ドラゴンの身体で二人と戦うのは初めてだ。今回は毒を盛られていなく、
万全な状態で戦うことができる。
二人との経験の差は埋まることはない。それが証拠とばかり、
一方的に攻撃され防戦一方だった。
十二枚の翼と九本の尾を生やして応戦しても、容易くかわされ攻撃される。
拳を突き出せば、父さんも嬉々として拳を放って俺の拳をぶつけてくる。
母さんが背後に現れて魔力弾を放ってくる。翼で母さんに向けて放って応戦し、
息を吐く間もないほど激しい戦闘が繰り広げる。
体勢を低くして刃状にした翼を振るっても防がれたりかわされたり。
「っ・・・・・」
新しい体、新しい力を得てもこの二人に届く気がしない。
どこまで、どこまで二人との距離は遠いんだ。
リゼヴィムおじさんよりこの二人の方がラスボスって感じがするって。
「ほらほら、もっと速くするぞ」
父さんはそう言って攻撃の速度、移動速度を上げた。俺も負けずに速くするも二対一だ。
母さんが数多の魔方陣を展開して全ての属性魔法を放って、俺の動きを一瞬でも動きを
止めたらその隙に父さんの拳。遠距離と近距離の攻撃が絶妙すぎるって・・・・・!
『あの二人と戦った時?・・・・・そうだな。二人はコンビで戦っていたな。
片時から離れようとはしなかった。まるで強い鎖にでも結ばれているかのようだった。
二人相手に戦う時は別れさせて戦うべきかもな』
アザゼルから聞いた父さんと母さんと戦った心境。その時のことが脳裏に浮かんだ。
・・・・・その手を使ってみるか。金色の軍杖を亜空間から取り出して呪文を呟き、
俺を含めて十一人の分身を作った。
「お?」
父さんが不思議そうに漏らした。―――五人五人で父さんと母さんに飛び掛かり、
ちょっとずつ二人を別れさせる。
すると、さっきまで苦戦していた戦いが嘘のようにやりやすくなった。―――これなら!
「なるほど、一香と別れさせて潰す気だな?」
ニヤリと父さんが口の端を吊り上げた。
「その程度の考えで、俺と一香が離れさせられると思ったか?」
思っていない。当思った瞬間だった。
父さんが横に腕を突き出して極太の気のエネルギー砲を放った。
逆に向こうからレーザー状の魔力が現れて二つの相反する力がぶつかり爆発する。
「くっ・・・・・!?」
衝撃に備えて構えていると、次々に分身が消されていく感じが伝わった。
この二人・・・・・マジで強い・・・・・!
「俺と一香は離れていても意志の疎通ができる。だから一香の考えが手の取るように分かれば、
俺の考えも一香に分かり、これから成すことを伝え合い実行できるんだ」
「どれだけ話されていても、私と誠は心から通じ合っているの。
一誠、あなたは誰と通じ合えているのかしら?」
・・・・・そこまできているのか。この二人は・・・・・。
「それって、何時できたんだ?」
「割と早かったよな?」
「そうね。別に修行してできるようになった訳でもなく、
互いが求め合っていると自然とできちゃったのよね。だから、誠が他の女と楽しく喋っている
余所に脳裏で考えていることが筒抜けで・・・・・いやん♪」
おい、そこで何恥ずかしがっているんだよ・・・・・。
父さんも照れくさそうにしないでくれよ。
「・・・・・俺の場合、一方的に心を読まれる」
「「一誠が尻に敷かれている・・・・・」」
うっさい!というか敷かれてなんかない!二人に飛びかかって気と魔力の砲撃をした。
二人も気と魔力を放って俺の攻撃と鍔迫り合いする。
「ははは!楽しいな、一誠との戦いは!」
「式森の魔法が解放されて強くなっているからかしらね」
「「でも、まだまだ」」
―――っ、徐々に押され始める。あの二人、まさか本気も出していないのか・・・・・!?
「全力だ・・・・・!」
気と魔力を放っている手に炎と雷を纏う。
「滅龍奥義!九焔爆炎雷刃っっっ!」
両腕とを螺旋状に振るった!最初は一つの螺旋状だったけど、
途中で分身したかのように九つに増えて、爆炎の螺旋状は真っ直ぐ二人に向う。
「「っ!?」」
父さんと母さんの攻撃を呑みこみながら俺の一撃は襲いかかった!
その上、気と魔力も付加されているから―――。
「一香!」
「ええ!」
二人が互いの手を握り締め合い、
「「はぁっ!」」
魔力と気が融合している砲撃を放って・・・・・俺の一撃を呆気なく弾き返して俺に迫った。
防御魔方陣を展開して、防いでいたら真横から音もなく
父さんと母さんが現れて―――気と魔力の攻撃を食らった。
「―――瞬間、回復!」
百代の流派の一つを使い、ダメージを回復させた。
「ダメージが回復した・・・・・?」
「気が減ったな。なるほど、気でダメージを回復したのか」
百代、お前の技をここで使わせてもらう。
「無双正拳突き!」
「むっ!?」
必殺技に昇華した正拳突きが父さんの手の平に炸裂した。そのまま―――!
「五十連無双正拳突き!」
宙に穴を広げて突っ込めば、父さんの腹部に別の穴が開いて、
その穴から俺の拳が父さんの腹部に直撃した直後、連続の衝撃を受けながら吹っ飛んでいった。
「誠!?」
ガシッ!
母さんを抱き締め、
「大爆発」
ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
体を爆発させ、母さんに大ダメージを与えた。自身のダメージは瞬間回復で回復。
それから後ろへ跳躍、離れて警戒して様子を窺う。
「・・・・・」
しばらくして―――。
「久し振りだよ。こんなに痛みを感じたのは」
俺が人間爆弾をして発生した煙から父さんが姿を現す。口の端から血を流していた。
「一香、大丈夫か?」
「ええ・・・・・至近距離からの大爆発なんて、初めて経験したわ」
服がボロボロだが、それでも健在とか・・・・・この親はありえねぇ・・・・・。
「誠、そろそろ全力で戦わない?」
「そうだな。俺たちに一撃を与えた一誠に教えよう。
アザゼルたちでさえさせることはなかった俺たちの全力を」
・・・・・マジで?そう思っていたら、父さんと母さんが纏う闘気と魔力が段違いにも
跳ね上がったと思うと手を握り締め合った。気と魔力がうねり合い、次第に二人の姿を隠した。
カッ!
一瞬の閃光が発した。腕で目を覆い、眩い光を遮っていれば、気と魔力が消失した。
「・・・・・は?」
そこに誰かがいた。というか、見覚えのないヒトだった。
男か女か、性別でさえ判断できないヒトが。
「・・・・・父さんと、母さん?」
「「この姿は兵藤家の気と式森家の魔力が一時的に融合した姿。
だが、飛躍的に力は増大、高まっている」」
「―――っ!?」
俺は目を見張った。父さんと母さんが融合した姿を見たからじゃない。
唐突で俺の腹部に拳が突き刺さっているからだ。ま、まったく反応できなかった・・・・・。
「「一誠、この姿を見せたのは様々な神話体系の神と戦って以来だ。
あの三大勢力戦争では見せたことがない」」
「ぐはっ・・・・・!」
それだけの挙動で俺は呆気なく壁まで吹っ飛んだ。
ほ、本当、こんな呆気なく・・・・・!?
「「この姿を保てる時間は限られている。一誠、その時間まで、持ち堪えてみなさい。
―――全力で」」
それから、俺は歯牙も掛けず、融合した父さんと母さんの攻撃を食らい続けた。
攻撃、速度が遥かに俺を上回っている・・・・・!
―――セインside―――
イッセーが手も足も出なくなっている。
イッセーの家族が一つと成った結果、飛躍的に力が上昇したのが誰から見ても明らかだった。
ドッガアァアアアアアアアアアアアアアアンッ!
「イッセー・・・・・ッ!」
壁にまで吹き飛んで壁に激突したイッセー。
その直後、イッセーが戦意を失わず自分の両親へ飛びかかった。
それでも、イッセーの両親の方が圧倒的に強く、何度も倒されては立ち上がって
戦い続けるの繰り返し。
「「どうした、もうお終いか?」」
「っ・・・・・」
ダメージは自己再生して怪我は見当たらないけれど、焦っているのがなんとなく分かった。
イッセーは苦虫を噛み潰したかのような表情と成っている。
「「一誠、気付いているか?」」
何にだろう?そう思うとイッセーに指した。
「「戦意は感じる。でも、両親に対する殺意が感じられない。
それでは守りたいものを守れない」」
「っ!」
それは無理があるよ・・・・・。大好きだった両親を殺すなんて、
誰が簡単にできるんだよ。イッセーだってそうなんだ。
「「もうお互い親子ではないんだ。全力で殺しに来い」」
イッセーの足元に魔方陣が出現した。
魔方陣から幾重の鎖が飛び出してきてイッセーの全身を絡め、拘束した。
「「それができないんなら、もう一度―――死なそう」」
手元を光らせ、イッセーに跳びかかった。あのままじゃ、イッセーが死んじゃう。
そんなのダメ、ダメだ。両手を拘束された状態でも私のISは発動できる。
―――ディープダイバー!無機物の中へ潜行してイッセーのところへ移動し、
「イッセー!」
「セイン・・・・・!?」
刹那、私の身体に衝撃が伝わった。同時に激痛が体全体から感じて
思わずイッセーの身体にしな垂れる。
ああ・・・・・ちょっと、痛いかな・・・・・。
「お前・・・・・どうして・・・・・!」
「はは・・・・・イッセーを死なせたくなかったから、
そう思ったら体が動いてイッセーを守りに来ちゃった」
「―――バカ・・・・・っ!」
バカなんてひどいな・・・・・イッセーを守りたかったのに・・・・・。
体から何かが抜かれて段々と眠たくなってきた。
「ねえ、イッセー・・・・・」
「なん、だよ・・・・・」
「私、イッセーと過ごした時間・・・・・とても楽しかったよ」
不意に体中が温かくて柔らかい何かに包まれた。
これは、イッセーの翼で寝た時と同じだ・・・・・。
「でも、今日でお終いなんだね・・・・・」
「違う・・・・・これからも続くんだよ・・・・・」
「はは、じゃあ、たまに私と二人きりでどっかに出かけよう?」
「ああ・・・・・約束だ」
うん、約束だよ・・・・・。最後にアレ、しようかな。
イッセーの首に腕を回して引き寄せると、
チュッ・・・・・。
私はイッセーの唇を自分の唇で重ねた。それを最後に私は意識を失った。
―――一誠side―――
腹部に空いた穴を治癒して塞いだら、セインがキスしてきた。
静かに寝息を立てているセインはまだ生きている。
バキンッ!
強引に鎖を引き千切り、セインを抱き抱えてトーレたちのところへと移動する。
「セインを頼む」
「あ、ああ・・・・・」
トーレにセインを任せて父さんたちの前に対峙した。
「・・・・・」
許さない・・・・・。それが心の中で一杯になった。俺の大切なヒトを父さんたちは二度も・・・・・。
だから―――もう、この人たちは俺の親じゃない。俺の敵だ。
「殺す・・・・・殺してやる・・・・・!」
だから、だから―――!
「この場で、この世界で死ぬ覚悟はあるんだろうなぁあああああああああああああああっ!?」
体から膨大な魔力と闘気が噴き上がる!腕が魔力と気に覆われて黒い装甲と成っていく。
「「なに・・・・・それは・・・・・」」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
―――源氏side―――
「一誠の魂が・・・・・どうなっている・・・・・!?」
一つの蝋燭だけ激しく燃え上がり、火が黒く染まっている。
兵藤家の魂の火は全て赤なのに、一誠の魂の火は黒く染まりつつある。
「こんなことは、今までになかった・・・・・一誠、
お前自身に何が起きていると言うのだ・・・・・!」
―――和樹side―――
「っ!?」
突然感じたこの魔力。今は授業中で僕は反射的に窓の外へと視線を向けた。
「和樹さん、どうしたんですか?」
龍牙が声を殺して声を掛けてきた。どうやら、この魔力を感じているのは僕だけのようだ。
この今まで感じたことがない魔力の質・・・・・気になる。
「先生、僕トイレに行ってきます」
それだけ言い残して、先生の声を無視して教室から出た。
―――アザゼルside―――
「なんだ、この魔力は・・・・・?」
異世界を繋げる穴から感じるこのプレッシャーもだ。辺りを見渡しても変化はない。
こっちの世界は無害ということか。だが、あっちの世界では一体なにが起きている・・・・・。
「アザゼル先生!」
俺を呼ぶ声だ。声がした方へ振り向けば、式森和樹が浮遊魔法で俺に近づいてきた。
「和樹、なんでここに?」
学校にいたはずだ、と暗に訊ねると。
「この魔力を感じていてもたってもいられないですよ」
ああ、そういうことか。この魔力を感じてきたんだな。リアスたちは・・・・・来ないか。
「和樹、異世界に行ってくれるか?」
「分かりました。一誠のことも気になりますし、様子を見に行ってきます」
頼んだぞ。
―――○●○―――
―――イリナside―――
量産型邪龍を後もう一息ってところで感じたこの魔力。
敵も味方も関係なく動きを止めて―――ゆりかごの方へと視線を向けた。
「ぐ・・・・・!?」
すると、イッセーくんの分身たちが次々と消えて行っちゃった!
中にはイッセーくんの武器、大剣を持っていたイッセーくんが消えちゃったから、
大剣は海へと落ちていく。そんな落ちていく大剣はリーラさんが受け止めた。ナイスキャッチ!
「一体なにが・・・・・」
そう思っていると、ゆりかごから巨大な黒い腕が突き出てきた・・・・・ってええええええ!?
「な、なに!?どうなっているのぉっ!?」
「さあ、分からないが・・・・・どうなっているんだろうな」
幼馴染のヴァーリが寄ってきながら言うと、ゆりかごに開いた穴から誰かが出てきた。
「うひゃー!なんなんだよ、あの坊ちゃんは!何だか危なそうだから逃げちゃおうぜ!」
「急展開なオンパレードが豊富な奴だな」
―――ヴァーリのお祖父さん!それとリリス!
「リゼヴィム!」
「およ、ヴァーリちゃん」
逃走をしようとしていた敵が私たちの前で立ち止まった。
「貴様、あの中で何が起きている」
「んー?俺もよく分からないんだよねー。坊ちゃんがキレたと思うと、
魔力の塊になっちゃったんだよ」
魔力の塊・・・・・?どういうことなんだかさっぱり分からないでいる
私にゆりかごがさらに壊れて行った。それからまた誰かが逃げるように出てきた。
―――おじさまとおばさまだ!一拍して、二人に迫る黒い塊が見えた。
おじさまとおばさまは気と魔力で迎撃しながら高速で動いているけど、
黒い塊の方が素早く動き、おじさまとおばさまにそれぞれ攻撃をしている。
「あれが正体か・・・・・」
「そうみたいだね。でも・・・・・誰なんだろう?」
「いや、アレは坊ちゃんだぜ?」
イッセーくん・・・・・!?ヴァーリのお祖父さんの発言に驚いた私の視界に、
おじさまとおばさまが近づいてきた。
「およよ、結構派手にやられたねー」
「ええ・・・・・まさか、こんなことになるなんて思いもしなかったわ」
「一誠、何かに目覚めたな・・・・・今は暴走状態みたいだが・・・・・」
見たことがないぐらいボロボロなおじさまとおばさま。
そんな二人の前に、私たちの前に黒い塊が音もなく現れた。
―――っ。
姿はまさしくイッセーくんだった。でも、両手と両腕を覆う黒い籠手。
背中に紋章状の翼を三対六枚も生やしていて、髪の色が真紅じゃなくて真っ黒・・・・・。
瞳が片方だけ真紅だった。
「イッセー・・・・・なのか?」
ヴァーリも信じられない面持ちでイッセーくんを見つめる。
「今の一誠に近づかない方が身のためだよ」
おじさまが私たちに警告した。だけど、そんな事を言われても・・・・・。
『主・・・・・?』
『おい、なんだその姿は・・・・・?』
「一誠、お前は・・・・・」
イッセーくんのドラゴンたちが集まって来た。イッセーくんの変わり果てた姿に皆、
不思議がって、当惑していた。
「――――――」
次の瞬間。イッセーくんの体が桃色の縄に縛られた。だ、誰の仕業!?
「なんだか、大変なことになっちゃったみたいだね」
茶髪のサイドテールの女性が私の視界に入って来た。
「イッセーくん・・・・・!」
ギンガさんも、管理局の人たちまで集まって来た。
この状況、イッセーくんが敵になっちゃったような雰囲気だよ・・・・・。
イッセーくんは桃色の縄を強引に引き千切った瞬間、また桃色の縄に拘束された。
「―――俺の邪魔を、するな」
「大人しくして、今のキミはとても危険だよ」
「上等だ。あいつらを殺せるなら、世界を敵に回しても構わない」
―――初めて見る狂気の笑み。
『主!気を確かにするんだ!』
ゾラードが叱咤する。イッセーくんはそんなゾラードにキョトンとする。
「俺は正気だぞ?どんどん体の奥底から溢れてくるこの力に
振り回されがちだが―――ぐっ・・・・・!」
不意に、イッセーくんが苦痛に顔を歪ませた。
見れば、顔に紋様が浮かびあがってイッセーくんの顔を埋め尽くしていく。
そして、体から禍々しい魔力が荒れ狂い、桃色の縄がまた千切れた。
「ぐうううううううううっ・・・・・・!」
イッセーくんがとても苦しそう・・・・・っ!
「―――ああ、そう言えば」
ヴァーリのお祖父さんが何か思い出したかのように発した。
「むかーし、パパンから聞いた話だったんだけど悪魔とは違う魔の種族がいたんだっけ。
確か、魔人って言う種族だったな」
「魔人?」
「おうよ。実際、この目で見たことがないけどさ、俺たち純血悪魔たちが元七十二柱になる前より
ずっと前に存在していたらしいぜ?そいつら、悪魔のように魔力を持っていて人の姿を
していたってさ。因みに、それを見習って、古の悪魔も人の姿でいるようになったんだぜ?」
そんな種族がいるなんて、今まで知らなかった。
「なーるほど、坊ちゃんは魔人の力を宿していたんだねー。
でも、どーして坊ちゃんなのか不思議でしょうがない。
生みの親である坊ちゃんのパパンとママンにもあんな感じになるかな?」
「いや、それはないと思うよ。多分だが・・・・・相反し合う力を
宿した一誠だからこそだと思う」
「んじゃ、坊ちゃんのパパンたちの家が何らかの理由で魔人を封印して、
先祖返りでもしたんじゃない?魔人ってそれなりに強かったって聞いたしさ」
先祖返り・・・・・。そんなこと、本当に起こるものなの?
イッセーくんを見れば、全身で息をしていた。
―――背中に紋章状の四対八枚の黒い翼に増え、腰辺りに尾も生えていた。
「おー、坊ちゃんは見事にビフォーアフターしてんじゃん。
さてさて、魔人の強さは一体どのぐらい―――」
ヴァーリのお祖父さんが好奇心に呟いたけど、
ドッ!
「・・・・・およ?」
あのヒトの腕が宙を回った。・・・・・え?
「ととと、どうなっているんだ?」
ヴァーリのお祖父さんは両断された腕を掴んで自分の腕をくっつけながら言った。
「く」
「・・・・・?」
「くくくっ」
イッセー・・・・・くん?
「くはははははははっ!」
唐突にイッセーくんが笑い始めた。全身から禍々しい魔力を放ちながら。
「なんだ、この力は・・・・・!?いい、実にいい。
これなら、これなら、俺は誰にも負けない!この力ならば、皆を守れるじゃないか!」
真紅の双眸を妖しく煌めかせ、狂ったかのようにイッセーくんは笑い続ける。
「・・・・・リゼヴィムさま」
「んん?」
「今の一誠はかなり危険だ。ここは退いた方がいい」
「そうなの?」
おじさまが腕を上げて前へ振り下ろした直後、
まだいる量産型の邪龍が一斉にイッセーくんに襲いかかった。
「―――雑魚が、お前らじゃ物足りないんだよ」
イッセーくんが腕を横薙ぎった瞬間だった。量産型の邪龍たちが勝手に爆発した。
「おおう・・・・・」
「生と死、どっちが所望で?」
「もちろん、生だぜぃ!」
ヴァーリのお祖父さんが高らかに発現した時、足元に魔方陣が出現して光に包まれた。
逃げるつもり―――!
ガシッ!
「逃がすと思ったか?」
「―――っ!」
イッセーくんはおばさまの首を掴んで不敵に笑んだ。
「一香!?」
「―――先に戻って!」
おばさまは、おじさまやヴァーリのお祖父さん、リリスをどこかへ転移した。
その刹那、おばさまの腹部がイッセーくんの魔力で吹き飛んで、
上半身だけの状態と成った・・・・・っ!
「これで、新たな一誠が死んだな?」
「・・・・・ふふ・・・・・っ」
「・・・・・?」
おばさまは笑い出す。上半身だけと成っているのに・・・・・。
「どうやら、私は運が良いようね」
その意味は直ぐに分かった。イッセーくんに飛来する数多の巨大な魔力の塊が襲い掛かった。
「ちっ」
イッセーくんは目を煌めかせ、襲いかかる巨大な魔力の塊を暴発させた時、
おばさまが手をイッセーくんの顔に向けて魔力を放った。
首から手が離れた瞬間、おばさまが転移魔方陣で姿を消した。
すると、それに呼応して巨大な大地が魔方陣の中へと沈んでこの世界からなくなった。
「―――一誠!」
「・・・・・和樹か」
し、式森くん!?どうして、この世界にきたの!?
「一誠・・・・・その姿は一体・・・・・」
「さあな。だが、そんなことはどうでもいい。―――どうして、兵藤一香を殺すのを邪魔をした?」
「・・・・・っ!?」
式森くんが驚愕した。目が大きく見開いて、口を開いた。
「一誠、自分の両親を殺そうとしたの?」
「敵だぞ?倒すなり殺すなり、個人の自由だろう?」
「それは・・・・・」
「くくくっ!和樹、この力を感じてくれ。俺は新たな力が手に入ったんだ」
黒いオーラが隠しようがないほど体から出てくる。
とても、私が知るイッセーくんじゃない力だ。
「俺も式森家の魔法、魔力の力を使えるようになったんだ」
「な、なんだって・・・・・?」
「そうだ―――。和樹、俺の相手をしてくれないか?式森家のお前と魔法合戦をしてみたい」
そう言うなり、イッセーくんは式森くんに向かって黒い魔力を放った。
突然のイッセーくんの言動に式森くんは驚愕しながらも防御魔方陣を展開して迎撃し始める。
「い、一誠!?」
「ははははっ!俺自身の力だ!俺の魔法だ!ドラゴンの力じゃない、俺の力だぁっ!」
―――狂っている。今のイッセーくんは間違いなく、狂っている!なんとか、止めないと!
「・・・・・一度だけ、一誠さまは仰っていました」
「リーラさん?」
「和樹さまのように魔法が使えれたらいいなと、羨ましそうに言っておりました。
いま、一誠さまは魔法の力を得れて、喜んでおりますでしょう。
ですが・・・・・今の一誠さまはその力に溺れてしまっています。
私たちを守れる力が得れたことに歓喜して・・・・・」
背中に三対六枚の黒い翼を生やして、リーラさんはイッセーくんに向かって行った。
「「・・・・・」」
私とヴァーリは顔を見合わせる。
「イッセーくん、止めないと」
「当然だ」
「我も」
あっ、オーフィスちゃん。うん、そうだね。大好きなイッセーくんを止めないと!
そう意気込んだ私の肩に手を置く人が現れた。
「いえ、ここは私に任せてください」
「え・・・・・?」
頭に二本の角を生やしたメイドが私の横を通り過ぎて、イッセーくんに向かって―――攻撃した。
「この、なに暴走しちゃっているんですかぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「ウリュウ・・・・・!?」
イッセーくんが驚愕の色を浮かべた。うん、確か原始龍って言う龍のメイドの龍だったわね!
「ちょっと、お仕置きをします」
「なっ!?」
どこからともなく振り上げた黄金のハリセン!え、あれでお仕置き?とてもじゃないけど、
イッセーくんの力で吹き飛んじゃいそう・・・・・。
「そんなの、当たってたまるか!」
案の定、イッセーくんは魔力をレーザー状にウリュウさんにはなった。
対するウリュウさんは、避ける素振りもせず、巨大なハリセンを思いっきり振り下ろした。
すると、どうでしょうか。イッセーくんの魔力が弾けて、そのまま―――イッセくんに直撃した。
「光になりなさい!」
「―――――ッッッ!?」
バンッ!とイッセーくんは鈍い音と共に海へ真っ逆さまに落ちて行っちゃった!
しばらくして、遥か下の海面から水しぶきが上がったのが何とか見えた。
『・・・・・・』
たった一発のハリセンで、決着がついた。私たちはただただ、唖然としているだけでいた。
いい仕事をしたとばかりウリュウさんは腕で額を拭う。
「さて、あのヒトを連れて異世界に戻りましょう」
「えっと・・・・・どうしてあなたがここに?」
「どうしてもなにも、あのヒトが暴走しちゃっていましたから、
原始龍さまの命により、お仕置きをしにきたんですよ」
ああ、そういうことなんだ。納得していると、ゆりかごがこっちに向かってきた。
取り敢えず・・・・・世界は守れたかな?
―――devils.―――
「一香・・・・・大丈夫か?」
「ええ、なんとか。ユーグリットくん、ありがとうね」
「あなたというものがあそこまで負傷して帰って来た時は驚きましたよ。
この―――聖杯がなければどうなっていたことやら」
「しかし、リゼヴィムさまが言う魔の種族、
魔人か・・・・・我が息子にそんな種族の力があったとは」
「というより、兵藤家と式森家の力が原因で目覚めたのかもしれないわね」
「・・・・・だとすれば、俺たちの家は何か隠しているな。
兵藤家と式森家の者同士が子を作ってはならない理由が他にもなにかある」
「調べてみる価値がありそうね。ユーグリットくん、手伝ってちょうだい」
「準備が整い次第でいいならば」
―――???―――
「同族が、同族の力が目覚めたようだ」
「あの一族からか。それは好ましいことだ」
「我らを差別した冥界の悪魔どもにも復讐の時が近い。
同じ魔でありながら、我らを弾いた古の悪魔どもに」
「まだ戦力が足りない。気付かれず戦力を整えるぞ。―――冥界を我が手に」
「「「「「冥界を我が手に」」」」」