いずれ到る雷神の英雄譚   作:音無 仁

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初めまして音無仁です。
ダンまちのアニメ見て、鬼滅の刃のアニメ見て、鬼滅の刃のコミックを読み、善逸の最新話を見て描きたい衝動に駆られたんだ!!
とりあえず前日譚って言うことにして評価が良かったら連載にして続き書こうと思います。
もし連載になったらダンまちの書籍買わなきゃ(使命感

今作での鬼滅の刃は原作が終了しています。具体的な説明は後書きにてさせてもらいます。

死亡してるはずのキャラが生きてるのもちゃんと理由がありますのであとがきまでしっかり読んでいただけるとありがたいです。


序章
いずれ到る雷神の英雄譚 〜前日譚~


物心ついた時から親はいなかった。

俺を捨てたのかそれとも俺を残して死んだのかは分からなかったが自分の近くにいないことはわかった。

10歳の頃、鬼と言われるものに会った。

人間のようで人間ではない何か、その存在は自分を確認した瞬間に襲いかかってきた。

何とか避けれたけど頬から暖かいものが流れてた。

その時の自分の心は恐怖で染まってた。

逃げなきゃ、逃げなきゃって、それしか思わなくて、でも体は動かなくて、鬼はそんなの関係なく襲いかかってきた。

でも、そんな時に聴こえたんだ。何処までも臆病で、辛そうで、必死な音が、雷鳴と共に聴こえたんだ。

自分は、いや()は、あの時あの雷鳴に憧れたんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「師範」

 

「んー?」

 

ここは少し寂れた桃がいっぱい実っている山。

そんな山にポツンと建つひとつの小屋の中で2人の人間が向かい合っていた。

 

「師範、今日の修行を始めましょう!」

 

「え、嫌だけど」

 

「なんでですか!!」

 

1人は金色の髪を後ろで纏め、所々三角模様が散りばめられた黄色の羽織にどこかの気弱そうな雰囲気がする男性。

 

「だって、怪我したくないし、させたくないし、なんか昔の自分見てるみたいでトラウマが再発しそうだし……」

 

「いや、師範が修行決めてるんですよね?そんなに嫌ならほかの修行すればいいのに」

 

「それしか知らないんだよ!!分かるか?分かるか、おまえ!?呼吸法を覚える修行は1つしか知らないんだぞ?!他の修行法とか知るわけないだろォ!?」

 

「えぇ……」

 

もう1人は黒い髪に赤い目、顔は整っているが目付きがややきつく、もう一人の男と似たような服装をしている少年。

 

「だいたいさァ!みんなみんな酷いんだよォ!!なんで俺なのさ!?俺よりも炭治郎とかカナヲちゃんとか伊之助……は無理でもいたじゃん!!俺よりまともなのいたじゃん!?なんで俺?!」

 

「それは俺があなたに教えて欲しいと思ったからです」

 

「はい出ましたー!だからそこだよ!!教えて欲しいって俺は弱いんだよ!?めっっっっちゃ弱いんだぞ!?舐めんなよ?!」

 

「構いません、俺師範がヘタレで女好きで泣き虫で臆病でカスで騒がしい人だって知ってます」

 

「お前ボロカス言うな!?ほんとに俺の事慕ってるの?!」

 

「はい、もちろんです。俺は師範に助けられました。師範のようになりたいと思ったからこそ俺はあなたに師事したのです」

 

師範と呼ばれる男性はうっ、と言った感じに言葉につまり、あーと声を零しながら顔を背ける。

 

「いや、ほんと、お前あれだよな。急に来るよな」

 

「?……よく分かりませんがすいません」

 

「あー、うん。修行な、修行。と言ってももうほとんど教えることないんだよね」

 

「え?そう……なんですか……」

 

少年は少し落ち込んだように顔を伏せる。何故かその様子からは(´・ω・`)と言った顔が見える気がしてくるのはなぜだろうか。

これには男性も困ったように言葉を紡ぐ。

 

「あー、なんて言うか、さ。俺は雷の呼吸は壱ノ型しか出来ない。だから俺が教えられる技も少ないんだ。まぁ、俺の型もあるにはあるけど」

 

「俺の…型?まさか師範が生み出した雷の呼吸!?炭治郎さんから聞いた漆ノ型(しちのかた)ですか?!」

 

「あ、あぁ、そうだけど……」

 

少年が目を輝かせながら男性に詰め寄る。

それを見て男性は少し引きながら少年の質問に答えた。

 

「お、おおお教えて、貰えるのですか……?!」

 

「いや、それは無理」

 

「そんなーー!?!」

 

少年が膝をついて倒れ込む。

そのスゴい落ち込みように男性は今度こそドン引きした。

 

「いや、さっきも言ったけど俺の型だし、教えられるもんでもないし」

 

「な、ならせめて……せめて見して貰えませんか…?」

 

「えぇ……うーん、見せるくらいなら……嫌でも…うーん」

 

「お、お願いします!!後生です!!」

 

少年が土下座して男性に頼み込む。

男性はその様子を見ながら見せてもいいか見せない方がいいのか考え込む。

そして答えを出したのか、少年の前で片膝をついて話しかける。

 

「いいか、漆ノ型(しちのかた) 火雷神(ほのいかづちのかみ)はさっきも言ったように俺の、俺だけの型だ」

 

「………はい」

 

「俺の努力の証、覚悟の現れ、いや、俺自身と言ってもいい技だと俺は思ってる」

 

男性は真剣に自らの技について語り始める。自らの覚悟を、自らの全てを。

少年はそれを一言一句聞き逃すつもりは無いと、真剣にな表情で男性の顔を見る。

 

「俺の師匠、じいちゃんは俺が壱ノ型しか出来ない事に怒った。けどそれでもいいって、お前はそれを極めればいいんだって、言ってくれた」

 

男性は遠い日を思い出すように目を細め、語っていく

 

「だから俺はじいちゃんに恩返しがしたくて、こんな俺を拾ってくれたことに感謝したくて、じいちゃんに成長した俺を見せたくて、頑張って、頑張って……」

 

「師範……?」

 

言葉が詰まる。男性は悲痛な顔を伏せ、されど覚悟を決めて話す。

 

「そんなじいちゃんが腹を切って死んだって聞いた時、死ぬほど悲しかった」

 

「っ!」

 

「まだ俺は何1つ、返せてなかった。あの人に…俺の家族のような、いや、家族……だったんだ」

 

「………………」

 

「家族に何も返せなかった。悔しかった、悲しかった、辛かった、けど……それでも前に進むと決めたんだ。兄貴が敵になって、俺の全てをぶつけて、死にかけて、そして……じいちゃんにあった」

 

「え……」

 

「夢かもしれない、幻かもしれない、けど、川の向こうでじいちゃんは言ってくれた。俺はじいちゃんの誇りだって」

 

男性はその顔を上げて少年を見る。目と目が合った、男性の目すごく優しい目をしていた。

 

「だから無理だ、この技は俺だからな。もしお前にこれを教える時は……そうだな、俺がいなくなる時だよ」

 

「ば、馬鹿なことを言わないでください!!」

 

「冗談だって、そんなに怒るなよ。修行、したいんだろ?なら、壱ノ型を極めてもらおうかなぁ……」

 

「な、何故か悪寒がするんですが……」

 

あくどい笑みを浮かべる男性に背筋に悪寒がする少年は今日も男性に憧れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日常が壊れるその日まで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日男性の元にとある男が訪れた。

その男の名は冨岡義勇。今は解散した鬼殺隊の元水柱であり、あの鬼舞辻無惨を倒した人間の1人である。

 

「すいません冨岡さん、こんな所まで呼び出して」

 

「構わない」

 

「そ、そうですか」

 

「…………」

 

「…………」

 

沈黙が痛い、とはこのような状況を言うのだろうか。

ちなみにだが冨岡義勇の構わないには続きがあり、構わない、何故呼んだのか聞いてもいいか?という意味がある。

相変わらず心で語る男である。

 

「そ、それでですね。俺には弟子がいるんです」

 

「知っている」

 

「あ、そうでしたか」

 

「……………」

 

「……………」

 

またしても沈黙。この男性そこまでコミュケーション能力がない。目の前にいる冨岡の弟弟子ならば簡単にこの状況を変えてくれるのだろうか?助けてたんじろ!!

彼は混乱している(いつも通りである)

 

「あー、えっと、そのですね」

 

「…………」

 

「実はー、ですね、そのー、弟子の成長のために、と言いますか」

 

「はっきりと言ってくれ」

 

「はいすいません!!」

 

別に冨岡は怒った訳では無い。はっきりと言ってくれないと聞きづらくて困る、という意味合いで言っているのだ。一言も二言も足りない。

男性にとっては怒っているように見えるが、決して怒っている訳では無い。

 

「………自分の弟子は雷の呼吸の使い手です。ですが俺が教えられるのは壱ノ型、つまり居合いです」

 

「…………」

 

「ですがこの先、居合いひとつで戦っていけるわけがありません。刀を抜き、振る。この動作1つが全くダメなんてことになればこの先、いつか死んでしまう」

 

「…………」

 

「あいつは俺と似ているようで違う。恐らく覚えようと思えば壱ノ型以外も使えるようになると思います。けどあいつはそれを嫌だと言います。俺と同じ状態で俺に追いつこうとしてる」

 

「…………」

 

「でも、それじゃあダメなんです。あいつにはあいつの道を進んで欲しい。だから、あなたを呼びました。あなたの水の呼吸をあいつに仕込んで欲しい」

 

「…………」

 

「炎の呼吸、風の呼吸、岩の呼吸、おそらくこの3つはあいつには合いません。雷の呼吸との相性がよすぎるからだ。でも、ちょっとした理由で水の呼吸なら覚えられるんじゃないかと思うんです。どうかよろしくお願いします」

 

男性は自らの頭を下げ、弟子のために頼み込む。

 

「…………そうか」

 

「…………」

 

「…………」

 

え?それだけ?頭を下げていた男性が顔を上げてそんな表情をする。

対する冨岡の表情は眉一つ動いていない。

え?待って、ほんとにそれだけ?他にないの!?もっとこう、ないの?!

男性は果てしなくパニックになっていた。そんな中、冨岡が話始める。

 

「まず最初に……」

 

「は、はい!!」

 

「?……他の型を全く覚えようとしないのか?」

 

「え、えぇ、全く覚えようともしません」

 

「……なら、なぜ俺なんだ?炭治郎がいるだろう」

 

「それはさすがに……第一子が産まれたばかりのあいつに頼むのちょっと……」

 

「………ふむ」

 

「それに富岡さん暇そうですし」

 

「……………」

 

冨岡のハッとしたように目を開き、男性を見る。その表情は無表情に近いが少しばかり非難の視線を感じる。

 

「……俺は、暇ではない」

 

「え………カナエさんから暇そうにしてるから連れて行ってもいいよ、って言われたんですが……」

 

「……………」

 

「なんか鮭大根を幸せそうに食べながらを庭を見てるって聞いたんですが……」

 

「…………」

 

冨岡は眉間を揉みながら顔を伏せ、そして上げて、もう一度

 

「俺は、暇では、ない」

 

少しばかりの口調が強めだったのは気の所為だろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「し、師範、何故冨岡さんがここに……?」

 

少年が帰ってきた小屋の中には少しばかり疲れた表情をしている男性と無表情で茶を啜る冨岡の姿。

つい先程まで壱ノ型の練習をしていた少年には今の状況が疑問にしかならない。

もうひとつ言えば、何故男性は疲れ果てた表情をしているのか分からない。まるでつい先程まで説教でも受けていたかのようである。

 

「あ、あぁ、俺が呼んだんだ。お前にも関係する話だ」

 

「え?そう……なんですか?」

 

少年が冨岡に視線を寄越す。その視線に気付いたのか冨岡は少年の方を見て立ち上がり、少年に近づいて羽織の後ろ襟を掴むと一言。

 

「行くぞ」

 

「へ?」

 

そのままどこかに連れていこうとする。

 

「ま、え?なんで!?なんで引きづられてるの?!どういうこと!?ねぇ、師範!?どういう状況なの?!これはなんなの!?」

 

「……………強く生きろ…」

 

「なにそのセリフと目!?どうしてそんな不憫なものを見るような目で俺を見るの?!ちょ、ほんとに待っ!」

 

「……邪魔したな」

 

そして2人が小屋から消えた。

外から叫び声とか色々と聞こえてくるが途中でうっ!?という声と共に何も聞こえなくなる。

男性は何故か出てくる涙に彼は生きて帰ってこれるのだろうか?やっぱり人選ミスってるんじゃないかと、不安になりながらも少年の無事を祈る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その胸の音はあまりにも小さかった。

 

 

 

 

 

狭霧山に来て1ヶ月

 

拝啓、師範

チュン太郎を1ヶ月に1回送ってくださるようなので手紙を書くことにしました。

私は今狭霧山に来ております。既にあの日から一月が経ちました。

師範はどうお過ごしですか?体調は崩してないですか?また、女性を口説こうとして借金を背負ったりしてませんか?ヘタレていませんか?

私?私は…………元気です。元気と言ったら元気です。

冨岡さんはなんでこんな所に連れてきたのかと聞いても言わないの一点張りで、しかも修行を始めるぞって無理やり修行を始めるんです。

しかも初日から山を登って、直に此処から山を下れ、と言われて1人にされました。酷すぎません?

狭霧山は空気が薄いです。師範と暮らしていた場所より薄いです。水の呼吸の使い手は全員ここで普通に呼吸が出来るそうです。

そして下ったあとはいきなり模擬戦、しかも雷の呼吸は禁止、もし使ったら……と、最後は沈黙してました。

怖いです。

ボコられました。それはもうボッコボコにされました。

しのぶさんがそれだから冨岡さんは嫌われるんですよって言葉の意味がよくわかりました。

あと、口下手すぎませんか、あの人。

あ、しのぶさんで思い出したんですが昨日しのぶさんが来ましたよ。

なんでかしのぶさんって毎回会う度に私を膝の上に乗せて頭を撫でてくるんですよね。

もしかしてショタコンなんじゃ

シノブサンハキレイデカワイクテリリシイリソウノジョセイデス、ハイ。

 

 

 

 

狭霧山に来て半年

 

拝啓、師範

冨岡さんやっぱりおかしいですよ。全然勝てないんですけど。いや、元柱に勝てたらそれはそれでやばいですけど。

今やってる修行は罠がある山を駆け下りる、という修行です。炭治郎さんは罠の匂い嗅いで位置を把握してたらしいですけど、罠の匂いって何?

そして罠でボロボロになって下山した後、冨岡さんにボコられます。ボッコボコにされます。

眠る場所を貸してくれる鱗滝さんが神様に見えます。その鱗滝さんもすっごく厳しいですけどね……

でもやっと昨日から刀を持ったまま山を降りる修行に変わりました。

なにこれ難し。

 

 

 

 

狭霧山に来て11ヶ月

 

拝啓、師範

もう少しであの日から1年が経ちますね。

刀を持ったまま山を下るのも慣れてきました。

冨岡さんとの模擬戦は未だに1本も取れません。3回ぐらいは防御できるようになりましたけどそれ以上は無理です。死にます。

というか柱の時より冨岡さん強くなってません?どうなってるんですかあの人。

今日来た煉獄さんも、うむ!冨岡も強くなっているな!これは俺も負けていられない!って言ってんですけど。

その後木刀で木を斬ってる姿見て腰抜けました。

 

 

 

 

狭霧山に来て1年と半年

 

拝啓、師範

ついに修行の全行程が終わったらしいです。

そして最後の試練として岩を斬ることになりました。

…………岩って、斬るものでしたっけ…?

しかも2、3mはある岩です。冨岡さんはただ斬れとしか言いませんし、鱗滝さんも何も言いません。

炭治郎さんとカナヲさんに会いました。

炭治郎さんからは岩を斬り続ければいずれ君を助けてくれる人達が現れるって言ってたけどどういうことだろう?

しかし、斬れと言うなら斬ります。俺は早くこの修行を終わらせてそちらに帰ります。

 

 

 

 

狭霧山に来て2年

 

拝啓、師範

 

 

 

岩を、斬りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

 

手紙を読み終えた男性は深いため息を吐く。

それは何かの憂いが取れたかのような安堵のため息。

 

「これで……安心していけるな……」

 

これが届いたのは今日、狭霧山からここまでそれなりの距離があり、1週間以上かかる。

恐らくあと三日もすれば少年はここに帰ってくるだろう。

 

「よし、覚悟は決めた。全てを話そう……」

 

その背中は哀愁が漂う。1匹の雀はそれを悲しく見つめ続ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼の音は……既に消え掛けていた……

 

 

 

 

 

 

「師範!!ただいま戻りました!!」

 

「ア゛――――――――ッ(汚い高音)」

 

少年が小屋の扉を思いっきり開け放ち、中にいた男性は大声を上げながら驚く。

 

「おまっ!?いきなり開けんな!?合図、合図を寄越せよ?!戸を叩くとか声を掛けるとかしろよォーッ!?驚いただろうがァ!?」

 

「師範に対する対応とかこんなものでしょう」

 

「相っ変わらず辛辣だなァ、お前はよォーッ!?」

 

少年のあんまりな対応に男性は肩を震わせながらキレる。

 

「で、師範。俺を冨岡さんに預け…預け……拉致…?」

 

「おいバカやめろ」

 

「嫌だってあれはどう見ても拉致……」

 

「拉致じゃねぇーから、無理やり連れていっただけだから」

 

「拉致じゃねぇか」

 

今までまだ丁寧な口調だった少年が口調を崩しながらつっこむ。男性は目を逸らしながら少年に話しかける。。

 

「あー、ともかく!お前を冨岡さんに預けた理由は聞いたな?」

 

「…………はぁ…えぇ、聞きましたよ。ただ言いたいことがあります」

 

「おっ?なんだよ言ってみな?まぁ、俺は──」

 

「あんたも居合だけだろうが」

 

「……………」

 

男性は目を逸らす。決して少年と目を合わせようとはしなかった。そんな男性をジト目で見ながら少年はため息を吐く。

 

「はぁ……俺は師範のようになりたい。だからこそ他の呼吸も型もいらないんです。だからこれからも壱ノ型以外は使わな──」

 

「ダメだ」

 

「……………どうして……」

 

「……………」

 

男性は顔を伏せて少年の言葉を否定する。少年の疑問にも答えず、沈黙し続ける。

ようやく顔を上げた時の男性の表情はどこまでも優しく、穏やかな顔。

少年はそんな顔をしている男性にただただ目を見開いた。

そして次の一言で少年の思いも心も粉々に砕かれた。

 

「俺は……もうすぐ死ぬ」

 

「え………」

 

「体が、もう限界なんだ。今生きてるのが不思議なぐらい」

 

「そん、な……」

 

「既に炭治郎や禰豆子ちゃん、カナヲちゃんや伊之助、あとはまぁ世話になった、と思いたくない人もいるけど元柱の方々や、親しかった鬼殺隊士の人達にも言ってある」

 

「ま、待って…ください……」

 

「お前は俺に似てる。拾われてるし、聴覚が異様に鋭いし、壱ノ型しか出来ないし、まぁ、これは俺のせいでもあるんだけど」

 

「だから、待って……」

 

「性格だけは全然似なかったけどな!!どんどん精神的に逞しくなりやがって!あ!天才肌なところも似てねぇわ!」

 

「お願い…ですから……」

 

「だから俺はお前に……」

 

「待って、下さい!!」

 

少年の大きな声に男性はただ黙り込む。静かになった部屋で少年は声を上げる。

 

「なんで……ですか…なんで、急にそんなこと……急展開すぎますよ……」

 

「……………」

 

「どうして、黙ってたんですか…俺はそんなにも頼りなかったですか……」

 

「……………」

 

「前………言ってましたよね?自分はじいちゃんになにも返せなかった、って。俺も……俺もッ!!まだ師範になにも返せてません!!なにも……返せてません!!」

 

少年の言葉に男性はただ黙り込む。少年は涙を流しながら男性を睨むかのように見つめる。

 

「俺は……師範に助けられました。名前のなかった俺に、名前をくれました。居場所のなかった俺に、居場所をくれました。俺に戦う、力をくれました。俺は…あなたからたくさんのものを貰った。貰いすぎた」

 

「俺はもう返してもらってるよ」

 

「そんなことは無い!!有り得ない!!まだ俺はなにも!なにも…!……返せていない……」

 

「だから十分だって」

 

「何が……十分なんですか…!何が…!」

 

「俺の家族になってくれたろ?」

 

「…あ……」

 

男性は少年の肩を掴み、抱き寄せて優しく語り掛ける。

 

「お前は俺にとって家族だ。もう家族が誰も残ってないこの世界で唯一無二の家族だ。弟、そう弟なんだよお前は」

 

「う、あ……」

 

「前さ、言ったよな?もしあの技を教える時が来たら……それは俺がいなくなる時だって」

 

「は、はい……」

 

「今からあの技を、俺を、お前に託す」

 

「あ、あぁ…あぁ……!」

 

「この鬼殺しの技はこの先いらないものかもしれない。だってもう鬼はいないから、平和になったからだ。けど、この技をお前が受け継いでくれれば、この技は、俺は、生き続ける」

 

「……………」

 

少年の声を押し殺した鳴き声が小さく響く。

男性の言葉を一言一句聞き逃さないように、いつまでも忘れないように。

 

「お前が俺を引き継ぐんだ」

 

その思いを

 

「そしてお前が決めた道を行くんだ」

 

その覚悟を

 

「俺を超えろ!どこまでも行け!止まるんじゃないぞ!!」

 

その誓いを

 

「たとえどんなに恥知らずでも!泥臭くても!生きて、生きて!生き続けて!!」

 

その可能性を

 

「そして俺を、いや、俺たち鬼殺隊すら超えて、英雄になれ!!」

 

その未来を

 

「大丈夫、だってお前は──」

 

その絆のために前に進もう。

 

 

 

 

 

 

俺の誇りなんだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明朝、丘の上で1人の少年がいた。黒い髪に赤い目をして背に滅の文字が入った黒い詰襟。その上には所々に三角模様の入った黄色の羽織を纏っていた。その服はどこか年季を感じる。

目の前には少しだけ盛られた土の上に石が置かれ、その石には“我妻(あがつま)善逸(ぜんいつ)”の文字が見える。恐らくお墓だろう。

その少年の後ろには彼と同じ髪と目を持った額に傷がある男性と髪を蝶の髪飾りで横に留めている女性がいた。

 

「───実は……知ってたんです」

 

少年はまるで誰かに話しかけるように、いや、目の前にいる誰かに話しかけていた。

 

「あなたが、少し変だって。少しずつあなたの音が小さくなっていくのが怖かった。聞こえなくなるのが怖かった。だから、知らないふりをした」

 

それは少年の懺悔であり

 

「けど…」

 

覚悟である。

 

「あなたは言ってくれた。俺はあなたの誇りであると、そう言ってくれた。なら、俺はあなたを継ぎます。前を歩きます。世界に名を轟かせる英雄になります、いえ、天にすら轟く英雄になります」

 

後ろの男性と女性が目を見開く。その場所にまるで彼が立っているように見えて、少年があの頃の彼のように見えて。

 

「だから、少しの間お別れです。次会うときは最高の物語を聞かせます。みなさんで待っててください」

 

そして後ろの男性が鞘に入った刀を青年に渡す。

 

「それを受け取るっていうことがどういうことか、よく考えて決めたんだよな?」

 

「はい、決めたんです」

 

男性は少年の目を見てふっと笑った。その後ろにいる女性がクスクスと笑う。

 

「まるで昔の炭治郎みたい」

 

「え?!俺こんなに目付き悪かったっけ…?」

 

「ふふ、ううん、そういう事じゃなくて、その目が炭治郎みたいに覚悟決めた人の目だったから」

 

「そう、ですか…?」

 

「うん、善逸と炭治郎を足して2で割った感じかな」

 

「なんか…その…」

 

「言いたいことはわかるけどさ、カナヲ」

 

女性、栗花落(つゆり)カナヲはふふふと笑い続ける。

男性、竈門(かまど)炭治郎(たんじろう)は笑顔を浮かべて少年を見る。。

 

「ふふ、さぁ、抜いて見せて。あなたの刀を」

 

「……はい」

 

そして少年は刀を抜いて上に掲げる。ちょうど太陽が上り、刀と重なる。

その刀の色は鎬に稲妻のような文様に黄色の色がついたものへと変わっていく。そして刃元には悪鬼滅殺の文字。

 

「──あぁ、これは………善逸の刀にそっくりだな」

 

「えぇ、本当に……」

 

二人の言葉に少年は嬉しそうに口角を上げる。そしてハッとして直ぐに表情を戻す。

 

「これにて準備は終わりました。俺は……オラリオに向かいます」

 

「………あぁ、行ってこい。タケミカヅチ様によろしく伝えといてくれ。そして、お前の力を見せつけてこい」

 

「あなたが無事にオラリオで英雄になれることを祈ってるね」

 

二人の激励に背中を押されるように2人を背に歩き始める。

 

「あ、そうだ」

 

「?どうした?なにか伝え忘れたことでも──」

 

「2人目の子供が生まれたそうで、おめでとうございます。お盛んですね」

 

その言葉に二人して固まり、ボンッという音を出して頭が沸騰した。

 

「ぷ、くく……で、では行ってきます。しのぶさん達によろしくお願いします」

 

そう言って少年は歩いていき、背中が見えなくなった。

 

「………全く、あの子は」

 

「あ、あはは、でも元気そうでよかったな」

 

「えぇ、そうね」

 

2人寄り添い少年のことを案じる。どうか彼が無事でありますように、と。

 

「「行ってらっしゃい、朱鳥(あすか)」」




今作での鬼滅の刃

大正時代は極東にある政府がつけた年代。政府は神が地上におりてきたことを知っており、鬼という存在には疑問を抱きながらも神という存在がいるため否定できずにいた。

ある時地上に降りた神が鬼に喰われ天界に送還されるという事態が起きた。政府はこの事から鬼の存在を本当のことと認知した。
(その際神を喰ったのが童磨、上弦の陸から上弦の弐へとなった)

このことを最悪の事態と判断した政府は政府非公認の鬼殺隊を正式に認め、鬼殺隊に入っているもの全員に神々は恩恵を与えた。
(恩恵を与えられるのは藤襲山を7日間生き延びた者のみ)

この頃まだ地上に降りたばかりのタケミカヅチ様も恩恵を与えている。
(明治、大正ならば恩恵を与えた相手は冨岡義勇、村田、胡蝶姉妹、時透無一郎、甘露寺蜜璃、竈門炭治郎、我妻善逸、嘴平伊之助、不死川玄弥、栗花落カナヲなど)

その頃政府に旅をしていた神ヘルメスが接触。オラリオの薬などが鬼殺隊に配布される。
(エリクサーやハイポーションのおかげで即死でない限り死ぬことがなくなった)

だがそれでも上弦の鬼達は強く、恩恵を受けた柱ですら死亡する者が後を絶たなかった。
(上弦の鬼は上弦の陸がLv3、上弦の伍、肆はLv4、上弦の参、弐はLv5、上弦の壱はLv6、鬼舞辻無惨はLv7程度だと考えられる。それに対し柱は十二鬼月を倒して柱になったものはLv2、それ以外のものはLv1のステータスA、B程度)

その状態が大正時代まで続き、原作、炭治郎の時代となる。

概ね原作通りだが先述した通りエリクサーやハイポーションといったものおかげで助かった者がいるため柱が9人のはずが10人、護るものを守って死んだ男が最終決戦まで生き残るなど原作乖離が起きている。
(胡蝶カナエが上弦の弐と接触後、自らの体を動かせないほどにやられ、死にかけたが胡蝶しのぶが間に合いエリクサーの摂取により一命を取り留めた。煉獄杏寿郎に関しては柱が1本はエリクサーを常備しているためそれを使い一命を取り留めている)

炭治郎はこの時点で原作通りだと、4回は偉業を成し遂げているためLv5。柱最強の悲鳴さんもおよそLv5だと考えられるので無限城編の前に並んでいることになる。
(下弦の伍・累討伐補助、下弦の壱・魘夢討伐、上弦の陸・妓夫太郎討伐、上弦の肆・半天狗討伐の偉業)

無限城編にて基本的に原作通りの戦いになったけどカナエさんがしのぶさんと共に童磨と戦ったり、しのぶさんが吸収されずに生きた状態で童磨に告られて振ったり。
煉獄さんが黒死牟の戦いに参加してたり、痣が神の恩恵でスキル扱いになって寿命じゃなく魔力を削ることになったり、色々と違うところが出てきている。
(原作が終わっていないので迂闊にどう倒したのか書けないのでこの時のことを書くとしたら原作が終わる時)

そして鬼舞辻無惨と戦うのが冨岡義勇、竈門炭治郎、栗花落カナヲ、我妻善逸、嘴平伊之助の5人、と戦闘はしないが村田さん。
(カナエさんとしのぶさんは他の上弦の鬼を倒す、もしくは怪我人の治療にまわっている。村田さんがいる理由は善逸を運んでいたため。戦闘の際、冨岡さんに刀を渡してたりする)

最後は炭治郎以外の4人が四肢を斬り、炭治郎が頸を斬って朝を迎える。
この瞬間鬼舞辻無惨の死が確定した。

鬼舞辻無惨の死後、他の鬼も死んだとは思われるが事後処理のため鬼殺隊を1ヶ月間維持。
その間胡蝶カナエ、及び冨岡義勇が柱を引退し、代わりに栗花落カナヲが花柱、竈門炭治郎が水柱兼日柱に任命された。
そして新たに我妻善逸が鳴柱に、嘴平伊之助が獣柱に任命される。
1ヶ月の間だが柱となった彼らは極東全域を走り続けた。
(この頃から我妻善逸は獪岳から受けた血気術の後遺症により寿命を削られ続ける)

ちなみにだが今作の主人公が拾われたのは那田蜘蛛山の死闘を終えて治療が終わり、それぞれが任務に行っている時である。
その時からずっと蝶屋敷で暮らしてる。
(偶にきよちゃん、なほちゃん、すみちゃんの手伝いをしている。アオイさんが宇髄天元に連れていかれそうになった時も実は居た。当時10歳)

ちなみに主人公の名前は祠堂(しどう)朱鳥(あすか)
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