擬似ユークリウッドな織斑家長男   作:クルス@アルマゲドン

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IS起動まで

誘拐未遂事件から数ヶ月が経った。

あの後、暫くしてから千冬姉さんがドイツに行ってしまった。どうやら私を助けるために一年間、軍で教官をする事を条件にドイツから情報を貰ったらしい。そのせいで、千冬姉さんに迷惑を掛けてしまった。

 

私がもっと強かったらこんな事にはならなかったんだ。

鎌の使い方、身体能力が高いからと戦闘での単調な攻撃。

黒服達には単調な攻撃で何とか出来たがオータムとスコールは違う。オータムは不意打ちと言葉の力を使い併せて勝てたのだ。おそらく、二度は通用しないだろう。だとすれば私自身が強くなるしかない。スコールは戦っていないがオータムよりは強いはず。何となくだけどそう感じた。

 

この出来事から私は力を使いこなせるように少しずつ訓練している。場所は人気がない山の木々が無い平地。主に鎌の使い方と言葉の力による頭痛を耐えることだ。

大鎌を使いこなせるようにする訓練と自身への言葉による強化への負担を減らすための耐久力をつける事を重点的にしている。自身への強化には体に負担が掛かっていることがわかった。オータムとの戦いで強化した後、物凄い筋肉痛になったのだ。痛さのあまり、表情が変わりそうになったぐらいだ。その後は能力で治したが頭痛に変わる。悪循環過ぎる。故に何としても耐久力を上げないといけないのだ。

次に鎌の使い方だ。手を前に出し大鎌を回転させるように速く振る。イメージとしては扇風機。これが鎌使いの基本的なコンタクトマテリアルらしい。

訓練を初めて最初の頃、上手くいかずに直ぐに落としてしまうのが多かった。

けれど今では高速で振れるようになっている。

そこからは応用で色んな方向に回したり、目を瞑りながらでも回せるようになった。

 

そして、今日も大鎌を振り回し続ける。

 

「わお、なーくんってば凄いね!」

 

突然声を掛けられ驚き、その場に鎌を落とす。声をかけてきた人物は束さんだった。

 

『急に声をかけられたら驚く』

 

「ごめんごめん。それにしてもなーくんは鎌を使うのかー。……それより何で此処で鎌をブンブン振り回してたの?」

 

『訓練をしてる』

 

私は指名手配中の人がなんでこんな所にいるのか不思議に思い、質問する

 

『なんで此処にいるの?』

 

「うにゃ?なんだと思う?」

 

包丁を片手に笑顔で質問を質問で返してきた。

それよりこの人、山でなんで料理してるんだ。

答えが出ずに束さんを眺めながら大鎌を振り回す。

私は気になりつつ少し離れた所にある木まで近づき、その木を蹴る。蹴った反動で木が揺れる。揺れた木から葉っぱが落ちてくる。それを確認し、深呼吸をする。そして、鎌を振る。大振りではなく細かい動きで一枚一枚正確に切り裂いていく。それでも刃が届かない真逆の所は持ち手の棒を当てる。段々と数が減っていき、ラスト一枚が来る。私は最後の一枚に集中し、切る。葉っぱは四分割され落ちていく。

高速で鎌を振り二回の切ったのだ。しかし、目標は同時に二回切ること。今やったのは僅かにズレていた。まだまだ、訓練しないと。

 

「なーくん凄いね。ちーちゃんを超えられるんじゃない?」

 

そう冗談を言いながら束さんはどこからともなくテーブルと椅子をだし料理を並べていく。

流石に千冬姉さんは超えられないよ。実際に試合を見てそう思ったのだから。

そう思い、束さんの方に視線を向ける。

そして、私は固まった。理由は目の前に広がる物凄く豪華な料理を見たからだ。

 

「さてさて、なーくんへの愛情たっぷりのお土産、満漢全席の出来上がり!なーくんどうぞ、召し上がれー」

 

私は真っ直ぐ椅子に向かい座る。そして、手を合わせ

 

『いただきます』

 

「うんうん、私の愛をいただいちゃて♪」

 

そこから無言で食べ進めていく。

流石は束さん。料理まで廃スペックだなんて思いながら、もきゅもきゅと音を鳴らしながら箸を動かし、頬張って口を動かす。それを何回もループする。

 

そして、食べ始めてから一時間。私はとても満足だ。まさか、象の鼻,毒蛇,麝香猫(じやこうねこ),つばめの巣,ふかのひれ,銀耳(シロキクラゲ)などの高級材料や珍奇な材料をちゃんと使ってるなんて。

 

『満・漢・全・席・最高☆』

 

これは思わず表情を変えるところだったよ。それにしても、束さんも相当凄いな。満漢全席を作れるなんて。

 

「……あは…は、まさか一時間で食べきるなんて本当に予想外過ぎるよ。確か、満漢全席って2、3日かけて食べるものだよね。それを一時間って。それにいつもなーくんは人並みぐらいしか食べてないよね。なのに……」

 

流石の束さんも驚いている様子だ。その反応が正しいのだから。普段は束さんの言うように私は人並みしか食べていない。けど、今は満漢全席を一時間で完食。ギャップが凄いのだ。

 

『美味しいものは、別腹』

 

これは私の中では当たり前。

 

「だからといってあの量は私でも無理かな」

『私は余裕だった』

 

胸を張って紙を突き出した。それを見て束さんは微笑んだ。そして、巨大なニンジンをどこからともなく出す。流石にこれは驚いた。けど、無表情だ。これだけは譲れない。束さんはニンジンの中に入る。

私は、こんなに美味しいものを作ってくれたわけで、お礼の一つも言わないのは駄目じゃないかな。

そう思い、私は束さんの方を向く。どうやら食器の片付けをしているようだ。

私の視線に束さんは気付いたのか私の方へ視線を向ける。

 

「どうしたの───」

 

束さんが何かを口にするが私はそれを遮り

 

「束さんありがとう」

 

そう言い放った。

 

 

 

◇◇◇

 

なーくんにお土産の満漢全席を作ってあげた。始めにお土産が満漢全席って書かれたときは吃驚した。冗談かと思いなーくんを見るがその無表情からは何も読み取れなかった。

しかし、なーくんの食生活を思い出すと人並みにしか食べていないことに気付いた。

冗談だね。そう思った。私は、なーくんに冗談でも束さんに言ってはいけないと思い知らせようという意地悪な気持ちで作ったのだ。まあ、食べきれなくても私も食べればいいからね。なーくんにアーンされたらご飯だって何杯でもいけると思うから。寧ろそれが目的だったりするんだよね。

 

けれど予想は覆された。まさか一時間で完食するなんて。

驚きと同時に嬉しさが溢れた。なーくんの事をまた一つ知れたのから。もしかしたら……いや、この事は私しか知らないんじゃないかな。そう思うだけで嬉しかった。それに無表情だけれど、どこか満足したような感じをしてるのだから。そんな、なーくんを見てると少し微笑みが漏れてしまう。

私はニンジンを取り出し、持ってきた食器を片付ける。普通ならそのまま捨ててもいいのだがこれはなーくんが使ったというわけで捨てるのが勿体ないのだ。

 

(この食器は束さん専用にしよう)

 

そんな事を思っていると視線を感じた。おそらく、なーくんが見ているのだろう。何か様なのかな?そう思い、私は振り向いて

 

「どうしたの───」

 

そこで遮られた。

 

「束さんありがとう」

 

固まった。私は久し振りに生でなーくんの声を聞いた。

私は思わずなーくんに抱き付いた。

 

「もー!なーくんってば、かあいいよぉ~!お持ち帰りしたいぐらいだよ。……今、ちーちゃんはドイツで居ない。ということはその期間だけでも私が───」

 

そこで私の携帯が鳴る。

久し振りのこの着信音は!そう思い携帯に出る。

 

「もすもすひねもす、みんなのアイドルたば───」

 

『千夏に手を出したら握り潰す』

 

そう言い通話終了。あれは本気の声色だった。手を出したら本気で握り潰される。大量の汗が流れる。というか何を握り潰すの!?

 

『大丈夫?』

 

なーくんが心配そうに見上げてくる。

その上目遣いは反則だよ。無表情だけれどもそこにがまたいいのだ。

 

「だ、大丈夫だよ」

 

私は心配させまいと言うが、全然説得力がない。

 

『顔色が悪いし、凄い汗だよ。私の家で休んでいく?』

 

「止めておくよ。ちーちゃんが怖いからね」

私の言った言葉の意味がわからず首を傾げるなーくん。とても萌える。ヤバい。これは本当にお持ち帰りしたい。

 

「ねぇ、なーくん。誘拐していいかな?」

 

『全力で逃げさせて貰います』

 

逃げさせて貰いますと書いておきながら首に鎌を当てている。それに私が反応出来なかったなんてなーくん人間辞めてない?

 

「じょ、冗談だよ。だからその鎌を首から離して下さい」

 

無言で鎌を離す。これはちーちゃんの遺伝なのか。何だかちーちゃんに似て暴力的になった様な気がする。束さんは悲しいな。こんな可愛い子が暴力的なんて。

 

 

 

◇◇◇

 

束さんと会ってから時間が流れ、千冬姉さんがドイツに行って一年が経った。

やっと、千冬姉さんが帰ってくる。私は一夏と相談して盛大に千冬姉さんの帰国を祝うことにした。要するにパーティーだ。

 

「夏兄、こっちは出来たよ」

 

『勿論、此方も抜かりない』

 

そして、束さんと会ったときに帰り際に貰ったモノを着始める。束さん曰わく、ちーちゃんに見せたら絶対に喜ぶよ。らしい。

 

「な、夏兄…本当にそれ着るの?(夏兄可愛すぎる)」

 

一夏分かってるさ、これを着るというのは男としてのプライドを捨てるも同然。けど、千冬姉さんが喜ぶなら。……おい、一夏、お前何鼻を抑えてるんだ。

何かを察したのか一夏はトイレと言い、逃げていった。

 

着替えが終わり、玄関で千冬姉さんが帰ってくるのを待つ。

そろそろの筈なんだけど。

そう思うこと10分が経ち、玄関が開く。

 

「ただいま─────」

 

『おかえりなさい』

 

千冬姉さんが私を見て固まった。数秒してから再起動する。そして、顔を逸らしながら口を開く。

 

「ち、千夏その格好は……それになんでそんなもの」

 

『ゴスロリというもの。束さんが千冬姉さんが喜ぶよってくれた』

 

「……ちょっと、待っていてくれ、電話をしないといけない所が出来た」

 

そう言って二階に上がり、千冬姉さんは自分の部屋に入る。私は玄関に置きっぱなしのキャリーバックを持ち上げる。

電話が終わるまで洗濯でもしていよう。

そう思い荷物を持っていく。

 

脱衣所に着くなり私はキャリーバックの中にある衣類を出す。此処で洗濯するものとクリーニングに出すものを分ける作業を始める。

黙々とこなしていると過激すぎる下着を見つけてしまった。あまりにも過激すぎて私の顔が真っ赤になっていくのが分かる。

流石の私でもこれの耐性は持っていない。拙い、誰かにこんな顔を見られる前に戻さないと。すると凄い音を立てて此方に何かが向かってくる。

 

「千夏!洗濯は私がや────」

 

振り向いた瞬間、千冬姉さんと目が合う。

こんな顔を見られた。そう思っていると千冬姉さんは鼻血を出して倒れた。

その騒ぎに一夏もやってきた。

 

「千冬姉!なんでこんな所で倒れてるの!?」

 

一夏はそう言い周りを見渡し、私が居ることに気付く。そして

 

「……夏兄、それ反則」

 

そう言って一夏も鼻血を出して倒れた。

 

何故こうなった?

 

その後、起きた2人は目を合わせてくれなかった。

 

 

◇◇◇

 

私はドイツから帰国し、今は家の前にいる。一年間という間、千夏達には寂しい思いをさせてしまった。私が目の前の試合にばかり気を取られ、千夏達を危険な目に会わせてしまった。その後、直ぐに私はドイツ軍の教導官としてドイツに向かった。まるで、私に罰を与える様に。

 

……今はそんな感傷に浸っている場合ではないな。早く家に入らなければ…

そう思い扉を開ける。

 

「ただいま─────」

 

『おかえりなさい』

 

嬉しいことに千夏が出迎えてくれた。しかし、千夏の姿を見て固まってしまった。ゴスロリと呼ばれる服、しかし服の前は開いていて、胸には黒いバッテンシールが張られている。服の前が開いているせいで千夏の白い美肌が露出されている。私は思わず顔を逸らす。

 

「千夏その格好は……それになんでそんなもの」

 

『ゴスロリというもの。束さんが千冬姉さんが喜ぶよってくれた』

 

いや、ゴスロリは知っている。クラリッサが色々喋っていたからな。私にとっては呪文を唱えているようで意味がわからなかったが。

こんな露出度が高いものを渡したのは束の奴か。

 

「……ちょっと、待っていてくれ、電話をしないといけない所が出来た」

 

そう言い、私は二階に上がる。自分の部屋に入り、携帯電話を取り出す。そして、電話をかける。電話をかけ、直ぐに通話状態になった。

 

『もすもすひねもす、束さんだよ~。ちーちゃん久し振りだね~。あ、なーくんのゴスロリどうだった?可愛かったでしょ!絶対似合うと思って上げたんだから。ちーちゃんも思わず顔を少し赤くしてたね。束さんぐらいしか気づかないぐらいだけど』

 

「……お前何故それを知ってる?」

 

『束さんはお見通しだよ。余りにも露出している部分が広いから逸らしたんだよね。……ちーちゃんってば凄い下着着てたんだね』

 

「お前何を言ってるんだ!」

 

『いや、そのなーくんのゴスロリにカメラ仕込んでるんだけど。なーくんが洗濯初めて、多分ちーちゃんのキャリーバックの中のヤツだと思うんだけど』

 

その言葉を聞いた瞬間、私は思い出した。洗濯が追いつかずドイツで買った下着を。いや、私が買ったわけではなくクラリッサに頼んだらあれを買ってきたのだ。

ドイツでは普通らしいが私は抵抗があったが仕方なく履いたのだ。

しかし、あれはドイツに置いてきたはず。

ここで私はドイツからの帰国する少し前の事を思い出す。

 

「織斑教官、忘れ物を荷物に入れておきました」

 

……クラリッサか!アイツ余計なことを!それなら辻褄があう。ということは今、千夏が!?

私は全速力で脱衣所に向かった。

 

「千夏!洗濯は私がや───」

 

千夏が振り向いた。私は見惚れでしまった。顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている千夏が此方を見ているのだから。今までこんな可愛らしい千夏の顔は始めてみた。私に見られたからか少し涙目になっており、余りの可愛らしいさに鼻から───

 

そして、私は倒れた。不覚にもクラリッサに感謝してしまった。

この出来事から私は洗濯はなるべく自分でするようになった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

キングッ!?………クリムゾン!

 

……気にしません。まさか潰した後に。

まあ、それはどうでも良いですが。時間が流れ、今、空港にいます。理由は鈴ちゃんが中国に帰ってしまうという事なので見送りをするためです。

 

「い、一夏!あたしが料理が上達したら、毎日あたしの酢豚を食べてくれる?」

 

何平然と告白をぶっ飛ばしてプロポーズしてるんだ。それにその言い方では一夏は勘違いするに決まってる。

 

「おう、良いぞ」

 

ほら、何も考えずに即答してる。このプロポーズをどう変換したかはわからないけど、本来の意味とは真逆の方向に行っている様な気がする。

 

鈴ちゃんは一夏の言葉を聞き嬉しそうにしている。こんな嬉しそうにしているのに本当のことを言うのは野暮だな。

そんなことを思っていると鈴ちゃんは私の方に向かってきた。

 

「千夏、色々ありがとうね」

 

『どう致しまして。けど、その素直さをもっと出した方が良いと思う』

 

「う、五月蠅いわね!……結構、恥ずかしいのよ」

 

そう言いながら顔を紅潮させ、もじもじしている。

まさかこんな可愛らしい一面を魅せるなんてもっと一夏に魅せれば良かったのに。最後の最後で鈴ちゃんの新しい一面を見ることが出来た。

 

「そういえば弾は?」

 

「ああ、なんか『見送りは一夏お前だけで行け』って言って送り出されたけど」

 

『弾、後で抉る』

 

私も邪魔者として見たのだな。なら抉るしかない。後日、初めて会ったとき、ナンパの事をクラス内に広げ、弾の黒歴史を抉り出した。

 

鈴ちゃんが飛行機に乗り、行ってしまった。けれど、これが永遠の別れではないだろう。人生は長いのだ。また、どこかで……いや、一夏に会いに来るだろう。約束を果たしに。

「それにしても鈴のヤツ、毎日酢豚を奢ってくれのか。嬉しいな」

 

訂正、殴りに来ると思う。いや、今この場で私が変わりに殴っておいた方が良いのではないか。そう思うほどだ。

私は溜め息をつき、一夏を無視して帰ろうとする。

 

「ん?夏兄待ってくれよ!」

 

一夏は私に気付き追いかけてくる。

 

『お前は馬に蹴られればいい』

 

「……?どういうこと?」

 

将来本当に一夏は大変なことになるだろうな。私に助けを求められてもどうもしないのが良いだろう。

それよりも来年受験か……

 

 

◇◇◇

 

それから一年と少しが経ち受験シーズン真っ只中。そんなことよりも私の成長が止まった。身長が伸びなくなった。4月に測ったときは160㎝。現在の身長160㎝。つまり、成長が止まったということ。それに比べて横に歩いている一夏は170を越えている。ズルい。

 

「夏兄、試験会場ってどこだと思う?」

 

私は一夏に声をかけられ我に返る。

嫉妬は良くないな。仕方ない毎日牛乳を飲むことにしよう。そんなことを思い返事をする。

 

『知らない』

 

受験シーズン真っ只中である為に私達も今日受験だ。しかし、どこにあるかわからず迷子になっている。因みに受験先は藍越学園だ。学費が安い上に就職率も良いと来た。これほど良い所はないだろう。

それにしても何処だろう。

 

『カンニングしたヤツを恨む』

 

「確かにそのせいで今オレたちはこんな状況なんだし。……夏兄、次見つけた部屋に入らない?もし、そこだったら結果オーライで間違えだったら場所を聞けばいいしさ」

 

確かにその方が良いかもしれない。

 

『わかった』

 

そして、部屋を見つけた。私達はその部屋にはいる。そこには試験官らしい女性がいた。

「あー、君達受験生だよね?はい、向こうで着替えて。時間押してるから急いでね。ここ、四時までしか借りれないからやりにくいったらないわ。全く、何考えてるのかしら」

 

女性は忙しすぎるのか私達の顔も見ずに指示だけする。それよりも、受験生の前で愚痴るなんて相当忙しいんですね。

そう思いながら私は着替える服を見た。

 

……此処は明らかに藍越学園の試験会場じゃない。

 

そう思った理由は着替える服がISのスーツだったからだ。それにしてもコレを良く着れるよな。そう思う。

私は一夏に違うと伝えようとする。しかし、一夏の姿が見えない。

 

「え!?」

 

奥の方から一夏の声が聞こえた。私は着替えずに奥に向かう。すると、ISを纏っていた一夏がいた。

 

『モルモットおめでとう』

 

率直な感想だ。何せ初めて男がISを動かしたのだ。

 

「夏兄、酷いよ!……オレが起動させたってことは夏兄も出来るかも」

 

『ふ、笑止。私は男だ。ISが起動するはずない』

 

「それならもう一台あるっぽいから触れてみてよ」

 

私はそう言われ起動するはずないISに触れる。触れた瞬間、頭の中に何かの情報が入ってくる。少し頭に痛みが来るが能力の頭痛程ではない。

それにしても、まさか起動しちゃうなんて。

「君達!そこで何してるの!?」

 

試験官らしき人がやってきた。

 

「なんで、男子がISを起動しているの。もう一人は当たり前よね」

 

今、私の方を見て言ったよね。

 

「あの、夏兄は男ですよ」

 

「……………………ほ、他の教師も呼んできますので、そこで待っていてください!」

 

そして試験官の女性は何処かへ言った。

私は今もまだ流れてくる情報をどうすればいいのかと悩んでいる。

数分後、情報が流れてこなくなると同時に多くの試験官の女性達が来た。私の方ではなく一夏の方を見て驚いていた。

 

私を男として認識していないな。

 

そんな事を思っていると一つだけ視線を感じた。視線の方を見ると千冬姉さんがいた。とても複雑そうな顔をして見ているのだ。

 

これはまた迷惑をかけてしまった。

 

 

その後、起動テストをして、ISの模擬戦試験。模擬戦では自分の得意とする武器が無く、拳と蹴りだけで何とかした。周りの試験官は驚いていた。

そして、試験が終わりIS学園に保護という形で入学することとなった。

 

 

 

◇◇◇

 

「まさかな……」

 

私は自分の弟たちがISを起動したことに驚きを隠せないでいた。そして、もっとも驚いているのが

 

「織斑一夏、IS適性B。織斑千夏、IS適性───」

 

──S

 

千夏が世界で私を含め数人しかいない適性Sを出すとは……

しかし、一緒にいる時間が増えるわけだ。それだけでも喜ばしいことか。

 

そう思い家に帰宅する。

 

 

 

 

 

 

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