インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼となる─ 作:4696猫
それでは、どうぞ!
第四話:戦鬼でも教えるのは優しい
クラス代表決定戦の翌日。景秋は憂鬱だった。セシリアは自分からクラス代表を辞退し、残るは自分と織斑のみ。
周りからは「織斑じゃ絶対に無理だから東雲君がやってね」と目で訴えかけてくる。それでも景秋はやりたくないものはやりたくないと辞退を申し出たのだ。
「ということで、クラス代表は織斑一夏君に決定しました。一繋がりで縁起が良いですね」
......山田先生...今のクラスにその言葉は地雷ですぜ......
景秋は頬付いて窓の外に見える空を見上げる。周りからはコソコソと「織斑君じゃ無理だよね~」とか「あぁ、対抗戦終わったね」などの言葉が聞こえて来るが、織斑は持ち前の鈍感さでスルーする。
「な、なんで俺なんだ!勝ち数が多いのは東雲だろ」
「そりゃぁ、俺は辞退したからな。企業の方から正式に学園で役職に就くなとお達しが来た。だから辞退したし、セシリアも辞退。残ったのはお前だけって訳だ。まぁ、決定権は俺にあるわけだから文句言うなよ」
景秋は投げ槍にそう言って休み時間になるのを待っていた。
「景秋はなぜ辞退しましたの?」
「言ったろ。企業の方からってさ」
「いえ、景秋自身の考えをお教えくださいな」
「別に、無理に経験を積む必要も無いってだけの事だ。俺がコピー出来るのはアビリティと第三世代ISの専用武装のみ。
けどこの学年にゃ、専用機持ちは五人だけ。しかも日本代表候補生の更識簪って奴は未完成のISを未だに作ってる。なら辞退するが吉だろ」
景秋の言葉にセシリアは納得したのか頷く。景秋は思い出したかの様にセシリアと箒に問う。
「そう言えば、セシリアは今日の夜にある就任会とやら行くか?箒も行くのか?」
「私は顔だけでも出しに行こうかと。姉さんから連絡するって言われてな。夜は空けておきたいのだ」
「私も今回は欠席しようかと。あのような暴言を口にして顔を出せる筈がありませんわ」
二人の答えに景秋は頷く。円香はセシリアの言葉に反応して、言葉を返す。
「気にしなくて良いと思うけどねぇ~。正直、兄さんと織斑の戦いでセシリアの暴言なんて忘れてるでしょ」
「そう祈るしかねぇって訳だ。ほら授業始まるぜ、席に戻んな」
景秋は時計を見ながらそう言って皆は解散して各々の席に着いていく。
......さぁて...眠い一日の始まりだ......
景秋はそう心の中で怠そうに呟いて眠るために目を瞑った。
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時は進み、IS実習の授業。アリーナに集められた景秋達。
「専用機持ちは前に出ろ」
千冬の指示に面倒臭がりながら景秋は前に出た。
「なぜお前ら兄妹はISスーツを着ていない」
「そりゃ、全身装甲ですので。要らないです」
景秋はそれだけ言って黙ってしまう。
「はぁ...まぁ良い。ISを展開しろ」
そう言われて一番速く展開したのはセシリアだった。景秋と円香は手を前へ伸ばす。
「やるか。いくぞ、円香」
「わかった。......世に鬼あれば鬼を断つ。世に悪あれば悪を断つ。ツルギの理ここに在り!」
「千日の稽古を
二人は揃って劔冑を装着。周りからは驚きの声が上がる。
「円香さんのISって東雲君のと似てるんだね」
「鎧みたいでカッコいい!」
などの声を制止して、千冬が指示を出す。
「旋回や上昇、停止、下降などの飛行動作を行って貰う。アリーナを三周、各自自由に始めてくれて構わない」
その指示が出た途端に、セシリアは上昇する。その顔は真剣そのもので、意識の高さが伺えた。
「お先に失礼しますわ」
「行くぞ、円香」
「うん!」
景秋と円香はセシリアを追って上昇する。だが、織斑は一人遅れていた。
「他の三人はもう既に飛んでいる。何をモタモタしている!」
「わ、わかってるよ!白式!」
ロケットの様に飛び出した織斑だが三人に追い付けず、フラフラと飛んでいる。
「遅いですわね、織斑さん」
「そりゃな。白式は性能だけで言えば俺の武州五輪とドッコイかそれ以上。そんな機体を初心者が乗って操れるかと言われれば答えはノーだからな。F1カーを初心者ドライバーが運転出来るわけがないのと一緒だ。お先!」
「私もお先に行くよセシリア!」
景秋と円香は更に加速する。だが、円香は装甲の重さ故に思うように加速しない。
「そろそろ三周かな」
「そうだな。止まるぞ」
円香の言葉に答えて景秋と円香は空中に留まる。
「やっぱり織斑がビリッケツか」
「お疲れ、セシリア」
「やはり、織斑さんの機体性能は侮れませんわ...」
織斑が三人に合流したのを見た千冬は降りてこいと指示を出す。
「そうだな、陸から10センチの所で制止してみろ」
「なら私から行きますわ」
「おう。んじゃ次は俺で」
セシリアがある程度のスピードで降りていく。
「12センチと言った所だ。流石だな」
「ありがとうございます」
セシリアは頭を下げて完全に着地する。
《御堂。後、2秒で10センチだ》
「オーケー」
景秋は武州五輪のナビに従って停止。横を見れば円香も一緒に降りてきていた。
「二人とも10センチピッタリだ」
「「ども」」
問題は最後の一人、織斑一夏だった。加速に加速を重ね、隕石の如く地面に突撃。三人は咄嗟に他の生徒達の前に立ち、飛んでくる土砂を弾く。
「誰が飛んでこいと言った!降りて来いと私は言ったんだ!」
「だ、だって千冬姉」
「織斑先生だ!」
織斑は頭を生徒名簿で殴られ続ける。眉間を指で押さえ、千冬は溜め息吐く。
「もうそろそろ時間だな。織斑はその穴を埋めておけ。そうだな...残りの時間は各自、専用機持ちに疑問などを聞いて解消しておけよ」
千冬はそう言ってどこかへ行ってしまう。
......いやいや...生徒ほっぽってどこ行くのよ~......
「東雲君、ISの操作って何を意識してやってるの?」
「そうだなぁ~なるべく動作を小さくする事かな」
「動作を小さく?」
「そう。ISに乗るとどうしても一つ一つの動作が大きくなりがちなんだ。歩くとか走るとかね。それをいかに自分の体と同じように扱えるか。それが重要なんじゃねぇかと俺は思う。結局は自分で動かすわけだからな。普段と同じように動ければ自然と上達するさ」
一人の女子生徒の問いに景秋は丁寧に答えた。景秋は他の専用機持ちを横目で見やる。すると全員、丁寧に質問に答えていた。
......よくやるよ...俺、もうキツいです。普段無意識だし...鎧となんら変わらないから......
そこで救世主の如く、景秋の元に箒がやって来た。
「ほ、箒。どうしたんだ?」
「夜、姉さんからの連絡に景秋も連れて来いって言われてな」
「あぁ、その事か。わかった。いつもの屋上か?」
「いや、今回は違う。私が案内するから待っていてくれ」
「わかった」
そうして時間が過ぎていった。
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「束姉さんはどこにいるんだ?」
「そろそろ来る筈なんだが...」
「やぁ二人とも」
箒と景秋の真後ろに束が立ち、二人に声を掛ける。
「姉さん...」
「直に会うのは久し振りだね、箒ちゃん」
「束姉さん。なんで俺まで」
「かー君には私と一緒に本来の目的を話して貰おうかなって」
「もう話すのか?まだ早いんじゃ...」
「変に拗れるより良いよ」
景秋の言葉に束は真剣に答えた。その真剣な顔に、景秋は冷や汗を流す。
「束姉さんの判断に任せるよ」
「うん。それじゃあ、箒ちゃん。これから言うこと、忘れずに覚えておいてね」
「何が...」
箒の言葉を束は遮って言葉を発する。
「黙って聞く。...私達の目的はISを元々の所に戻す事、それには危険も伴う。だからかー君と一緒にいて。
私が調べた感じ、千冬は危険だ。裏で色々とやってるみたいだから、あまり深入りしちゃいけない」
「箒、束姉さんの言ってる事は正しいよ。俺も調べた。これだ」
景秋はそう言って携帯を箒に見せる。そこには千冬が誰かと会っていた写真が写っていた。
「誰か解らないが、学園と専用機のデータの資料を渡してる。プリントされた履歴が学園に残ってた。嫌な予感しか無い」
「そりゃ初耳だ。その相手探しとくよ」
「わ、私は何をすれば...」
箒の問いに景秋が答えた。
「強くなることだ。専用機が無くても訓練機で俺と円香と訓練すれば強くはなるからな。それだけだ。
束姉さんがお前の専用機を作ってる。それを受け取っても戦えるようにすることが箒の今、やるべきことだ」
その時の景秋はまさしく鬼の顔になっていた。
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次回、インフィニット・ストラトス ─名も無き武者は悪鬼になる─
『編入生は戦鬼を知っている』