対抗戦当日である。景秋には一抹の不安があった。【ラウラとの連携が取れるのかどうか、レールガンが実践で使えるのか】そんな不安を抱えていた。
......ラウラと上手く戦えるだろうか。生身での訓練なら空いた時間にやってはいたが、ISとなると話は別だ。
幾ら何でも、たった5回の訓練で、パートナーと呼べる程にアイツを信用しているかと言われれば首を横に振るかもしれない。
それに、レールガンが実践で役に立つかも分からん。こればかりは使ってみなければ分からないか......箒と円香が組むとは思っていなかったからな......少し厳しいものがある......
景秋はそんな事を心で思いながらトーナメントの発表を待っていた。
「当日発表の意味がわからん......既にトーナメントは完成していただろうに......」
「学園側のサプライズ精神とやらだろう。約束は忘れていないだろうな?」
「あぁ、織斑はくれてやる。だが、当たらなければ意味がないがな」
景秋がそう言い終えると同時にトーナメントが発表され、自分達の場所を確認する。
「......一年の一番最後だな。相手は......織斑・デュノアペアか......景秋、その心配は無さそうだぞ」
「その様だな。一体、どんな確率だよ...それで勝ち上がれば箒達とか...大変だな」
景秋はそう言って肩を竦める。対してラウラは織斑と戦える事に心を踊らせていた。
「周りが試合で動き出したな。俺らも動くぞ」
「あ、あぁ。遅刻するなよ景秋」
「勿論だ」
景秋はそう言って箒や円香の元へ向かう。
「大鳥さん。来ていましたか」
「そりゃ、息子、娘同然のお前らが試合やるって話だからな。見に来ない訳ねぇだろ。それに、今日来てる各国大統領に挨拶をな。俺は挨拶に行くから、お前らは兎浪の所にでも行ってろ」
昇はそう言って足早に何処かへ去った。
「ハロハロ~久し振りだね~3人とも」
「ね、姉さん!?」
「そうそう君達のお姉ちゃんの
そう。そこに現れたのは紛れもない、間違えようの無い人物。篠ノ之束──東雲兎浪である。
黒のタイトスーツに身を包み、シルバーフレームの眼鏡を掛けた優しそうな女性。それが彼らの姉が変装した姿であった。
「君は......かー君から話は聞いてるよ、篠ノ之箒ちゃん。大変だったんだってね?」
「い、いや...別にそんな事は...」
束はそう言って箒に近付くと、耳元で言葉を発する。
「箒ちゃん。この後、私の所に来て。まだ試作だけど、箒ちゃんの専用機を渡しておくから」
「わかった...」
「良し!箒ちゃん、かー君、円香ちゃん。私はクーちゃんの所に戻るから、またね~」
束はそのまま去っていった。その場に取り残された景秋は一言言葉を漏らす。
「嵐みたいな人だな、相変わらず」
「確かに」
「姉さんはいつもあぁだからな」
景秋の漏らした言葉に二人は頷いて答えた。
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シャルと景秋は他の生徒にバレない様に着替えると、皆が集まっているアリーナと逆の方へ向かった。
「そうだな...シャル、
「わかったよ、景秋」
「あぁ、それと。俺の事は社長補佐って呼んでくれ。怪しまれるかもしれないからな」
景秋は言い終わると指輪を投げた。
「指輪?」
「IS、名前をダークホーク。ラファールを使ったら向こうにバレる可能性がある」
シャルと景秋は同時にダークホークを展開すると、デュノア社へと飛び立った。
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「速いね、ダークホークってIS」
「完全な移動用だからな。武装も最低限だし」
景秋とシャルはそう言いながらデュノア社内に入っていく。
「エヴァンスエレクトロニクス、社長補佐の東雲景秋です。社内視察に参りました」
「東雲景秋様ですね。御待ちしておりました。こちらへ」
景秋とシャルは受付嬢に案内され、社長室へと向かう途中のエレベーター内での会話。
「そちらの女性は...入室をご遠慮頂きたいのですが...」
「私の秘書の鳳です。彼女しか私のスケジュールを知らないのですよ」
景秋が冗談混じりでそう言った途端、受付嬢が景秋に銃を突き付ける。
「はて、なんの冗談でしょうか?」
「奥様の御命令です。シャルロット・デュノアに似た人物がやって来た場合、速やかに排除せよ。と」
「そうですか。ですが......死ぬのは貴女だ」
エレベーターが目的階に到着し、動きを止めて扉が開いた。景秋とシャルが降り、ドアが閉まる瞬間に受付嬢の首が音を立てて落ちた。
「鈍い女だ。斬り殺された事すら気付かないとは...」
景秋の右手にはダークホークの武装であるビームカタナが握られていた。
柄頭にはカラビナに括り着ける為の四角の穴が空いた独特の形状をした柄をジャケットの内側に仕舞い込む。
景秋は社長室のドアを蹴飛ばして中に入る。中にはシャルの父親とその妻がいた。
「どうも。エヴァンスエレクトロニクス社、社長補佐の東雲景秋と」
「その秘書のシャルロット・デュノアです」
景秋は一瞬目を見開いたがすぐに元に戻り、ニヤリと笑った。
「お宅の会社は我がエヴァンスエレクトロニクスの物だ。即刻明け渡せ、アラン・デュノア」
「断ると言ったら?」
アランは平静を保った声で聞き返す。だが、景秋はさも当たり前の様に聞き返された問いに答えた。
「ハァ......何を決まり切った事を。殺すに決まっているだろう」
「なら、これで君達はお陀仏だ」
アランが指を鳴らして自慢気な顔をして椅子にふんぞり返る。だが何も起こらず、声を荒げた。
「ど、どうして!」
「警備隊がやって来ないんだ......か?」
「ッ!」
アランの表情が変わったのを景秋は見逃さず、狂気的な笑みを浮かべて言葉を続けた。
「なんでお前ら重宝してる警備隊が来ないのか。理由は簡単だよ。ここに来る前に全員殺したからだ」
時を遡ってほんの数十分前の事。景秋とシャルは社内に入る前に警備隊を全滅させてから社内に入ったのだ。
「ぐっ......」
「俺は何もしませんよ。デュノア社の権利書さえ手に入ればそれで良い。けど、シャルは違う。そうだろ?シャル」
「うん。......父さん、なんで母さんを見捨てたの?」
景秋の言葉に頷いてシャルは一歩前に出る。それと同時に変装用のカツラを取った。
「......」
「何か答えてよ!」
シャルは心からの言葉を投げ掛ける。だが、返って来た言葉に裏切られた。
「お前を娘だと思った事は一度も無いし愛した事も無ければ、お前の母親も愛していなかった。ただの一夜の関係だったと言っておく」
「そんな......」
そこで今の今まで黙っていたアダムの妻が高笑いをしてシャルに言葉を投げ付ける。
「これで解ったでしょう?泥棒猫の娘風情が愛されてるとでも思ったのかしら?だとしたら勘違いも甚だしいわ」
「.........」
シャルの苦しそうな顔を見た景秋はアランの妻へとビームカタナを投擲した。
「あ、危ないじゃない!」
「少し黙れ、クズ女」
「な、なんですって!」
ヒステリックに叫ぶアランの妻へと近付き、景秋は思いきり、妻の頬を拳で殴った。
「テメェみたいな人間のクズにシャルの何が解る。何を知っている!!」
「な、何を......」
「例え自分が汚れ役になったとしても、それで父が振り向いてくれるのならと、出来もしない腹芸とぎこちない男のフリをしてスパイをしていたコイツの何をお前は知っているって言うんだ!
何も知らない癖に、何も解っていない癖にコイツを...シャルロット・デュノアの事を知った様な口で語るんじゃねぇ!」
景秋は正しく鬼の形相で叫ぶ。それを止めたのはシャル本人だった。
「止めて、景秋。助ける条件は僕がケジメを付ける事でしょ」
「......あぁ、そうだな。後はお前に任せる」
景秋はそう言って数歩下がって腕を組む。
「僕は僕の選んだ道で進んで行く。その一歩がアナタ達を僕が殺して復讐する事だから...」
シャルはそのまま拳銃をアランに向ける。その手は震えていた。
「そんな震えた手で引き金が引けるものか!」
アランはシャルが躊躇っている最中に自身の引き出しから拳銃を取り出してシャルに向けた。
「私はお前を殺すのに躊躇いなど無い。後悔して死ぬと良い。お前は本当に使えない手駒だった」
「シャルロット、目を開け!覚悟したんだろ!引き金を引くと決めたんだろ!なら引け!」
事を見届けていた景秋も声を出す。それでもシャルは僅かに躊躇った。
「......ッ!」
シャルはアランが自分に銃を向けているのを少しだけ開いた目が捉えてしまった。その瞬間、シャルの中で何かがプツンと切れた。
「僕は、アナタを......」
シャルはそう言って引き金を引く。発射された弾丸は何にも阻まれる事無くアランの胸に着弾した。
「......良い気味だよ、全く......」
「...こっちの女は俺が始末する。お前の母親じゃ無いみたいだしな」
景秋は俯くシャルの肩に手を置いてそう告げる。そして一歩ずつ近付いていく。
「ま、待ちなさい!アナタが欲しいのは会社でしょ!なら命まで奪わなくたって良いじゃない!」
「勘違いするな。この会社は既に我がエヴァンスエレクトロニクスの物だと言っている。後の仕事はこのデュノア社にあるゴミを掃除するだけだ」
景秋は床に刺さったビームカタナを抜いてアランの妻へとカタナを振るった。たった一振りで死んだ死体を景秋は冷えきった目で見下ろしていた。
「シャル、大丈夫......では無さそうだな...」
「......ウッ...グズッ...本当...良い気味だよ...ウッ...自業自得なのにさ...胸が...痛いんだ...」
「シャル......」
シャルは俯きながら涙を溢す。景秋は慰めの言葉が見付からず、ただ眺める事しか出来なかった。
「わかってたんだ...全部。僕はただの駒だって。でも、もしかしたら違うかも知れない。なんて頭のどこかで考えてたんだ」
「そうか......」
「でも違ったんだね...本当にただの捨て駒としか思われてなかった...」
シャルの声は消え入りそうで儚かった。
「シャル...別にお前の事を同情する訳じゃない。同情程、哀しい事は無いからな。けどな、シャルにはシャルにしか出来ない事がある筈だ。こうやって苦しんで、悲しんで、その先にはシャルにしか出来ない事が見つかる筈だ」
「なにさ、さっきから!慰めてるつもりなの!?だとしたらやめてくれないかな。景秋が殺させたんじゃないか!」
シャルは景秋の胸ぐらを掴んで叫ぶ。景秋は掴まれたまま言葉を返す。
「あぁ、そうだ。俺が殺させた。だから俺が殺したのと同じだ。お前は自分が親を殺した苦痛に苛まれる。その苦痛に苛まれるのが辛い、親殺しの罪が重いのと言うのなら、俺にも責任があるからな......半分背負わせろ」
「......やっぱり景秋は鬼の癖に優しすぎるよ......」
シャルはそのまま景秋に抱き付いた。
「俺だって始めから鬼だった訳じゃ無い。人として優しい時だってあったさ」
景秋はそう答えてシャルを自分から引き剥がして、アランの机を探し始める。
「どうしたの?」
「時間が迫って来ている。速く帰らないと怪しまれる」
景秋は目当ての権利書が入った封筒を胸ポケットに仕舞うと、ダークホークを展開して、二人はIS学園へと戻った。
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IS学園に到着した二人は速攻で着替えて、それぞれのパートナーの元へ向かった。
「探したぞ、景秋。私達の出番だ!」
「あぁ。行くぞ、ラウラ!」
「勿論だ」
景秋とラウラは拳を合わせてISと劔冑を展開、装甲した。
「来い、シュバルツェア・レーゲン!」
「千日の稽古を
二人はアリーナへと飛んで行く。アリーナへと降り立った四人はそれぞれ武器を構える。
「いざ......参るッ!」
試合開始のブザーが鳴り響いた───
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