僕は振り下ろされた刀を無意識のうちに回避した。
「…………?!」
「何故躱すんだ?」
驚いた顔で彼はこちらに問いかける。
「分からない。何故なのか分からない。」
僕も何故か判らず、困惑して返した。
ふむ……と考えた様子でこちらを見る男をみて、少し思ったことがあり、僕はその男に話しかける。
「ねぇ…。聞きたいことがあるんだけどいい?」
「何だ?」
「君は何者何だ?」
そう言うと彼は驚いた顔をして
「何だ、何も知らないのか?俺は少し前に比べればちょっとは有名になったと思ったんだがな……。」
とだけ言って…。
「俺は数年前から退魔師をやっている……名前は久國だ。……八雲久國。」
そのことを聞いた僕は少し納得した後に驚愕した。
「へぇ……って、八雲?!八雲って……あの紫さんの?」
「あぁ……俺には苗字は無かったんだがな……つい先日にこの姓を直々に本人から貰った。」
「そうなのか……苗字を貰うくらいに凄いことを成したって事なんだね」
「そうらしいな……ま、お話もこれくらいでいいか……。」
そう言って久國はまた刀を持ち直し再びこちらへと剣先を向けた。
「お前、さっきなんか薬でも服用したか?」
「ん?あぁ、確かに飲んだけど?」
そう言うと久國はなるほどな、と言って僕に説明を始める。
「服用した薬には…多分だが戦闘を続行することを強要する効果でもあるんだろう……。あくまで憶測たがな……それとも」
チラッとこちらをみて考え、彼はこう言った。
「妖怪としての本能か……だな。吸血鬼にされたのならその力が行使できるはずだ……おそらく人間にやられるのを無意識のうちでかわそうとしたんだろう。」
「つまり……どういうことだ?」
「そうだな、まぁ戦闘は逃れられないということだ。」
そして彼はまた刀で僕を斬りつける。
その剣筋は恐ろしく正確で一線もズレのない綺麗な線を描いていた。
しかし僕の頭で突然信号が走りその瞬間に身体が動き、僕はその一撃を躱した。
彼は眉を顰める。
「やっぱ、こんなんじゃ無理だよな。」
彼はそう零す。
僕はかける言葉がなくて……どう言えばいいか分からないがとにかく喋る……。
「ごめん。多分剣の攻撃は全部躱す。」
……そんでもって……
「君を叩き潰す。」
「……え?」
「叩き潰すって言ったんだ。半妖には使わないでおこうと思っていたが……こうも技を躱されてちゃこれしかない。」
そうして袖を捲り、腕輪の様な物を見せる。
「何だ……それ?」
「これか……?これは…おれが八雲の姓を受けた要員であろ力さ…。」
「変身。」
そう言って彼は腕輪に向けて自身の霊力を流し込んだ。
すると腕輪が輝きを放ち、その光は一瞬にして辺りを炎で包み、それから彼の体を包み込んだ。
そして……
青と赤の装甲に包まれた戦士が炎の中から現れる。
「待たせたな、次は反撃してもいいんだぜ?」
そんな軽口を叩いて、彼は僕に襲いかかるのだった……!
久國は変身します、はい。
次回、創真と久國の戦闘が始まります。(ほんと)