「ガジェットドローンⅥ型の性能を試す?」
「ああ、そうだ」
三日目の朝、朝食時にジェイル・スカリエッティがそう言いだした。
「そこで、ガジェットドローンⅥ型の試運転をキミに頼みたいのだ」
「なんだ、試運転のために俺と戦わせようって?」
「いやいや、相手は管理局だよ」
・・・・・あー、そういうことか。この科学者の言いたいことは瞬時で理解した。
「新しいガジェットドローンを率いて管理局にちょっかいだせばいいんだな?」
「ふふっ、話が早い。どうだい、やってくれるかい?」
「その前に、どーやって試作品を管理局本部にまで運ぶんだ?あれ、飛べないぞ?」
「そこは大丈夫だ。遠隔召喚魔法であっという間に遠くまで運んでくれる少女がいるのでね」
「ふーん、少女ね・・・・・」
セインたちではなさそうだ。だとすれば・・・・・あの紫の髪の少女のことかな?
「んじゃ、人に被害が遭わない場所の情報を教えてくれ。
そこなら管理局の奴らだって思う存分に戦えるだろうからな」
「分かった。ある程度試運転をしてもらえば独自に動いていいよ」
「了解。その間、ヴィヴィオには手を出すなよ?」
「おやおや、釘を刺されてしまったね」
するつもりだったのかこの科学者め。
「トーレたちは引き続き、データを蓄積のために彼の友達と模擬戦をしてもらうよ。
中々興味深いからね」
「うぇー・・・・・まじっスか」
と、長い赤髪を纏めた少女、ウェンディが渋々と発する。
「んじゃ、俺が帰ってきたらウェンディの好きな料理を昼食にしてやろう。それまで頑張れ」
「俄然にやる気がでたっスよぉっ!」
現金だな!
「はい」
「どうぞ、ディエチ」
ナンバーズ10、茶色の長髪を黄色いリボンで
「私も、付いて行っていい?」
その言葉に、一瞬だけ静寂が包んだ。
「なんでだ?試験運転が目的だから俺が出張るようなことはしないぞ?」
「ん、そうだろうね。でも、ここで見るよりは間近で見たいから」
「ふぅん?まあ、断わる理由もないし、別にいいぞ」
「感謝」
コクリと首を縦に振るディエチだった。
「あっ、そういうことなら私も行こうかな」
「私も暇だから行くわぁ」
「セイン?それにクワットロもか?」
「もしものために私がクア姉とディエチごと無機物に潜行して逃走する。
イッセーも無機物の中か空に飛んで逃走できるしさ」
うーん、敵に見つかるようなことはないと思うけど・・・・・。
父さんと母さんがいるからな・・・・・。
念には念を、絶対逃げれるようにしないとすぐ捕まってしまう可能性は大きい。
「分かった。一緒に行こうか」
「おう!」
『・・・・・』
と、なんか見る視線が変わったような・・・・・?
「セイン、なんだか嬉しそうっスね?」
「そうねー、何と言うか・・・・・」
「欲しい物が手に入った時の?」
「セインは物欲ではないだろう」
「んじゃ、なに?」
「さあ・・・・・」
なんだか、俺とセインのことで会話の花が咲いたぞ・・・・・?
別に深い関係でもないんだがな。
「まさか、ね?」
「いや、イッセーの魅力は凄まじいからな。敵であった私を魅了させたのだぞ?」
「ヴァーリは元々イッセーくんのことが好きだったじゃないの」
「そう言うイリナもだろう?」
「も、勿論よ!」
「お二人とも、同じ頃に一誠さまに恋をしたのですね」
「我も、イッセーが好き」
「ん~?」
こっちもこっちで、会話の花が咲いているぞ。
まあ、そんなこんなで俺たちは、バラバラでミットチルダの廃墟と化となっている市街地の
とあるビルの屋上でセインとディエチ、クアットロと待機。
後は俺が作ったガジェットドローンⅥ型の生物シリーズが遠隔召喚魔法で現れるのを待つだけだ。
そんで俺は正体を明かさないために全身黒づくめで髪を隠すマスクも被っている。
『ところで、どんなガジェットドローンを作ったの?』
顔の横に浮かぶ立体のモニターの映像にディエチが訊ねてきたので答える。
他にもセインやナンバーズ4のクアットロを映すモニターがある。
「攻撃、機動、防御、それぞれ特徴のあるガジェットドローンさ。
今までのガジェットドローンとは違うガジェットドローン。ま、見ていれば分かるさ。
その弱点も把握するのも勉強だしな」
『管理局に分析されるだろうけどねぇー』
『まあ、所詮は足止めしか役に立たないガラクタ。
分析されたところで痛くも痒くもないわぁー』
「そん時は別のガジェットドローンを作り直せばいい。形は無限に存在するんだからな」
『おー、何だか恰好良いね』
実際、事実だし。
『そろそろ時間だ』
「だな。さーて、楽しみだな。三位一体のガジェットドローンの性能を」
『イッセーは一機だけ、また大きなガジェットドローンを作ったからねぇ』
ボスがいないと面白味がないじゃないか。しかも今回は前回よりパワーアップしております。
カッ!
廃都市の高速道路に幾重の三角型の見たことがない魔方陣が出現し、
そこから次々とガジェットドローンⅥ型の生物シリーズが続々と出始めた。
中には巨人型のガジェットドローンⅥ型もいる。
『おお・・・・・・』
ディエチが感嘆の声を漏らす。俺が腕をバッと前に突き出せば、
全てのガジェットドローンが動き始める。
「さて、エースオブエースはどうでるかな?」
―――なのはside―――
『市街地に多数のガジェットドローンが出現!しかもどれもこれも新型です!
中には巨大ガジェットドローンが一機!』
『近隣の地上部隊と連絡をしていますが、全てが整い出動するまで時間が掛かるそうなので、
機動六課の皆さんで迎撃をお願いします!』
昼食間際に通信での凶報。あーもう、なんでここ最近は襲撃が多いのかな!?
絶対あの時の全身黒ずくめの謎の人物の仕業だよね!これ絶対に!
「あんにゃろう、また懲りずに襲撃しやがって・・・・・!今度こそ捕まえてやる!」
ほら、ヴィータちゃんが燃えあがっちゃっている。何度も屈辱を味わわされているせいか、
ヴィータちゃんはここのところ物凄く不機嫌なんだよね。
「誠さん、一香さん。一緒に迎撃しましょう」
「勿論だ。ははっ、不謹慎だがワクワクしてきたぞ」
「懐かしいわね。なのはちゃんと一緒に事件を解決するなんて実に十年振りだわ」
そうですね。でも、喜んでいられる時間はない。
新型のガジェットドローンはどうやら三機一チームで動いているそうで、
手当たりしだい市街地を破壊しているそうだ。
でも、どうしてわざわざ破壊してるのかは不明。何かを探している?でも、それは一体何なの?
―――○●○―――
「お・・・・・来たな」
『え?どこにも見当たらないけど』
「俺は相手の気、生命エネルギーと言った方が分かりやすいか?
それを半径十キロまで探知できるんだ」
『うわ・・・・・それは凄いね。でもどうやってしているの?そんな素振りはしていないけど』
そう言われ、どう説明しようか悩んだ瞬間。遠くから爆発音が聞こえてきた。
爆発音がした方へ振り向くと―――極太の桃色の魔力が柱みたいに眼下で伸びて高速道路にいる
ガジェットドローンを一掃した。
『『『「・・・・・」』』』
これ、試運転すらならないだろう・・・・・ちったぁ空気か状況を読め!このKY!
『ねえ、今ので殆ど消滅したんだけど、どうするのぉ?』
「え?マジで?」
『うん、マジで』
ディエチの言葉に俺は信じられなかった。高速道路だけじゃなく、
バラバラに配置させていたはずだ。なのにこの短時間で全て破壊されたなんて・・・・・。
「(いや、あの二人も前線に出てくればそれを可能にするか・・・・・!)」
『イッセー、戻った方が良いかも』
「だな、これじゃ意味がない」
『じゃあ、決めた合流地点で会おう』
ディエチの言葉にそうしようと、動いた瞬間。上空から金色の魔力弾が複数飛来してくる。
屋上から飛び降りて別の屋上へと移り回避する。
「見つけた」
「速い・・・・・」
金髪のツインテールに軍服みたいな服を白いマントで身に包んだ女性が現れた。
「っ!あなたは・・・・・」
「おや、数日ぶりだな」
異世界に来てその日の海上で出くわした女性に手を振る。
確か、名前はフェイト・T・ハラオウンだったな。
「市街地での騒乱、破壊の現行犯で逮捕―――」
「逃げるが勝ち!」
彼女が言い切る前にまた屋上から飛んで空を蹴る。
「待ちなさい!」
「ストーカがまた現れたぞ!」
「誰がストーカだっ!」
あっ、怒った。まあ、捕まらないけどな。ステルスの能力を発動。―――透明。
俺と接触した物を含め透明化になる能力(そのままだけどな)。すると―――相手が離れた。
「離れたなんで?」
道路に降り立って姿を現した直後。道路からセインが出てきた。
「イッセー!」
「あっ、セイン・・・・・じゃなくてどうしてここに来た!?いま、狙われていたんだけど!」
「えっ?あ・・・・・」
セインも今の状況に気が付いたのか、冷や汗を流し始めた。
すると、今度は別の方からディエチとクアットロまでもが現れた。
「おいおい・・・・・合流地点で会おうと言ったんじゃなかったっけ?」
「そこへ行こうとした途中でイッセーたちがいたんだ」
「ああ・・・・・そういうこと。で、あれはなんだ?」
そう言いながら空を見上げた。
そこには―――バチバチと黒い雷が迸っている黒い塊が浮かんでいた。気になって三人に問うた。
「広域・・・・・空間攻撃の類の魔法!」
「うそぉー!?」
ディエチとクアットロが驚愕の声を漏らすだとすると・・・・・。
もう一度空を見上げた途端に、黒い塊が消失したと思えば、一気に膨張して俺たちに迫った。
「ちょっ!どっちが市街地を破壊しているんだよぉっ!?」
「あれ、食らったら絶対にヤバいからね!?」
空を飛べないセインを抱き抱えて空を飛んだ。ディエチはクアットロに抱きかかえられている。
が、迫る魔法攻撃のほうが早く、俺たちは攻撃を食らいながらも空を飛んだ。
「っ・・・・・」
クアットロの肩にダメージが食らった。
「大丈夫か!」
「ええ、なんとかだけど・・・・・!」
「―――おおおおおおらあああああああああああああっ!」
「っ!?」
怒号と共に巨大なハンマーが真上から迫って来た。そのハンマーに対して鋭く蹴り返した。
「「はぁあああああああああああっ!」」
今度はなんだよ!と辺りを見渡すと魔力で構築しただろう水色と青の道に分厚い装甲と
蒸気を吐き出すマフラーを備えたインラインスケートで駆けてくる二人の少女と女性。
「タイプ・ゼロとタイプ・ファースト!」
「なんだと?」
迫ってくる二人から重厚な籠手を突きだしてくる。
「セイン、俺の背中にしがみ付いてくれ」
そう促し、背中にしがみ付かせると、両腕を横に突き出して少女と女性の拳を受け止めた。
「良い突きだ。ただそれだけだがな」
逆に掴んで二人の腕を凍らせていく。
「「なっ・・・・・!?」」
「そのまま、凍れ―――っ!?」
不意に、殺気を感じて二人から離れた瞬間に斬撃が放たれていた。
「ほう、避けたか」
「そりゃあ、殺気を感じたらな」
桃色のツインテールの女性。手に機械の剣を持っている。
「イッセー!」
セインが声を掛けてくる。言いたいことは分かる。囲まれているんだろう?
複数の男女、そんでドラゴンみたいな生物。その中に父さんと母さんの姿が見えない。
どうしてだ?だが、そんな事を考えている暇はないようだ。急激に膨れ上がる魔力を感知した。
同時に俺の体が白い帯状の魔力に拘束された。セインやディエチ、クアットロもそうだった。
その刹那―――。
「トライデント・スマッシャー!」
「エクセリオン・バスター!」
俺の視界に金色と桜色の光が迫って来た。
―――なのはside―――
私とフェイトちゃんの砲撃魔法は間違いなく直撃した。
眼前に二つの巨大な魔力同士の直撃で轟音と共に生じた煙を睨むように見据える。
他のメンバーも警戒して陣形を崩さない。なのに、この嫌な感じはなんなのかな。
『なのは、犯人は逃げたと思う?』
「ううん、逃げていないと思う。そんな感じはしなかった」
『じゃあ・・・・・直撃してダメージが負った?』
うーん、その線だと思うんだけど・・・・・。しばらく様子を見ると煙が晴れた時、
私は信じられないものを見る目で視界に入った金色の球体を見つめた。
「なに、あれ・・・・・」
―――バサッ!
金色の球体と思えば、十二枚の翼だった!つ、翼・・・・・!?
「ふー、驚いた」
機動六課に襲撃した黒尽くめの人がそう言った。翼が完全に広がると、
仲間と思しき少女たちが無傷で浮いていた。何時の間にかバインドが解除されているしね。
「中々の威力だったな。が、この翼を貫くほどまでもなかったようだ」
「っ・・・・・!」
フルパワーではなかったけど、あの翼は頑丈だってことが直ぐに理解した。
あの翼は魔法によるものか、それともレアスキルによるものか・・・・・理解しがたいよ。
「退く気はないか?」
「あなたたちを捕まえるまではないよ!」
私たちの任務は目の前の主犯を捕まえること!
もう一度、レイジングハートの砲撃の構えをして―――!
「じゃあ、いっぺん死んでみる?」
ゾッッッッ!!!!!
背筋が凍り、今まで感じたことがない悪寒を肌に突き刺さるほど感じた。
その上、脳裏で警報が急に高鳴る。―――逃げろと。
「(なに・・・・・この感じは・・・・・!?)」
恐怖、その一言に尽きるだろう。他の皆も見渡せば、顔に緊張の色や絶句、
恐怖の色を浮かべていた。
「出血大サービス。お前らが退避するしか方法がない理由を作らせてやろう」
そう言った黒尽くめの身体に異変が起きた。全身が漆黒の光を放ち始めた。
光は見る見るうちに大きくなり、やがて私たちが見上げる形で顔を上に、
視線を上にする頃には光が消失して―――影ができた。
それもただの影じゃない六つの赤い双眸が妖しく煌めかせている。
「・・・・・え?」
次の瞬間だった。
『ギェエエエエエエエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!』
思わず耳をかたく抑えてしまうほど、物凄い叫び―――獣の咆哮!
しばらくして声が収まった。恐る恐ると再び顔を上げて六つの赤い双眸を見ると、
キャロのフリードみたいなドラゴンの顔をした生物が私たちを見下ろしている。
しかも三つも顔があった。こんな生き物・・・・・今まで見たことも聞いたこともない!
そう思っていると、三つの口が徐に開いた。一体、なにを―――?
―――次の瞬間。三つの口から極太の魔力の砲撃が放たれ、
横薙ぎで私たちの背後の市街地に直撃した。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
『―――――っ!?』
市街地の景色は一瞬で生じた大爆発で塗り替えられた。大爆発が生じている場所は街の人たちが
いないところだったのが幸いだった。いや、あの怪物が敢えてそうしなかったんだろう。
『次は、人間がいる場所に放つ。脅しではないぞ?』
「なっ・・・・・!?」
『お前たちが取るべき行動はたった一つ。―――分かっているな?』
怪物が喋ったことよりも、街の人たちを人質にしたことの方が驚いた。
その見せしめのように三つの口内からまた膨大な魔力が集束し始める。
「させるか!」
「その口、閉じてもらう!」
「フリード!」
皆が果敢に怪物に襲いかかった。怪物の身体に次々と魔法を、斬撃を、打撃を与えていく。
ギャシャアアアアアアッ!
ガアアアアアアアアアアアアアアッ!
ギャッ!ギャッ!ギャッ!
だけど、ダメージを与えていく度に怪物の身体から
また小さな怪物が出て来てフェイトちゃんたちに襲いかかって来た!
「な、なんだこの化け物は!?」
「鬱陶しい!」
皆が出てきた小さい怪物を倒していく。すると、怪物が声を掛けてきた。
『お前らの言動で答えは理解した』
三つの口の中で集束していた魔力が一気に凝縮した。―――アレは不味い!
もう、魔力のランクなんて計る以前の威力を誇っていることは間違いないよ!
『恨みはないが、お前たちのせいで何千、何万の命は一瞬で消えるな』
「ま、待って―――!」
『遅い』
私の制止を余所に、凝縮した魔力は―――一気に膨張して地上本部の方へと伸びて行った!
誰もが怪物の攻撃に絶望を胸に抱いた。
あの三つの砲撃は瞬く間に地上本部を消滅させるだろう。
その光景が直ぐに目の当たりにする。―――私は思わず目を瞑って顔を逸らした。
・・・・・でも、なにも起こらない。何も聞こえなかった。
不思議に思い、目を開けると・・・・・爆発が生じていなかった。
「まったく、こんな危ない物を街に向けて放つなんて、ダメじゃない」
「ねえ?そこのドラゴンくん」
「い、一香さん・・・・・!?それに誠さん・・・・・」
怪物が放ったと思う魔力が、上空から現れた誠さん、一香さんの手に大きく蠢いていた。
「ほら、返すわよ」
そう言ってその魔力を怪物に突き出した瞬間。魔力が解放して怪物に襲いかかった!
だけど、その魔力に対して怪物は手で上に弾いて―――一拍したら上空から轟音が鳴り響いた。
『・・・・・分が悪いな』
怪物の背後に大きく空間が裂けた。
『今回はこれで退こう』
それだけ言い残して、怪物は完全に避け目の中に入って姿を暗ました。
裂け目も閉じて追いかけることもできない。
「皆、大丈夫?」
「は、はい・・・・・」
「そう、なら良かったわ。でも・・・・・報告書がいっぱい書かないといけないかもね」
あはは・・・・・・そうでうしょね。それに、あんなに破壊された市街地、
地上本部のお偉いさんたちが絶対に驚くに決まっているかな。
だけど、あんな危険な生物がジェイル・スカリエッティのところにいるとなると、
ますます彼は危険人物だ。早くどうにかしないとミッドチルダの存亡が・・・・・!
「どうやら、どこかの家の人といるそうだね」
「ええ、そうみたい。ねえ、誠」
「うん?」
「そろそろ、あの子に施した封印・・・・・解いてもいいんじゃない?」
「あの封印をか・・・・・?だが・・・・・」
「昔はともかく、今は違うわ。あの子ならきっと・・・・・」
「・・・・・分かった。今度会う時はそうしよう」
―――○●○―――
『・・・・・』
秘密基地に戻るや否や、物凄い視線を一身に浴びる。
「なんだよ」
「お前・・・・・あんなことできたのかよ?」
「自己紹介の時、曖昧だけど教えたよな。俺、ドラゴンだからって」
「いや、言ったっスけど、まさかドラゴンになるなんて思いもしなかったっス」
ウェンディの発言にナンバーズの殆どが首を縦に振った。
「協力者としてここにいるが、なにも全部伝えると思うか?」
「それは・・・・・そうだけど」
「別に隠していたわけじゃない。する機会がないからしなかっただけだ」
「でも、翼を生やしたりドラゴンになったり・・・・・イッセーは色んな意味で凄いね」
セインが俺の背中を叩きながらそう言う。
「そうだね、実に興味深い。―――一度解剖してみたい。いいかね?」
「おい、ジィエル・スカリエッティ。そんな事をする気ならこっちも抵抗せざるを得ないぞ」
足元の影から巨大な蛇が這い出て来くる。
「・・・・・冗談だよ」
「冗談でも言うなって」
言いながら大蛇を影の中へ入れると、ウェンディが口を開いた。
「なんだか、逆らっちゃいけない協力者を招いちゃった感じっス」
「別に逆らってもいいぞ?お前らの飯が一品だけ減るか弁当に戻るだけだけどな」
「ちょっ、あんな美味しい物を食べた後にそれは勘弁してほしいっス!」
あはは、面白い反応をするな。と、そう言えば・・・・・。
「ウェンディ。お前の好きな料理は何?」
「えっ?うーんと、ナポリタンっスけど」
「了解。今日の昼飯はナポリタンにしよう」
「おおっ!嬉しいっス!ありがとうイッセー!」
満面の笑みを浮かべる彼女の期待に応えようと踵を返して厨房へ赴く。
「イッセー・D・スカーレット」
「なんだ、チンク」
複数の鍋の中で沸騰する湯に大量のパスタを入れている最中にナンバーズ5のチンク、
腰まで伸びた銀髪に右目に黒い眼帯を装着している小さい少女が俺に話しかけてきた。
「お前は協力者なのだな?」
「そうだけど?」
「では―――お前は私の弟だ」
「・・・・・はっ?」
なにを言っているんだ?と俺を弟宣言をしてきたチンクを見下ろした。
「よろしくな、私の弟イッセーよ」
「ちょいまち、なんで俺が弟なんだ?体格差的に俺が兄ではないか?」
「私は五番目に作られた戦闘機人な故に活動時間も長い。十年以上前から活動してきたからな」
・・・・・それを言われると、俺を弟と言う理由が納得してしまうんだけど。
「ふふっ、姉や妹たちばかりの環境の中で男の弟ができたと思えば、
何とも言えない心地好さが生まれてくるな」
「体がちっちゃい姉だがな」
「うっ、うるさい!私が気にしていることを口にするな!」
おや、そうだったのか?
「まあ、体が小さくてもチンクはチンクだ。気にする必要ないんじゃないか?」
「だが・・・・・ナンバーズ十二人の中で私が一番背が低い。
だから姉としての威厳がないように思うのぞ」
「普通に家族として接していればそれでいいんじゃないのか?」
「なに・・・・・?」
沸騰する鍋を見据えながら、横目でチンクを見つめる。
「確かに姉としての威厳は必要な時もあるが、
それ以上に家族を想いやる気持ちが大事だと思うぞ?」
「・・・・・」
「それを証明するためにチンクは今どうしたらいいと思う?」
「むっ・・・・・?」
小首を傾げだすチンク。その仕草はまるで子供のようで微笑みながら鍋に指した。
「姉として妹たちに手料理を食べさせてやることだ」
その後、チンクと昼飯を作ってジェイル・スカリエッティたちに食べさせた。
俺が作ったと思っている皆が「美味しい!」と言う度にチンクは嬉しそうに顔が綻ぶ。
―――○●○―――
「やっほーイッセー」
「って、なんで俺が入っている時にお前も入って来るんだ・・・・・」
「弟の背中を流しに来てやったぞ」
「チンクまで・・・・・」
のんびりと湯に浸かっている俺に歩み寄るセインとチンク。って、また全裸で・・・・・。
「うーん、のんびりと入るのって悪くないかも」
「そうか?入るだけで一緒ではないか」
「チンク姉、それだけじゃないって。イッセーと入るとなんだか楽しい気分になるんだよ?」
「むっ、それは知らなかった。なら、明日も弟と入るとしよう」
おい、本気かよ。というか・・・・・井上準がこの場にいたら、血の涙を流しかねなさそうだ。
心中で溜息を吐いていると、セインが近づいてきて俺の胸や腹、肩など触りだしてきた。
「どうした?」
「いやー、ドラゴンになれるのに体は普通なんだね。
それと、これが男の身体・・・・・私たちのように胸が膨らんでいないんだね」
「知識はあるが、実際に見るのは初めてだな。ふむ・・・・・これが男の身体か、不思議だな」
チンクまでも俺の身体に興味を抱き初めて触ってくる。
「結構、筋肉質だね」
「まあ、鍛えているからな」
「さて、そろそろ姉が背を流してやる。湯から上がってくれ」
俺に促すチンクの言葉に首を横に振った。既に洗い終わった後だからだ。
「や、遠慮する。背中は自分で洗い終わったし」
「なに、そうなのか・・・・・」
残念そうに目を落とす。ああ、そんな仕草されたら罪悪感が・・・・・。
「・・・・・代わりにこっちを洗ってくれるか?」
背中に六対十二枚の金色の翼を展開した。この翼を見たチンクは目を見張るが、
嬉しそうに頷いた。
「任せろ。綺麗に洗ってやるからな」
「私もしよっと」
セインもタオルを片手に参加してくる。俺が縁に移動して腰を下ろせば、
「でも、頭と体を洗う洗剤・・・・・どっちを使えば良いんだ?」
「体の方を頼む」
「了解した。ちょっと待っていろ」
ボディーソープを取りに行ったのだろう、チンクが離れて行った。
「ところでイッセー」
「ん?」
「腰にタオルを巻いているけど、どうして?」
視線が俺の腰に巻いているタオルに注がれる。俺は無難な返答を述べる。
下手に言ったら変な知識を植えつけてしまうからだ。
「男と女が風呂に入る時では、これが常識なんだ」
「へぇ、そうなんだ?」
まあ、それは混浴のことだけどな。ガイアたちとだったら・・・・・強制的に剥がれてしまう。
「もしかして、私にタオルを巻けって言ったのもその風呂の常識だから?」
「そうだ」
「なるほどねぇー。ドクター以外、女しかいないから気にしていなかったよ」
でも、直す気はなさそうだ。風呂の湯は透明でセインの体がハッキリと覗ける。
白く綺麗なボディライン。ほっそりとした腕や足。
そして年齢相応に育っているセインの豊かな胸。
「綺麗だな」
「え・・・・・?」
と、思わず口に出てしまった。キョトンとするセインの顔が視界に入るが、
「はは、ありがとう」
褒め言葉として受け取ったようで笑って感謝された。
「ボディーソープを持って来た。さあ、弟の翼を洗おうじゃないか」
嬉々としてチンクが持って来たボディーソープを突き付けた。