初日からPKしたけどデスゲームだったキリトくん 作:〆鯖缶太郎
その一話に登場するメインのキャラ名(名前だけ登場などは除外)を書くようにします。
また、前話や次話と話が繋がっているのか分かりやすいように(1/2)などと表記するようにします。
今回の(1/1)は、次回に直接繋がる話ではない、一話完結の物語と解釈してください。
(1/1)
2022年11月6日。
SAOの正式サービスが開始され、ログアウトボタンが消失したその日。《はじまりの街》に強制転移させられた大勢のプレイヤーの中に、ミトの姿もあった。
『……以上で、《ソードアート・オンライン》正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君の――健闘を祈る』
その言葉を最後に、茅場晶彦を名乗った
直後、広場に集められ、聴衆していたプレイヤーから阿鼻叫喚の悲鳴が上がった。
強くなり、ゲームをクリアするためにはどうするべきか。
周囲の不安や焦りといった雰囲気に呑まれながらも、ミトは冷静に考える。
街の周辺にいるモンスターは、この広場に集められた人間によってすぐに狩り尽くされてしまうだろう。
そうなればレベルを上げることはままならなくなり、死ぬリスクが高まる。
とにかく一刻も早くこの街を出て、道中で軽くレベルを上げながら初心者が立ち入れない場所まで進もう。
そんな結論に至ったミトは、すぐさま行動に移した。未だ広場で判断できずにいる大勢のプレイヤーの間を縫って進み、圏外へと出るためのゲートへと走り出す。
「あれは……」
広場を出た先にあった大通りには、まだプレイヤーはほとんどいなかった。
しかしミトの視線の先にはたった一人、同じように圏外へと走るプレイヤーの姿が映る。
後ろ姿しか分からないが、走る度に揺れるその栗色の長い髪と赤いスカートから、自分と同じ女性であることが
「待って!」
迷いなく圏外へと走るその姿から、自分と同じ元βテスターであろうとミトは当たりを付ける。
もし協力関係を結ぶことができたなら、心強い味方になるだろう。
そう考えたミトが引き留めようと叫ぶも、彼女に声は届かなかったらしい。
速度を緩めることなく走るプレイヤーを、圏外までの道が同じこともあってミトも追いかける。
圏外へ出れば先に彼女がモンスターと接敵し、足を止めるだろう。
その時にまた改めて声を掛けようと思ったのだが……。
「ちょっ……。どこまで行くつもりなの!?」
圏外へ出ても、彼女は足を止めることはなかった。
かと言って、最寄りの村に向かっている様子でもない。
遥か彼方に見える、第二層へと繋がる唯一の連結路である塔――第一層迷宮区。ただそこへ、一直線に突き進んでいるようにミトには見えた。
ダメだ。彼女を追いかけていては、自分の命が危うい。
まだ満足にレベルも上げられていない状態で、無闇に先へと進むのは愚策だ。
それに、時刻はもう18時を回ろうとしている。
夜になれば視界が悪くなり、一部のモンスターは活発化する。小高い草に潜んでいたモンスターが突然飛び出してきて不意打ちを喰らう……なんてことも珍しくない。
元βテスターであるミトにとっても、夜の圏外は危険な未知のエリアと何ら変わりないのだ。
どうか彼女が死にませんように。
その小さくなる後ろ姿を眺めながら、ミトはただ祈ることしかできなかった。
〆〆〆〆〆
デスゲームが始まったあの日から、半月以上が経った。
狩り効率を上げるために気付けばプレイヤーとの交流は避けるようになり、村と圏外を往復して黙々とソロで自己
βテストの頃から引き継がれていたフレンドは、全て削除した。
かつて仲の良かったプレイヤーが、続々とログアウトしていくのを見たくなかったから。
「漸くここまで来たわね」
レベルも充分に上がってきたところで、ミトは遂に迷宮区から最寄りの街である《トールバーナ》に辿り着いた。
さすがに一番乗りではないだろう。
だがそれでも、自分の攻略のペースはかなり速い部類だとミトは思う。
この街に先に到着しているプレイヤーと協力して、階層ボスを倒す。
そんな目標を立てながら圏内に入ったミトはだが、街の様子を見て思わず足を止めてしまった。
「……え?」
街の中はプレイヤーが行きかい、賑わっていた。いや、ミトの想定よりも賑わい過ぎていた。
それに、プレイヤーの身に付ける装備も違和感の正体に拍車をかける。ほとんどの者が身に付けているのは、ゲーム開始と同時に着ている初期装備だったのだ。
「あの、すいません。少しお時間いいですか?」
「ん? 何だ?」
街を行き交うプレイヤーの中で、気さくに話してくれそうな
「どうやってここまで来られたんですか?」
「ここに? 普通に歩いてきたぞ。何言ってんだ?」
聞き方が悪かったらしく、男は心底意味が分からないと言いたげに返答する。
だからミトは、よりハッキリと質問することにした。
「すいません。そうではなくて、この街にどうやって来たのかを聞きたかったんです」
間違いなく年上だろう相手に、ミトは再度下手に出るように聞く。
実は男が生産職で、パーティメンバーに連れられてここまできたのか。それともβテストの頃とは違うルートがあるのか。
そんな少女の問いに男は不思議に思いながら、ある一点を
「そりゃお前、あっちの広場にある転移門から来たに決まってんだろ?」
「……はい?」
男の言葉を、ミトは一瞬理解できなかった。
転移門から来た。それはつまり、転移門が開通しているということで……。それ即ち、第一層が攻略されていることを意味するのだから。
フリーズしてしまったミトを見て、男はその様子からある可能性に思い至る。
「あんた、もしかして圏外から来たのか? 一層が攻略されたのを知らずに?」
「……はい。そうです」
「はー、なるほどな。そんなこともあるんだな」
納得したように頷いた男は、ミトに現実を突き付けるように言い放った。
「改めて言うが、第一層だったら攻略されたよ。五日前にね」
この時、最速でスタートを切ったつもりが、結果的に最前線から大きく出遅れる形となったのだとミトは理解した。
〆〆〆〆〆
「あんた、本当にあのミトなのカ?」
「そう言ってるし、名前も確認したでしょ。βの頃の姿はロールプレイ」
その特徴的な語尾に懐かしさを感じながら、ミトは未だ疑念を向けてくるアルゴの問いに答える。
アルゴが疑うのも無理はない。
βテストの頃のミトは、ギョロ目をした厳つい男アバターだったのだ。
とても今の可愛らしい女性の
だが、彼女の名前と使っているプレイヤーが滅多にいない大鎌という武器が、間違いなく同一人物であることを証明していた。
「まぁ……分かったヨ。それで、今日は何の用ダ?」
まだ納得しきれない部分もありながら、アルゴは自身の元に訪れた理由を聞く。
「情報を売って欲しいの。第一層の階層ボスがどうやって攻略されたのか」
「フム……?」
アルゴがまず思ったのは、今それを聞きにくるのかという違和感だった。
第一層が攻略されてから、もうじき一週間が経とうとしている。
ならばもっと早いタイミングで来てもよさそうなものだが。
「初回ってこともあるし、三百コルでいいヨ」
「……安くない?」
初回サービスだとしても、ミトは千コルぐらいであれば余裕で払う気でいた。
そんな風に思いながらトレードすれば、アルゴは「毎度アリ」と笑みを浮かべる。
「情報が
「そう? じゃあ、遠慮なく」
ミトの聞く態勢が整ったことを確認し、アルゴは話し出す。
「結論から言うヨ。第一層の階層ボスは、キリトとアスナという二人のプレイヤーによって攻略されタ――」
そんな出だしで始まったアルゴから語られた内容は、ミトにとって信じられないものばかりだった。
もしかしたら自分が攻略に慎重になりすぎて、普通に出遅れた可能性も考慮していたのに、それすらなくなった。
話がひと段落したところで、ミトは情報の真偽を確かめるように問いかける。
「今の情報、本当なの?」
「まっ、疑うのも無理はないナ。けどこれはオレっちの主観も含むと、ほぼほぼ本当のことで間違いないヨ」
それ以上のことを知りたいなら本人に直接聞いてくれと締めたアルゴに、ミトはもう一つ気になったことを確認する。
「確認なんだけど、そのアスナってプレイヤーは女性?」
アルゴは追加の情報料を取ろうかと一瞬考えたが、それほどの価値もないかと素直に答えることにした。
「そうだケド?」
「……髪色は栗色のストレートヘア。装備は変わってるかもしれないけど、赤いスカートを
確信を付くようなミトの質問に、アルゴは分かりやすく驚いた表情をしてみせる。
「なんダ? もしかして、知り合いカ?」
「……いや。そんな気がしただけ。多分、別人だと思う」
アスナという名前。そして初日に見た女性プレイヤーの姿。
合致する人物を、ミトは知っていた。
――
同じ学校に通う同級生。互いに成績優秀者という接点もあって、何度か話したこともある。
だが彼女は、そこまでゲームに関心のあるタイプではなかったはずだ。ましてやここはSAO。ナーヴギアだって簡単に手に入るものではない。
それにあのお嬢様である明日奈が、デスゲームとなったこの世界で初日から無謀な行動に出るとはミトには思えなかった。
(1/1)
【後書き】
今回ミトが登場したことで、本作の第一話にあたる男をミトにして改変しようかと検討中。
投稿した当初はミトがそもそも存在していなかったので、設定の都合上取り敢えず登場させたキャラなんですけどね。
ミトに関するサブストーリーはもう一話書こうかなって考えてます。
後、プログレッシブの2巻(三層編)を一通り読みなおしました。
戦闘描写は割とカットされてて、キズメルに焦点が当たってたけど、それが逆に難しい。
九層まで続くキャンペーンクエストで話を変えるのも難しいので、キズメルを詳しく知りたい人は原作を読め!ってスタイルにすれば書けそうかなって感じ。
サブストーリーを書きながらもう少し考えてみます。
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