Episode1
ウリュウというドラゴンのメイドの後を追ってしばらく時が経った頃。
俺たちの目にとある光景が飛び込んできた。
―――大自然に囲まれている多くの建造物が目に映った。
それだけじゃない。ピラミッドのように高い山の上空に幾重の輪っか浮かんでいた。
あれは一体何だ?
「なあ、クロウ・クルワッハ。こんな場所来たことあるか?」
「いや、私も初めてだ」
誰も知らない場所。未知なる世界に召喚された俺たちは真っ直ぐウリュウの後を追うと、
向こうから数匹のドラゴンが現れた。そして、俺たちを囲むように飛ぶ。
・・・・・警戒されているし。
『この者たちは長から生まれた者たちです』
「ドラゴンがドラゴンを生む・・・・・?そんなドラゴン、聞いたこともない」
『そうでしょう。なにせ、長は世界が生んだ最初の龍なのですから』
―――っ!?
最初の龍・・・・・まさか、本当に実在していたのか?
「原始龍・・・・・」
『知っていたのですか?』
ウリュウが尋ねてきた。それは意外とばかりの感じだった。俺も意外だよ。
「いや、少し龍はどうやって誕生しているのか話題になったんだよ。
そこで挙がったのはドラゴンの始祖、原始の龍ってやつだ」
アザゼルとの話を思い出しながら言った。するとウリュウが顔をこっちに向けてきた。
『なるほど・・・・・あなたはやはり特別な存在ですね。
そこまで考えに至るなんて嬉しい限りです』
なんだか、好感度が上がっているような・・・・・。
『ええ、あなたの言う通り。グレートレッド、オーフィスも龍の長の力で生まれたドラゴン。
次元の狭間で生まれたのはきっかけに過ぎません。
いえ、全てのドラゴンは龍の長から生まれたのですよ。例え、生まれ方が違ってもです』
『親がいるなんて・・・・・変な感覚だ』
『いえ、親ではありません。龍を生みだすシステム・・・・・だと思ってください』
システム・・・・・。原始の龍は世界が生んだシステムだというのか?
『話はここまでです。話は長と対面してからにしましょう』
そう言って、ウリュウはスピードを上げた。向かう先は山の頂上に浮かぶ幾重の輪っか。
あっという間に山に辿り着いてウリュウが空に上昇する。
―――輪っかを潜って進むように上昇すると神秘な光に包まれ、
俺たちは転移魔法で移動する感覚を覚えて、視界が光に奪われた。
―――――。
光は一瞬で消え、視界が回復すると神殿を模した何本も立ち並んでいる石柱が―――。
ゴォォォォォォォンッ!
ゾラードと共にぶつかった。
『・・・・・』
『あっ、すいません!出るときは柱に気を付けてと言い忘れていました!』
『・・・・・それを早く言って欲しかったものだな・・・・・』
ついでに言えば、俺たちもモロに直撃したぞ・・・・・。
なんのコントだよ、これ・・・・・。タンコブできちゃいねぇだろうな?
「一誠、大丈夫か?」
クロウ・クルワッハが尋ねてきた。目の前の柱に気付いてかわしていたようだ。
「ウリュウを一発ぶん殴りたい」
『本当にごめんなさい!』
ペコペコと頭を何度も上下に振るウリュウ。―――ちょっと待ってよ?
「ゾラード、どいた方が良いぞ」
『わかった』
俺の言う通りにどいたゾラードの隣で、
ゴゴゴンッ!
柱の存在に知らないメリアたちも柱にぶつかった。
『いってぇぇぇっ!?』
『なんだよ・・・・・どうして目の前に・・・・・柱がある・・・・・!?』
『解せん・・・・・』
『・・・・・なんという出迎え方なんでしょうか・・・・・』
いや、メリア。こんな出迎えは流石にないって。
『ご、ごめんなさぁぁぁぁいっ!』
案の定、ウリュウが謝りだした。
必死にメリアたちに謝り気を取り直して龍の長のもとへ歩きだした。
俺達が出てきたところは光のワープみたいで、今でも外と繋がっているらしい。
そして、何と言っても俺たちがいる神殿のような場所はとてつもなく広い。
東京ドーム何個分という広さじゃない。全長百メートルはあるガイアでも床と天井の高さが
余るほどだ。多分、ミドガルズオルムがいても余裕かもしれない。
「なぁ、ここにいるドラゴンってどのぐらいいるんだ?」
『千はいます。ですが、私たちがいるこの世界にいる全てのドラゴンを合わせれば、
一万は存在しております』
「い、一万・・・・・」
多いけど、なんか微妙な数。
『太古はもっといました。ですが、人間界に八割の龍が移り住んでしまい、
その半数以上が龍族以外の存在に退治、封印、滅ぼされました』
「・・・・・」
『長もそれには憂いておりました。嘆いておりました。確かに龍は力の塊でプライドが高い生物。
人間など下等生物だと見下しているドラゴンもいました。
ですが、特異で異質で、人間とは思えない力を持った人間たちが次々と龍を倒してしまい、
私たちは考えを改めました。下手に人間を刺激すれば、しっぺ返しが来ると察し、
人間界との干渉を拒み、私たち龍族はこうして異界に籠って暮らしております』
ですが、とウリュウは言い続ける。
『そんなある時に、複数のドラゴンと接している人間がいると長が告げました。
本来、ドラゴンは人間と接触をしないのです。例え、接触すればドラゴンが人間を食らうか、
人間によって倒されるかの選択しかなかった。
なのに、その人間はあろうことかドラゴンと共に暮らしておるではありませんか。
その上、絶対に人間と暮らすなんてあり得ないドラゴンたちと。
長と共に私は驚愕しました。この人間は他の人間と全く違うと』
それは・・・・・もしかしなくても俺だろうな。・・・・・覗かれていたし。
『とても、嬉しそうに、楽しそうに、幸せそうな生活でした。
そ、そして・・・・・よ、夜の営みも・・・・・』
・・・・・プライバシーの侵害じゃないか。半眼でウリュウを見据えていたら、
申し訳なさそうに頭を下げてきた。
『す、すいません・・・・・。あなたのことは一部始終全て見ていたもので・・・・・』
「ふふっ、ならば・・・・・一誠の逞しいアレも覗いていたのだな?」
『・・・・・っ』
クロウ・クルワッハが意地の悪い笑みを浮かべてそう言ったら、
ウリュウが顔を思いっきり横に逸らした。
『み、見てなんか・・・・・』
「なんなら、お前も一誠と交尾をしたらどうだ?
―――快感を物凄く感じるぞ?私はもう病み付きになったがな」
ウリュウの顔が真っ赤になった。
『は、破廉恥です!あなた、最強の邪龍と称されているのにどうして
そんなことを言うようになってしまったのですか!?』
「ふっ、一誠から感じる愛ゆえに・・・・・だな」
俺に振り向く。徐に顔を近づけて―――。
「だから、こんなこともできるのだ」
俺の唇にクロウ・クルワッハの唇と重なった。
『―――っ!?』
「イッセー、我もする」
「当然、妾もじゃ」
オーフィスと羽衣狐までもがキスをしようとせがんできた。
『ド、ドラゴンと人間がキ、キスをし合って愛情表現をするなんて・・・・・!』
ウリュウは信じられないと呟く。やっぱり変なのか?
と、そうこうしている内に違う場所に入った―――。
『イェーアッ!お前ら、のっているかぁぁっー!?』
『『『『『『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!』』』』』』
『イイねイイね!熱く燃え上がっているぜお前らぁっ!
そんじゃ、「情熱のドラゴンブレス!」を歌う!俺たちと一緒に盛り上がれよぉっ!』
ズザーッ!
ウリュウが床に滑った。その原因がまるでバンドをしている人たちと、
それを観たいがため集まった観客たちと思わせるドラゴンたちがいたからだ。
ご丁寧に、ステージまで設けていてドラゴンなのにバンドで使う楽器を扱っている。
『な、なんだ・・・・・こいつらは?』
『ドラゴンが歌を歌っている・・・・・?』
『ひ、非常識です・・・・・』
『変わっている・・・・・』
アジ・ダハーカたちが呆然としている。
うん、違う部屋に入ってこんな光景だったら誰だってそんな感じになるって絶対にさ。
で、ウリュウさん。これは一体なんなんだ?そう思いながらウリュウに視線を向ければ―――。
『神聖な場所でなにやっちゃってんですか、アンタらはーっ!』
ゴウッ!とウリュウの口内から巨大な火炎球が飛び出してきて、
バンドしているドラゴンたちとそれを観ているドラゴンたちに直撃し、轟音を鳴り響かせた。
おおう、強力だな・・・・・。
『あなたたち!後できつーいお説教をします!私が戻ってくるまでここにいなさい!』
『おい、聞いていないぞ』
ティアの言う通り。ドラゴンたちが気絶していた。
たったの一撃で多くのドラゴンたちを無効化にするなんて・・・・・とんでもない強さの
ドラゴンだな。ウリュウが歩きだす。
俺たちも続いてあることしばらく。色んな空間を通って。
ようやく目的のらしき扉の前に辿り着いた。
『えっと、色々とありましたがこの奥に長がおります。ここから先はあなたたちが入ってください。申し訳ございませんが、私は先程のバカ共のお説教をしに行きます』
「お、おう・・・・・程々にな」
そう言ってみたものの、プンスカプンスカと口から愚痴を言い続け、
俺たちから離れてしまったウリュウを尻目に扉に触れた。
ガゴンッ!
人の手では開けれないと思っていた扉が勝手に開いた。さ
て・・・・・長とやらは一体どんなドラゴンなんだろうか。緊張と興味を感じつつ、
視界を真っ直ぐ前に向けると―――。
「はぁ・・・・・コタツは良いものですねぇ・・・・・」
『『『『『・・・・・』』』』』
「「「「・・・・・」」」」
まだ寒い季節でもないのに、顔だけ出してコタツに入っている翡翠色の角を生やした女性がいた。
あのヒトが・・・・・長?
「・・・・・え?」
あっ、こっちに気が付いた。―――次の瞬間だった。
「い、何時の間にいらしたんですか!?って、痛っ!熱っ!?」
慌てて起き上がろうとしたが失敗した。体がコタツとぶつかって、
熱を発せる部品と接触したようで悲鳴を上げた。
「あれが・・・・・龍の長だと・・・・・?」
『まるっきり、人間染みたドラゴンじゃないか・・・・・』
『私が想像していたイメージとまるで違います』
呆然としている俺たちを余所に、女性は慌てて魔方陣を展開して、コタツを片付け、
この空間の奥に設けてある長の象徴ともいうべき椅子へ物凄い速さで向かって座った。
「よ、ようこそ・・・・・・」
「口の端に、涎がついているぞ」
「っ!?」
俺の指摘に女性はゴシゴシと袖で拭いた。
それから何事もなかったかのようにニッコリと笑みを浮かべた。
「ようこそ、お待ちしておりました。私はドラゴンの長と呼ばれているモノです。
以御お見知りおきを」
そう言われても・・・・・さっきの言動で威厳も何も貫禄もなくなっているし・・・・・。
何とも言えない雰囲気が俺たちを包み、訝しんだり、怪訝な面持で無言を貫いていると、
「そ、そんな目で見ないでください・・・・・私、かなり寒がりなのですから」
原始龍が恥ずかしい風に言う。―――寒がり!?ドラゴンの長が寒がり!?
一体全体、何の設定だ!?こほんと原始龍が、場の空気を振り払うように咳を一つし、
真っ直ぐ俺たちに目を向ける。
「兵藤一誠、こちらに来てください」
「俺?」
なんだろう、と思いながらゾラードから降りて原始龍に近づく。
「話をする前にあなたの中に封印されているものを解放しましょう」
「封印されている?俺、そんなこと知らないぞ?」
それに何時そんなことを気付いたんだ?
「瞬きをするように私は世界中に存在しているドラゴンの居場所を把握できるのです。
無論、封印されている場所さえも」
「・・・流石は原始龍というだけあるのか」
「ふふっ、私の本来の名前を知っていたとは、
兵藤一誠・・・あなたはドラゴンに好かれる魅力があるのは間違いないですね」
彼女も立ち上がって俺に近づく。俺と目と鼻の先に近づければ、徐に手を胸に触れてくる。
「・・・・・なるほど、強力な封印式。ですが―――人間の封印式など脆いほどない」
そう言った瞬間、彼女の手が水の中に手を入れるような感じで、俺の胸に沈んでいく。
「出てきなさい。今日からあなたも自由の身です」
刹那―――。俺の中がバギンッ!と音がした。―――俺の全身から禍々しいオーラが迸った。
『っ!?おい、この龍の波動は・・・・・・』
「ああ、まさか・・・・・こんな形で再開するとはな」
『何の話しだ?』
『前に話していた龍を覚えているな?―――そいつがどうやらあいつの中にいたようだ』
後で何やらアジ・ダハーカたちが話をし出した。
カッ!と俺を中心に―――
そしたらどうだ、その魔方陣から巨大なドラゴンがゆっくりと姿を現した。
『―――ふぁあああああ・・・・・・よーく寝たな・・・・・・・』
「―――――っ!?」
背中に赤黒い輪後光、肩や腕、太ももにも赤黒い輪後光が二重にあって体は尾と繋がっている
感じだった。そして、背中から突起のようなものが二つあり、四対八枚の翼に黒が赤に浸
食された感じで入り混じっていた。手首と足の甲に鋭利な刃物状な物が生えており、
頭部に鋭い一本の角にも赤黒い二つの輪後光がある。
胸に何やら赤い宝玉のようなものもあった。
「(こんなドラゴンが俺の中に封印されていたというのか・・・・・!)」
『「
『・・・・・?ああ、アジ・ダハーカか・・・・・ん?
クロウ・クルワッハもいてアポプスもいる・・・・・久し振りだな』
「
『驚いた。まさかお前が兵藤一誠の中に封印されていたとはな』
『・・・・・ああ、あの時、不覚にも人間に封印されてしまったんだ。
そっちはどうして三匹揃っているのさ?当時、バラバラでいただろう』
『クロウは違うが俺たちもお前と似たものさ。
が、そこにいる人間を気に入って力を貸していれば、何の因果か知らんが邪龍の筆頭格が
こうも揃った。さらに無限の体現者のオーフィスもいるぞ。最強の龍王、ティアマットもだ』
愉快そうに口の端を吊り上げるアジ・ダハーカの言葉にネメシスは周囲を改めて見渡した。
『あー、会ったことないが、なんとなくそんな感じのドラゴンがいるな。
名前だけは聞いたことある』
―――メリアとゾラードを見てそう言ったネメシス。本当に知らないようだ。あのドラゴンは。
「いや、ネメシス。その二匹は違う。青い身体のドラゴンがティアマット、
兵藤一誠の方に乗っかっている人間の少女の姿をしているのがオーフィスだ」
『・・・・・そうなのか?・・・・・まあ、どうでもいいな』
あらま、興味が伏せた様子だ。
「さて、封印を解いたことです。次は―――オーフィス、あなたの力も回復させましょう」
「我はいま、人間と同じぐらい弱い。できる?」
「私は力こそ皆無ですが、龍を生みだすシステムのような存在です。
あなたのデータともいえる力の情報を書き変えることは造作もないのです」
今度はオーフィスの頭に手を置いた。少しして、オーフィスから何時も感じていた力とオーラが
出てきた。さっきまで普通の人間とは変わりなかったのに・・・・・。
「ん、戻った。ありがとう」
「ふふっ、ちゃんとお礼を言えるように成長しているのですね。いえ、変質と言うべきですか」
新たなドラゴンの出現とオーフィスの復活。原始龍・・・・・ドラゴンに関すると本当に凄い。
「では、本題に入りましょう。兵藤一誠、あなたがサマエルの毒と呪いによって
命を落としそうになったところを魂だけ抜きだして、
あなたを思念体としてこの世界に召喚させてもらいました。あなたと話しをするために」
「生きているけど死んでいるって感じで解釈しても?」
「構いません。立ち話も何ですから席についてお話しましょう。無論、あなた方もです」
原始龍がアジ・ダハーカたちに腕を突き出した。
すると、あいつらの体が光に包まれて見る見るうちに小さくなった。―――って、えっ?
「・・・・・侮れんな。あれだけの動作で俺たちを人の姿に変えさせるとは」
「原始龍、龍を生みだす龍・・・・・」
「その名に恥じない凄まじい龍だな」
・・・・・皆、クロウ・クルワッハのように人の姿となっていた。