やっと会えた。   作:サラメンス

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間違えなく は誤用みたいで、本来は間違いなく が正しいようですね。
ガッツリやらかしておりました。


11

「良ければこちらでもどうぞ。クッキー作りすぎちゃって」

 

「喉乾くわよね。ちょっと待って、コーヒーでも入れてくる」

 

「四葉―。協力してあげたんだから洗い物してきて。そんな怖い顔しないでって。別に盗ったりするわけないじゃない」

 

ふう。とても落ち着く。食後のデザートにコーヒーまで頂けるとは思わなかった。俺は多分世界で一番夕食を満喫しているだろう。中野家は毎日こんなに良い食生活を送っているのだろうか。ご飯も美味いし気も利くし、将来二乃は良いお嫁さんになるはずだ。そんな予感を感じつつ、俺は程よい苦みのコーヒーを啜る。

 

「どう?結構よくできたほうだと思うし、上杉君も大分満足しているように見えるけれど」

 

自信を持った顔つきでそう俺に尋ねてくる。その言葉に恥じないもてなしの数々だった。これが毎日続けば俺は一週間を待たずして骨抜きになってしまうだろう。いつの間にか四葉がいなくなり二乃と2人きりになっていた。確か四葉は食べ終わった食器の洗い物をすると言っていたか。申し訳ない。

 

「とても美味しかった。今も色々してくれて申し訳ない」

 

「そんなこと言わなくても別に良いのよ。本当に作りすぎちゃっただけだし、趣味でやってるくらいでそんな風に食べてくれると嬉しいのよ」

 

建前は感じない。本当に本心からそう思っているようだ。勿論全て鵜呑みにするつもりは無いが、たまにはお邪魔してご馳走になりたい。もうすっかり俺の胃袋は掴まれてしまったのだ。

 

ん?何を考えているんだ。何を俺はゆったりのんびりしているのだろうか。そもそも俺は何故ここに来て何をしたら帰る予定だったのだろうか。少し疑問に思えばそれは直ぐに答えにたどり着く。マズイとまでは行かないが急いだほうがいいかもしれない。俺のせわしない様子を疑問に思ったのか小首を傾げる二乃。お前は何も悪くないんだ。俺が迂闊だっただけで。

 

「すまない。ちょっとというか大分くつろいでしまった。さっき言っていた用事って言うのは四葉に料理を振舞ってもらうってことで、用が済んだら帰る予定だったんだが、長居しすぎた。今すぐ帰る。四葉にはよろしく伝えておいて欲しい」

 

それだけ言って帰る準備をする。幸い何かこれと言ってやっていたことも無かったので鞄を持てばそれはすぐに終わった。お邪魔しました。そう言い残し俺は部屋を後にする。

 

「ねぇ、ちょっと待ちなさいよ。別に私も私たちも特に迷惑していないわ。食後にすぐ動くのも良くないでしょう」

 

「いや、でも悪いし」

 

足だけ止めて振り返らずにそう返答する。これが例えば四葉ならもう少しくつろいでからにしても良かった。その内俺の家にも呼ぼうかなとも考えているぐらいだ。だが、二乃と個室で2人きりという状況は、少々よろしくないのではないかと思う。

 

流石五つ子というべきか、俺にはまだ見分け方がさっぱり分からない。先ほど起こされたときに二乃を四葉かと言い、若干不機嫌になったのも記憶に新しい。それに四葉と話すときのような態度で、二乃と接してしまうかもしれない。そうなってはいけないと思ったのだが。

 

「良いって。それとも何かやましいことでもあるの。無いなら良いじゃないの。四葉もまだ帰ってこないし、ちょっとくらい話しましょうよ」

 

そんなことを言われたら首を縦に振るしかあるまい。そうするべく振り向いて驚く。彼女の目はどこか薄く開き、それでいて俺をジッと捉えていた。腰が引けたが、頷くしかなかった。

 

 

 

「そんなに怖がった顔しないでよー。本当に暇だからちょっとお話しようと思っただけだよ。風君」

 

なんだそれは。信用できるはずがない。その言葉を聞いた俺は余計顔を強張らせたに違いない。相も変わらず掴みどころのない二乃に翻弄される。俺にはどちらかと言えば好意的だと思ったが、それは単なる思い違いだったのかもしれない。大体四葉以外とはほとんど初対面レベルだぞ。そんなふ、風君なんて言わないだろう、普通。

 

だがしかし二乃と2人きりで話せるという事をプラスに考えてみる。例えば四葉に関することを聞いたり、そもそも仲直り出来たのかという微妙に彼女がいたら聞きにくいこともこの状況なら可能だろう。自分で思っているよりも事態は深刻では無いのかもしれない。とりあえず気になっていることを聞こう。

 

「じゃあ俺から質問させてもらう。まず風君って何だ。特に深い意味が無いなら俺の早とちりという事で気にしないんだが、そんな会ってそんなに経っていない相手にそういう事言うか。普通」

 

「あっ、そっかぁ。風君はまだわかんないもんね。じゃあ別にわかんないままで良いと思うよ。特に理由は無いし、ただ名前を言うのがめんどくさかったってことで」

 

悪戯が成功した時の子供の様に少し意地の悪い表情を浮かべる。これに関して答えてはくれないか。ではこれはどうだろうか。

 

「次行く「ちょっと待って。風君だけが質問するのは不公平だし、次は私の話に答えて」

 

「わかった」

 

出鼻をくじかれたようだが仕方ない。俺に聞きたいことがあるようにあちらにも色々聞きたいことがあるだろう。何となく予想はついているが。大方どうしていきなりご飯を食べさせてもらう事になったのとか、そういった類の話だろうとは思う。何故かは俺にもよく分からない。

 

「えっと、じゃあ最初に。ありがとうございます。四葉を救ってくれて。私たちではどうすることも出来なかった彼女をこんな風にしてくれて。最初は本当に驚きました。殆ど会話をしない四葉が自主的かつ私に頼みごとをしてくるなんて。嬉しかったです。それもこれも貴方が風君だったからなんて、奇跡ってあるんだなって思いました」

 

そこまで言って正座をし、深々と床に着くんじゃないかと思う位のお辞儀をしてきた。ちょっと待ってくれ。意味が全く分からない。とりあえずそんな風にしてもらうのも困るし、丁寧な口調は四葉に似ていて何だかとても嫌な感じがしたので直してもらった。そこまでしてから俺は疑問を投げかける。

 

「何言ってるか分からないがとりあえずどうも。ところでどういう事だ。俺だったからって何だ」

 

「じゃあ口調は戻させてもらうわ。何となく聞いていると思うけれど、私たちは昔結構色々あって四葉との関係が相当に悪化していた。ここまではおっけー?」

 

黙って頷く。やっぱりそうしてもらえた方が二乃だなって感じがする。そんなに付き合いが長いわけでは無いが。

 

「それでね。私たちに頼らずになるべく自分で済ませるようになったのよ。そんな四葉が自ら話し掛け、それでいて私に頼ってくれるなんて。姉妹の中で私だけよね。あー嬉しい。今まで一番料理していて良かった瞬間ね。それに感謝してますよってそういう事」

 

なるほど。四葉の言っていたこととおおむね合致している。やはり本人が思っているほど四葉は嫌われていなかったようだった。きっとすれ違いが重なった結果なんだろうな。しかし俺だったからっていう事がよくわからん。そこら辺、どうなんだ。

 

「ああ、忘れてた。昔四葉とあったでしょ。それで四葉が貴方の事を私に自慢してきたの。あの頃はまだ素直だったのに。悔しい。そこで知ったの。貴方が風君だって気が付いたのは四葉に言われてからだけど。しかし素敵よね。だって昔会った男の子と数年後に再び会えるなんて。ちょっと羨ましいわね。ちょっと」

 

何だろう。さっきまで二乃に抱いてきたイメージが崩れ去っていく音がする。料理も出来て、クールで、でも姉妹思いの優しい女の子。そんなイメージだった。間違ってはいないが、ただちょっと残念だ。

 

しかしそうか。俺だからって言うのも少し分かった気がする。もし仮に四葉と完全に初対面だったならば、ここまで打ち解けられたかどうか怪しい。もう知りたいことが大体聞けた気もするが、他にも色々聞いてみよう。実はそこそこ興味があるのだ。

 

「という事はご飯を作っている間に色々と姉妹の交流が出来たってことで良いんだな。じゃあ今日からでもいっぱい話し相手になってくれよ」

 

「言われなくても話し掛けてやるわ。ウザがられない範囲で。それにこれから料理を教えて欲しいって言われたし、安心しなさい」

 

良かった。これで状況は大分変わるだろう。味方が1人でもいればかなり楽になるはずだ。さて、そろそろ帰ろうか。結局また外が真っ暗になっている。だがしかし、今日に関しては大きな収穫だったので全然構わない。姉妹仲良くなることに越したことは無いだろう。

 

「そろそろ四葉の事手伝ってくるから、行ってくるわ。そんなに時間かからず戻ってくると思うけど、どうする?」

 

「いや、そろそろ帰ろうと思っていたからお暇しようと思う。今日は本当にありがとうな。先に失礼する」

 

 

 

本当に今日は良かった。この調子で四葉には孤独を感じさせないようにして行きたい。帰り際にキッチンに寄って帰ることを伝える。また送っていくと言ってきたが流石に遠慮をした。俺なんかより今は久しぶりの家族団らんを楽しんでほしい。

 

「明日から美味しいご飯を作れるように頑張ります。風太郎君今日はありがとうございました。まだ1人だけですが、もう一生関わっちゃいけないと思っていた人と話せて良かったです」

 

「喜んでもらえたら嬉しい。料理もいいけど、勉強もちゃんとしてくれよ。まぁ、やってなかったら俺が教えるんだが」

 

最後のところについては言及するかどうか悩んだがやめた。どんなに言っても自己評価の低さを俺からどうにかするのは難しそうに思える。自分で自分を許せなければ中々難しいと思う。

 

「最後に良いですか。答えるのは明日でも全然構いませんが」

 

なんだ。そう返す。不安定な彼女がやや戻ってきているように思えて不安がぬぐえない。

 

「こんな風に姉妹全員が仲良くなれたとして、それで満足していなくなるなんてことはやめてください。貴方は絶対に私を見捨てないでくださいね」

 

ああ、そうか。彼女はまだ見捨てられる恐怖に悩まされているのか。これで彼女の心が少しでも晴れたなんて考えた俺が甘かった。後ろから人が来る気配を感じ、すぐに家を後にした。




喉痛い、咳出る、鼻水すごい、腹痛い。
でも頑張る!
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