やっと会えた。   作:サラメンス

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「それでは、私たちは一度家に帰って浴衣に着替えてきます。先に会場に行っていてください」

 

「私も行っても良いですか?ちょっと気になります」

 

「それじゃあ、お姉さんのおうちに行こうか」

 

「うん!」

 

らいはの手を引きながら、三人は歩いて行った。あの真面目な五月に任せておけばそちらはとりあえずは安心だろう。問題はこっちだな。

 

こんな気まずくなっていて何かあったのだろうか。喧嘩なのかはよくわからないがもしそうなら早く仲直りしてください。

 

二乃は何だかんだ面倒見がいいし、三玖も不愛想なだけで本当は良い奴だ。だから会話が弾んでいるに違いない。姉妹仲良くキャッキャウフフのガールズトークが展開されて!

 

「「「…」」」

 

やばい、全然そんなこと無かった。そこら一体を完全に負のオーラが包んでいる。どうした、二人とも。ちょっと頑張ろうぜ。さっきも俺にわざわざ全員が話し掛けてきて変だと思っていたんだ。アレだろ。場が持たなくて俺を見つけて橋渡し役的な何かにしようと思っているんだろ。

 

いやしかし参った。俺だってコミュニケーション能力が特段高いわけでもない。この空気を変えうるであろう可愛い可愛い我が妹は行ってしまったしな。とりあえずここに立ちっぱなしでいるわけには行くまい。いったん移動しよう。あー緊張する。

 

「ここで待っていてもアレだし、まずは会場に行かないか?」

 

「そうよね。行きましょ」

 

「お祭りいこ」

 

「…」

 

頑張れ、ニ乃!三玖!俺ではこの状況を打開するのは不可能だ。コミュ力お化けの力を見せてくれ。

 

まぁ無理だよな。歩みを進めながらも無言を貫き続ける一同。どうにか打開の方法が見つかれば良いのだが。最悪一花が帰ってくるまで待機すればどうにかなるだろうか。一対一同士なら楽勝だと思うんだが。ん?意外とそれは良いかもしれない。このままでは沈黙が解決してくれるとも思えない。しかしいきなりその提案は不自然だよなぁ。軽く頭を振って考えを打ち消す。

 

「ねぇ。ちょっと聞こえる。気まずくてもうやばいんだけど何とかならない?」

 

いきなり顔を近づけられ、少しびっくりする。彼女もこの状況をどうにかしたいと思っていたようだ。しかしそれは少しマズい気がする。傍から見て俺たちは小声でいかにも内緒話をしているように見える。そんな怪しいことをしてしまえば。

 

「私、先に行っています。皆はゆっくりして大丈夫ですから」

 

そう言うと、四葉は早歩きで先へ行ってしまった。会場にドンドン近づいているせいか、人混みで混雑してきている。ここではぐれてしまうのはマズイ。

 

二人にアイコンタクトを取ると、頷き返された。運動能力では負けているが、それは普段の話。草履を履いている彼女に負けることは無いだろう。俺は地面を蹴った。

 

 

 

思っていた通りだった。今日は大きなハンデを貰っている。すぐに追いついた。声を出しても止まってくれないので、申し訳ないと思うが白く細い腕を掴む。そこでようやく静止する。

 

ああ、こんなに悲しい顔にさせてしまった。振り向いた彼女はその大きな目いっぱいに今にもこぼれそうなほど涙を溜めている。そして自分の顔がどういう状況なのか気が付いたのだろう。俯いてしまった。

 

ここはちょっと場所が悪い。強引ではあるが、なるべく痛くならないように近くのベンチまで移動する。抵抗するかとも思ったが思いのほかあっさりと着いてきてくれてホッと一安心しそうになる。しかしまだ原因は全然解決できていない。まずは話せればいいんだが。

 

「もしかして聞き取れませんでしたか。ゆっくり来て大丈夫って言ったじゃないですか。だから、二乃と一緒に来てよかったんですよ」

 

「四葉」

 

止めてくれ。そんな痛々しい表情で。そんなの、誰だって嘘を付いているってわかる。

 

「あ、もしかしてあんな風に行ってしまったせいでそういう空気じゃなくなりましたか。本当にすいません。そんなつもりでは無かったんですが」

 

「四葉」

 

「というか折角の休日なのに、私に会ってしまってほんと災難でしたよね。やっぱり行かなきゃよかったですね」

 

「四葉!」

 

渋々こちらに顔を向けるも、もう最低限すら取り繕う事が出来ていない。折角今日のお祭りの為に準備してきたであろう浴衣にも、走ってきたせいか汚れてしまっている。

 

「どうしてこんな風に逃げたんだ。二人も心配していたぞ」

 

「あの場に私がいることが間違いでした。空気も悪くしてしまって。やっぱり行かなければ良かったです。それに」

 

「それに、なんだ?」

 

「あのままいたら、二乃が憎くてどうにかなっちゃいそうだったから…」

 

四葉からの嫉妬に胸が痛む。さっきの俺たちの行動は四葉にとって単なる内緒話では無かったのかもしれない。そして俺が思っている以上に四葉は拒絶されることを恐れているようだ。

 

こうなるまで放っておいた俺がダメだった。自分の気持ちを伝えるのが苦手な四葉が言葉にして言っていたことを何故忘れてしまっていたのか。自身で言っていただろう。『私を見捨てないで』と。

 

最近の俺は正直調子に乗っていたと思う。姉妹の皆との中を少しずつ取り持つことが出来て、更に成績の方も順調に伸びている。それゆえの慢心だ。

 

「四葉。落ち着いて聞いてほしい。さっきのは本当にこれっぽっちも深い話なんかじゃない。そしてニ乃はお前と俺を引き離そうとはしていない。俺だって一番大事なのは他でもない四葉だ」

 

「本当ですか。なら教えてください。今の私は可愛いですか。風太郎君に釣り合っていますか。他の誰よりも私が大事なんですよね?」

 

黒く澱んだ深い深淵のような瞳で俺をじっと見つめてくる。もう彼女は俺だけしか見えていない。それ以外、何も。

 

俺の想いは彼女よりは確実に少ないだろう。しかし、こんな風になってしまった彼女の事をどこか愛しく感じる。

 

「好きだ。お前の事が好きだった。あの時から、ずっと」

 

「ありがとうございます。私の為にそんなことを言ってくれたんですよね。嘘でもとても嬉しいです」

 

涙でぐちゃぐちゃになりながら無理矢理笑う。なるほど。どうやらこの言葉は信用できないらしい。なら、仕方が無い。俺は彼女の唇を奪う。柔らかい。

 

「んんっ!?」

 

動揺したのか抵抗するが、今更俺を引き剥がそうだなんて土台無理だ。そうしてしばらく唇を味わい、名残惜しいがゆっくり離す。

 

「これで分かっただろう。俺はお前の事が好きだ。四葉は俺の事をどう思っているんだ」

 

「好きですぅ。世界で誰よりもあなたの事が好きです」

 

蕩けた表情でそう言う。意識もおぼついていないが、言質は取った。最後にもう一度だけ言っておこう。

 

「四葉。愛してる。ずっと」




ありがとうございました。自分が未熟ゆえ、これ以上話を続けられないと思い、こういった形を取らせていただきました。
ラストは結ばれるで確定していたのでそれがちょっと早くなっただけです。
それでは、また機会があればよろしくお願いします。
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