―――セルベリアside―――
川神学園の教師として早数週間、我が主であるイッセーが亡くなって数週間。
グラウンドで川神学園と駒王学園の合同体育をし、教師として立ち合っている。
イッセーが死んでからというもの、この学園の生徒はすっかり何時もの調子に戻っている。
一部の者以外だが・・・・・。グラウンドでマラソンをしている生徒たちを見詰めていると
何故か溜息が出る。
「平和だな・・・・・」
それは悪くないことだ。だが、その平和を感じで苦痛を感じるものもいるだろう。
様々な感情を抱いて。
「・・・・・」
授業もそろそろ終わる時間だな。生徒たちに声を掛けるか。授業が終わるまで走り続けさせていた
生徒たちに向かって口を開く。
「お前たち、そこまでだ!五分間休憩終えたら、各自自分の教室に戻れ!いいな!」
『は、はい!』
私の言葉に返事をした生徒たち。―――その時だった。
キュイイイイイイイイイイイイイイイィィイイイイッ!
コロの警報・・・・・さて・・・・・私は・・・・・。
「せ、先生?どうして魔方陣を展開するんですか?」
一人の生徒が尋ねてくる。が、それに応えず、私の愛用の武器を魔方陣から取り出す。
「全員集合!一ヶ所に集まれ!口答え、質問、一切受け付けない!」
「え?」
「三秒以内に集まらなかったら、その場でタイヤ引き三十周をさせる!三、二―――」」
私の合図に生徒たちは一斉に一ヶ所に集まった。その瞬間、
ドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
私が瞬時で張った魔方陣の障壁に激しい衝撃が生じた。
「な、なんだぁぁぁぁっっ!?」
「きゃあああああああああっ!」
騒然となるグラウンド。生徒たちは全員、私の張った魔方陣の後ろにいる。
軽傷者がいるかもしれんが問題ないだろう。
「やってくれるな・・・・・魔法使い」
眼前に睨む。魔法使いのローブのようなものを着込んだ者たち複数人が、
こちらに手を突き出していた。
祖の足元には、魔方陣が輝いている。奴らの正体は・・・・・大体予想がつく。
「はぐれ魔法使い」
―――ロスヴァイセside―――
イッセーくんが死んだというのに、どうしてこうもトラブルが起こるんですか・・・・・!
生徒たちにこの場にいるように指示をし、廊下を出れば、敵がいて瞬時で鎧を纏い、
戦闘態勢になる。
「兵藤一誠のヴァルキリーか!」
「相手にとって不足はない!」
その言葉に怪訝となった。どういうことです?彼らの目的は一体・・・・・。
いえ、考えるのは後です。いまは―――この学校を敵から守る事だけ集中しましょう!
―――百代side―――
「敵が向こうからやって来てくれるなんてありがたいな!」
ドゴオオオオオオオオオオオオオンッ!
「が、私の相手にするにはまだまだ早かったかな?」
「つ、強い・・・・・」
三年の廊下にいた魔法使いみたいな奴らを粗方倒し終えた。
今倒した敵も私の拳の一撃で倒れた。顔を廊下の向こうに向け、そこにいる人物に声を投げた。
「サイラオーグ、そっちも終わったようだな」
「ああ、今回の襲撃の黒幕を吐かせる捕虜を捕えた」
両手で複数の敵の襟を掴んでいるサイラオーグ。私が廊下に出たと同時にこいつも出て来て、
敵の油断を吐いてあっという間に倒し終えたわけだが・・・・・。
「で、こいつらの目的はなんだ?」
「わからない」
―――レイヴェルside―――
な、何が起きていますの!?窓からグラウンドを見れば、
セルベリアさんが防御魔方陣を展開しつつ、攻撃用の魔方陣で敵と交戦しているのが伺えます。
でも、どうしてこんな真昼に敵が襲撃してくるんですか!
ドッガアアアアアアアアアアアアンッ!
教室の外側から爆音が生じた。それだけじゃなく、この教室の扉、壁までも吹き飛んで壁側にいた
クラスメートたちが巻き込まれた。その原因を作ったのは―――。
「いたいた、フェニックスのご令嬢と実験体三号だ」
魔法使いみたいなローブを着込む異国人・・・・・・。数は数人。
目的は・・・・・私とプリムラさん?
「一緒に来てもらうぞ。じゃなきゃ、お友だちの一人が死んでしまうぜ?」
魔方陣を横に展開してクラスメートたちに向ける。な、なんて卑怯な・・・・・!
「あなたたちの目的は私とプリムラさんですか・・・・・」
「最初からそう言っているぜ?さあ、一緒に来てもらおうか」
「「・・・・・っ」」
きっと、はぐれ魔法使い。メフィスト・フェレスさまも仰っていた。
はぐれ魔法使いがフェニックス家の関係者と接触していると。
ですけど、どうしてプリムラさんまで連れ去ろうとしているのです―――?
そう脳裏で考えていると、はぐれ魔法使いの手が私たちに届く―――。
ガシッ!
と、思っていた矢先、はぐれ魔法使いの腕を掴む人物がいた。
その人は・・・・・兵藤名無さん。
「あっ?」
「・・・・・」
刹那―――。
ゴキンッ!
「っっっ!?」
はぐれ魔法使いの腕から鈍い音が聞こえました。途端に、はぐれ魔法使いの表情が一変して苦痛に
歪んだ。でも、その表情を見るのはあっという間に終わった。その理由は、兵藤名無さんが
そのはぐれ悪魔の顎に拳を突き上げて天井に突き刺したからです。その動作はたったの三秒。
「お前!」
別のはぐれ魔法使いが魔方陣を展開し、炎を放ってきました。
ですが、そんな炎は効かないとばかり真正面から受けて、そのまま真っ直ぐ飛び掛かり、
全身を捻って、その遠心力を最大限に力として敵ごと魔方陣を粉砕し、蹴り飛ばしたのです。
さらに傍にいた敵の顔面を掴んで―――口から泡を吹かせるほど握力で倒してしまいました。
「名無・・・・・」
プリムラさんが彼の名を呼んだ。彼は小さい、本当に小さい声で言った。
「兵藤一誠との約束、守る」
―――アザゼルside―――
皆の奮闘のおかげで、生徒の被害はほぼゼロ。
学校側の被害は甚大だが、神王と魔王の二人の力で問題解決だ。
放課後、今回の襲撃のことで関わったメンバーを全員、新オカルト研究部に
集まっているわけだ。だが・・・・・相手が誰だか知ればこいつら・・・・・怒りと憎悪、
恨みを隠すこともなく撒き散らしていやがる。
「一誠を殺すに飽き足らず、レイヴェルちゃんと
プリムラちゃんまで手を出そうとするなんてね・・・・・」
「ふふふ・・・・・どこまでやれば気が済むんでしょうかね・・・・・」
「いっくんを殺した奴ら・・・・・皆殺し」
「そうですね・・・・・」
「絶対に・・・・・許さない・・・・・・」
うわ・・・・・テロリストよりこいつらの方が
よっぽど怖い・・・・・・思わず冷や汗が出てしまう。
「杉並、どうですか?」
シーグヴァイラ・アガレスが自分の眷属に尋ねる。
襲撃後、はぐれ魔法使を解放した。それは杉並の策だ。
餌をばら撒いて大物を釣る。つまり敵の潜伏先を行ってもらい、
敵の居場所を分かり次第俺たちが襲撃する手筈だ。
こんなこと、本当に成功できるか半信半疑だが・・・・・。
「餌に食らいつきました我が主よ」
小さく笑う杉並。よし、本当に掛かったなんてな。奴さんもそう頭が回らないようだ。
「居場所はどうです?」
「・・・・・駅、いや、駅の地下?・・・・・なるほど、灯台下暗しとはよく言ったものだ」
「なにを言っているのです?」
怪訝な表情で問う主に杉並は告げた。
「はぐれ魔法使いの潜伏先は、悪魔専用の冥界行きの列車がある地下ホームです」
『―――っ!』
はー、あの駅の地下ホームかよ。
確か、あそこも調査していたはずだったんだが・・・・・どうやら掻い潜られていたようだな。
「襲撃するなら、いまですが?向こうも俺たちの動向を見張っているはずだ」
善は急げってことか?でもな・・・・・騒ぎが起きたその直後に襲うのはどうも・・・・・。
「行きましょう。敵が敵に回してはいけない存在を知らしめ、後悔させてやります」
ソーナが立ち上がってそう宣言した。それに同意する奴らは次々と立ち上がる。
そして、オカルト研究部からいなくなった。
「たくっ、少しはこっちにも気遣って欲しいもんだぜ。
あいつら、終わった後の後始末は俺ら大人がやらないといけないことを知っているはずなのによ」
「彼女たちの行動の源は兵藤一誠を死に追いやった者に対する復讐、怒りですよアザゼル総督」
「これじゃまるでイッセーみたいな奴が何人もいるみたいじゃないかよ」
杉並の言葉に俺は嘆息した。
―――○●○―――
―――和樹side―――
川神市の駅のホールにやってきた僕たちは、
地下に降りて冥界行きの列車用に建設されたホームを
進んでいく。広い空間を抜けて、右に左に通路を進んでいくと―――。
途端に不穏な気配を察知した。
・・・・・いま歩いている通路を抜けた先に敵が待ち構えて
いるのだろう。前衛、中衛、後衛とそれぞれ整えて通路を抜けていく―――。
そこは初めて足を踏み入れる地下の開けた空間だった。
地下のホーム以上に広大な場所。天井も一層高い。・・・・・こんな所があるなんて。
この町の地下にはどんな領域が隠されているのやら。人間界は既に万魔殿じゃないか?
と、前方に目を向ければ、かなりの魔法使いの集団がいた。
全員、魔術師用のローブを着込んでいる。ローブの種類は様々だが、学園を襲撃した奴等と
似たようなローブ姿も確認できた。僕たちは距離を置いて、奴らと対峙する。
・・・・・パッと見て百は超えてるんじゃないかな?
召喚したであろう魔物も結構な数がいる。と、はぐれ魔法使いの一人が前に出てきた。
「こんなに早く、俺たちのの前に現れるとはな・・・・・」
「(・・・・・これだけの数のはぐれ魔法使いを侵入を許していたとは・・・・・)」
目元を細め、目の前にいるはぐれ魔法使いたちに睨む。これは問題だ。
でも、一体どうやって潜伏を許したんだろうか。
「あなたたちの目的は何ですか?フェニックスとプリムラさん?それとも私たちでしょうか?」
ソーナ先輩が問うた。ロスヴァイセさんが言っていた。
『兵藤一誠のヴァルキリー』『相手にとって不足はない』と。
まるで強者と戦いたがっていたような発言だったため、予想として彼女は訊いたんだろう。
「どっちもですな。ま、フェニックスのお嬢さんの件は失敗したが、
もう一つの件は果たせそうだ。つまり、あなたたちとの件だ。―――気になって仕方ないんだよ。
メフィストのクソ理事とクソ教会が評価したっていうあんたらの力がね。
この思い、理解できます?できないですよね?ま、強い若手悪魔がいたら、
試したくなるでしょ?魔法を乱暴に使う俺たちならね」
その魔法使いが指を鳴らす。刹那、この場にいる魔法使い全員が攻撃魔法の魔方陣を
展開し始めた。
「俺たちと勝負だッ!悪魔さんたち!魔力と魔法の超決戦ってやつをよ!」
それが開始の合図となった。怒涛の如く、炎、水、氷、雷、風、光、闇、
あらゆる属性の魔法が俺たちに向けて放たれる。使役している魔物の群れも突っ込んできた。
その無数とも思える激しい魔法の雨が降り注ごうとしているなか、僕は短くため息を吐いた
「―――どれもこれも全然ダメだね」
バシュンッ!
僕が腕を横に薙ぎ払っただけであらゆる属性魔法が全て一瞬で消えた。
「一誠を殺したテロリストに容赦しないからね。例え、関わっていないとしても、
テロリストに加担するなら僕の敵だ」
敵の足元全体に魔方陣を展開した。魔物も含まれる。
「彼を甦らすために禁断の魔導書まで手を伸ばした。
その結果、僕の知らない魔法の知識も得たよ。後でかなり怒られたけどね」
苦笑を浮かべたその時だった。敵の足元に展開している魔方陣が回転をし始め、
はぐれ魔法使いたちと魔物たちまでもがグルグルと回り始める。
「なっ、魔方陣ごと俺たちが回される・・・・・!?」
回る敵の上空にもう一つ魔方陣を展開した。下で回る魔方陣に対して逆回転する魔方陣。下で同じ向きで回る魔方陣と同時に敵も回っているならば、上で逆回転している魔方陣も同じ原理だったら・・・・・どうなると思う?
ブチブチブチブチブチッ!
何かが引き千切れるような音が空間に鳴り響く。それはね―――?
『ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!』
はぐれ魔法使いたちや魔物の筋肉が引き千切れる音だよ。
だから、下半身と上半身、首が千切れてあっという間に死んだ。
「お、お前・・・・・」
「敵は容赦しない。ただそれだけだよ」
川神先輩にそれだけ呟く。人の死を目の当たりにするのは初めてかな?
そう思っていたら少し離れた場所で魔方陣が出現した。敵の魔方陣だろう。
まるでこっちに来いと言っているようにも思える。
僕たちは頷き合い、その魔方陣に向かって足を運び、次の空間に転移した先に
広がっていたのは―――。・・・・・だだっ広い白い空間だった。何もない、ただ白いだけの空間。
上下左右も白い四角い場所だ。・・・・・天井はかなり高い。
転移用魔方陣で次の場所に移動したら俺たちは此処に辿り着いた。
「ここは次元の狭間に作った『工場』なのですよ。
悪魔がレーティングゲームに使うフィールド技術の応用です」
突然の第三者の声。そっちに視線を送れば・・・・・。さっき、空間を見渡した時には
見当たらなかった人影がそこにあった。そして、同時に僕の中でとある感情が湧きあがった。
「ユーグリット・ルキフグス・・・・・!」
一誠を死に追いやった一人、ユーグリット・ルキフグスに対する怒りと憎悪を!
「お久しぶりですね。皆さん」
『っ!』
いけしゃあしゃあと・・・・・!一誠を殺した僕たちの怒りと悲しみを存分に与えてやりたい!
でも、それはどうやら叶わないようだ・・・・・。
「あれ、アザゼルはいないのか?」
「残念ね、せっかくついてきたのに」
禍々しい剣を持った一誠の父親、兵藤誠と一誠の母親兵藤一香が
あの悪魔の背後から現れたからだ。
「誰だ?あの二人は」
「・・・・・一誠の両親だよ」
「なんだと・・・・・?じゃあ・・・・・あの二人が・・・・・」
ああ、あの二人も敵だってことだよ。
一誠の胸を突き刺したその剣・・・・・アレはなんとしても破壊したい。
「あら・・・・・もしかして、百代ちゃん?」
「おっ、本当だ。見ない間に随分と綺麗に成長したじゃないか」
敵であるにも拘らず、親しげに語りかけてくるあれはなんとも戦い辛い・・・・・。
「成神と匙。一誠の父親の持つ剣に気を付けて、というか、逃げた方がいいよ」
「ちょっと待て!?戦わずに逃げるなんてできねぇぞ!」
「キミまで死んだら、リアス先輩は今度こそ精神を崩壊しちゃうけどいいの?」
「―――っ!?」
そのリアス先輩は木場はルーマニアに向かっている。
遅れてアザゼル先生もルーマニアに向かっているはずだ。
これ以上、彼女が大事にしているものを失わせたらどうなるか火を見るより明らかだと
思っていたその時だった。
「いえ、彼らは私の護衛としてもらいますので攻撃はさせませんよ。
あなたたちに相手をして欲しいものがいますので、そちらと戦ってもらいたいです」
僕たちと戦ってほしいもの・・・・・?それは一体誰だ。でも、気になることが一つだけある。
「どうしてプリムラちゃんとフェニックス家のレイヴェルちゃんを連れ去ろうとしたの?
お前たち『フェニックスの涙』を別の方法で量産していると聞いたけど」
僕の質問にユーグリットは指を鳴らした。すると、右手側の壁が作動して、下に沈んでいった。
壁の向こうが見えてくる。そこにあったのは―――多くの培養カプセルが並んだ、
実験室みたいな光景だ。機器に繋がれた数多くの培養カプセル。
その中には―――何かが入っている。
僕たちがカプセルの中身を確認すると―――液体に満ちていて、
そのなかに浮かんでいたのはヒト・・・・・
「フェニックスの涙の製造方法、知っていますか?純血のフェニックス家の者が、
特殊な儀式を済ませた魔法陣の中で、同じく特殊儀礼済みの杯を用意して、
その杯に満ちた水に向けて、自らの涙を落とすのです。涙の落ちた杯の水は
『フェニックスの涙』にはならないとされています。感情のこもった涙は、
『その者自身の涙だから』、だそうでして。自らの為に流した涙と、
他者の為を思って流した涙では、効果が生まれない」
ユーグリットが培養カプセルに指を指す
「ここが『工場』だと言ったのは、あれを魔法使いたちが量産しているからです。
上級悪魔フェニックスのクローンを大量に作り出し、カプセルの中で『フェニックスの涙』を
生み出させる―――。ここの『工場』は既に放棄する予定なので、
あの者たちももう機能を停止させています」
―――っ!?
偽の『涙』を生みだすだけに生み出されたフェニックスのクローン。
用済みだから機能を停止されたあのクローンたちが余りにも不憫だ。
ソーナさんが目を細めながら嫌悪の言葉を吐きだす。
「・・・・・ここで生み出したものを闇のマーケットで流して莫大な資金を集める。
考えそのものがおぞましい限りです。あなた方がフェニックス家の者に
手を出そうとしていたのは、あれを作り出す精度を上げようとしたためですね?」
「ご理解が早くて助かります、シトリー家次期当主。
どうやら、魔法使いたちの研究でもフェニックスの特性をコピーするのに
限界があったようでして、最終手段としてフェニックスの関係者をさらって
直接情報を引き出そうとしたそうです。結局、純血の者からではなければ、
解らない事があったようで、
レイヴェル・フェニックスを連れ去る事にしようとしたのですが、失敗に終わりました。
それとプリムラ・・・・・人工生命体三号を連れ去ろうとしたのは彼女の内に宿る
無限に近い魔力を得るため、です。それも失敗に終わりましたがね」
当り前だよ、一誠が守った家族を僕たちが守れないでどうするんだよ!
命を掛けて守ってくれた僕らを一誠が死んでしまったんだぞ・・・・・!
「―――さて、我々が欲する要求の最後です。
あなたたちのような強者と戦いたいと願う者がいるので、お相手をしてもらえませんか?
実は私にとって今回の襲撃はそれが主目的でいた。
魔法使いたちの要望を叶えたのは、あくまで『ついで』でして」
そう言うリーダーが僕たちとの間に巨大な陣形を作り出していく。光が床を走り、
円を描いて、輝きだした。・・・・・来るかと思っていた僕に匙があの魔方陣を見て
匙が漏らす
「―――龍門?」
龍門。一誠が良くしていた魔方陣の一種、龍門は力のあるドラゴンを招く門だったね。
龍門の輝きは呼ぶ側のドラゴンのカラーを発しながらそのドラゴンを招く。
オーフィスやガイアから二天龍と五大龍王のカラーを聞いて知っているんだけど、
―――どれも聞いた色に当てはまらない。だって、いま龍門の輝きは―――深い緑、深緑だ。
深緑の龍門の魔方陣が輝きを一層に深くしてついに弾ける!
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!
白い空間全てを震わせるほどの声量―――鳴き声とも言える咆哮が、そのものの大きな口から
発せられた。僕たちの眼前に出現したのは、浅黒い鱗をした二本足で立つ巨大なドラゴン!
太い手足、鋭い爪と牙と角、スケールが違い過ぎる両翼を広げ、長く大きい尾をしている。
―――巨人型のドラゴン!あんなドラゴンも存在していたのか!?
「―――伝説のドラゴン、『
巨大なドラゴンは牙の並ぶ口を開く。その銀色に輝く双眸と眼光は鋭く、
ギラギラと戦意と殺気に満ちていた。
『グハハハハハ。久方ぶりに龍門なんてものを潜ったぞ!
さーて、俺の相手はどいつだ?いるんだろう?俺好みのクソ強ぇ野郎がよぉっ!』
『
何時でも戦闘に入れるようにする為だ。それにしても身に纏うオーラは禍々しい。
見ているだけで邪悪さがうかがえるほどにドス黒いオーラをしていた。
匙の陰から人間サイズの黒い蛇―――ヴリトラが出現する。
ヴリトラは目の輝きを濁らせながら、驚きに包まれた声音を漏らす。
『・・・・・ッ!グレンデル・・・・・ッ!?・・・・・あり得ぬ。
奴は暴虐の果てに初代英雄ベオウルフによって完膚なきまでに滅ぼされた筈だ』
『―――ッ!グレンデルだと・・・・?どうなっている?
こいつは俺よりもだいぶ前に滅ぼされたはずだ』
匙と成神に視線を配らせる『
『天龍、赤いのか!ヴリトラもいやがる!なんだ。その格好は?』
と興味深そうに銀の双眸を細めるグレンデル
「二天龍はすでに滅ぼされ、神器に封印されていますよ」
悪魔の言葉を聞いてグレンデルは哄笑を上げた。
『グハハハハハッ!んだよ、おめぇらもやられたのか!ざまぁねぇな!ざまぁねぇよ!
なーにが、天龍だ!滅びやがってよっ!まあだが、確かになぁ!
目覚めにはかなり良い相手だ!』
グレンデルはひとしきり笑ったあとに両翼を大きく広げて、体勢を低くする。
うん、僕たちはドラゴンと戦い慣れているから問題ないね。
『俺のように神器に魂を封じられていたようでもなさそうだ。
・・・・・いったいどうやって現世に甦った?』
『細けぇことはいいじゃねぇか。ようはよ、強ぇ俺がいて、強ぇお前らがいる。
じゃあ、ぶっ殺しあい開始じゃねぇかッッ!』
そして、あのドラゴンは言った。
『でも、てめぇらと戦うのも良いが。俺は邪龍の筆頭格、
グレートレッドとオーフィスが認めたガキと戦ってみたかったぜ』
「・・・・・っ」
『なんでも、この二人の人間と同じぐらいつぇーんだろう?グハハハハ、戦ってみてぇーなぁ!ま、自分の両親に殺されるようじゃとんだアマちゃんだったわけか?今頃、地獄で自分の親に殺されてピーピー泣いているんだろうよ!』
このドラゴン・・・・・!よくも一誠に対して・・・・・!許せないぞ・・・・・!
「・・・・・殺す」
その時、悠璃が動き出した。手には何時の間にか大鎌を持っている。
それを見てグレンデルは愉快そうに笑んだ。
『おほっ!いいじゃねぇかよぉぉぉっ!真正面からかっ!そうそう、そういうのでいいんだ!』
グレンデルの巨大な拳が悠璃に飛んでくる。
まともに受けたら、彼女の華奢な体が木端微塵になるに違いない。
でも、あろうことかその拳を悠璃は避けて、浅黒い鱗が覆う腕に飛び乗って駈け出した。
「す、すげ・・・・・悪魔じゃないのに、なんて動きをするんだ」
「兵藤家は何度もドラゴンと戦った過去があります。その身体能力は悪魔に劣らないですよ」
「死ねっ!」
彼女がグレンデルの首元に飛び掛かった。そして―――鎌を大きく振るった!
ガキンッ!
鉄と鉄がぶつかったような音がした。グレンデルの首は・・・・・薄皮一枚どころか、
鱗に傷一つすら付いていない!
『痒いなっ!』
「っ!」
グレンデルの拳が、宙にいる悠璃に直撃した。彼女は吹っ飛び、壁に激突した。
「悠璃!」
「今度は私が相手だ!」
川神先輩が動く。グレンデルは嬉々として笑む。
『そうそう、どんどんこいやっ!』
また巨大な拳が振ってくる。その拳は川神先輩を襲うが、彼女は横に避けて前に走り続ける。
そして、途中で飛んだ。
「川神流 無双正拳突き!」
彼女の必殺技ともいえる正拳突きはグレンデルの顔面に直撃した。
その衝撃にグレンデルは大きくのけ反りm後方に倒れそうになるが、すんでで持ち堪えた。
正面から顔面に拳を受けたグレンデルは、自分の頬を擦る。
『・・・・・・っ。なんだこりゃ?おいおいおい』
「―――っ!?」
彼女は・・・・・酷く驚いていた。
『ユーグリットから聞いた話じゃ、相当強い人間がいるって言うからどれぐらいの力だと思えば
こんなもんかよ?』
グレンデルの防御力が予想を遥かに上回っているのか!彼女の拳の一撃は、
一誠だって認めるほどの威力なのに!
『グレンデルは滅んだドラゴンの中でも最硬クラスの鱗を誇っていた。
生半可な攻撃力では突破できないぞ』
成神から聞こえる声。正確には左の赤い籠手からだ。
「じゃあ、それ以上の攻撃力をすればいいわけだ」
え?川神先輩?
「川神流・・・・・」
両手を合わせて、腰辺りに引いた。その技って・・・・・
『今回、町の地下という事で戦いによる制限があります。大きな破壊は崩落、
地盤沈下の影響が出てしまいます。極力、派手な攻撃を避けねばなりません。
ですから、破壊はできうる限り回避しなければなりません。必要以上の威力は控えて下さい』
―――っ!
今になってようやくこの地下のホールに降りる前に先輩から言われたことを思い出した。
あの川神先輩の技はまさに派手な攻撃だ―――!。
「ちょっ、川神先輩待って下さい!その技だけは―――!」
「星殺しぃぃぃっ!」
制止の声を掛けようとしても遅く、彼女は極太の気のエネルギー砲を放ってしまった。
そんな威力の技をグレンデルが避けたらこの空間は一溜まりもない―――!
『おほっ!おもしれぇ、受けてやる!』
あっ、受けてくれるんだ。ありがとう。
言葉通りにグレンデルは真正面から川神先輩の技を食らった。
―――それでも、グレンデルは立った。胸辺りに青い血液が流れているけど、
戦闘に支障がないとばかり交渉を上げる邪龍。
『グハハハハッ!さっきのより良い攻撃だな!でも、まだまだ物足りねぇ―ぞ!』
「バカな・・・・・私の技を食らって平気な奴がいるなんて・・・・・」
『今度は俺の番だ!』
腹を膨張させたかと思えば―――。口から巨大な火炎球を吐きだした!
「防ぎますわ!」
朱乃先輩が防御魔方陣を展開して迫りくる火炎球を受け止めた。
『ドライグゥゥゥゥッ!』
―――火炎球はフェイントか!先輩が防いでいる間に、
何時の間にか僕たちの背後に回っていたグレンデルの拳が成神に伸びていた!
「させん!」
ドッゴオオオオオォォォォォォォンッ!
サイラオーグ先輩が成神を守るようにグレンデルの拳を拳で受け止めた。な、なんて悪魔だ!?
『おっ!俺の拳を受け止める悪魔がいるなんて嬉しいな!楽しいな!』
「(あのドラゴン、見た目があれなのに何て速さだ・・・・・!)―――捕縛する!」
グレンデルの足元に魔方陣を展開して、魔方陣から極太の鎖が出て来て、邪龍の体を縛った。
その鎖に対してグレンデルが苛立ち、
『んだよ、こいつはよ!?』
バキバキバキッ!
「・・・・・マジで?」
強引に体を動かして鎖を引き千切っていく。
でも、そんなグレンデルの腹部に向かってサイラオーグ先輩が突貫し、
拳が深く突き刺さった。その衝撃でグレンデルは口から血反吐を出し跪く。
「もう一発だ」
今度は淡い光を拳に纏わせ、グレンデルの顎の下から拳を打ち上げた。鈍い音が空間に響く。
それでも―――!
『グハハハハッ!いてぇ、いてぇじゃねぇかっ!でもよ、それがまた良いんだ!
生きている実感を与えてくれるんだよなっ!』
全ての鎖が引き千切られた。あのドラゴン、何て耐久力なんだ・・・・・。
でも、負ける気はしない。どうやら不死のドラゴンではないみたいだし、
僕たちはドラゴンを相手に強くなってきたんだ。
「今度は全員で行こう」
『・・・・・』
各々と武器を構え、攻撃態勢になる皆だった。
全員で掛かれば倒せない訳がない。そう思った時だった。
ジャララララララララララッ!
突如、グレンデルの体にどす黒い鎖が巻かれていき―――何者かの手によって拘束された。
『うご!?』
しかも・・・・・どこかで見たことがある縛り方だよね・・・・・。デジャブだ・・・・・。
縛られたグレンデルが倒れてうつ伏せになれば、
どこからともかく現れた影がグレンデルの背に舞い降りた。
「おや、どうしてここにいるのですか?
あなたはリゼヴィムさまの護衛を務めてもらわないと困るのですが」
背後からユーグリットが問いかけてきた。彼が尋ねた影の正体は・・・・・。
少女だった。金色の瞳、膝まで届く黒い髪だけど、両脇だけ赤いリボンでツインテールに
結んでいた。肌は褐色、なぜか黒い浴衣を着ていて黒いサンダルを履いていた。
「・・・・・・」
彼女は僕たちを見下ろす形で見渡してくる。
「・・・・・」
そして・・・・・口を開きだした。
「私の下僕に相応しい存在はいないな」
『下僕っ!?』
い、いきなり何を言うんだろうかこの少女は!?
「また、悪い癖でリゼヴィムさまから離れたのですか」
「お前でも構わないぞ?ユーグリット、私の犬になるか?」
「・・・・・いえ、御遠慮させてもらいます」
なんだろう・・・・・本当に似ているんだけど・・・・・どうしてなんだ?
「リゼヴィムからの伝言だ。『とある国の城を魔王らしく滅ぼして満足したから、
早く帰ってきてくれ』だ」
『っ!』
国の城を滅ぼした・・・・・!?
あの悪魔、僕たちの知らないところでそんなことをしていたのか!
「そうですか。こちらも実験の成果も出ましたし、十分でしょう」
『ちょっと待てやっ!俺はまだ―――!』
「黙れ」
ジャラッ!
『あふん!』
・・・・・本当に、あの言動は似ているんだけど・・・・・死んだ親友にさ。
彼女は一体何?前と後ろに魔方陣が展開した時だった。
「赤龍帝とはどいつだ?」
「お、俺だが・・・・・」
彼女が成神を見詰めた。
「お前か・・・・・」
ジャラリと鎖の束を見せ付けた。
「調教のし甲斐がありそうだ」
不敵の笑みを浮かべた!いや、それって本当に親友の趣味と同じだよ!?
ほら、成神が体を恐怖で震わせているよ!
「だが、もう少し強くなってからだな。
―――兵藤一誠と龍神の力から生まれた私を認めさせるほどの力をな」
―――っ!?
一誠とオーフィスの力から生まれた存在・・・・・。彼女はドラゴンだと言うのか・・・・・。
だから、親友と似ていたのか・・・・・納得したよ!
―――一誠side―――
「クシュンッ!」
「どうした、風邪か?」
「いや・・・・・噂されたような・・・・・」
「お前が死んだんだ。噂やお前の話しの一つや二つもするだろう」
「・・・・・そうだよな」
「後もう少しだわ。頑張って」
「おう、頑張るわ」