初日からPKしたけどデスゲームだったキリトくん   作:〆鯖缶太郎

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 サブストーリーです。
 時系列が本編と前後する可能性があります。
 一話ごとの文字数は普段より少なめになると思います。
 最後にアンケートあります。

【追記】
 サブタイトルのキャラ名は、その一話に登場するメインキャラを書いてます。
 本文の最初と最後にある(〇/〇)という数字は、今回の話が次話などに直接繋がっているかどうか表記したものです。


サブストーリー
リズベット&シリカ


(1/2)

 

 

 第二層の階層ボスが討伐されてから、もうすぐ一週間が経とうとしている。

 攻略のペースは着実に上がっているようで、最前線は既に第三層の迷宮区に辿り着いていた。

 そんなプレイヤーを支援する存在であるリズベットは、今日も《はじまりの街》の転移門がある中央広場でスミスハンマーを振るう。

 

「よし! お待たせしました!」

 

 強化に成功したことに心の中でガッツポーズをしながら、依頼主に装備を返却する。相手も結果に満足がいったようで、リズベットに「ありがとう」と残し、去っていった。

 鍛冶屋としての立ち振る舞いも大分(だいぶ)板についてきたと、その手に握る《トーラス・ハンマー》を見ながらリズベットは思う。

 それは、第二層の階層ボスである《アステリオス・ザ・トーラスキング》のLA(ラストアタック)ボーナス。ディアベルとの約束が無事に果たされ、彼から受け取ったものだった。

 その見た目はアステリオス王が使用していた大金槌を、人間でも使用できるように縮小されたもの。散りばめられた宝石が埋め込まれており、柄に刻まれたトーラス族を表す王家の紋章からも高級感が溢れている。

 性能としては、以前までリズベットが使用していた《アイアン・ハンマー》の二つ上、ゴールドと同等以上と考えられている。

 何故曖昧(あいまい)なのかと言えば、まだ《ゴールド・ハンマー》は一般に解放されておらず、βテストの情報を元に精査した結果だからだ。

 もちろん扱うには相応の鍛冶スキルの熟練度が要求されるのだが、リズベットは見事この条件をクリアしていた。

 伊達(だて)に朝から晩まで強化依頼などを引き受けていた訳ではない。

 

 だが、そんなリズベットにも誤算はあった。

 はじまりの街で鍛冶屋を始めたはいいが、依頼者のあまりの多さにパンクしたのだ。

 それもそうだ。NPC鍛冶屋よりも安く、そして成功率の高い、現状この世界でただ一人のプレイヤー鍛冶屋。命と同じ重みのある装備を託すなら、誰だってリズベットの鍛冶屋を利用する。

 そんな問題を解決しようと、リズベットは街で偶然出会ったサーシャという名の眼鏡をかけた女性と意気投合。

 彼女は街で孤立していた十歳前後の子供たちを教会に集めて保護していたのだが、その現状にリズベットはある決断を下した。

 そうだ、子供たちに鍛冶スキルを教えよう――と。

 

「いらっしゃいませー!」

「ませー」

 

 リズベットの隣では、今日も元気に子供たちが接客をする。

 鉄床(アンビル)に載っているのはアイアン・ハンマー。今では熟練度もそれなりに上がっており、一層で店売りされているようなグレードの低い装備であれば、子供たちでも問題ない程度の強化成功率となっていた。装備のメンテナンスもできるため、リズベットの負担は確実に減った。

 

 もちろん、それなりに投資はした。

 かつてキリトとアスナとやった時のように、大量に装備を買い込んで強化する熟練度上げを敢行したのだ。

 資金(コル)に関しては、正直問題なかった。

 ハッキリと言ってしまえば、リズベットは稼いでいる。それこそ、この世界で一番コルを持っていると自負するくらいには。何だったら、やろうと思えばプレイヤーホームだって買うことができる。

 なので後は子供たちのモチベーションの問題であったが、それに関しては本人たちが想像以上のやる気を見せたことで杞憂(きゆう)に終わった。

 後は街中でプレイヤーショップを開くために必須の《ベンダーズ・カーペット》や必要な道具を買ってあげれば無事に新米鍛冶師の誕生、という訳である。

 

 子供たちは時間交代で、朝から晩まで数人で鍛冶屋を開いている。

 対してリズベットは子供たちの手に余るグレードの高い装備の強化や売買をメインに担当。ぶっ通しでやるのではなく、朝の6時~8時、昼の11時~13時、そして夕方からは狩りを切り上げ帰ってくる者が多いため、16時~20時までと時間指定で活動している。

 強化依頼などの値段も以前より割増(わりまし)にし、子供たちと明確に顧客の層が分かれるようにした。

 時間外でも声を掛けられたら対応するが、その場合は追加料金が発生する。

 

 また、子供たちの熟練度上げで使用し、強化に成功した装備の一部を圏外に出る意欲的なプレイヤーに配るようにした。

 当然、一人につき装備一式までだ。

 希望者は一時的にパーティーに加入してもらい、名前のスペルを名簿に記入して過去に受け取り履歴がなければ渡す。

 もしかしたら既に受け取った誰かが指示し、不正に入手している可能性もある。

 だが、所詮は序盤の装備なので気にする必要はないとリズベットは判断した。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 もうすぐ朝の時間が終わると思っていたところ、一人の少女がリズベットの前に現れた。

 そわそわとしてどこか挙動不審な少女は、棚に飾られた売り物用の装備をざっと確認した後、意を決したようにリズベットを見た。

 

「あのっ! 予算十万ぐらいで買える、最高の装備を売ってください!」

「え? 十万?」

 

 思わず、といった様子でリズベットは聞き返す。

 目の前の少女は、それこそ教会に保護されていても何ら違和感がないぐらいには幼い。

 しかもその見た目は初期装備。とてもではないが、十万コルも稼いでいるとは思えない。

 まさかあり得ないと思うが、体で稼いでいる? それとも誰かから盗んだ?

 そんな勘繰りをしながら、リズベットは確認を取る。

 

「一応確認なんだけど……。そんな大金、どうやって手に入れたの?」

 

 これでまだ、少女が二層辺りの装備を身にまとっていたのなら、幼いながらに頑張っている程度で流せたのだが……。さすがに聞かない訳にもいかないだろう。

 リズベットの問いに、その意図を理解したのか。少女は両手をぶんぶんと振って「ち、違うんです!」と、全力で否定する。

 

「実は今朝、ピナとそっくりな……。あっ、ピナっていうのは私の現実(リアル)の飼い猫なんですけど、その子にそっくりな猫を見つけたんです。だから思わず追いかけてたら、廃屋(はいおく)があって落とし穴の先に大量のコルがあって……。なので、決して盗んだとかではない……と、思います……」

 

 最後の方は尻すぼみとなってしまったが、少なくとも嘘をついているようには見えなかった。

 別に手持ちが塞がる訳でもないコルを、プレイヤーがそんな廃屋に隠す理由もない。

 恐らく、GMである茅場晶彦なりの遊び心なのだろう。

 そう判断したリズベットは、一先ず問題はないと結論付けた。

 

「うん。取り敢えず、経緯は理解した」

「それなら――」

「――でも、売ることはできないかな」

「え? ど、どうしてですか?」

 

 一瞬明るくなった少女の表情が、再び曇る。

 決してこれは、リズベットが意地悪をしている訳ではない。

 

「だって、足りないでしょ? ステータス」

「……え? ステータス?」

 

 その様子に、この少女は本当に戦闘に関して無知であるとリズベットは理解した。

 

「武器や防具を装備するには、装備ごとに一定のステータスが要求されるの。その様子だと、レベルも大して高くなさそうだし……。残念だけど、十万コルもする武器や防具は、現状のあなたには装備できないかな」

「そっ、そんな……」

 

 リズベットの言葉に、がっくりと肩を落とす少女。

 気付けば既に、リズベットが指定している朝の鍛冶屋の開店時間は過ぎていた。

 

「そんなに落ち込まないでいいよ。誰だって最初は自分に見合った装備でやるってことなんだからさ。因みに、使いたい武器はもう決まってるの?」

「えっと……。実はコルの他にも、武器も落ちてたんです。だから買えないなら、一先ずこれを使おうかなって……」

 

 そう言って少女が取り出したのは、赤い鞘に収まった短剣(ダガー)であった。

 流れで性能を見せてもらうと、はじまりの街の店売りのものよりも上等だ。要求ステータスも大したものではない。

 

「うん。いいんじゃないかな? 短剣だったら使用プレイヤーも一定数いるから、上層の使われなくなった装備も流れてきやすいし……。因みに、もう圏外に行く感じ?」

「えっと……そうですね。行かないことには、何も始まらないので」

「じゃあ、一旦パーティーを組んでもらっていいかな? 名前を確認したいからさ」

 

 リズベットが慣れた手付きでパーティー申請をすると、少女はおっかなびっくり承認する。

 新たに追加されたHPゲージ。その上には《Silica》と表示されていた。

 それを確認すると、早々にパーティーを解散する。

 

「おっけー、シリカね。じゃあこれ、防具一式」

「……えっ? いいんですか?」

「いいのいいの。圏外に出る初心者には渡すようにしてるんだ。一人につき一回限りだから、考えなしに売ったりしないようにね。装備のメンテナンスが必要になったら、またここに来て」

「ありがとうございます!」

 

 頭を下げたシリカに、リズベットは心配そうに目を向けた。

 

「圏外に出るのは初めて?」

「そうですね……。初日も街の探索をメインでやってたので、初めてです」

 

 その返答に、リズベットはしばし考え込む。

 最初に(つまず)いてしまい、そこから立ち直れずに街に戻ってしまった者を何人も見てきた。

 このSAOはゲームであり、ステータスが重要であって性別や年齢は強さそのものには関係がない。

 それでも自分よりも幼い少女が一人で圏外に行くのをただ見送る……というのは、リズベットにはどうしても気が引けた。

 

「一つ、提案があるんだけど……。誰かが戦い方の指南(レクチャー)をしてくれるなら、受けたい?」

「え? それはもちろん、受けたいです。もしかして……えっと……。すいません。お名前、何でしたっけ?」

 

 その様子に、リズベットは思わず笑ってしまった。

 シリカの名前を確認する際にパーティーを組んだので確認できたはずだが、リズベットがさっさと解散してしまい見れなかったのだろう。

 そうでなくともリズベットの存在はこの世界では有名なのだが、どうやらそれも知らないらしい。

 

「ごめんごめん。私の名前はリズベット。気軽にリズって呼んで」

「ありがとうございます、リズさん。それで、もしかしてリズさんが指南してくれるんですか?」

 

 シリカの問いに、リズベットは首を横に振った。

 

「いや、私はしないかな。色々と理由があってね。だから、信用できるフレンドに頼もうかなって。どう?」

「是非、お願いしたいです!」

「おっけー。ちょっと待ってね」

 

 メニューを操作したリズベットは、目的のフレンドへメッセージを飛ばす。

 すると、十秒も経たない内に返信が返ってきた。

 

「よし。大丈夫みたい。今日の13時に、またここに来てもらっても大丈夫?」

「分かりました! 何から何までありがとうございます!」

 

 ご機嫌な様子でお礼を言って去っていくシリカを見送ると、リズベットは少し遅めの朝食を()るために商品を片付け始めた。

 

 

(1/2)




【後書き】

 サブストーリー編、開幕です。
 思いついたら書いてのんびり投稿していきます。文字数は控えめ。
 今回の話は続きものですが、一話で終わるものもあると思います。

 そして、アンケートを実施します!
 私が書けそうなキャラの名前がズラっとあるので、読みたいキャラがいたら気軽にポチってください。既に登場しているキャラでも関係なく押してね。
 結果だけみたい、誰でもいいという読者様向けに無投票もあります。
 また、私は特典小説を所持していないので、設定や解釈が原作と大きく異なることがあると思います。ご了承ください。
 なるべくSAO内に関する話を書きたいので、一部除外しているキャラもいます。
 また、情報が少なすぎるキャラも除外対象となってます。
 キリトとアスナの二人は本編のメインキャラなので除外しています。
 票数が多いからといって、必ず書く訳ではないです。参考にして優先的に考える程度。

 お気に入り、評価、感想など、お気軽に。

サブストーリーを読みたいキャラを気軽に押してください。票数が多くとも必ず採用する訳ではないです。誰でもいい、アンケの結果だけみたい人は無投票にお願いします。

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