放課後、俺とリーラは木漏れ通りのゲームセンター『SILKY』に寄っていた。
そして、彼女だけじゃなくもう一人いる。
「♪~♪~♪~」
横で音楽ゲームをしているデイジーがいる。
画面に流れ出るタイミングキーを合わせギターを弾いている。
『兵藤くん、帰りに「SILKY」に寄って私とゲームをしてください』
と、帰り際にデイジーに誘われた。
あの時の屈辱を晴らそうと試みているのかどうか定かではないが・・・、
「(楽しそうに笑うなぁ~)」
と、デイジーの顔を密かに見て対戦しているわけだ。
少しして、ゲームは終わりトータルを見てみると、
「同点だな」
「そうだね」
ミスも無しのパーフェクト。後ろからリーラの「お見事です」と労いの声が聞こえる。
「ここまで私といい勝負する人って兵藤くんが初めてかもしれません」
「俺は誰かと勝負するのは初めてだから分からないけどな」
ゲーム用のギターを元の場所に掛けながらそう言うと、デイジーは笑みを浮かべて口を開く。
「軽く教えた程度で直ぐに覚えちゃう兵藤くんは凄いです」
「一誠は物事を覚えることは得意ですからね」
リーラはどこか誇らしげに言う。俺から言えば、早く覚えて活用したいからだけどな。
「それにしても、大変なことになったね。ネリネさまとリコリスさま、
シアさまの許婚になるなんて」
「まったくだ。おかげで嫉妬集団が迫って攻撃してくるんだし、
平穏な学校生活とおさらばになった」
「ははは・・・・・でも、実際のところ本当に結婚するんですか?」
苦笑いしたデイジーは真意を知ろうと俺に問いかけてきた。俺は首を横に振る。
「まだまだ時間はある。今すぐ結婚しろと言われているわけじゃない。
結婚するなら、お互いのことをよく知ってからにするさ」
「曖昧の発言ですね」
「いきなり許婚にされた俺の気持ちを理解してくれ。結婚なんて考えてすらいなかったんだぞ」
溜息を吐けば、デイジーが「そうですか」と呟いた。一応、理解してほしいもんだよ。
「・・・・・それにしてもシアさまと結婚なんてすごいですね」
「憧れているのか?」
「はい、シアさまは天界のお姫さまですし、天界に住む天使はシアさまのことを憧れております」
だからか・・・・・。そんな彼女の許婚になった俺に攻撃するのは理解できなくはないけど、
天使としてのイメージが台無しになるぞ天使の生徒たち・・・・・・。
「・・・・・そう言えばデイジー」
『SILKY』から出て彼女にとある事を問う。
「放送部員ってデイジーだけなのか?」
「えっと、はい。そうですね。奨学生として人間界へ来たので、
私は学校の寮生活をしているんですけど、奨学生は部活への入部を強く勧められるらしく、
私もどこかの部活へ強く入部を薦められまして結果、放送部に入り現在は部長をしています。
って、部員は私一人だけなんですよね」
「部員不足真っ最中というわけか」
「まさしくその通りです。
それに私って人付き合いがどうしても苦手で友達と呼べる存在が・・・・・」
途端に表情を曇らせるデイジーさんだった。しかし・・・・・。
「そんじゃ、その兎みたいなものは何だ?」
チョコンと、デイジーの頭に乗っている兎もどきに指を差した。すると―――。
「お主、我を兎と呼ぶではない!無礼であるぞ!」
怒気が籠った声音を兎もどきから聞こえた!
「喋った・・・・・?」
「意志があるのですか・・・・・?」
俺とリーラは驚いた表情を浮かべてデイジーの頭の上にいる兎もどきを見詰めた。
「そう言えば、お二人は知らなかったですね。このヒトはエリカ=スズラン」
「我はデイジーの守護獣である。我の偉大さを知ったら、我の偉大さに称えるがよいぞ」
・・・・・なんだ、この兎は。
「デイジーさま、この守護獣と名乗る生物は一体・・・・・」
「エリカさんは天界に住む神獣なんです。とても高位の神獣で私を守ってくれるんですよ」
「神獣、魔獣と対なる存在か。初めて見たな」
ナデナデと自称、守護獣と名乗る兎もどき―――エリカ=スズランを触ってみた。
おお・・・肌触りがまたいい・・・・・。
ガブッ!
「「「・・・・・」」」
触っていたら、思いっきり噛まれた。俺を含め、リーラとデイジーが唖然となった。
「
モゴモゴと俺の手を頬張りながらエリカは何か言った。
一拍して、デイジーは慌てて俺の手を離すように窘め始めた。
「エ、エリカさん!兵藤くんの手を離してください!」
それからしばらく。ようやく俺の手は解放された。だけど、そんなに本気で噛まれてはいなかった。
薄っすらと歯形が残る程度だ。でも、これはこれで警告というわけかな・・・・・?
「大丈夫ですか?」
「ああ、軽く噛まれただけだった」
リーラに心配される中、エリカが視線を真っ直ぐ俺に向けてきた。
「・・・・・お主、兵藤一誠と言ったな?」
「それがなにか?」
「デイジーの守護獣として言おう。お主はとても危険だ。
願わくば、デイジーに近づかない欲しい。邪悪なるドラゴンを抱えている間はな」
―――――この兎、噛んだ時に知ったか。
「エ、エリカさん!兵藤くんに何てことを―――!」
「いや、そいつの言う通りだ。俺は危険な存在なのかもしれない。だがな、エリカ」
叱咤する彼女の言葉を遮り、肯定と首を横に振る。そして俺は、真っ直ぐエリカに言った。
「俺は自分から無意味に誰かを傷つけるような真似はしない。それはお前の大切なデイジーにもだ」
「・・・・・」
「約束するよ。もしもデイジーの身に何が遭ったら守る」
エリカに俺はそう言った。エリカはしばらく無言で俺を睨むように見詰めてくる・・・・・。
「・・・・・ふん、デイジーの従妹の許婚が大きく言ったものだな」
「デイジーの従妹・・・・・?」
彼女に従妹がいるなんて・・・・・。
待て、俺は彼女の従妹と許婚なんて・・・・いや、まさか・・・・・。
「・・・・・デイジー、お前・・・・・もしかすると、シアと従姉妹の関係なのか?」
そう信じられないものを見る目で、デイジーに問えば・・・・・。
「はい・・・・・そうなんです」
「マジかよ・・・・・」
ということは、彼女の父親は神王の兄となる。
そんな人の娘がこの世界に、学校に通っていたなんて驚いた。
「ん?でも何で従姉ならシアを『さま』付けで呼んでいる?従妹同士とはいえ家族だろう?
やっぱり、神王の娘だから敬遠してしまっているからか?」
「・・・・・あなたは何も言っていないのにどうしてそこまで、分かってしまうんですか?」
デイジーが初めて目を丸くした。そんな彼女の言葉を聞いて頬をポリポリと掻く。
「何でだろうな。俺もよくわからない。昔から俺って人の気持ちを何となく分かってしまうんだ。
根本的なことは分からないけどさ」
「・・・・・そうですか」
苦笑いする彼女。そんな表情をする彼女に余計な御世話だと思うが敢えて言わせてもらう。
「シアは一人の女子生徒として駒王学園に通っている。
デイジーが彼女に敬遠をする理由はないと思うぞ?」
だから、と俺は言った。
「明日、一緒に屋上で食べよう」
「・・・・・へ?」
「昼休みなったら誘いに行くから待っててくれよ。じゃ、またな」
それだけ言い残して、リーラを引き連れて家に帰路する。
―――翌日In駒王学園
約束通り。俺は昼休みに隣のクラス、デイジーがいる2年D組に顔を出した。
「デイジーはいるか?」
近くにいたこのクラスの女子生徒に尋ねると、デイジーがいる場所へ指を差した。
紫色の髪の少女が俺の視界に捉えられ、ガタリと立ち上がった。デイジーだ。
彼女の所に赴き口を開く。
「んじゃ、屋上へ行こうか」
「あの、本気で・・・・・?」
「俺って嘘を付かない主義なんでな。やるっと言ったらやるんだ。ほら、皆が待っている。
行こうか」
そう言って俺は時間が惜しいとばかり、彼女の肩や足の裏に一瞬で回して横に抱きかかえ、
窓の外へと飛びだした。
「・・・・・へ?」
一瞬の呆け。デイジーはいま自分の状況に気付かず、俺に成すがままにされる。
外に飛び出したその直後、背中に金色の翼を展開して力強く羽ばたかせて、屋上へと飛翔する。
屋上には既にリーラたちが腰を下ろして待っていた。
「お待たせ」
「イッセー・・・・・あなた、どこから現れたのよ」
「気にしたら負けだぞリアス・グレモリー。さて、この子はデイジーだ。
たった一人の放送部員の子で、シアの従姉らしい。
今日から彼女も一緒に食べることにするからよろしくな」
「・・・・・え?」
と、そんな事を言う俺に呆けた顔を覗かせる彼女だが、
リアス・グレモリーたちは軽く彼女を出迎えた。
「えと・・・・・兵藤くん。話がどんどん進んじゃって、なにがなんだか・・・・・」
「人付き合いが苦手なデイジーのために、俺が手を回しておいた。
勝手なことを、と思うだろうが、何時までもそういうわけにもいかないだろう」
「そうですけど・・・・・でも、いいのですか・・・・・?」
恐縮とばかり、リアス・グレモリーたちに尋ねるデイジー。
そんな彼女を対照的にリアス・グレモリーたちは笑顔で口を開いた。
「問題ないっす!むしろ、デイジーちゃんと仲良くお話をしたかったところだよ!」
「はい、私たちを冥界と天界、魔王と神王の娘としてじゃなく、
普通の女の子として接してください」
「逆に気を使われると、ちょっと接しづらいかな?」
「そうね。同じ学び舎に通っている者同士、仲良くしましょう」
「よろしくお願いします。デイジー」
「私もいいよ。一緒にお話ししたり食べたりしよ?」
「多い方が賑やかになるからね」
「だから、僕たちは歓迎しますよ。デイジーさん」
朗らかに出迎える。―――すると、
「じゃあ、俺様も歓迎してもらえるよね?」
第三者の声が聞こえた。後ろに振り返ると、眼鏡を掛けたイケメン・・・に近い男子がいた。
「・・・・・誰だ?」
「あっ、緑葉くん」
「緑葉?」
リシアンサスが反応した。クラスメートか?と思えば、
緑葉と呼ばれた男子生徒は眼鏡をクイッと上げ、口を開いた。
「シアちゃんとネリネちゃん、リコリスちゃんと同じ二年C組の緑葉樹。
通称、駒王学園の頭脳―――」
「ソーナやシーグヴァイラに負けて、駒王学園の頭脳とは言えないでしょう?」
リアス・グレモリーが話を遮った。緑葉は言葉を詰まらせ、「ふっ」と漏らした。
「何時かリベンジしますよ。俺様の頭脳がこの学校一と証明するためにも!」
「そう、頑張ってね」
何故か意気込む緑葉。まあ、悪い奴じゃなさそうだが・・・・・。
「そこの綺麗なお嬢さん。どうだろう、放課後になったら俺様と―――」
いきなりリーラをナンパしはじめた。・・・・・訂正だ。
「ナンパ野郎は死すべし」
どこからともかく出した縄で、緑葉の全身を芋虫のように捕縛した。
「こ、この縄さばきは真弓と―――!?」
「とりゃ」
縛った緑葉を屋上から放り投げた。落としてはしていないぞ。
ぶら下げているから命の危険性はないだろう。
「えっと・・・イッセーくん。緑葉くんは決して悪い人じゃないから・・・・・」
「人のメイドにナンパする奴は、許さん。さて、時間もないし食うか」
緑葉をフォローするリシアンサスには悪いけど、
人の家族に手を出す奴は許さない。これは絶対だ。―――――マジかよ。
「・・・・・悪い、ちょっと出かけてくる」
徐に立ち上がってリーラに告げた。不思議とばかり、彼女は顔を向けてくる。
「どちらへ行かれるのですか?」
「軽くジョギングだ。先生には家の都合で早退するって言ってくれ」
「では、夜になったらお戻りください。夕食の準備をしますので」
「わかった」
と、言って俺は屋上から飛び降りた。次の瞬間、
『待てぇ!兵藤一誠ぃ!』
屋上から嫉妬集団の叫び声が聞こえた。
―――○●○―――
「あー、あいつら。物凄い執着心だな。まさか、学校の外まで追いかけてくるとは・・・・・」
夜の木漏れ日通りを歩く俺。あれからずっと走り続けていたせいで何時の間にか夜になっていた。
ギリギリ追いつけれる速度で逃げたらあいつら、学校の外まで集団で追ってきた。
人のことは言えないが、授業は良いのか?って思うぐらいの必死さで迫ってきたもんだから、
呆れを通り越して感心してしまった自分がいる。
「(帰るとするか・・・・・)」
ファンクラブの奴の姿は見えない。完全に撒いたか。
「・・・・・?」
ふと、俺の視界に気になる少女が目に入った。
『SILKY』の中にあるクレーンゲームを覗く薄紫のツインテールの少女だった。
ポチポチとボタンを押して、中の猫のぬいぐるみを物欲しそうに眼差しを向けていた。
腕の中には薄汚れたトラ模様の猫のぬいぐるみを抱えている。
少し気になり、ゲームセンターの中に入って声を掛けてみた。
「金を入れないと、ゲーム出来ないぞ?」
「・・・・・」
ツインテールの少女は俺に顔を向けてくる。一目見ただけで無感情そうな子だと認識した。
だが、気になるのは彼女から感じるこの異様な魔力。
お前ら、どう思う?内にいるクロウ・クルワッハたちに問う。
『ただの悪魔ではないようだな。その上、魔力が膨大すぎて不安定な状態だ』
『何かの拍子に暴走してしまったら、この町が消滅することは間違いないでしょう』
『主、我としては主の目の届くところにいさせた方がいいと思う』
―――思いっきりこいつら危険視しているし。引き取った方がいいのか?
『悪魔なら魔王に問い詰めた方がいいだろう。
こんな不安定な状態を放っておいたらどうなることやら』
・・・・・そうか、分かった。
「お前、一人か?」
「・・・・・」
少女はコクリと頷いた。好都合な事だが・・・・・幼女誘拐と捉えられないよな?
「じゃあ、一緒に家に来るか?お前の保護者を見つけるまで家に泊らせるけど・・・っと、
俺の名前は兵藤一誠だ」
自己紹介をした。すると、意外な事に・・・・・。
「イッセー?」
俺のあだ名とも言える名前で呼んできた。
サラッと言える時点でこの少女は俺を知っている様子だった。
「ああ、イッセーとよく言われるけど、お前は誰なんだ?」
「・・・・・」
尋ねると、顔を俯いた。そして、少女は顔を上げて口を開いた。
「リコリスお姉ちゃん・・・・・知ってる?」
「リコリス?」
意外な人物の名前が出てきた。首を傾げて問うてみた。
「リコリスの知り合いか?」と、そしたら―――。
「イッセー」
徐に抱きついてきた。
「えっと・・・・・・?」
「やっと、見つけた。イッセー」
・・・・・これ、どうしろと?
『『『連れて帰るべき』』』
クロウ・クルワッハたちにそう言われる始末。まあ、俺を知っているようなら問題ないだろう。
「んじゃ、一緒に帰るか」
「うん」
謎の少女は頷いた。了承を得たことで彼女を引き連れて家に帰路に着く―――と思ったが、
「何となくここに寄ってみました」
リーラと一緒に来た公園に足を運んだ。そう、堕天使の女と遭遇したこの場所へ。
なんとなくこの場所に行きたかった。
「・・・・・?」
夜の公園の噴水の前に1人の男が何か黄昏ていた。しかもあれは、駒王学園の制服。
まぁ、俺もその制服を着ているんだけどな。
「おい、そこで何をしているんだ?」
「・・・・・?」
声を掛けると駒王学園の制服を着込む男子がこっちに振り向いた・・・・・って、
こいつはあの時の?
「あれ・・・・・お前、どこかで・・・・・」
うろ覚えのようだな。まぁ、別に白を切っても構わないだろう。と口を開いた瞬間。
公園の雰囲気がガラリと変わった。同時に殺意の視線も感じ取れる。背後に振り返ると
スーツを着た男がこっちを睨んでいた。・・・・・マジで?
「これは数奇なものだ。こんな都市部でもない地方の市街で貴様らのような存在に会うものだな」
「「・・・・・」」
「・・・・・人間、一つ聞いてよいかな?」
怪しい男が鋭い視線を向けてくる。なんだ?と問えば、
「そのはぐれ悪魔と知り合いか?もし、そうでないならば早々に去ってくれるとありがたい。
はぐれ悪魔を狩らないといけないのでな」
「はぐれ・・・・・?悪魔・・・・・?」
男子生徒は困惑の表情を浮かべる。こいつ、リアス・グレモリーと接していないのか?
「いや、関係ないな」
「そうか。ならば、その悪魔と関係は?」
そう言ってスーツの男は黒い一対の翼を展開した。・・・・・堕天使か。最近、良く会うなぁ。
堕天使の視線は謎の少女に向けられる。背後に隠すようにして言った。
「俺の知り合いだ。悪いけど、手を出さないでほしいもんだな」
「・・・・・一般人の悪魔か。ならば、消え失せろ」
興味はなくなったとばかり、俺から視線を外す堕天使。
「・・・残念だけど、狙われている奴が目の前にいるのに
『はい、どうぞ』って退くほど俺は、出来てはいない」
「ふん、なら―――貴様も殺してやろう!」
「・・・・・・わ、わけわかんねつぅの!」
不意に男子生徒が全力で逃げた。堕天使は俺より先に逃げたアイツを
排除の好機だと、翼を羽ばたかせて追って行った。謎の少女に悪いけど一緒に来てもらうか。
「悪い、しばらく俺の背中にしがみついてくれ」
「わかった」
まったく、その場で怖がってくれたらこっちも楽だっていうのによ!
謎の少女を負ぶさって駆け足で追いかける。
「待てよ、コラ!」
堕天使の後を追う。そして、直ぐに逃走する男子と追う堕天使の姿を見つけた。
「はっ!」
極太の気のエネルギーのビームを堕天使に向けて放った。
堕天使は迫りくる一撃に気付き慌てて回避した。
「おのれ!邪魔をするか!」
「邪魔するって最初に言っただろうが、この烏!」
「か、烏だと・・・・・!?」
「黒い翼を持っているのなら烏だろう?」
「貴様、俺を愚弄するかぁあああああああああああああっ!」
「・・・・・堕天使って短気な奴らしかいないのか?」
あの堕天使の女のように光の槍を投げてきたが難なく逆に掴んだ。
その光景を見て堕天使は口を開く。
「・・・貴様、人間か?俺の槍を素手で受け止める者は初めて見たぞ」
「人間です。流れる血も赤いぞ」
加えて、俺は―――
「
バサッ!と六対十二枚の金色の翼を展開した。堕天使は俺の姿を見て驚愕したかと思えば、
「その翼・・・・・なるほど、貴様か。あのお方から聞いた天使の男というのは」
あのお方・・・・・?誰だか知らないけど、今するべきことはこいつを退かせることだ。
「・・・・・あのはぐれ悪魔より貴様から殺した方が良さそうだな」
「・・・・・はぐれ悪魔?あいつがかよ?」
「むっ、貴様はあいつが悪魔だとは知らなかったのか?」
堕天使の言葉に俺は首を傾げる。
もしかしてあの堕天使の女はあいつがはぐれ悪魔だから狙ったのか?
「全然、と言うか俺は悪魔と堕天使が嫌いなんでね。悪魔が堕天使に殺されようが、
堕天使が悪魔に殺されようが知ったことじゃない」
「・・・・・では、俺の行動を黙認するのだな?」
「なっ・・・・・!?」
茂みの中から声が聞こえた。俺と堕天使はそっちに振り返ると男子生徒が隠れていた。
バカが・・・・・。
「あー、そうしたいんだけどこの流れ的にこのまました方が良くないか?」
「ふむ、貴様とは少しばかり話が合いそうだが・・・・・・仕方がない。続けようか」
そうしておけ、俺も堕天使の力を知りたかったところだった。
堕天使は光の槍を発現して構え、俺は拳を構える。そして、俺たちは飛びだした―――――。
「―――そこまでよ」
「「・・・・・・」」
第三者の声によって戦いは中断した。俺と堕天使は声がした方向に顔を向けると
駒王学園の制服を着込む紅い髪の女子がいた。
「・・・・・・紅い髪・・・・・グレモリー家の者か」
リアス・グレモリーその人だった。でも、どうしてここに・・・・・?
「リアス・グレモリーよ。ごきげんよう、堕ちた天使さん。あの子にちょっかいを出すなら、
容赦しないわ」
「・・・・・ふふっ。これはこれは。あの者はそちらの眷属か。この町もそちらの縄張りと
言うわけだな。まあいい。今日の事は詫びよう。だが、下僕は放し飼いにしない事だ。
私の様なものが散歩がてらに狩ってしまうかもしれんぞ?それにその者を偶然だが、
守ってくれる者も何度も現れるとは思わない事だ」
「御忠告痛み入れるわ。この町は私の管轄なの。私の邪魔をしたら、
その時は容赦なくやらせてもらうわ」
「その台詞、そっくりそちらへ返そう、グレモリー家の次期当主よ。我が名はドーナシーク。
再び見れない事を願う」
堕天使の男、ドーナシークは黒い翼を羽ばたかせる。身体が浮き始め、空へ飛翔していく。
「人間!今回は邪魔が入ったが次に会う時こそが決着だ!」
空へ浮かんだドーナシークは俺を睨むと、夜の空へ消えて行った。
「はぁ・・・・・帰ろ」
「待ちなさい」
「・・・・・なんだ?」
嘆息して帰ろうとした俺は、彼女に振り返り用件は何だと口を開く。
「あの子を守ってくれてありがとう。私の大切な下僕悪魔なの」
「なんだ、あいつはお前の下僕だったのか。ちょっと複雑」
「何かお礼をしたいわ。私が出来る事なら何でも用意するけど何が良いかしら?」
「いらない。というか、あの堕天使が言っていたように自分の眷属を野放しにしたらダメだろう。
・・・・・・いや、あいつに何も説明もしていないからこんな事に成ったんだ」
「・・・・・御忠告痛み入れるわ。ところ・・・・・あなたの背中にいる子は誰なの?」
リアス・グレモリーが俺の背中の症状に視線を向ける。
「さあな。ゲームセンターで拾ってきた。どうやらリコリスの知り合いらしいから」
「リコリスの・・・・・?」
首を傾げ、俺の傍に寄って来ては背中の少女を間近で見た。そして、目を丸くする。
「―――プリムラ!?」
・・・・・どうやら、彼女もこの子の知り合いのようでした。
―――○●○―――
―――兵藤家
あれから俺はプリムラという少女を無事、家に連れて帰ることができた。
堕天使に襲われた男子生徒はリアス・グレモリーに送られた。俺は家に辿り着いて早々、
魔王と神王を呼び、プリムラのことを尋ねた。
「で、どういうことなのか説明してもらいましょうか?神王さまと魔王さま?」
「あ、あのー?一誠ちゃん?どうしてそんな恐い表情をするのかね?」
「膨大な魔力を制御できていなく不安定な状態のまま、町中に一人で出歩かせて、
もしも暴走して町を消滅してしまったらどう責任を取るんだ?」
「そ、それはだな・・・・・」
神王が冷や汗を流して俺から視線を逸らす。当のプリムラはリシアンサスとネリネ、
リコリスと話しをしている。
「・・・・・で、彼女は一体何なのか根掘り葉掘り言ってもらいましょうか」
「一応・・・・・彼女のことは超重要機密事項なんだけど」
「その超重要機密事項の少女が、町中に出歩いた時点で関係なくなったんじゃないか?」
「「・・・・・」」
そう言うと二人の王は沈黙した。そして、観念したかのようにフォーベシイが口を開いた。
「彼女はね。私たち魔界と天界と人間界と共同して無から創りだした人工生命体なんだよ」
「人工生命体?」
それに、三世界共同とは・・・・・。
「しかも彼女は三号。実を言うと、リコリスちゃんはプリムラの前に生まれたクローンだ。
ネリネちゃんのDNAによって生まれた人工生命体二号としてね」
「・・・・・」
フォーベシイの話しを聞いて俺は絶句した。あのリコリスがクローン・・・・・?
信じられなく、視線を彼女に向けば、重々しく頷いた。肯定と。
「一号は・・・・・?二号と三号と言うんなら、一号はいるはずだよな?」
「消滅した」
消滅?どうしてなんだ・・・・・?と問えば、
「最初は冥界と天界の間だけで最強の魔力を得る実験をしていた。
そう、『
「しかし、当時の冥界と天界はそこまでの技術を発展していなかった。
だから、無理な強化と実験によって一号は耐えきれず、爆発を起こしてその研究所は消滅した」
「その失敗を糧に私と神ちゃん。冥界と天界はとある人間の一族に協力を求めた。
その昔、三大勢力戦争を終戦に導いた人間をね」
「―――っ!?」
まだ、存在していたのか。三大勢力戦争を止めた人間が・・・・・!
「協力は得られた。そして、今度は元から強い魔力を持つ魔族で実験をした。
二回目のテーマは『複製』としてね」
「それが・・・・・アンタの娘、ネリネだな」
「ああ、そうだ。元々強大な魔力を持った悪魔の遺伝子を改造し、強大な魔力を持たせ、育てる。
三世界屈指の魔力と、それを制御できるだけの器。元々持っていた素質を育て、強化することで
限界以上の魔力を制御できる力をつけさせるって予定だったんだが、複製された遺伝子ってのが、
予想以上に劣化が激しくてな。途中まではいい線をいってたんだが・・・・・結局は失敗だ」
失敗って・・・・・ちょっと待てよ。
「失敗なら、そうしてリコリスはここにいる?失敗したなら一号みたいに・・・・・」
「とある人間の一族の判断が早くてね。なんとかリコリスちゃんを失わずに済んだんだ」
「『これ以上すれば、寿命を縮ませるだけだ』とな。
結果、悪魔としての寿命一万年は生きられないが、それでも千年ぐらいの寿命で留まった」
「それから彼女を我が娘のように愛を籠めて育て上げた。その結果がいまに至る」
リコリスに視線を注げるフォーベシイ。その瞳は子を見る親の目だ。
「じゃあ、プリムラはなんだ?」
「失敗した二つの研究を見直し、改めて俺たちは次にしたのが『生産』だ。
さっきも言った通り、プリムラを無から創りだした奇跡の産物だ」
「当然、無から有を創りだすことは不可能。聖書の神ヤハウェじゃないとできないことだ」
あの神か・・・・・それほどまで強大な力を、能力を有していることなのか・・・・・。
「だがな、いくつもの失敗といくつもの偶然、そしていくつもの奇跡。
それがたまたま綺麗に混ざり合って天文学的数字の確立を拾った。つまりだ。
プリムラってのは奇跡の具現化。もう一度作ろうとしたって絶対にできねぇ、
替えのきかないたった一人の実験体なんだよ」
「本当は冥界のとある施設で育てていたはずなんだけどね。プリムラ。
どうして君がこの人間界に来たんだね?」
プリムラに問うフォーベシイ。対してリシアンサスたちと話しをしていたプリムラは、
顔を俺に向けてくる。
「イッセーに会いに来た。
どんな人なのか、リコリスお姉ちゃんたちが笑って教えてくれたイッセーを」
わざわざ俺を会いにこの人間界まで来たってことか・・・・・。
「リムちゃん・・・・・」
『・・・・・』
静寂な沈黙がこの場を支配する。もしも、俺が早く引き取っていなかったら、
彼女の身はどうなっていたのか想像ができない。これで、本当に良かったのか?
「・・・・・とりあえず、彼女を冥界に帰す手続きをしないと」
「いや・・・・・ここに残る」
フォーベシイの言葉にプリムラが拒否した。そんな拒否の言葉に周りの皆は驚いた。
「リムちゃん・・・・・?」
「ここに住む」
「プリムラ、帰らないといけないよ」
「ここに住む」
頑になってプリムラは拒み、この家に住みたいという。
どうしたものかと、俺たちは悩んでいたら神王ユーストマが溜息を吐いた。
「そう言いだしたらもう、止められねえな」
「だね。仕方がないかな」
続いてフォーベシイもユーストマの言葉に同意したかのような発言をした。
「仕方がないってどういうことだ?」
「どうだね?一誠ちゃん」
「どうだね?って言われてもな・・・・・」
プリムラを視界に入れる。次にリーラへ視線を変える。
「私は、御主人さまの命に従うまです」
・・・・・メイドって本当に便利だよね。そういうところは。心の中で溜息を吐き。
二人の王に三本の指を立てて言った。
「三つ条件がある」
「なんだね?」
「一つ、プリムラも学校に通わせろ。
俺とリーラは学校に行く間にプリムラは、一人でこの家の中で留守番しないといけなくなる」
「ああ、それは構わないよ。サーゼクスくんには私から言っておく」
一つは軽く了承してくれたか。
「二つ、あんたたちもプリムラの面倒を見る事だ。プリムラを生んだ責任は当然取れ」
「勿論だ。責任は必ず取る。で、三つ目はなんだ?」
三つ目は・・・・・これだな。
「実験は続いているのか?」
「まあ、な。特にプリムラのことだがな」
「じゃあ、その計画。もう中止にするという事で」
そう言うと、二人は目を丸くした。でも、真剣な表情で俺に話しかけてきた。
「いや、一誠ちゃん。それだけは私と神ちゃんだけで決めていいわけじゃないんだ」
「ああ、プリムラの実験は三世界が関わっている。つまり、冥界の五大魔王と堕天使の総督、
天界の神と俺こと神王、人間界のとある一族の指揮のもとで行っている。
まー坊や俺が勝手に計画を中止しろと言ったら、他の魔王とヤハウェさまが許すはずもなく、
俺たちが協力を求めはとある人間の一族に納得のいく説明をしない限り、中止することができねえ」
・・・・・前途多難、か・・・・・。
「一誠ちゃん、キミの気持ちは分からなくはないよ。でもね、この計画は長年続けているものだ。
いくらキミが彼らの子供だからといって、できることとできないことがあるんだ」
「悪いな」
「・・・・・・」
―――ドゴンッ!
『―――――ッ!?』
俺が徐に壁を破壊した行動にこの場にいる全員が驚愕の色を上げた。
「・・・・・自分の無力さに腹立たしいもんだな」
ガラガラと、壁が壊れる中、俺はそう漏らした。
「一誠ちゃん・・・・・」
「もっと、俺に力があればなんとなかったのかもしれない。驕りだと思うだろうが、
理不尽な目に遭っている少女をどうにかすることもできないなんてな・・・・・」
指をパチンと弾けば、壊れた壁が見る見るうちに壊れる前の壁へと戻っていく。
「じゃあ、あんたらが言うとある人間の一族とは一体誰のことを差して言っている?
それは言えるだろう?」
「「・・・・・」」
ユーストマとフォーベシイは顔を見合わせる。とても言い辛そうな表情をして。
「すまない。これも俺たちが軽々しく口にして良いことじゃないんだ」
「三大勢力戦争を終結に導いた人間のことは、公にしちゃいけない決まりでね」
「・・・・・そうか。じゃあいい」
隠し事が多いな。これ以上求めても結果は同じだろう。諦めたと嘆息し、リーラに言う。
「夕飯にしよう」
「はい、かしこまりました」
「プリムラ、腹が減っただろう。夕飯にするぞ」
「うん、わかった」
「・・・・・で、あの二人はどこに行った?」
何時の間にかユーストマとフォーベシイがいなくなっていた。
リシアンサスたちは困った顔をして言った。
「きっと、リムちゃんのお祝いをしようと家に戻って、
家で食べようと作っていた料理を持ってくるかも」
「ごめんなさい。私たちじゃもう止められない」
バツ悪そうにそう言った彼女たちの言った通り、
「そんじゃ!プリムラの歓迎会と祝おうじゃねぇか!」
「そうだね神ちゃん!」
再び家に戻ってきた二人の両腕に、大量の酒や料理が抱えられていた。
あれ、絶対に家から持ってきただろう。
「・・・・・しょーもないな。リーラ、多分いまの分じゃ足りないから料理を多めに作るぞ」
「かしこまりました」
「あの、私たちは・・・・・」
「この際だ。ここで食え。母親を連れてきて一緒にな」
「なんか、ごめんなさい」
「気にするな。これからこんな感じになるだろう。慣れないと身が持たなくなる」
リーラとキッチンで調理の準備をしながら言った。さて、なにを作るとするかな。