やっと会えた。   作:サラメンス

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予想以上に見ている方がいるので少々胃が痛い。


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「幻滅しないでくださいね。ギリギリ国語がちょっと出来るくらいで他はその、凄いです。とにかく」

 

こちらに目線をチラチラと合わせたり外したりを繰り返し、恥ずかしそうに頬を赤らめる。出来ないのはわかっているから大丈夫だ。俺はニッコリと作った笑顔を貼り付け、無言でテストを渡す。そんなに難しく作ったつもりはない。国語は自信があるようなので、5教科分しっかりやってもらおう。赤点は取らないで欲しいが、彼女の表情を見るなり厳しそうに思える。じゃあ頑張れ。

 

「わ、分かりました。やります。全力で行きますよ!」

 

早速答案に名前を記述する。動き自体はしっかりとして迷いがない。このままの勢いで行って欲しいと思った矢先、手が止まる。おい、ちょっと早くは無いだろうか。記号も用意したしもう少しその、頑張れ。

 

こちらに無言のまま目で訴えてくる。これは無理ですーとかだろうか。こっちも睨み返してやる。俺の眼光に恐怖を感じたのかは分からないが速攻でテストに目線を戻す。勉強に関してはスパルタでいかなければ四葉のためにならないだろう。心を鬼にして孤独な戦いに勝利してもらいたい。観念したのか唸りつつペンを走らせていく。やはりスパルタの方が彼女には良さそうだ。

 

「残り10分だ。頑張れよー」

 

顔を上下に動かし、頷く四葉。俺の方は気にしないで集中してくれ。時間に関して、5教科フルでやってしまうと流石に時間が足りないので、問題数少なめにしてある。そんなに時間がかかっているわけでは無いが、少し暇である。初めの方は年頃の女の子の部屋を物色するわけには行かないだろうなという考えのもと、熱心に頑張る四葉の姿を見て内心応援していたのだが、俺が見れば見るほど手が止める頻度が多くなったため、見るのは断念した。少し残念だったわけではない。そりゃそうだろ。うん。

 

そんなわけで俺は、綺麗に整った四葉の部屋を観察するくらいしかやる事が無いわけだ。。改めて見まわしてみると、別に他と比較したわけでは無いし、俺の家の様に物がないわけではないのに片付いている。掃除も行き届いているし、几帳面そうな四葉のイメージそのままだなと思った。姉妹の中なら一花もしっかりしてそうだし綺麗なんだろうなという事が容易に想像できる。俺が来るから片付けたという線も勿論あるが、付け焼刃では直ぐにボロが出るはずなので多分元からなのだろう。

 

どうにかして面白そうなものを探そうとすると、何やら箪笥よりはみ出ている何かを発見する。長さ的に下着などではなさそうだしちょっと確認してみる。普段ならこんなことはしないはずだが、四葉と話せてテンションが上がっているのかもしれない。一応見て、こちらに意識が向いていないことが分かったのでそれを取り出してみる。何だろうこれは。鉢巻?はたまたバンダナとかか。手ぬぐいにしてはちょっと細いか。

 

不思議そうにする俺の姿を見てクスっと微笑んだ四葉だったが、俺の手に持っている物を確認し、一瞬でこちらに飛びついてきた。やめろ。危ないじゃないか。

 

「今はテスト中だ。テストに集中しろ。あ、こら触るな。やめ、離せ」

 

「テストならもう終わりました。いいから早く返してください。人の物を勝手に取ったらドロボーですよ!」

 

「わかった。わかったから離してくれ。返すから。お前運動神経高すぎるぞ」

 

観念してそれを差し出す。色々と密着しているということで俺は別にいいのだが四葉は恥ずかしくなかったのだろうか。今の体勢は俺に四葉が馬乗りになっているという感じだ。こうなればもうフィジカルでも負けている相手に敵うはずもない。少し疲れたのか汗も掻いて全体的に焦っている四葉は何故か動揺している。そんなに悪いことをしただろうか。というか四葉は俺の方よりももっと先を見ている。目線の指し示す方向を俺も見てみる。そこにはお盆に飲み物とお菓子を置いて俺たちのために差し入れに来たであろう次女。二乃が立ち尽くしていた。表情は兎も角、目は全く笑っていない。

 

「いや、あのね。邪魔したら悪いかと思って静かにドアを開けたのよ。その勉強頑張ってそうだしここらで一回休憩がてらクッキーでも食べてもらおうかなとか思ったんだけど、じゃ、邪魔だったわね。ごゆっくりー」

 

バタン。やたらと大きく響いた音に一気に目が覚める。これは第三者から見たらかなり危険な場だっただろう。とりあえず今言うべき言葉は間違いなく一つだ。

 

「「ごめん!」なさい」

 

 

 

 気まずくはなったが今日やるべきテストは終わった。解答をサクッと採点してみたわけだが。これは少し頭が痛くなりそうだ。

 

「すごいぞ!100点だ。5教科合わせてだがな」

 

「だから言ったんです。前置きはしましたよー」

 

悪びれもなく言っている風だがきちんと目を見て言ってくれないということで罪悪感自体はありそうだ。というかさっきの一件も合わせてだろうかふてくされている。気になる各教科の点数配分だが、一教科ずつ確認して国語が40点で他が約10から20の幅といった所だろう。いきなり出来なかったところを突っ込んでいってスパルタで行こうと考えていたが、今日はプラン変更だ。褒めて伸ばす作戦でやっていくことにする。

 

「国語が結構よかったな。ここの単元はそこそこ難しく作ったつもりだったがよくできているぞ。特に登場人物の心情を答える問題はほぼ合ってるじゃないか。その調子だぞ」

 

これで元気になってもらえると良いのだが、それを聞いてより一層表情を暗くする。どこか自分で自分を罵るように彼女は呟いた。

 

「別にそんなのわかっても意味がないんですよ。現実の人がどんなことを考えているのか全然わからない。裏で何を考えているのかわからなきゃダメなんです」

 

これは彼女の地雷を踏んでしまったか。過去に人間関係で何かあったのかもしれない。申し訳ないが今は過去を振り向いては欲しくない。前だけ向いてほしい。

 

「俺は寧ろ人の考えなんかわからないほうがいいと思う。何でも分かったらそれはそれでつまらないだろ。それに人を信用できなくなる。俺は四葉を信じているんだ。今は厳しいけどここから頑張れば絶対にいい成績を取って、姉妹に並ぶどころか超すことすらできるはずだ。だから、俺を信用してくれ」

 

俺の言葉を受け、四葉はやたらとソワソワし始めた。わなわなと震えて感情を押し殺そうとしているようにも見える。爆発するとちょっと俺ではどうしようもないのでいったん落ち着いてもらおうか。

 

「じゃあこ「私が風太郎君を信頼していないなんてそんなこと絶対ありません!正直、風太郎君が私の事をどう思っているのか知りたい、何を考えているのか知りたいです。でも、他ならない貴方だからこそ信じて言葉で思っていることが本心だって思えるんです。私は馬鹿なのでビシバシ教えてください。気遣ってくれたんですよね。もう大丈夫です」

 

吹っ切れたな。なら安心してこっちも本気で挑めるというものだ。俺の全てを叩きこんでやる。覚悟しておけ。

 

「風太郎君、なんか怖いですよ。そのーさっき言ったことですけど少し加減してくれるというか手心を加えて欲しいななんて。いや、冗談ですええ」

 

 

 

それなら嬉しいな。なら始めようか。とりあえずテストの復習をして全部覚えてもらうからな。後なんか言う事はあっただろうか。そうだ。アレがあった。気になったことは何でも解決したい主義なのでな。俺が集中できなくなるのは避けたい。

 

「そういえばさっき俺から取っていった鉢巻みたいなのあれなんだ。恐らく装飾品だとは思うから付けてくれないか」

 

「嫌ですよ!あんな恥ずかしい。昔は何でつけていたんだろう」

 

正直その恥ずかしそうな表情が見れただけで十分なのだが俺にも悪戯心が湧いてきた。いつもと違う四葉を見たいし。

 

「じゃあアレはせめて何なのかくらいは教えて欲しいのだが。それを教えてもらわなければ、俺も厳しくなる」

 

「わかりました。私を苛めて楽しそうですね。あれはリボンです。こんな年齢になのに最近まで頭にリボンをつけていた痛い女ですよええ」

 

「そのうち見せてもらうぞ。じゃあやるか」

 

「み、見せませんよ。もうやるんですか。ちょっと休憩とかしませんか。あ、ちょっと無視しないでくださいよー」

 

なんかこういう空気の方が昔を感じられて俺は好きだ。いつかあいつが自分を許せるようになったらリボンも付けてこんな風に接してくれるだろうか。そんなことを考えながら、俺は正面にいる生徒に意識を移した。




なんでカットインせんのやろジャビットくん
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