ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

103 / 157
Episode3

「あれ?失敗?」

 

うーんと唸り首を傾げる私、ルクシャナ。召喚儀式は成功していると確信している。

でも、肝心の召喚される使い魔が光のゲートから一向に現れず、閉じてしまった。

 

「まあ、蛮人と私たち種族とは違いがあるし成功しても不発って可能性も

あるって頃かしらね」

 

もういいやと杖らしきものを放り出して本のページを読むことにした。

ただの興味本位で行った召喚儀式。自分が使い魔を呼んだところで

何をさせようともする気はない。自分の欲求を叶えてくれるのであればそれでいいのだ。

 

ドッボオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

「えっ?な、なに?」

 

自分の家の外にある泉に盛大に弾ける・・・・・というより巨大な何かが泉に落ちた音が

長い耳に届いた。ルクシャナは今の音の原因を確かめに外に出た。扉を開いて外に出ると、

まず、直径百メートルほどの大きな泉が目に飛び込んできた。辺りは暗闇に包まれ、泉は

月の光によって照らされていた。泉の水面を見ると波紋が生じていて何かが落ちてきたという

証拠が私の中で確信した。

 

「アリィーじゃないわね・・・・・」

 

自分の婚約者はこんな事をするほど子供ではない。というか、蛮人の研究をしている私に

いい加減に蛮人かぶれは止めろ!と口うるさく言う彼は現在、首都アディールにいる。

 

「・・・・・もしかして」

 

先程していた召喚儀式が脳裏に浮かんだ。

もしかして、成功していた・・・・・?と、心の中で少なからず歓喜したと同時に

興味が沸いた。一体、私はどんなものを召喚したんだろう?

 

ザッパアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

不意に、泉から膨大な水しぶきが生じた。私は両腕で顔を覆いなにごと!?

と思いながら水を全身で浴び続ける。激しく泉の水面が波紋を生じるが

しばらくして穏やかになり、顔を覆っていた両腕を解いて空を見上げた。

 

「ぬ、濡れた・・・・・」

 

「なんで出たところが水の真上なんだよ・・・・・」

 

泉の上に浮遊する二人の男女。全身ずぶ濡れで愚痴をこぼしていた。

真紅の長髪の少年に赤と黒が入り混じった女性。

 

「ん?」

 

「っ」

 

少年がこっちに振り向いた。整った容姿、金色の瞳を自分に向けられ、

不覚にもドキッと胸が高まってしまった。

 

「へぇ・・・・・」

 

何か興味を持ったのか、少年がこっちに降りてきた。

内心、ドキドキと緊張していつもの調子が出ない。

 

「ハルケギニアにエルフがいるなんてな」

 

「え、知らないの?」

 

「何がだ?」

 

キョトンと首を傾げる少年にルクシャナはもしかしたら、と思った。

使い魔召喚儀式に応じて呼ばれた目の前の少年が私の使い魔となる存在ではないかと。

気を取り直して説明した。

 

「ここは砂漠(サハラ)と言って、私たちエルフが住んでいる国、ネフテスなの。

ハルケギニアって言うのは蛮人が住んでいる国と町を全部含めて総称した名前なの」

 

「なんだ、ハルケギニアじゃないのか?

まあ、ハルケギニアも砂漠(サハラ)も来たことがないから分からない上に地理に関して疎いんだよな」

 

それが本当にそうならさっきの反応は当然ね。

 

「おい、さっさとハルケギニアに行くぞ」

 

「ああ、そうだな」

 

えっ、もう行ってしまうの!?なんか、色々と気になることがあるわ!

 

「ちょっ、ちょっと待って!」

 

「ん?なんだ」

 

蛮人がこっちに振り向く。せっかく召喚儀式を成功させたんだから目の前の蛮人を逃したら、

色々と手からこぼれて後悔しそうになる!

 

「蛮人の国に行ったことがないなら、行く方向も分からないんじゃない?」

 

「「・・・・・」」

 

私がそう言うと蛮人の二人は顔を見合わせた。

 

「それに、あなたたちは私の召喚儀式で呼ばれた。

だから私の願いに応えてから蛮人の国に行っても遅くはないと思うわ」

 

「・・・・・召喚儀式だと?」

 

蛮人が怪訝な面持ちとなった。

 

「確か・・・・・ハルケギニアって使い魔を召喚する儀式があると言っていたな。

それの類をエルフもしているのか?」

 

「私たちエルフはそんなことしないわよ。

というか、蛮人かぶれなことをしたら私、国から追放されちゃうもん」

 

「しちゃっているじゃないか」

 

鋭い突っ込むをする蛮人ね・・・・・。

 

「大丈夫よ。私が連れ込んだと言って、契約の儀式もしなければ大丈夫だし、

仮にしても黙っていれば問題ないわ」

 

「・・・・・それもそうだな」

 

あら、話が分かる蛮人ね。ちょっと意外。

 

「で、私たちを呼んだ理由はなんだ?」

 

女性が私に尋ねてきた。―――それは勿論、アレに決まっているわ。

もう、さっきから色々と聞きたくて仕方がなくうずうずしてたまらないでいた。

でも、それはもうちょっと先になりそうだ。

 

「私は蛮人を研究している学者なの。だから、蛮人のことを知りたくて召喚儀式をしたのよ。

その儀式にあなたたちが召喚された。だから、私に蛮人のことを教えてちょうだい?

ねぇ、蛮人って一体どんな生活をしているの?どんな食べ物があるの?

どうして悪魔を信仰しているの?住んでいる建物とか他にも色々と聞―――」

 

つい、我慢できなくなって自分の欲求を叶えようとした。

 

「その前に」

 

ピタリと蛮人は私の言葉を遮った。不満そうにな顔をして蛮人を見るが当の本人は

気にせずに口を開いた。

 

「俺たちも目的があって、ハルケギニアに用がある。

そう長くは滞在できないが、それでもいいか?」

 

「目的?」

 

「ん、詳しくは言えないけどハルケギニアにある五つの塔、ダンジョンをに行きたいんだ。

とある目的のために」

 

それって・・・・・悪魔が建てた塔のこと・・・・・?

 

「何をしに行くの?」

 

「悪い、それ以上は言えない。でも迷惑を掛けない。信じてくれ」

 

んー、気になるわねぇ・・・・・。

 

「私たちエルフに迷惑を掛けないって言うならその話、信じるわ。

悪魔は私たちが忌むべき存在ですもの」

 

「悪魔?」

 

「知らないの?悪魔って六千年前に私たちエルフを滅ぼしかけた始祖ブリミルって最悪の悪魔よ」

 

「・・・・・ヴァン、そんな悪魔いたか?」

 

「いや、聞いたことがないな」

 

正確には蛮人だけどね。そんなことも知らないなんて、この蛮人たちは違う国から来たようね。

 

「取り敢えず、夜も遅いし私の家で寝たら?」

 

「いいのか?」

 

「あなたたちを呼んだのは私だもの。最低限のことはするわ」

 

それから―――私の願いを叶えてもらうからね。

 

―――翌日―――

 

「ん・・・・・」

 

声を漏らす。ゆっくりと目蓋を開けてぼんやりと家の天井を見上げた。

 

「・・・・・ん?」

 

私の鼻に香ばしい匂いを感じた。

この家には火を扱う物がないハズなんだけど・・・・・。昨日の蛮人を寝かせた部屋から?

今でも漂う匂いに気になって身体を起こしベッドから降りて隣の部屋に顔を出した。

 

「お、起きたか?」

 

蛮人が私に気付いて声を掛けてきた。テーブルにはなにやら見たことがない料理が

置いてあった。蛮人が作ったのかしら?蛮人の女も起きていた。

 

「朝飯だ。因みに俺が作った」

 

「以外ね?作れるんだ」

 

「俺は料理が好きだからな。だから付いた二つ名は『女泣かせ』だ」

 

「ぷっ、なにそれ?変な二つ名ね?」

 

「まあ、食えば分かるよ」

 

おいでと手を招く彼に近づき用意された椅子へ座る。

 

「「いただきます」」

 

彼と蛮人の女が手を合わせてそう言うと自分が作ったと言う料理を食べ始めた。

私も蛮人を研究する学者なので彼の行動に興味が湧き、真似をした。

 

「いただきます」

 

さてと、と傍にあるレイピアを手にして蛮人が作った料理を―――。

 

バシンッ!

 

「いたっ!?」

 

「おい、誰がレイピアで食えと言った?」

 

蛮人に頭を叩かれた。頭を叩いたものを見れば白く折り重ねた紙を持っていた。

そんなことをする蛮人に不満気に言う。

 

「じゃあ、どうやって食べるのよ?」

 

「箸があるだろう、箸が」

 

「・・・・・これのこと?」

 

テーブルに二つの木の枝が置かれてあった。

その二つの木の枝を手にとって聞けばコクリと蛮人が頷く。

 

「俺のいた国ではそれを使って食べる風習があるんだ。

まあ、他にスプーンやフォーク、ナイフも使うけどな」

 

「へぇ・・・・・どうやって使うの?やっぱり刺すの?」

 

「ああ、こうやって使うんだ」

 

私の傍によって自分が持っている箸の持ち方を見せびらかせる。ふんふん、なるほど・・・・・。

 

カチカチッ

 

「あはっ、できたわ!」

 

「そうそう、そんな感じだ。それで食べてみろ」

 

蛮人は黄色くてふんわりとした料理の一つに指して言った。

その料理をつまんで私は口の中に運んだ。

 

「―――ッ!?」

 

咀嚼した瞬間、今まで食べた事がない感触と味が口の中で広がった。

なに、これ!甘くて美味しい!

 

「美味しいわ!ねえ、これは何て言うの!?」

 

「ああ、卵焼きだ。鶏っていう鳥を知っているか?その鳥が産む卵を使って作れる料理だ」

 

「じゃあ、この茶色のお湯は?」

 

「味噌汁といって、俺の世界・・・・・日本という国が良く飲むものだ」

 

「・・・・・温かい・・・・・それに、美味しいわぁ・・・・・」

 

はぁ・・・・・と味噌汁を飲んでのほほんと堪能した。

その後、彼が作った料理に興味を抱き、あれこれと彼に訊いては料理の味と感触を

楽しんでいった。

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「ごちそうさまでした!」

 

元気よく、私は言った。蛮人の料理ってバカにはできないわね!

んー、蛮族の料理って蛮人が作った料理なのかしら?うーん、気になるわ!

 

「そういえば、この家はルクシャナだけ住んでいるのか?」

 

「違うわよ?婚約者と暮らしているわ」

 

「・・・・・俺ら、邪魔じゃないか?」

 

「いいわよ、あなたが気にしなくても大丈夫。それに首都に用があると言って出かけているわ。

数日は帰ってこないもの」

 

「そっか、さて、ルクシャナ」

 

「うん?」

 

「俺の国のことを知りたいか?」

 

「―――知りたいわ!」

 

目をキラキラと輝き始めた。ようやく話を聞けるわ!すぐさまペンと紙を用意して聞く姿勢、

書く姿勢でいれば、

 

「じゃあ、何から説明しようか。リクエストはあるか?」

 

蛮人は尋ねてきた。そうね、色々とあり過ぎるわ。

 

「えーと、うーんと・・・・・それじゃあ―――」

 

私は彼に質問をする。その質問に蛮人は説明し答えていく。

蛮人の女にも聞いて見たらびっくしりた。だって堕天使だもの。

それから私の質問攻めは深夜になっても続いた。途中で夕飯にして中断したけれど、

蛮人の料理に何度も説明を求めた。だって、美味しいんだもの。

 

―――一誠side―――

 

俺がハルケギニアという世界、ルクシャナの家に住んで数日が経った。

毎日毎日、ルクシャナから質問され続け、俺の料理を子供のように楽しみ、

ルクシャナにとって今までにないほどの充実感を感じているそうだ。

 

「それで、そいつらが―――」

 

「へぇ、そうなんだ!」

 

学者として俺から出る言葉を一つも聞き逃さずにレポートしていく。同時に、

俺が住んでいた国は

この国と色々と違うところがあると言うことにさらに好奇心が湧きだす。

何時か、俺の国に行ってみたいと言い出す始末だ・・・・・。

 

「よし、今日はここまでにするわ」

 

「そうか。んー、色々と喋ったなぁー」

 

「ええ、実に興味深いものばかりよ。鉄の塊が地面を走ったり空を飛ぶことができる

乗り物とか、魔法とか精霊は存在するけれどそれは普通の蛮族が知られていないとか、

色々とね?」

 

「お前たちエルフは自分の国から出ようとしないのか?」

 

そう訊くと、首を横に振られた。

 

「蛮人の国ならともかく、遠い国には行けれないわ。移動手段もないし、

違う国はそれぞれ通貨も違うって聞いたしね」

 

「それ以前に、ハルケギニアはどうやら隔離された国らしいな?

私も昔ちらっとした程度で聞いたことがある。他の国と交流しないとか」

 

「そこまでは知らないわ。でも、蛮人のことよ。杖を持たない蛮人と関わりたくないんじゃない?

自分たちが悪魔から授かった奇跡の方が強いとか考えている蛮人は結構多いらしいわよ」

 

うわー、カリン。お前はまともに育ってくれて良かった。ルイズの方はちょっと・・・・・な。

 

「なぁ、そろそろ行かないか?もう、数日は経っているぞ」

 

ヴァンが促してきた。んー、確かにそうだな。そろっと、行った方が良いだろう。

 

「なら、行きましょう」

 

「・・・・・なに?」

 

「だから、あなたの目的である悪魔が作った塔に行きましょうって言っているの。

行き方、知らないんでしょう?案内人が必要だと私は思うの」

 

彼女がが再度言った。まあ、それはどうだが・・・・・。

 

「おい、良いのかよ?特に婚約者」

 

「そうね・・・・・出掛けてくると書き置きでもすれば大丈夫よ」

 

「絶対に探しに来るぞ。お前のことを」

 

「私って愛されているわねー」

 

そう言って椅子から立ち上がり、ルクシャナは自分の部屋に向かった。

 

「・・・・・」

 

自分の部屋に入っていったルクシャナを見て本気だと理解した。いや、嬉しいことは

嬉しいんだけど・・・・・本当に大丈夫か?自由奔放なエルフだ・・・・・。

 

「おい、本当に連れていく気か?」

 

「・・・・・そもそも、俺たちって無一文だよな?」

 

確かめるように言った。ヴァンは押し黙った。

 

「俺、ハルケギニアの言葉分からないけど、ヴァンは分かるか?」

 

「悪魔と同じで、言葉が分かる。それだけなら通訳できるぞ」

 

「そうか、頼もしいな」

 

問題は金銭だな。どっかで売買してくれる店があると―――。

 

「・・・・・ん?」

 

次の瞬間、扉の向こうから―――。

 

バッシャアアアアアアアアアアアアアアンッ!

 

と弾ける音が聞こえた。もしかして、ルクシャナの婚約者が帰ってきたか?外に赴き、

俺は扉を開いた。照りつける日差しが、砂漠の大地を焼いていた。

泉に視線を向けると一匹の竜がいた。

 

さらに桟橋の上を歩く一人のエルフを視界に入った。線の細かい雰囲気の若い男のエルフ。

なるほど、あいつがルクシャナの婚約者のエルフか。

と認知すれば、歩いてくるエルフも一誠の存在に気付き―――不機嫌な表情になった。

 

「おい、どうして蛮人がここにいる」

 

「ルクシャナの婚約者と見て間違いないな?」

 

「ッ!?貴様・・・・・ルクシャナに何かしたのか・・・・・!」

 

腰に携えていた刀剣を素早く抜き放って敵意を向けてくる。・・・・・スキだらけだな。

 

「いやいや、逆だ。俺が世話になっている。お前の婚約者にな」

 

「・・・・・彼女はどこだ、蛮人」

 

「家の中で支度をしているぞ?」

 

支度だと?と、怪訝な表情を浮かべるルクシャナの婚約者。その疑問を解消しようか。

 

「ああ、ハルケギニア―――お前らエルフが言う蛮族の国に案内をしてくれるそうだ」

 

「ルクシャナが案内だと、蛮人が彼女を攫おうとしているんじゃないだろうな」

 

俺はそんなエルフに対して苦笑を浮かべる。

 

「どうしてそんなことしなくてはならない?彼女の意思だ」

 

そう言って踵を返して家の中に戻る。尻目で見ればかなり警戒した面持ちで

ルクシャナの婚約者もついてくる。いざ、あいつが家の中に入ってくれば―――。

 

「あっ、蛮人・・・・・って、アリィー!」

 

「ルクシャナ・・・・・!」

 

「あちゃー、帰って来ちゃったんだ」

 

はぁ、と溜息を吐くルクシャナにアリィーは叫ぶように問いかける。

否、問いかけなければならないと、感じで。

 

「ルクシャナ!どうして蛮人と共にいるんだ!?」

 

「どうしてって・・・・・私が呼んだからよ?」

 

「呼んだ?キミ・・・・・一人で蛮人の世界に行ったと言うのか・・・・・?」

 

「違うわ。呼んだと言うより・・・・・召喚したのよ」

 

自分の婚約者の言葉に理解ができず、怪訝な顔になったアリィー。

ルクシャナはそんな顔をする婚約者にとある本と杖を見せた。

 

「蛮人がどうやって使い魔を召喚するのか知りたくって叔父さまに頼んだのを

知っているわよね?それで、あなたがいない間に私は使い魔の召喚をする儀式をしてみたの」

 

「・・・・・まさか・・・・・」

 

「そう、儀式が成功したの。この蛮人たちが私の願いに応じて召喚魔法から現れたのよ」

 

「泉の上、だけどな」

 

ヴァンが突っ込んだ。ルクシャナの言葉にアリィーは声を失った。

自分の婚約者の気持ちを露知らず、ルクシャナは語る。

 

「しかもね!この蛮人、この世界とは違う国から来たんだって!私、彼から色々と教えて

もらったけれど凄く興味深い話ばかりだったわ!アリィーでも信じられないと言うと

思うことが一杯よ!それに。蛮人が作る料理ってすっごく美味しいの!

タマゴヤキとかミソシルとかナットーとか色々!」

 

あー、瞳がキラキラと輝いているよ。それよりもだ。

 

「というか、本当に良いのか?」

 

「・・・・・どういうことだ?」

 

アリィーは訝しんだ。ルクシャナに何が良いのか、分からないようだ。

 

「いや、そろそろ彼女とハルケギニアに行こうと言ったらルクシャナが・・・・・」

 

「私も蛮人たちと一緒に蛮族の世界へ案内しようと決めたのよ。

まあ、途中まで私も分からないけど」

 

「なっ!?」

 

ルクシャナの答えに、アリィーは彼女の足元を改めて見れば大きな鞄があった。

彼女は本当に行く気なのだとアリィーは気付いたようで。顔を青ざめて彼女に食って掛かった。

 

「お、おい!?ルクシャナ!どうして君までも蛮人の世界に行くと言うんだ!

蛮人たちと一緒に行く気なんて正気か!?」

 

「だって、アリィーは反対するでしょ?私と一緒に蛮人の世界に行くって」

 

「絶対に嫌だ!」

 

「そう言うと思ったわ」

 

やれやれと両手を広げた。それを見た途端にアリィーが激昂する。

 

「その仕草はなんだ!蛮人のジェスチャーじゃないか!」

 

「そうよ?彼に教わったの。本当に色々と教えてもらったわ!」

 

ルクシャナは嬉しそうに笑み、対してアリィーは

「ルクシャナに余計な事を」と敵意と殺意を瞳に込めて俺を睨んできた。

 

「貴様・・・・・!」

 

腰に携えていた短剣を手にした瞬間。ルクシャナが俺とアリィーの間に割って入った。

 

「ダメよ、この蛮人は私のものなんだから。私の研究をさらに捗らせてくれた

貴重な存在なんだから殺させないわよ」

 

・・・・・いつ、俺はお前のものになったんだ。

 

「ルクシャナ!」

 

「いやよ!」

 

「・・・・・何も言っていないんだが」

 

「どうせ、蛮人と一緒に行くなー!って言いたいんでしょ?

でも、私は行くわ。アリィーも一緒に来てくれば嬉しいけど、嫌なんでしょう?」

 

「誰が好き好んで蛮人の国に行くか!」

 

「ほらね?」と呆れ顔で言い続ける。

 

「私は彼らを召喚した責任があるの。その責任を果たしたいだけ。それでもダメなの?」

 

「キミが一緒に行かなくても、適当に道を教えればそれでいいじゃないか!」

 

「おい、適当に教えられたらこっちは困るぞ」

 

「知るか!蛮人は蛮人らしく、同族から金品でも奪って生き長らえていればいいんだ!」

 

・・・・・どーして、ここのエルフは(まだ二人目だけど)人間を見下す言い方をするんだか。

 

「なあ、お前らが言う蛮人は全員が野蛮な奴らだと思っているのか?」

 

「少なくとも、私は思っていないわよ?」

 

ルクシャナに問えばそう答えてくれた。

 

「蛮人って呼ぶのはそう言う風に育てられたからだけで、

別に蛮人を見下しているわけじゃないわ。他のエルフの八割は蛮人を見下しているけどね。

過去六千年間、何度も私たちの住処に襲撃してくるもんだから何度も何度も追い返して

私たちは自分の土地を守ってきた。それだけよ」

 

「・・・・・」

 

ハルケギニアの人間とここのエルフの中はかなり溝が深いようだな。

修復が不可能に近いぐらいに・・・・・。一体、何が起きているんだ?

カリンから色々と聞くべきだったな。

 

「ルクシャナ!」

 

「いやよ!」

 

「・・・・・最後まで言わせてくれたっていいじゃないか?」

 

流石に可哀想だと思うが、ルクシャナは慣れているかのようにアリィーと言い合う。

 

「あー、もう!どうして分かってくれないのよ!

私は案内するだけですぐ戻ってくると言うのに!」

 

「そのすぐ戻ってくるという時間と日にちがどれだけ掛かると思っている!

大方、蛮人の世界を全部見回るまで戻ってこないつもりだろう!?」

 

「あら、バレちゃった?というか、当然じゃないの!文句、ある?」

 

「―――キミって奴はぁぁぁあああああああっ!」

 

・・・・・なんだろう、アリィーの方が可哀想に思ってきたな。

 

「夫婦漫才も飽き飽きだ」

 

ヴァンが嘆息した。

 

「まだ、婚約者よ。夫婦でもないわ」

 

「・・・・・もしかして、キスすらしていない?」

 

「ええ、当然じゃない」

 

・・・・・というと、アリィーを視線に向けた。

 

「童貞くんか」

 

「―――――っ!」

 

顔を真っ赤に染めたアリィーくん。なんとまあ、初々しい反応をするのでしょうか。

 

「こ、殺すぅぅぅっ!」

 

短剣を手にしたアリィーがルクシャナを突き飛ばして、俺に飛び掛かってきた。

 

「おいおい、婚約者を突き飛ばすなよ」

 

ビュンッ!と短剣が真っ直ぐ水平に振り払ったアリィー。が、ガキンッ!と

その短剣が俺の首を切ることもなく砕け散った。―――首が赤い鱗に変化して、

硬い鱗に堪え切れず短剣が砕けたのだった。

 

「なっ―――!?」

 

「ん」

 

デ コ ピ ン☆

 

ズドンッ!とアリィーの額に炸裂した。あいつは玄関に向かって外へと吹っ飛んで行った。

 

「あなた・・・・・その首の鱗は」

 

「ああ、俺は人じゃないんだ。人型のドラゴン、そう言うわけだ」

 

ポリポリと首筋を掻く。痒かったな。

 

「・・・・・そこまで知らなかったわ」

 

「だって、俺のことを一切聞かなかっただろう?」

 

当然のように言うと、ずぶ濡れのアリィーが戻ってきた。おお、早い。

 

「蛮人・・・・・いや、蛮人じゃないな・・・・・!?お前は一体、何者だ!」

 

「何者か・・・・・」

 

死んで生き返った存在、人間からドラゴンになった存在。さて、俺は一体、何なんだろうか?

ヴァンに尋ねた。

 

「世間はきっと、俺は死んでいると知れ渡っているんだろうな?」

 

「ああ、そうだろう」

 

「なら・・・・・死人に口なしか」

 

顎に手をやって悩んだ。今さら自分が兵藤一誠だ、何て言えるわけもない。

・・・・・偽名、でも言うか。

 

「・・・・・イッセー・D・スカーレット」

 

「は?」

 

「うん、今日からイッセー・D・スカーレットと名乗ろう」

 

スカーレットは今の俺の髪の色と同じだ。だから、そう名付けた。

 

「(それに・・・・・もう、兵藤と名乗れるような状況じゃないしな)」

 

自嘲を心中で呟く。兵藤の血もサマエルの毒と呪いでダメになったし、

今の俺はドラゴンの血が流れている。

 

「ヴァン、今日から俺はそう名乗る。前の名前を呼ばないでくれ」

 

「・・・・・良いのかよ・・・・・?」

 

「ああ」

 

「分かった・・・・・イッセー」

 

照れているのか?顔を赤くして小さく俺の名前を呼んだ。

 

「ルクシャナも何時までも蛮人と呼ぶな。俺のことを名前で呼んでくれよな」

 

「まあ、呼びやすい名前ならいいわ。よろしく、イッセー」

 

「さてと」と、ルクシャナは。

 

「そう言うわけだから、しばらくの間は留守にするけどちゃんと私を待っててね?」

 

そう婚約者に向かって言ったんだが、

 

「だーかーらー!キミがで行く必要ないって何度言えば分かってくれるんだよ!」

 

婚約者があんな反応をするわけだから話が平行線に続く。

 

「なぁ、いつまでこんな話が続くんだろうな」

 

「俺も知りたいところだ」

 

夫婦喧嘩にでもなったらこんな感じなんだろうか・・・・・。

ギャーギャーと言い合う二人にヴァンと様子を見ていてしばらく経つと、

 

「だったら、私も一緒に行く具体的な理由があれば文句はないはずよね!」

 

・・・・・なんだか、嫌な予感をしてきたぞ。ルクシャナが徐に本を開いて杖を構えた。

 

「ねぇ、イッセー。そういえば召喚したんだけど、まだ儀式まではしていなかったわね?」

 

「そう言われても、俺はどんな儀式なのか分からない。―――って、おい、まさか―――!?」

 

「我が名はルクシャナ。五つの力を司るペンタゴン。

この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

俺の中の嫌な予感と予想がどうやら的中した。朗々と、呪文らしき言葉を唱え始めた。

すっと、杖らしきものを俺の額に置いた。そして、なぜか、ゆっくりと唇を近づける。

 

「ん・・・・・」

 

「なっあああああああああああああああああ!?」

 

「・・・・・」

 

ルクシャナの唇が、俺の唇に重ねられる。一拍して、ルクシャナが唇を離す。

その顔に朱が染まっていて俺の視線から逃げるように顔を反らした。

その様子に初めてだったんだなと気付く。

 

「・・・・・これで契約はできたのかしら?」

 

「知るか!というか、俺を使い魔にするなんてどういうことだよ!?」

 

俺自身が使い魔になるなんて有り得るのか!?召喚の契約を無効化にできるのか・・・・・!?

そのとき、俺の身体が妙に熱くなった。

だが、俺だけじゃなく、ルクシャナも同じだった。

 

「いた!痛い!?というか、熱い!」

 

「・・・・・なんだと?これは一体・・・・・」

 

俺は困惑な表情を浮かべる。これが召喚された使い魔が主に主従の契約を交わす時の痛みだと

言うのか―――?熱いのはほんの一瞬だった。直ぐに身体は平静を取り戻した。

 

「ちょ、ちょっと・・・・・どうして私の身体が熱くなったのよ・・・・・?」

 

「俺も知りたいところだ。しかも・・・・・なんだよ、これ・・・・・」

 

右手に奇妙な文字が浮かんでいた。だが、俺は熱く感じたのは右手だけではなく、

額と胸も感じた。服をめくると、胸に右手と同じ奇妙な文字が刻まれていた。

 

「あなたの額にも文字が浮かんでいるわ」

 

「あ、やっぱり?」

 

「それに・・・・・」

 

ルクシャナは左手、手の甲に視線を落とした。

その手の甲に一誠の右手と胸の文字と似た文字が彼女の左の手の甲に刻まれていた。

 

「えーと?つまり、俺がお前の主人で?」

 

「私があなたの主人?」

 

「「・・・・・」」

 

二人の身体に使い魔としての証が刻まれていた。

―――つまり、二人は主でありながら同時に使い魔と言うことになる。

 

「・・・・・ねえ、使い魔をする契約って主人にも刻まれるものなの?」

 

「それこそ知るかよ!?・・・・・どうなるんだよ、俺がお前の使い魔と同時に主で、

お前が俺の主で俺の使い魔だってことになるのか?」

 

「それこそ私だって知らないわよ。こんなことになるなんて聞いてないもん」

 

・・・・・俺が使い魔だけじゃないならまだマシだったか・・・・・。

俺も同時に主ならルクシャナと対等と言うことだ。こんなこと、

ガイアに知られてみろ。ぜってぇー、

 

『一誠が使い魔だと・・・・・!?ふざけるなぁぁぁぁっ!』

 

って、真龍の怒りが見る羽目になるって・・・・・。

 

「そ、そんな・・・・・ば、蛮人と・・・・・キスするなんて・・・・・」

 

あっ、婚約者が泣いてしまった。何て言うか・・・・・俺は不可抗力だよな?

アリィーが頭を垂らして体を震わせているもルクシャナは言った。

 

「これでイッセーたちと蛮人の世界に行く理由はできたわ。

アリィー、私は蛮人たちと蛮人の世界に行くね?しばらくしたらまた、この家に―――」

 

「・・・・・戻ってくるな」

 

「えっ?」

 

「・・・・・キミがそこまで自由奔放だとは思わなかった」

 

婚約者の声音がどこまでも冷たかった。同時に怒気が籠っていた。

 

「アリィー?」

 

「・・・・・誰がキミと結婚なんてするか・・・・・婚約は解消だ。ルクシャナ」

 

「―――――え」

 

「出て行け・・・・・この悪魔め」

 

ポツリと呟くアリィー。ルクシャナは信じられないものを見る目でアリィーを見詰める。

婚約解消という言葉に少しずつ理解していき、うろたえ始める。

 

「ア、アリィー・・・・・?」

 

「もう二度と、キミなんかの顔を見たくない!キミに振り回されるのはもうウンザリだ!

出ていけ!蛮人とキスをするお前なんか誰が好きになるか!こっちから婚約を解消してやる!」

 

ギロッ!と顔を歪ませて怒りが籠った瞳を婚約者に向けた。

 

「―――っ」

 

ルクシャナは瞳を潤わせて鞄を持って外に駆けだした。

 

「ヴァン」

 

「しゃーねーな」

 

俺の意図を気付いて、ルクシャナの後を追うヴァン。

 

「・・・・・」

 

俺とアリィーだけとなったが、あいつはただ体を震わせて、涙を流すだけでいる。

そんなこいつに、俺は声を掛ける資格はないと思い、踵を返して外に出た。

 

「・・・・・遅いわよ・・・・・」

 

桟橋に腰を下ろしていたルクシャナが開口一番にそう言う。

 

「後悔しているのか?」

 

「・・・・・なにに対してよ・・・・・」

 

「それはお前が一番分かるんじゃないか?」

 

そう指摘されルクシャナは口を閉ざした。

 

「ま、確かに俺たちはお前が必要だ。

自分から買って出てくれたからには責任を果たしてもらわないと困る」

 

「・・・・・」

 

沈黙するルクシャナ。彼女の荷物を亜空間に仕舞ってドラゴンの翼を展開する。

 

「んしょ」

 

ルクシャナを横に抱きかかえてヴァンと共に砂漠の空を飛翔する。

 

―――???―――

 

「始祖ブリミルの秘宝・・・・・もしかしたら、魔王リゼヴィムを

倒す武器があるのかもしれない・・・・・。必ず皆の仇を、エリオットの仇を・・・・・!」

 

 

―――???―――

 

「なぁなぁ、今回の依頼って塔をクリアするだけなんか?」

 

「それだけじゃない、秘宝を手に入れて依頼者に渡すそうだ」

 

「秘宝ぁー。きっと綺麗な宝石とかだったりして」

 

「ルーシィ、猫糞しちゃダメだよぉ?」

 

「猫のお前がそう言うか?」

 

「とにかく、私たちはガリア王に謁見しに行くぞ」

 

―――???―――

 

「はぁー、ミカエルさまも人使いが荒いっす。

ハルケギニアの料理も食べながらあのヒトを探すとしましょうかねー」

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。