インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─   作:4696猫

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 戦闘描写はやはり難しい...今回、オリジナル要素多めですのでご注意下さい

 それでは、どうぞ!


第二話:武者は轟き、空を駆け

 第二話:武者は轟き、空を駆け

 

 クラス代表決定戦までの一週間。景秋は特に何もしなかった。いや、しなかったと言うよりは『出来なかった』と言う方が正しいだろう。

 した事と言えば、オルコットの戦術を見た事と箒から少しばかり剣術を教わり、自分の勝てる方法を考えた程度のものだ。

 

「ハァ...結局、試験の映像見て箒から剣術教わっただけか...BT兵器についても調べはしたけど、コピーして使いこなせるかと言われれば自信は無いしな」

「ま、まぁ、兄さんならなんとかなるって。それに私もピットに入って応援するから。絶対に勝ってよね」

「可愛い妹の頼みだしな...勝ってくるさ」

 

 景秋はそう言って腰を上げると、重い足取りでピットへと向かった。

 

「織斑はまだISの設定が終わっていない。先にお前が出ろ」

「あの...俺は後って話じゃ?」

「良いから出ろ、命令だ」

 

 千冬のその言葉に景秋の表情は険しくなる。

 

「ここは軍隊じゃねぇぞ。学校だ。テメェの指導方針にゃ目ぇ瞑ってやるが、命令だとか絶対だとかそんなん俺の知ったこっちゃねぇ」

「貴様...!」

「その貴様ってのも前々から気になってたんだよね。俺の名前は東雲景秋だぜ......まぁ、良いや。さっさと終わらせられるならそれに越したことはない。先に行ってあげますよ」

 

 景秋は優越感に浸った様な顔で千冬に告げる。この表情は演技で相手が少しでも嫌だと思えば御の字のつもりでしたものだ。

 だが、結果は激怒。もはや殺しに来る様な表情だった。

 

「オルコットの相手、してきますかね...」

 

 観客含めた全員に姿が見える様にピットの出口ギリギリに立つ。実際、ISに乗っていない景秋を見て観客達はざわついている。

 

「あら?ISに乗らずに来るとは、勝負を諦めましたの?」

「いや何。俺のISは少々特殊でな、この姿で来なければ替え玉だのなんだのと言われそうだからな」

「なら勝負は諦めてないと?私に勝てるとお思いで?」

 

 オルコットの挑発。乗る必要は無く、その程度の挑発でと逆に嘲笑してやれば良い。だが、景秋は昔から変わらぬ歪で狂った様にクツクツと笑う。

 

「ククククク...フハハハハハハ!!逆に問うが、俺がお前ごときに負けるとでも?」

「な、なんですって!」

「まぁ、やってみなきゃわからねぇよな......。千日の稽古を(ちから)とし、万日の稽古を(まもり)まもりとす。以って此れ我が劔冑なり!」

 

 顔に右手を添え、口上を唱える。言い終わると同時に地面と平行に腕を伸ばし、握った拳を開く。そしてそこには鎧武者が居た。

 

「ふ...全身装甲(フルスキン)...」

「さぁ......殺ろうぜ」

 

 景秋は大太刀を右手に握り、棒立ち。オルコットはライフルを構える。

 

『試合開始!』

 

 アナウンスの声と同時にオルコットが動いた。

 

「さぁ、踊りなさい。私、セシリア・オルコットとブルーティアーズが奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

 ティアーズと呼ばれた兵器が景秋を襲う。爆発音と共に、土煙が上がる。

 

「景秋...」

「兄さん...」

 

 ピットにいる箒と円香が共にある一人の男の名を呟く。土煙が晴れる──そこには先程と変わらず棒立ちの鎧武者が立っていた。

 

「な、なんで!どうしてティアーズの攻撃を受けて立っていられますの!」

「別にあんなの当たらなければ良いだけの話だろ。お前、むやみやたらに撃ちすぎなんだよ」

 

 その言葉に観客含めて言葉を失う。皆が景秋の敗けを考えた。だが、予想に反して景秋は無傷で立っている。更に、攻撃は受けていない。避けたとまで豪語しているのだ。

 

「今度は俺の番だぜ」

 

 景秋はそうオルコットに告げる。告げたと同時に大太刀を八相に構え、オルコットに迫った。

 

「ウオォォォォォ!!」

 

 勢い良く振り下ろされた大太刀がオルコットのIS、ブルーティアーズの左腕部を襲う。だが、直撃する事無くシールドに阻まれた。

 

「これがISのシールド...厄介だな...」

「遅いですわ!」

 

 距離を取ったオルコットのライフル──スターライトmarkIIIのビームが景秋の纏う武州五輪の頭部に直撃。景秋は堪らずよろけ、頭を左右に振る。

 

「武州五輪、損害は」     

《損害は軽微。ビーム兵器の対策は束殿がしておいたぞ、御堂》

「ならあのブルーティアーズとか言うBT兵器はコピー出来そうか?」

《可能ではあるが、如何せん兵器なのでな、時間が掛かる。そしてあの兵器の原理は理解しているか?》

「昨日、頭に叩き込んだ」

《諒解した。ならばやってみよう》

「頼んだ」

 

 会話を終えた景秋はまたしてもオルコットに迫る。だが、スターライトmarkIIIの射撃に翻弄される。

 

「良くここまでついて来られますわね。称賛に値しますわ」

「そりゃ、どうも...ッ!」

 

 景秋は自分の目の前にオルコットがやって来るまで耐えていた。そしてその時が来た。目の前に来たオルコット目掛けて一直線に飛んでいく。飛んでくるビームも何もかもを避ける事無く。

 大太刀の間合いに入った瞬間を見逃さず、躊躇い無く振り下ろす。大太刀と景秋の気迫に押され、オルコットは吹き飛ばされる。

 

「なんて馬鹿力...シールドエネルギーがかなり削られ...」

「来い、ブルーティアーズ」

 

 オルコット含め、その言葉と行動を見聞きした者は驚愕する。景秋が纏う鎧の色が青色に変色し、周りにはブルーティアーズに似た兵器が数機浮いている。

 

「な...なんで...貴方がティアーズを...」

「お前の武装をコピーしたからだ。あぁ、名前は思い付かなかったからオルコットのをそのまま使わせて貰うぞ」

 

 景秋の言葉にオルコットは言葉を失う。オルコットだけではない。その光景を見ていた観客すら言葉を失っていた。

 

「そ、それでも...私は、負けられません!」

「そうか、そう来なくちゃなぁ!」

 

 オルコットはライフルを、景秋は大太刀を再度構える。

 

「行きなさい、ティアーズ!」

「迎え撃て、ティアーズ!」

 

 二人のティアーズがお互いに撃ち合いを始める。本人達はその場に佇んでいる。

 

「幾ら私のティアーズをコピーしようと技量が私に敵う筈がありませんわ!」

「なら、俺も俺なりの戦いをさせて貰うさ!」

 

 景秋は大太刀を構えてオルコットへと突っ込んで行く。

 

「な、なんで!?同じBT兵器なら攻撃は...!」

「俺とお前のBT兵器が同じ物だったとしてもな、俺とお前は同じ物じゃねぇ。テメェが攻撃出来なかろうと、俺には関係ねぇ!」

 

 景秋はそう叫びながら下段にしていた大太刀を振り上げる。轟音と突風を伴って振り上げられた大太刀はオルコットのライフルを掠める。

 

「チッ!まだまだぁ!」

「私だって!」

 

 二人は距離を取って空へと飛ぶ。景秋の元に戻って来たBT兵器は全6機中全機が破壊。オルコットも同様に全機大破。

 

「お互いにBT兵器は無くなりましたわ...」

「ここからが正念場...とでも言いたげだな」

「勿論、狙い撃ちますわ!」

 

 オルコットは言葉通りに景秋を狙い撃つ。だが、景秋は自分を狙い飛んでくるビームを大太刀で斬る。

 

「俺だって負ける訳にはいかない!俺が勝つ!」

「私だって負ける訳には!」

 

 オルコットはライフルからビームを放つ。放たれたビームは景秋の左太ももに命中。景秋は堪らずバランスを崩した。

 

「損害状況は!?」

《損害は危険域突入手前だ。束殿が施したビームコーティングが剥がれ始めている。決着を付けねば先にこちらがやられてしまう》

「なんとかならないのか!」

《どうにもならん。やられるのは時間の問題だ》

 

 武州五輪の言葉に景秋は苦い顔になる。武州五輪はそれでもと言葉を続けた。

 

《それでも、御堂の力なら勝てる。短期決戦で一撃に全てを込めれば勝てるやもしれん...あくまで可能性の話だがな》

「ならそれに賭けるさ...さて、吉と出るか凶と出るか...ッ!」

 

 景秋は放たれたビームを一つずつ避け、接近する。

 

「ならこれでも!」

 

 オルコットはそう言って奥の手であるミサイルを景秋に向けて放つ。ミサイルは景秋に直撃。爆炎に包まれる。

 それでも景秋は止まらない。爆炎を振り払う様にスピードを上げた。

 

《一撃に込めるは己の総て。力も精神も信念も意思も魂も...何もかも総てを込めて相手に最強の一撃をくれてやれ!》

「わかってる」

 

 武州五輪の言葉に景秋は答える。自然と大太刀を握る手から余分な力が抜けていく。

 景秋の間合いは、大太刀の刀身と自身の腕の長さの合計値。それは、ほんの数メートル。対する相手はビームライフル、リーチの長さでは圧倒的に負けている。

 だが、景秋はただ無我夢中に自分の間合いだけを考え、その間合いに入る方法を眠る間も惜しんで模索し続けた。

 そして景秋はその答えを見つけ、掴んだ。その答えとは──

 

「これが俺の総て──」

 

 総てを置き去りにする加速。それこそが景秋が掴み取った答えだった。

 

「雲耀──迅雷ッ!!」

 

 振り下ろされた大太刀の斬撃は音も光も何もかもを置き去りにして、オルコットのライフルごと斬り落とし、戦闘不能まで追い込んだ──

 

『せ...せ、セシリア・オルコット、シールドエネルギーエンプティ!!勝者、東雲景秋ィ!』

 

 アリーナにアナウンスが鳴り響き、観客達から歓声が上がる。

 

「私の負け...ですわね...完璧に...」

「いや、そうでも無いさ。俺がティアーズをコピー出来なかったら...俺がお前と同じ弱点を持ってたら...負けてたのはリーチと経験差で俺が負けてた。だから完璧って訳じゃ無い。だろ、セシリア」

 

 景秋は劔冑を解除してセシリアに歩み寄ると、隣に座り込んだ。

 

「名前...」

「ん?あぁ、嫌だったか?あんな激闘繰り広げた相手に苗字ってのも締まらねぇから。嫌なら苗字で呼ぶけど?」

「いえ、私もお名前で呼ばせていただきますわ。景秋」

「そう来なくちゃな...っと...ライフル斬り飛ばしちまったが...大丈夫...じゃ無いよな?」

 

 二人は立ち上がり、握手を交わす。その際に景秋は苦笑いを溢しながら問う。

 

「勿論ですわ。私のライフルにはまだ予備がありましてよ?」

「なら良かった...ティアーズの方は?」

「ティアーズにも予備はあります。景明の方こそ大丈夫ですの?」

「俺は元々ティアーズが無くても戦えるかんな。そこんとこは大丈夫」

 

 二人はピットに戻って次の戦いへと備える。

 

「セシリア、負けんなよ?」

「景秋こそ、私に勝ったのに『織斑に負けました』なんて聞きたくありませんわ」

 

 セシリアの言葉に景秋は笑って大丈夫と答えた。其々の支度をする為に二人は別れた。

 

─────────────────────

 

「良し、アイツらの所行こうかね」

 

 景秋が一人呟いて円香らと合流しようとした時、千冬から声を掛けられる。

 

「おい、待て」

「なんでしょう。無駄話に付き合う程、暇では無いんですけど」

「あの最後の一撃はなんだ。危険だろう」

「御宅の弟さんの零落白夜...でしたっけ?あれに比べれば安全ですけどね~」

 

 景秋は薄ら笑いを浮かべながら答える。千冬もそれに反論する。

 

「一夏なら扱いきれる。お前のISの方がよっぽど危険だ。解析する、寄越せ」

「俺の専用機はちゃんと申請出してますよね?複製能力持ちの第三世代ISだって。解析するってんなら俺が立ち会っても構いませんよね?」

 

 ......ISじゃねぇから解析した所で無駄なんだけどさ~。大方、姉さんに頼むだろうし、幾らでも誤魔化せるっちゃ誤魔化せるけど、面倒だしなぁ~......

 

 景秋の心の中の声を当たり前だが、知らずに言葉を続ける。

 

「機密事項があるのでな、解析室には生徒は入れん。だから渡せと言っている」

「なら俺含めたエヴァンスエレクトロニクスの開発部主任と社長に許可求めて下さい。専用機とは言え、社に所有権がありますので」

「話を聞かん奴だな。渡せ!」

「あぁ、連絡先解りませんか?なら俺が社長に連絡するので、説得してください。まぁ、あの人に言いくるめられて終わりでしょうけど」

 

 景秋はそう言って携帯電話を取り出すとどこかへ電話を掛け始める。

 

「もしもし、景秋です。学園の教師...かの有名なブリュンヒルデ様が社の専用機を解析したいと交渉を...はい、分かりました。変われとの事ですので」

「ッ...貸せッ!」

 

 景秋から電話をひったくると電話に出る。景秋はその間、欠伸をしながら待っていた。電話が終わったのか景明に投げ返す。

 

「おっと...危ないなぁ...分かりました...御忙しい時、失礼しました」

 

 景秋は電話を切る。

 

「チッ...ならこうしよう。お前が勝てば大人しく引き下がる。だが、一夏が勝てばお前のISを寄越せ」

「ハァ...怒鳴られたのに良くそんな言葉が出ますね。まぁ、良いですよ。俺、負けませんし」

 

 景秋はそう言って歩き出す。

 

「織斑君に伝えて下さい。『殺すつもりで潰しに行くから覚悟しておけ』って」

「......ッ...」

 

 景秋の目と雰囲気から放たれた殺気に千冬は少し怯んだ。

 

─────────────────────

 

「おめでとう、兄さん」

「まずは一勝だな、景秋」

「おう、ありがとな。箒、円香」

 

 景明は二人に礼を言って頭を撫でる。

 

「さてと、箒。織斑はどんな感じだ?」

「あれでは勝機は無いな。お前と戦う前のオルコットなら勝機は多少なりともあったが...景秋と戦って油断も隙も無くなった。そんなオルコットに勝つのは無理だ」

 

 箒の言葉を聞いた景秋は円香に渡されたスポーツドリンクを飲みながら試合が流れているモニターを見つめていた。

 

 

 

 ──結果として、セシリアの圧勝で勝負は幕を閉じた。

 

 

 




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 次回、インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─

 『武者は戦鬼になっていく』
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