ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode8

 

 

「―――で、イッセー。そいつは一体どこのどいつなんだ?」

 

現在、俺はヴァンの光の剣に突き付けられています。その理由は―――。俺の背中にいる存在です。

 

「えっと、悪魔と人間のハーフ、ガーゴイルのナヴィだ」

 

「ガーゴイルだと?下級悪魔がどうしてここにいる」

 

睨むように俺の背中に抱きついているナヴィを睨むヴァン。

 

「イッセーに頼んで私も同行させてもらうことにしたのよ。私の情報はとっても役に立つわよ?」

 

「はっ、情報が役立つなんて、敵を倒すにはあまりにも非力じゃないか?」

 

「相手の情報を知って倒す方法もあるのよ?それに情報は時として武器にもなれるの。

そんなこと知らないの?」

 

ナヴィが一理あることを言う。が、ヴァンは侮蔑を含んだ言葉を発した。

 

「情報が武器だと?そんなもん、役に―――」

 

「堕天使の女帝、ヴァン。好きな食べ物は甘い物、嫌いなものは退屈。趣味はデザート作り」

 

「―――――」

 

ヴァンの顔が引き攣った。心なしか、光の剣を握る手が震えている。

 

「そして、あなたの部屋には兵藤一誠の―――」

 

「わ、わかった!それ以上言うな!」

 

意外にもヴァンが降参したので、俺は驚愕した。が、続きがあった。

 

「因みに、あなたの友達がそれ(部屋)を見て顔を引き攣らせていたわよ?」

 

「んなっ!?」

 

ガーンッ!と擬音が聞こえるぐらいヴァンが絶句した。

こいつの部屋に俺の何があるって言うんだよ。

 

「ふふっ、何時も強気で態度がデカいけど、ヴァンって乙女心があるのよ?

ついでに言えば彼女の情報は日本を監視していた前任のガーゴイルからの情報。

下級悪魔だからといって、私たちガーゴイルを舐めたら痛い目に見るわよ?堕天使の女帝さん」

 

不敵に笑むナヴィだが、ヴァンは地面に四つ這いになって、

自分の秘密を知られたことにとてもショックのようで、物凄く落ち込んでいるぞ。

 

「も・ち・ろ・ん、あなたたちの秘密を私は知っているから―――そのつもりでね?」

 

「「「「―――――」」」」

 

シャルロット、ジョゼット、キュルケ、ルクシャナが顔を引き攣らせる。

力は非力だろうが、こいつの武器は情報だ。物理的に倒されるよりよっぽど怖い。

この瞬間、立場が一気に逆転したと感じた。

 

「あっ、当然フィオーレ王国にいる同族から届いたあなたたちの情報もあるからね。

ギルド、フェアリーテイルの魔導士さんたち」

 

「「「「―――――」」」」

 

トドメとばかり、ナヴィがエルザ・スカーレットたちにも言ったのであった。

もう、彼女に逆らう方法はなかった。

 

―――一時間後―――

 

なんとかヴァンと立ち直らせ、中央広場にやってきた。

トリステインダンジョンがある広場ですでに、大勢の人間たちがいた。

 

「ナヴィ、ハーフだから神器(セイクリッド・ギア)を所有しているのか?」

 

「『千里眼(サウザント・アイズ)』。この目で見た対象の情報を全て

ステータスとして見れて、相手の全ての情報を知ることができるの。

例えば、女の3サイズとか体重を見ただけですぐに分かるわ」

 

そいつはなんとも便利な能力だな。隠し事もできないんじゃないのか?

 

禁手(バランス・ブレイカー)に至れるのか?」

 

「勿論。でも、使う機会がないからお見せすることはできないかもね。

能力は秘密だけど『千里眼奪取(サウザント・アイズ・ジャック)』よ」

 

「―――では、これより、トリステインダンジョンを攻略する!攻略した暁には王宮から

莫大な褒美を与えられる!これはアンリエッタ王女から直々のお言葉である!」

 

一人の騎士がそう宣言した。周りは歓声で湧く。広場には人間たちだけじゃなく、

書物で見たマンティコアやグリフォン、ヒポグリフ、さらにはドラゴンまでいる。

その生物らに跨っているのは、この国の騎士たち。馬もいるぞ。

 

「無理に決まっているじゃないの。杖がないと魔法を使えない人間はどこまでも弱いわ」

 

「そう言うな。それがハルケギニアなんだろう?」

 

「ええ、そうよ」

 

「だが、本当なのか?あの話は・・・・・」

 

彼女から教えてもらったとある話し。ナヴィは首を縦に振った。

 

「エンシェント・ドラゴンが目覚めると遠くない内に二次災害が起きるのはまず可能性は高いわ」

 

「・・・・・だからなのか、ロマリアがダンジョン攻略をするように他の国に仕向けたのは―――」

 

「でも、私たちには関係の話しよ。違わない?」

 

「・・・・・」

 

「イッセーの目的はドラゴンを倒すこと。二次災害まで何とかする義理はないと思うわよ。

それはこの国に住む人間たちの問題。どうなろうが、あなたの関わりがないこと。

この世界のためにあなたは家族を放っておく男じゃないと知っているわよ、私は」

 

そう言われて沈黙してしまう。彼女の言うことはもっともだ。

そこまでしろと原始龍にも言われていない。

 

「イッセー、行くぞ」

 

エルザ・スカーレットに声を掛けられた。

何時の間にか殆どの人間が塔の中へ入ってしまっていた。俺たちも続いて後を追う。

 

「・・・・・ここは」

 

塔の中のエリアは森林だった。

 

「森か。他の塔のエリアより環境が整った場所だな」

 

「ナツ、間違って森を焼かないでよ?」

 

「そうだな。間違って森を焼いてしまったら私たちまで丸コゲだ」

 

いや、お前らの実力じゃそんなことにはならないだろう?

 

「さて、ゴールはどこだろうな。空から探すぞ」

 

龍と化となって皆を乗せて空を飛ぶ。―――すると、森から土の塊でできた人型が現れた。

 

「なんだ、あれは?」

 

「あれはゴーレムよ。土系統のメイジが使役する魔法の一つ」

 

「脆そうだな」

 

と、空に飛んでいる影も見えた。広場にいたグリフォンとヒポグリフ、

マンティコアやドラゴンだ。

翼をもつ生物に跨って空から俺たちのように探しているようだな。

 

「イッセー、あの大きな巨大な木がそうじゃない?」

 

ルーシィ・ハートフィリアが俺に話しかけてくる。

俺たちが飛んでいる空からでも分かるほど大きい巨大な木。壮大だと一言が尽きる。

 

「言ってみる価値がありそうだな」

 

「では、向かってくれ」

 

「了解」

 

翼を羽ばたかせて巨木に向かう。翼を持つ生物に跨っている騎士たちを追い越して。

 

「速いわね・・・・・」

 

「私たちはもう慣れたけどね」

 

「・・・・・快適」

 

「気持ちいいわねぇー」

 

おい、キミたち。俺の背中でのんびりとしないでくれるかな?

現に―――こっちに何かが向かっているんだからさ。

 

「お前ら、しっかりしがみついていろよ」

 

真っ直ぐ向かう巨木と、巨木から現れた謎の物体と接触するのは時間の問題。

皆にそう伝え、一気に速度を上げて巨木へと飛翔する。

 

「―――なんだ、あれは!」

 

謎の物体を肉眼で捉えた。姿形はクワガタムシ。でも、胴体がまるでムカデのように細長く、

背中に翼を生やしている怪物がいた。他にも虫もどきもわんさかいる。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

地上から轟音が聞こえた。下を見れば山のように大きな生物が何匹も森から出現していた。

十個以上ある眼球みたいな物が青から赤に変わり、何かを目指して動き出した。

その瞬間、地上から悲鳴と怒号が聞こえてくる。

 

「こっちもこっちで忙しいな!」

 

なんか、数多くの虫もどきに狙われている!逃げてもずっと追いかけてくるんですけど!

 

「しょーもない、奴らを出すか」

 

「イッセー、何を言っている?」

 

「こういうことだ」

 

カッ!と俺の周囲に二つの巨大な魔方陣が展開した。

その魔方陣の光と共にゾラードとアジ・ダハーカが姿を現す。

 

「地上と空にいる虫もどきを滅ぼしてくれ」

 

『かしこまりました』

 

『思う存分に殺戮の限りやらせてもらうぞ』

 

それぞれ地上と空にいる虫もどきへ向かう。刹那―――。上と下から轟音が鳴り響いた。

 

「うわー、流石だね」

 

「これがイッセーの力だ」

 

ナヴィが感嘆し、ヴァンが威張る。

 

「イッセー・・・・・あなた、なに者?」

 

「スカーレット・イッセーだ。そんなことよりも、辿り着くぞ。巨大な木に」

 

 

―――○●○―――

 

 

巨大な木の麓に降り立ち、ゾラードとアジ・ダハーカたちを中に戻し、

ここに来るだろうトリステインの人間を待っていた。

 

「イッセー、待つ必要あるの?」

 

「一応な。もしかしたら、いるかもしれない。いたらそいつらと一緒に行くつもりだ」

 

かれこれ十分は経過している。残り五分で行くつもりだ。

 

バサッ!

 

空からグリフォンが舞い降りてきた。騎乗している人物は長い口髭が凛々しい、

精悍な顔立ちの若い男。黒いマントを羽織っていてマントの胸にはグリフォンを象った

刺繍が施されている。

 

「はぁっ!ひぃっ!はぁっ!」

 

森の向こうから、ギーシュ・ド・グラモンが恐怖に満ちた顔で駆け走って現れた。

 

「あら、ギーシュじゃない」

 

「キュ、キュルケ!他の皆もいたぁっ!」

 

俺たちの存在に安堵して、倒れ込むように地面で四つ這いする。

 

「ねぇ、他の人たちはどうしたの?」

 

「きゅ、急に現れた怪物にやられてしまったよ・・・・・」

 

「ご愁傷さま・・・・・」

 

それから出発の時間となった。ギーシュ・ド・グラモンとグリフォンを騎乗していた男以外、

誰も現れなかった。

 

「生き残りはこの二人だけか。行こう」

 

エルザ・スカーレットがそう言う。皆、各々と動き出し巨大な木の中へと入っていく。

巨木の中は空洞で壁際に螺旋状の階段があった。そこ階段へ上へと進んでいく。

 

「で、お前は本当に動かないんだな。少しは動いたらどうだ?」

 

「―――ガーゴイルは動かない―――」

 

背中で負ぶさっているナヴィ。何故か知らんが、俺の背中が気に入ったようだ。

 

『我の特等席・・・・・』

 

いや、オーフィスさん。お前の特等席は肩じゃなかったのか?

 

『我の特等席は、イッセー自身』

 

あー、サイですか。後で好きなだけ抱きついて良いから我慢してくれ

 

『・・・・・我慢する』

 

一応、納得してくれたか。

 

「はぁ・・・・・あとどれぐらい登れば頂上に着くんだい?」

 

「おや、貴族が弱音を吐くのか?」

 

「なっ!なにを言っているんだいキミは!

僕はただ、何時モンスターが現れるのか警戒しているだけだよ!」

 

「じゃあ、モンスターが現れたら迎撃頼むよ」

 

「はっはっはっ!任せてくれたまえ!」

 

ギーシュ・ド・グラモン、何て扱いやすいんだか・・・・・。

 

「しかし、こんな時にカリンがいたら風の魔法であっという間に行けそうなんだけどね」

 

「彼女は極東の地にいるから無理だろう。

それに、魔法学院にいたころよりかなり強くなっているぞ」

 

「そ、そうなのかい・・・・・?」

 

ちょっと、青ざめたギーシュくん。この世界の貴族のメイジは強さのランクがあるらしい。

カリンはランクが高いスクウェアクラスだったそうだ。

 

「まあ、ルイズは爆発ばっかりだったがな」

 

「―――ルイズだって?」

 

グリフォンに乗っている男が反応した。

 

「キミ、もしかしてヴァリエール家のルイズと知り合いかい?」

 

「ああ、そうだけど」

 

海で撮った写真を男に投げ放てば、二つの指で受け止め、

その写真を見た途端に懐かしそうな顔付きになった。

 

「なるほど・・・・・なんという偶然だろうか、

僕の婚約者を知っている者がいたとはね」

 

・・・・・婚約者?

 

「・・・・・婚約者?」

 

「僕の名前はジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。ルイズの婚約者なんだ」

 

「―――――」

 

え・・・・・マジで・・・・・あいつに、こんなダンディな男の婚約者がいるなんて、

有り得ない!婚約者の男が確かめるように尋ねてきた。

 

「キミは東方の世界(ロバ・アル・カリイエ)から来たんだね?」

 

「ああ、そうだ」

 

「彼女はどうだい?元気にしているかい?」

 

「あんまり接していないけど、元気だったな」

 

婚約者の男は「そうか」と満足げに答えた。

 

「なら、ダンジョンで死ぬわけにはいかないな。僕の婚約者が待っているからね」

 

「ギーシュも頑張れよ?俺にハルケギニアの貴族の実力を見せてほしいもんだ」

 

「はっはっはっ!任せてくれたまえ!僕の実力にビビらないでくれたまえよ?」

 

うん。多分、ビビらないから安心してくれ。

さて、しばらく木の階段を上がっていくと天井がぼんやりと見えてきた。・・・・・ん?

 

「どうしたの?」

 

「なんか、天井にぶら下がっている物があるなって」

 

「ぶら下がっている物って・・・・・」

 

ナヴィが視線をまだ高い天井に向けた。そして・・・・・言った。

 

「イッセー、ハチの巣があるわ。それもドデカいの」

 

「ハチの巣?・・・・・てっことは、まさか・・・・・」

 

俺は嫌な汗を掻いた。その瞬間、耳にあの特有の羽の音が聞こえてきた。

 

「―――全員、戦闘態勢!」

 

『っ!?』

 

その刹那。上から膨大な数の大きな蜂が現れた。

 

「は、蜂ぃっ!?」

 

「火龍の咆哮ぉっ!」

 

ナツ・ドラグニルが炎を吐くが、たったの数匹しか倒せなかった。

 

「デカ過ぎだろう!?いくらなんだって!―――うおっ!」

 

ドンッ!

 

蜂の尻の針が木の壁に激突した。げっ、撃てるのか!

 

「こんな数の大きさのモンスターに相手をしている暇はないな。駈け上がりながら迎撃だ!」

 

そう言うと、皆が階段を上るように駆けだす。その間、巨大な蜂の攻撃が降り注ぎ、

俺たちを上に行かせないと阻んでくる。

 

「鬱陶しい!」

 

手の平から魔方陣を展開して雷を迸らせた。そのまま階段を駆け上がり蜂を倒していく。

 

「―――――」

 

ルイズの婚約者が何やら呪文を唱えだした。すると、婚約者が何人にも増えた。

数は本体も含めて6人だ。グリフォンも同時に増えて、巨大な蜂に向かっていく。

 

「へぇ、ハルケギニアの魔法か?」

 

「どうだい?この世界の魔法も捨てたもんじゃないだろう?」

 

「ああ、そうだな。―――よし、俺もやってみよう」

 

「なに・・・・・?」

 

杖がないと発動しなさそうだな。金色の錫杖を展開する。

その錫杖自体を軍杖に変えて、婚約者が言った呪文を唱えた。―――そして、

 

「おお、俺もできた!」

 

「な―――っ!?」

 

俺が俺も含めて十人になった。ははっ、面白いな!

よし、いけ!俺の分身たちが一斉に巨大な蜂に襲いかかる。

 

ボオオオオオオオオオオオッ!

 

ビガッ!ガガガガガガガッ!

 

ビュオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!

 

炎、雷、吹雪、風の属性魔法が同時に放たれ、巨大な蜂が次々と倒されていく。

ルイズの婚約者も負けてはいないが、数と威力は圧倒的に俺が上だった。

 

「イッセー、あなた凄いわね」

 

「うん、俺自身もちょっぴり驚いている。・・・・・ん?まさか、あれもできるか?」

 

試しにちょっと頭の中で指示を出してみた。

―――そしたら、複数の俺の手から極太の気のエネルギー砲が出て来て天井にある

ハチの巣を貫いた。

 

「はは・・・・・これ、便利すぎだろう」

 

「すっげー!あっという間に蜂が全滅だ!」

 

「こいつ、味方で良かったな。敵だったら怖いぞ」

 

「ふっ、倒し甲斐があるというものではないか」

 

「そうだな!この旅が終えたら、あいつと一勝負だ!」

 

上から落ちてくる巨大なハチの巣の残骸。それを見て、俺は気付いた。

 

「あっ、また失敗した」

 

「今度はなんだよ?」

 

「アレぐらいの大きさなら、ハチミツが手に入るんじゃないかって」

 

「・・・・・」

 

ヴァンが突っ込まない。あれ、反応なし?ねえ?

 

―――○●○―――

 

ようやく階段を登り切れた。巨大なハチの巣があった場所は俺の分身が気のエネルギー砲で

撃ち抜かれていて、天井にまですっぽりと穴が開いていた。

 

「扉だわ!」

 

「今度は鍵は必要なさそうだな」

 

「そこでどうして俺を見る」

 

「・・・・・ふっ」

 

意味深な笑みを浮かべるヴァンだった。

 

「よし、ナヴィ。ヴァンの情報を―――」

 

「わ、分かったから!それ以上私の情報を漏らそうろするな!謝るから!」

 

ヴァンが慌てだす。なんだか、ヴァンの弱みを握った気分だな。くくく・・・・・・!

 

「あなた、いま悪魔らしい笑みだったわよ」

 

あれ、そうだった?ナツ・ドラグニルが扉を開けて中に入った。俺たちも続いて中に入る。

 

「・・・・・外だ」

 

扉の向こう側は外に繋がっていた。しかも、登っていた巨木じゃない。違うエリアだった。

周りを見渡せるほどの野原だけだった。

 

「なんだ、もうクリアなのか?」

 

「いや、そんな感じは・・・・・」

 

ないと、言いかけたその時だった。

 

ドッ!

 

突如、地面が深く抉った。皆が悲鳴を上げて、バラバラになって倒れた。

 

「なっ、なんだぁっ!?」

 

「一瞬だったが、鳥みたいなやつだったぞ」

 

「でも、どこにいるの!?」

 

ルーシィ・ハートフィリアの言う通り、敵の姿は見えない。

それどころか、気配も感じない。

 

ドンッ!

 

「ぐおっ!」

 

「グレイ!」

 

グレイ・フルバスターが勝手に吹き飛んだ。見えない敵・・・・・?

 

「・・・・・ドラゴンの臭いがする」

 

「俺か?」

 

ナツ・ドラグニルに尋ねると案の定、首を横に振られた。

 

「違う。微かだけど、確かに風に乗ってドラゴンの臭いがするんだ」

 

「見えないドラゴン?透明なドラゴンか?」

 

「多分、そうだと思うぜ」

 

それが証拠とばかり、どこからか炎が出現した。

 

「そこかぁっ!」

 

と、炎を纏った拳を空に振るったナツ・ドラグニル。

しかし、何かとぶつからず逆に横に吹っ飛ばされた。

 

「埒が明かないな。相手が透明な敵だったら、化けの皮を剥がしてやる」

 

空に巨大な魔方陣を展開した。俺たちを覆うほどその魔方陣から雨のように水が降り注ぐ。

 

「雨・・・・・・?おい、なにするんだ?」

 

「実態があれば、雨に濡れるはずだ」

 

土砂降りの雨、俺たち自身も濡れるが―――相手も濡れるはずだ。

 

『・・・・・』

 

すると、虚空に雨が弾いている場所があった。

それは次第に形を浮かばせて―――ドラゴンの姿へと現す。

 

「見つけた!」

 

倒さんとばかりにナツ・ドラグニルは動きだした。

が、ドラゴンは俺たちが見えると分かったのか、翼を広げて空に逃げ出す。

 

「くそ!雨の中じゃ炎も碌に纏えねぇ!」

 

「でも、こうしないと敵の姿が見えないわ!」

 

「どうにか動きを止めなければ倒せんぞ」

 

「なら、俺が動きを封じ込めてやる!」

 

透明なドラゴンが地面に降りた直後、グレイ・フルバスターが魔法を発動する。

 

「アイスメイク牢獄(プリズン)!」

 

辺り一帯の水が急激に冷気を帯びた結果、氷と化となり、

次第に透明なドラゴンを覆う氷の牢獄と化となった。

 

「イッセーが降らす雨のおかげで、魔力の消費が何時もより最小限で発動できたぜ」

 

「俺たちのコンビネーションの勝利―――」

 

ドガッシャアアアアアアアアアァンッ!

 

「は、まだまだ先のようだな・・・・・」

 

「マジかよ・・・・・」

 

氷の牢獄を突破した透明なドラゴン。あっ、魔方陣の外に逃げやがった!

 

『まったく、見ていられないな』

 

その声・・・・・ネメシス?

 

『私を出せ、私なら捕まえられる』

 

力を貸してくれるのか?

 

『ふん、クロウ・クルワッハに礼を言えよ』

 

あいつに説得されたのか、ありがとうな。龍門(ドラゴン・ゲート)を展開した。

そのゲートから新たに仲間となった『魔煌の絶禍龍(カオス・ブレイカー・ドラゴン)』。

 

「ド、ドラゴン・・・・・!」

 

「イッセー、お前は一体、何体ドラゴンを宿しているんだ・・・・・!」

 

え?えっと、メリアとゾラード、オーフィス、クロウ・クルワッハに

アジ・ダハーカとアポプス、ティアマットとネメシスとサマエル、

 

「九匹だな」

 

『九匹!?』

 

ガイアも含めて、十匹になるけどな。

 

「ネメシス、頼む」

 

『俺の縛りから逃れる存在はいない』

 

目を輝かすネメシス。それに反応して、地面から、虚空から大きな鎖が飛び出してきて、

どこかに伸びていった。

 

『―――(ロック)

 

ネメシスがそう言ったその直後だった。鎖がビシッ!と何かを捕えたのか、

張ってすぐに鎖が巻き戻る。

 

『グオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!』

 

雨で濡れて透明なドラゴンの姿が見えた。鎖に絡んで動きを封じられている透明なドラゴン。

背負っている大剣を手にして透明なドラゴンに飛び掛かる。

 

ドッ!

 

「封龍!」

 

透明な体に大剣を突き出して発した瞬間、大剣に埋め込まれている宝玉に透明なドラゴンが光と

化となって吸い込まれていく。しばらくすると、透明なドラゴンはこの場からいなくなった。

 

「ありがとうな、ネメシス」

 

『次も現世に出せよ』

 

それだけ言うと、龍門(ドラゴン・ゲート)の中へと姿を消した。

雨を降らす魔方陣も消失させて、一息吐いた。

 

「イッセー!あのドラゴンはどうした?」

 

「ああ、俺の中に封印した。透明なドラゴン、珍しいドラゴンだからな」

 

「と言うと、イッセーの中にいるドラゴンの数は十匹と言うことになるか」

 

そう言うわけだ。―――と、話していると虚空に光が集束しだした。

その光は次第に扉へと具現化して、俺たちの目の前に姿を現す。

 

「どうやら、ゴールのようだな」

 

「始祖ブリミルもなんだってこんな塔を作ったんだろうな」

 

そんで、扉にルクシャナの左手と同じ文字(ルーン)が刻まれている。

 

「ルクシャナ、開けてみてくれ」

 

「分かったわ」

 

スタスタと扉に近づく。そして左手で扉に触れ途端に―――扉の文字が光り輝き、

勝手に開いたのだった。

 

―――○●○―――

 

「皆さんのおかげで無事、トリステインダンジョンは攻略できました。

トリステイン王女としてあなた方に心から感謝をしております。

どうも、ありがとうございます」

 

ダンジョンを攻略してその日の夜。俺たちは王宮に召喚され、この国の王女と謁見している。

 

「ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。及びギーシュ・ド・グラモン」

 

「はっ」

 

「は、はっ!」

 

「お二人もよく御無事で攻略をしてくれましたね。お二人はトリステインの誇りです。

後日、褒美を授与します。そして、ギーシュ・ド・グラモンには騎士(シュヴァリエ)に任命します」

 

おお、昇格したのか?ラッキーだったな、ギーシュ・ド・グラモン。

 

「正式な儀式は後日で。

いまはダンジョンを攻略した者たちの労いと称したパーティをしましょう」

 

王女がそう言うと、テーブルに様々な料理が置かれだした。

それがパーティの始まりとばかり、この日のために集まった貴族たちが賑やかになった。

 

「どーして、攻略に参加していない貴族たちまで集まるんだ?」

 

「さあな。貴族の考えることに私たちが分かるわけあるまい」

 

隣に赤いドレスを身に包むエルザ・スカーレット。俺の背中にナヴィはいなく、

代わりにオーフィスがしがみ付いていて約束通り、好きなだけ抱きついている。

 

「それにしても、お前は強いなイッセー」

 

「そうか?過剰評価はしないほうがいいぞ」

 

「過小評価もしてはならないぞ」

 

ズイと肉料理が盛った皿を突き出された。その骨付きの肉はオーフィスが取って、

俺の肩に乗り移ると食べ始める。

 

「お前がもし、フェアリーテイルの魔導士としていれば、S級魔導士になる素質がある」

 

「S級魔導士・・・・・・か」

 

「ナツも言っていたが、お前がギルドに入る気あれば私からマスターに頼んでおこう。

無論、お前が家族と再会を果たしてからだ」

 

エルザ・スカーレットから誘われた。でも、悪い。

 

「お前たちと何年も早く出会っていたら、その誘いを乗っていただろうな」

 

「・・・・・そうか、それは残念だな」

 

俺の言葉の意図に気付いた彼女は苦笑を浮かべた。

 

「でも、俺とお前たちは仲間だと思っている」

 

「ああ、当然だ。私もお前のことを大切な仲間だと思っている」

 

笑いあい、ドリンクが入ったグラスを軽くぶつけ、音を鳴らす。

 

「次は―――」

 

「アルビオンダンジョンだ」

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