それじゃ、プリムラ。魔王のところで大人しく待っているんだぞ」
「うん、わかった」
「それじゃ行ってくるねリムちゃん」
「帰ったら遊ぼうね」
「それまで、いい子にしているんですよ」
翌日。正式にプリムラを引き取ることになって翌日。俺たちを送り迎えするプリムラに話しかける。
魔王の話しではどうやら、冥界にいるはずのプリムラがいなく人間界に、俺の所にいたことに、
上層部や五大魔王の内の四大魔王が大層驚いていたようだ。直ぐに連れ戻す動きがあったようだが、
ここに一人の魔王と神王、そして俺が保護すると伝えたら、納得して任せられた。
まあ、俺じゃなくて魔王と神王がいるから安心できるんだろうな。
「(プリムラの実験の計画を阻止するためにはかなりの権力が必要になる・・・・・)」
永い間。三世界、四種族の間で繰り広げ続けてきた研究実験を凍結するためには、
権力と地位が必要。俺は改めて思い知らされた。
「(俺は・・・・・なんだ?)」
父さんと母さんの息子というだけで、周りは何かと気にかけてくれる。
それは俺だからじゃなく、
「・・・・・」
そう思うと、俺という存在は何なんだ・・・・・?と空を見上げて疑問を浮かべる。
「(リーラも、ガイアも、クロウ・クルワッハも、
他のみんなも俺の父さんと母さんの子供だから接してくる)」
もしかして・・・あの二人の子供じゃなかったら誰も、接してこようとはしなかった?
気に掛けようともしない?他人の子供だと、意識されない?
「一誠さま・・・・・?」
不意に、リーラに呼ばれて意識を戻す。「悪い」と告げ、プリムラと別れて俺たちは学校へ赴いた。
「(とある人間の一族・・・・・)」
三大勢力戦争を止めた人間が鍵・・・・・か。調べる必要がありそうだな・・・・・。
「兵藤!その命、貰いうけ―――」
ドゴンッ!
―――駒王学園。
「三大勢力戦争を止めた人間のことを知りたい。教えてくれるか?」
「いきなりだね・・・・・」
学校について早々、理事長室に足を運んで、駒王学園の理事長、
サーゼクス・グレモリーに問うた俺だった。サーゼクスは突然の俺の申し出に苦笑を浮かべる。
「あんたもあの戦争をして生き延びた悪魔なんだろう?
だったら戦争を止めた人間のことを知っているはずだ」
「・・・・・申し訳ないけど、兵藤くん。私の口から言える答えではないよ」
「神王と魔王も同じことを言われた。どうしてだ?個人的に知りたいだけだ」
「知って、どうするのだね?知ったところで何か変化が起きるとでも思えないよ?」
そうだろうな。でも、知ると知らないとは別なんだ。知って損はない。それに、
「鍵だからだ」
「鍵・・・・・?」
「プリムラの計画を凍結する鍵」
「・・・・・」
次の瞬間、サーゼクスは真剣な眼差しで向けてきた。初めて見る表情であり、眼つきだ。
「彼女のことは、魔王さまから聞いた。私も驚いたが、彼女を保護してくれるそうじゃないか」
「成り行きだけどな。そして、無限の魔力を手に入れるための実験も知った。
理不尽な話しだと、神王と魔王から聞いた時はそう思った」
「・・・・・そうか。だが、一介の悪魔の私ではあの計画を止める術はない。
すまないが、力にはなれないよ」
「俺はとある人間の一族を知りたい。ただそれだけだ。教えてほしい」
しかし、俺の懇願の思いは、首を横に振るサーゼクスによって叶わなかった。
「あの一族のことは、我々悪魔だけじゃなく、
魔王と神、天使、堕天使の間ではタブー扱いにしている。決して恐れているからではない。
あの一族から、自分たちの存在のことを公にしないでほしいと頼まれているからだ」
「自分たちの存在を公にするな?歴史に残るようなことをしておいて、
どうして存在を隠すような真似を?」
「人間は三大勢力戦争に介入した際、甚大な被害をだした。
さらに世界中に自分たちのことを、情報を知ったら、狙われてしまう。そう恐れていたようだ」
だったら、最初から介入しなければよかったんだ。はぁ、と溜息を吐いて質問を変える。
「―――サーゼクス、あんたは・・・・・俺をどんな風に思って接している?」
「・・・・・・急にどうしたのだね?」
「なんとなく、聞きたくなっただけだ」
どうなんだ?と再度問う。サーゼクスは真っ直ぐ俺に向かってこう言った。
「あの人たちの子供であり、私の妹を危険から守ってくれた勇敢な少年だと思っているよ」
・・・・・。
「そうか・・・・・」
この悪魔は俺を、俺としてみていなかったか・・・・・。
「他の魔王も同じことを問うたら、同じことを言うと思うか?」
「そうだろうね。なにせ、魔王さまたちはキミのご両親と仲が良かった。だからキミの事も―――」
「・・・・・」
サーゼクスの言葉を遮って、無言で踵を返して理事長室から出ていく。
背後から、疑問を浮かべて呼びかけられても俺は前に進む。
「(俺は、父さんと母さんの子供。二人の子供だから、当たり前だと接してくるのか)」
・・・・・心が痛い。こんな痛みは生まれて初めてだ。
俺を俺として見てくれない痛みはこんな感じなのか・・・・・。
―――二年F組
「皆さん、体育の授業が始まります。今日の相手は二年S組です」
二年S組・・・・・風紀委員長のクラスか。
「この中で授業に出たいと思う人は手を挙げてください」
葉桜の言葉に当然とばかり、和樹と龍牙、リーラは手を挙げる。
俺もだ。それから俺たち以外手を挙げるクラスメートはいない。
「では、私も含めてこの五人で授業を行いますね。それじゃ、体育館に行きましょう」
「「「はい」」」
「ああ」
『頑張れぇー!』
一斉にクラスメートたちから声援が送られる。それは俺たちが教室から出るまで続いた。
「二年S組ですか。初めて戦いますね」
「棄権していたからね。彼女と正式に戦うのが楽しみだよ」
「皆、頑張ろうね」
三人が朗らかに雑談する。対して俺は、無言で廊下を進む。
「一誠、どうしたの?」
「・・・・・」
「一誠」
「ん?」
「どうしたの?何か、思いつめた顔をしていたけど・・・・・」
何時の間にか四人が俺の顔を覗きこんでいた。
「ああ、悪い。少し考え事をしていた」
「そうなの・・・・・?」
「ん、授業は真面目に頑張る。足を引っ張るようなことだけはしない」
「・・・・・そう、悩みがあったら教えてね。相談に乗るから」
心配してくれる葉桜。そっか、じゃあ・・・・・。
「相談に乗ってくれるか?」
「うん、私で良ければ」
「―――葉桜の初恋の人って誰なのかなー?って悩んでいたんだけど、相談に乗ってくれ」
意地の悪い笑みを浮かべて、そう彼女に言ってみた。すると、一拍して・・・・・。
「ひょ、兵藤くん!」
顔を真っ赤にして、怒っていると声を上げた。俺が逃げるように走れば、彼女が追いかけてくる。
「今度という今度は許さないんだからー!」と、声にして。それが面白く、楽しくて挑発してみた。
「ふはははっ!俺を捕まえてみろぉ!」
「絶対に捕まえるよ!」
「―――って、何気に足が速い!?」
「あっ、彼女って意外と足が速いよ?」
「前も似たようなことあったよなー!?」
と、そんなこんなで俺たちは体育館へと赴いたのだった。
―――体育館。
「やぁ、カリンちゃん。こうしてキミを叩けることを嬉しく思うよ」
「誰がカリンちゃんだ!私とお前は同い年だぞ!『さん』付けか、呼び捨てだろう!」
「うーん、そうなんだけどね?どうも妹のように接しちゃうんだよねー」
のほほんと、和樹がカリンに言う。カリンと親しそうだが・・・・・ああ、そう言えば。
「和樹って元々Sクラスだったな」
「うん、だから彼女のことを知っているんだ。
一年生だった頃、僕と彼女はウィザードプリンスとウィザードプリンセスなんて称されていたよ」
「・・・・・和樹、一言言っていいか?」
「言わなくていいよ。大体言いたいことが分かるから」
ネーミングのセンスが可笑しいだろ?それを和樹は理解していたようだ。
というか、言われたことがあるんだな。
「では、バトルフィールドである異空間に到着したら、
その時点で授業を始めます。相手の『
なお、戦闘不能の状態に陥った場合は教師側で強制退場をします。
そして、相手がもし授業で死んだ場合・・・・・事故死として扱います。よろしいですね?」
「「はい」」
葉桜とカリンが同意する。その直後、俺たちの足元に魔方陣が展開した。
「それでは」
と腕をビシッと振り上げた。
「カリン・デジレ・ド・マイヤール・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールが率いる二年S組、
葉桜清楚が率いる二年F組の体育の授業を開始します!時間は三十分。―――授業開始!」
教師の宣言と共に魔方陣の光はより一層強くなった。
俺たちはその光に視界が奪われ、何も見えなくなった。
―――○●○―――
視界を遮る光がなくなり、目をゆっくりと開ける。
最初に視界に飛び込んできたのは・・・・・。
「・・・・・あれ、体育館?」
元の場所、体育館だった。教師と二年S組のカリンたちがいない。葉桜が不思議そうに呟けば、
「どうやら、ランダムで決まるらしいですね」
「次、トイレの中だったら物凄く嫌だね」
「激しく同意だ」
いまの状況と、次の授業のスタートのことについて雑談した。
「さて、和樹先生。カリンのことを教えてください」
「はい、任されました。と言ってもね?彼女は僕と同じ魔法使いだよ。
魔方陣を介して魔法を放つ、なんてやり方じゃなく、杖を利用し、
呪文を唱えて魔法を放つタイプなんだ」
「和樹とカリンの違いはそれか?魔法使いは色んな奴がいるんだな」
「まあね。でも、カリンは呪文を唱えなくても魔法を放つことができるよ」
杖を奪えば魔法を放てなくなるか・・・・・?
「・・・・・そう言えば、彼女に姉がいたな。あのクラスに」
「姉?どんな奴?」
「一言で言えば―――プライドだけが取り柄のとんでもない爆発魔法を放つ少女だったよ」
ば、爆発・・・・・?
「それって、危なくないか?」
「そうでもないよ。長い呪文を唱えないと発動できないらしいから」
「・・・・・それって、今この瞬間にでも唱えているんじゃないか?」
「・・・・・」
俺がそう言うと、和樹は一瞬だけ固まった。―――刹那。真上から眩い光が生じた―――。
―――カリンside。
ドッオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
私、カリン・デジレ・ド・マイヤール・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールことカリンは、
体育館が大爆発を起こした光景を空高く浮き、見下ろして目の当たりにした。
「ふう・・・・・呆気なく終わったわね」
後ろから聞こえる女の子の声。振り向かずとも分かる。私の姉が魔法を放って溜息を吐いて、
勝利を確信した発言をした。
「ルイズ姉、まだアナウンスが流れていない。授業が終わるのは放送を聞いてからだ」
「そうかしら?体育館だけじゃなく、殆ど爆発しちゃったんだから生きているとは思えないわよ」
「いやー、ルイズ。流石に妹さんの言う事も一理あると思うぞ?」
クラスメートの悪魔が私に同意の言葉を発した。だけど、私の姉は、むすっとして不機嫌に言う。
「うっさいわね。じゃあ、賭けをしましょうか。五秒後、もしもアナウンスが流れなかったら
今日のお昼ご飯、学食で食べるあなたたちの分を奢ってやるわよ」
「・・・・・で、ルイズ姉が賭けに勝ったら?」
「そうね・・・・・三年に進級した暁に、あなたたちを下僕にしようかしら。
勿論、拒否権は無しよ」
うわー、ルイズ姉・・・・・・絶対に恥をかくよ。
というか、できれば私はルイズ姉の下僕になりたくないや。風紀委員の仕事だってあるしさ。
と、内心嫌そうに言う私を露知らず、ルイズ姉は自信に満ちた態度で言いだした。
「じゃあ、カウントダウン開始よ。―――5、―――4、―――3、―――2」
―――1、と姉が数えたその瞬間だった。
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!
金色の光線が下から伸びてくるように迫ってきた!急いで私はルイズ姉とクラスメートの襟を掴んで
この場から回避した結果、数人の仲間が直撃して脱落してしまった。
『カリン・デジレ・ド・マイヤール・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールの「
「
―――やっぱり、倒れていなかったか!地上を見降ろせば、幾重の防御式魔方陣を展開している
元クラスメートの姿がいた。その魔方陣で自分の仲間を守っていた様子を伺わせる。
「・・・・・」
呆然と、ただ爆発で壊しつくした学校をルイズ姉は見詰めていた。
そんな自分の姉に追い打ちを掛けるようにクラスメートが話しかけてきた。
「ルイズ。御馳走さま」
「ありがとうな。食事代が浮いたぜ」
「ルイズさまさまだ!」
「お前って賭けに勝ったことすらないくせに、よく言えたもんだよな」
「よっ!ゼロのルイズ!爆発で全てを消滅させるゼロのルイズ!ただ学校を壊しただけだったな!
全部綺麗さっぱり無くなっているぜ!」
お、お前たち・・・!あんまり、姉を罵倒したら・・・・・・っ!
バチバチッ・・・・・・!
「う、うるさいわね・・・っっっっっ!」
『・・・・・あっ・・・・・』
「ど、どうせ・・・・・・私はぁ・・・・・・!」
「ま、待ってルイズ姉―――!」
「爆発するしか才能のないゼロのルイズよぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!っ」
―――刹那。
チュッドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
ルイズ姉の爆発が味方諸共戦闘不能にまで追い込んだ。その結果―――。
『・・・えっと、カリン・デジレ・ド・マイヤール・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールが率いる
二年S組、自滅という結果になりましたので、勝者は葉桜清楚が率いる二年F組です』
その直後・・・・・。
『ええええええええええええええええええええええええええええええええええっ!?』
F組から驚愕の叫びが聞こえたような気がした・・・・・。