「初めに……貴方の記憶は貴方の本来の記憶ではないわ。」
「え?」
「それにあなたは…自身の能力についても良く分かっていない。
それどころか私たちの誰も貴方の能力を解明することはできていない……あの永琳もね。」
「貴方の霊力が安定しているのはある薬を私が投与したからよ。
それにあなたは…………人間。ではないものね」
そう言って姫様は僕の……正確には僕の背中から生えている翼を指さした。
「……これは…。」
「生まれつき。なんてことはないものね……。貴方の記憶は本来の物ではない上にとてもチグハグでいて…辻褄が合わないのだもの。」
「……たしかに…そうかも知れないです……。でも……ならこの記憶はなんなんですか?僕は……僕の中にある記憶はここに……この永遠亭で過ごした記憶しかないんです。それでも姫様は僕のこの記憶は偽物と言うのですか?」
そう言うと彼女は言いずらそうな表情をして……
「まぁ…いいか。このまま私達……永琳のコマとして潰してしまうのはうどんげにとっても可哀想だし」
「……?なんの事です?」
「いや別に……。でもあなたは本当に知りたい?あなたの本当の記憶のことを。」
「まぁ……知りたいです。」
そう言うと彼女は「分かった」と言って僕の方へと目線を向けて…
「それじゃあ……話すわよ。」
そうして僕は彼女から僕のことに関する全てのことを聞いた。
「……これがあなたの本来の記憶。……と言っても、これは貴方から聞いた限りでの貴方の記憶だけどね。」
「そう……なんですね。」
そうか……僕は何かから逃げてきた果てにここに辿り着いたということなのか……。
僕は聞いた限りの記憶を掘り返す。しかし……姫様から聞いた話以外のことを思い出そうとしても、僕の頭の中にはノイズのようなモヤがかかって、それ以上を思い出すことは出来なかった。
「たしかに……それが…その記憶が本当に僕の記憶だってことを思い出しました。でもどうして……永琳さんは……鈴仙は僕に…能力を行使したんですかね?」
「さあ?でも記憶が戻ったって言うなら……永琳にでも聞いてきたらどう?」
「はい。……そうします。」
それから僕は部屋を後にして永琳さんの元へと向かった。
「永琳さん。」
「どうかしたの……?なんて…そんな考えは不要ね。だって貴方がここに来たってことは…記憶を取り戻したのでしょう?」
無言で肯定する。そして聞かなければならない。
「教えてください……。どうしてあの日……僕のことを鈴仙の能力を僕に使わせたのですか?」
「その答えなら簡単。私達と一緒に戦って欲しかったから。でもそれには以前のあなたの性格からして協力は不可能そうだった。だから……」
だから……と一呼吸おいて、永琳さんは続ける。
「今、もう一度尋ねるわ。……創真。私達に協力して。私達の目的は月の隠蔽。月からの使者から身を隠すために必要なことなのよ。……協力…してくれるわよね?」
「……はい。分かりました。」
(ま、断わってたら薬でまた睡眠状態に陥れるだけだったのだけどね。)
記憶がない……それにこの人達には恩義もある。それに僕は……
……そうして僕は永遠亭サイドにつくことになった。
ここで遂に創真が永遠亭サイド(敵ポジ)につきました。
自機組との遭遇で彼は記憶を取り戻せるのか?
次回に続く