父さんと母さんが死んで数ヵ月が経った。
あれから僕は・・・・・俺は、グレートレッドさんに鍛えてもらっている。
修行は今までしてきた修行よりも想像絶するものだった。もう、何度も死ぬ思いもしてきた。
リーラに何度も止められ、グレートレッドさんとケンカする事もあった。
だけど、そんな日々を送った時だった。
「一誠、偶には外の空気を吸って来い」
「え・・・・・?外って次元の狭間・・・・・だけど」
「違う、人間界の方だ。たまには人間界に言って遊んで来いというのだ」
突然、彼女がそう言いだした。今まで一度もそう言わなかった彼女が珍しかった。
「息抜きも大切だろう。我はそう思って言っている」
「・・・・・俺を探している人と会ったらどうするの?」
「心配ないだろう。お前の中にいる奴が助けてくれる」
そう言って僕の頭を掴んだ。―――え?
「行って来い。時間になったら我が迎えに行く」
「ちょ、グレートレッドさん?俺の頭を何かボールと勘違いしていない?」
「気にするな。それ、行って来い」
ブオンッ!と僕の頭をまるでボールのように放り投げた!体勢を空中で整えようとしたら、
何もない空間に穴が開いて、僕はその穴の中に入ってしまった。
「嘘おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「ふはは!良いリアクションをするな!」
笑い事じゃないよ!?僕はどこに落とされるっていうんだ!もしも空にでも落とされたら―――。
スポッ。
と俺は次元の狭間にある家から人間界に落ちた。場所は・・・・・最悪だ。
「・・・・・あはは、俺・・・・・空にいるよ」
青い空、白い雲が俺の視界に飛びこんだ。重力に逆らえず、俺は下に落ちる。
「くそっ!こんなところで死んでたまるか!」
―――背中に金色の翼を生やして羽ばたかせる。そして、ゆっくりと地上に降り立った。
「ふぅ・・・・・なんとか降りれた」
さて、息抜きしろと言われても・・・・・何をすればいいんだろう?
「友達に会いに行く・・・・・だめだ。俺は死んでいる事になっているかもしれないんだ。
会いに行ったら怖がるかもしれない」
だとすれば・・・・・うん、これしかないかな。
「散歩しよっと」
そうと決まれば歩きだす。
場所は適当だ。俺を知っている人と会わないように歩かないとダメだね。
「・・・・・あれ、息抜きもできない?」
グレートレッドさん。結局、俺はどこにいてものんびりできないよ・・・・・。
―――公園
人と会わず、なんとか久し振りに来た公園にやってきた。知らない公園だけどね。
俺がいる場所すら分からない。
「一人で遊ぶのって・・・・・寂しいもんだね」
公園を見渡して俺はポツリと呟く。だけど、俺はそんな状況にいるんだ。しょうがない。
「・・・・・うん、誰もいないや」
ここなら、のんびりと出来るかもしれない。油断できないけど・・・・・。
「さーてと、あの噴水でのんびりしよっと」
おっ、あそこに段ボールがあった。あれで敷いて横になれるかも。
俺はそう思い、捨てられている段ボールを拾って噴水の縁に敷いて横になった。
「ん・・・・・ちょうどいいや。このまま寝よっと」
温かくて良い気持ちだ。グッスリ寝れそうだ。
「・・・・・ぐぅ」
―――○●○――
チョンチョン。
「・・・・・・」
ツンツン。
「・・・・・」
ペチペチ。
「ん~」
「あっ―――!」
ドポンッ!
・・・・・っ!?
「ぶはっ!?」
な、なに!?あれ、どうして俺は噴水の水の中に・・・・・うわぁ・・・・・ずぶ濡れだよ。
「あ、あの・・・・・大丈夫・・・・・・?」
「ん・・・・・?」
あれ・・・・・誰?この女の子たちは・・・・・。
寝る前にはいなかったけど・・・・・寝ている間に来た子たちかな?
「濡れていること以外は平気だよ」
「ご、ごめんなさい。噴水に寝ている男の子がいたから気になって」
「で、俺を噴水の中に落としたってことかな?」
「え?ち、違うよ。キミが体を横に動かしたから落ちちゃったんだよ。
止めようとしたけど、間に合わなかったの」
「・・・・・そうなの?」
他の子たちに訊くと、コクコクと頷いた。
「そっか、疑って悪かったよ」
「ううん、いいの。寝ているところ起こした私たちも悪いわ」
「それで、俺に何か用なの?」
問うと、女の子たちは目をパチクリした。・・・・・まさか、気になったから
起こしたってことなのかな。
「・・・・・寝る」
「って、ダメだよ。濡れたまま寝ちゃ風邪引いちゃう」
「だって、用もないのに起こされてどうしろっと言うんだよ?」
「そ、それは・・・・・」
困った顔をする女の子。
「ということで、俺は寝るよ。それじゃ」
体を横にして、女の子たちに背を向ける。
まったく、せっかくのんびりできると思ったのに・・・。
ドンッ!
「は?」
ドポンッ!
・・・・・また、俺は水の中に落ちた。今度は誰かに押されてだ。
「―――って、誰だよ!?今度は間違いなく俺を押しただろう!」
ザパッ!と起き上がって女の子たちに抗議する!すると、女の子が俺に指を差してきた。
「こんな良い天気なのに寝るなんてつまらないじゃない。暇なら私たちと遊びましょよ」
「・・・・・俺を押したのはお前?」
「そうよ?」
・・・・・そうかい。なら、仕返しだ!噴水の水を両手で掬い上げるようにして、
目の前の女の子にぶちまけた。
「・・・・・」
ポタポタと、全身ずぶ濡れになった。しばらくすると、ワナワナと体を震わし始めた。
「な、なにを・・・・・っ!」
「さっきの仕返し。俺を押してお咎めなしってわけじゃないだろう?」
「だからって、水を掛けなくてもいいじゃない!」
「因果応報って知ってる?当然のことだと思うけど」
当然のように言ってやった。それに今は夏に近い。
日差しも強いし、今日は水浴び日和だと俺は思うんだよな。
「ヒドイわ!今日はお兄さまの大事な会議を付き合っているのにこれじゃ、
お兄さまのところには行けないわ!」
「お兄さま?お前たちだけじゃないのか?」
「私たちは、お兄さまやお姉さま、お父さまの会議に付き添いとしているのです。
でも・・・・・」
「あまりにも長いから暇で暇で・・・・・抜け出して来ちゃったの」
ふーん、そうなんだ。俺にとってはどうでもいい話しだよ。
「それで、キミたちは暇だからここに来たの?」
「うん、そうだよ。あっ、そう言えば自己紹介してなかったね。私はリシアンサス。
言い辛かったら『シア』って呼んでね」
一人の女の子がいきなり自己紹介をし出した。そしたら、他の子たちも口を開きだした。
「私はリコリス。こっちは私の妹のネリネだよ」
「ネリネです・・・よろしくお願いします」
「私はソーナ・シトリーです。それで、あなたが水を掛けたこの子はリアス・グレモリー」
「・・・・・よろしく」
不機嫌そうに呟いたリアス・グレモリーとか言う女の子。この流れからして今度は俺の番か。
「・・・・・姓は言えない。名前は一誠だ」
「姓は言えないとは、何か事情があるのですか?」
「まあ・・・・・うん、そんなところ」
「そうですか。無理には聞きません。ヒトには言えない秘密があるのですからね」
何でも知っていると風な言い方だな・・・・・まあ、どうでもいいや。
「皆は何時ぐらいになったら帰るんだ?」
「お父さんたちが会議を終えるまでは遊べれるよ」
「会議の時間は長引いているので正確には分かりません。夕方頃には終わるのかと」
「そうなんだ。それじゃあ―――おやすみ」
『寝るの!?』
体を横にした瞬間に、突っ込まれた。いや、俺は元々のんびりするつもりだったし。
「え?どうして?なにが可笑しいの?」
「・・・普通、ここは一緒に遊ぼうよ、とか言わないのかしら?」
呆れ顔でリアス・グレモリーが言う。
「だって、俺がいなくてもそっちは人数いるし、遊べれるだろう?」
「それはそうだけど、あなた暇そうじゃない。だから誘っているのよ」
「俺は別に暇じゃない」
「・・・・・また突き飛ばすわよ?」
「今度はお前も道連れにすんぞ」
俺とリアス・グレモリーは睨み合った。お互い譲れない気持ちがあって対立する。
決着をつけるなら、これだよな。
「じゃーんけーん」
「っ!?」
「ポン」
バッ!
じゃんけんをした。リアス・グレモリーも咄嗟に反応して手を出す。
俺、チョキ⇔グー、リアス・グレモリー
「「・・・・・」」
・・・・・ま、負けた・・・・・。負けてしまったことにショックを受け、唖然とした。
対してリアス・グレモリーはニンマリと笑みを浮かべる。
「敗者は勝者の言う事を聞くわよね?」
「・・・・・はいはい、分かったよ。一緒に遊んでやるよ」
やれやれと、肯定する。功を焦った俺のミスだ。今度は慎重になろう。
―――○●○―――
あれから俺は五人の女の子たちと遊んだ。女の子らしくおままごとを付き合ったり、
砂場で遊んだり、鉄棒でネリネが回れるように手伝ったりもした。
鬼ごっこもしたが・・・・・俺が一番逃げ足が速かったりもすれば、
早く五人を捕まえた。
「はぁ・・・はぁ・・・イ、イッセー。あなた、速いわよ」
「何事にも俺は全力を出すって決めているんだ。だから手を抜かない」
「す、凄いね。五人がかりでやっても捕まえられないよ」
「男の子ってこのぐらい凄いのでしょうか・・・・・」
ソーナ・シトリーの言葉に俺は思い出した。俺より強かったあの子供だち。
今この瞬間でも強くなっているんだろうな。
「さて、次は何して遊ぶ?」
「そうだね。うーん」
時間はまだある。俺たちは何しようかと悩んだ。
「ねぇ、キミたち」
突然、俺たちに話しかけてくる声が聞こえた。声のした方へ振り向けば、
中年の男の人がいた。
「はい、なんですか?」
「おじさん、この町に初めて来たから道が分からないんだ。帰ろうとしているんだけど、
迷子になっちゃったんだ。よかったら駅まで教えてくれないかな?」
と、尋ねられた。けど・・・・・。
「ごめんなさい。俺も分かりません。お前らはどうなんだ?」
「私たちも初めてこの町に来たの。お父さんたちの所に帰ろうにも、道が分からないから」
「・・・・・お前ら、よく知らない土地で歩き回っていたな」
「だって暇ですもの。ずっと話し合いばかりしていて、私たちのことを放っておくのよ?」
だからって、勝手に外に出歩いちゃダメだろう。呆れ顔で溜息を吐く。
「おや、そうなのかい」
男の人も苦笑した。自分と同じなんだと。
「じゃあ―――同じ迷子同士、一緒にきてもらおうか」
「っ・・・・・!?」
突然の恐怖を感じた。この人は人の皮を被った悪だと、俺は気付いてしまった。
男の人が俺たちに手を突き出してきた。その瞬間、魔方陣が浮かび上がって、
魔方陣から見た事もない文字を表現した
螺旋状の魔力が何十何百と現れて、縄のようにリアス・グレモリーたちの体に巻きついた。
「これは・・・・・!?」
「あなた、悪魔なのね・・・・・!?」
―――ドクンッ!
悪魔・・・・・・?
「ああ、その通りだぜ?侯爵家のお嬢さま。だが、ただの悪魔じゃねえ。
お前らお偉いさんに危険だと、烙印を押されたはぐれ悪魔だ」
「はぐれ・・・・・!」
「くくく、討伐しに来る追手を逃れる日々が終わりそうだなぁ。
まさか、こんな場所であのグレモリー家とシトリー家の令嬢、魔王の娘、神王の娘が揃いも
揃っているんだからよ」
男は醜悪な笑みを浮かべた。まさに悪魔と呼んでも過言じゃない笑みだった。
「私たちをどうするつもりです・・・・・」
「決まっている。お前らを交渉の道具として利用させてもらうんだよ」
「こんなことしてタダで済むとは思えないよ!」
「だからお前らを交渉の道具にするんだよ。俺の安全のために利用する。
さて、俺を連れていく前にやらないといけないことがある」
視線を俺に向けてきた悪魔。
「おい、ガキ。死にたくなければさっさと消えろ。お前を殺しても良いが、
これ以上魔力を使ったら見つかっちまうからな」
「・・・・・」
リアス・グレモリーたちに視線を向ける。この子たちは今日会ったばかりの女の子たち。
俺にとって知り合った程度でしかない。見捨てても心を痛まないと思う。だけど・・・・・。
「ねえ、はぐれ悪魔ってなんなの?」
「はっ?」
「悪魔は知っているけど、『はぐれ』って何なのか知らないんだよね。
だからさ、はぐれのことを教えてよ。そしたらいなくなるよ」
笑みを浮かべて悪魔に問うた。そしたら悪魔は、鼻を鳴らして言った。
「物好きなガキだな。だがまあ、良いだろう。
はぐれ悪魔と言うのは転生により下僕悪魔となったが、強力な力に溺れ、
主を殺しお尋ね者となった悪魔。契約の有無関係なしに人間を襲う極めて危険な存在。
それがはぐれ悪魔だ」
「ふーん・・・・・追手に追われているとか言っていたけど、見つかったらどうなっちゃうの?」
「討伐されるか捕縛される。どっちにしろ、俺の未来はないだろう。
だから、この重要人物の娘たちを利用し、安全の保障を約束させるんだ」
なるほど・・・・・はぐれってそう言う事だったんだ。
「ほら、教えたからさっさといなくなれ」
「うん、分かった」
俺は満面の笑みを浮かべた。
「お前を殺していなくなるよ」
「はっ・・・・・?」
―――ドゴンッ!
「―――――っ!?」
唖然とする悪魔の懐に飛び込んで拳を突き出した。
顎の下から拳を打ち上げて、リアス・グレモリーたちから遠ざける。
「はははっ・・・・・俺の実力を試す機会が来た」
「こ・・・この・・・・・クソガキ・・・・・っ!」
激しく俺を睨む悪魔。ああ、それでいいんだ。俺に殺意を向けてくれるその視線じゃないと
殺し甲斐がないよ。
「色々と教えてくれてありがとう。お前を殺しても誰も文句はないことを知って安心したよ。
だから―――お前を殺すよ?」
「ふざけやがって・・・・・!俺は上級悪魔なんだぞ!
テメェみたいなガキ一人殺すこと容易いんだぞ!」
「だったら、証明して見せてよ」
拳を構えて挑発すれば案の定、悪魔は怒りに体を震わせた。
「上等だ・・・・・死んで後悔しろクソガキィィィィッ!」
―――○●○―――
最初に仕掛けてきたのは、悪魔からだった。手の平から光の球体を発現して俺に向けてきた。
「直ぐには死なせねぇ。たっぷり痛めてから殺してやるよ」
それが魔力だと理解し、回避行動をとった。
「っ!(ただの人間のガキにしては速過ぎだろ!)」
悪魔の攻撃に当たらないよう動き続ける。地面は土だ。日差しが強いから、
動き回る度に渇ききった土が、土煙になって舞う。
「ちっ・・・!煙で姿を隠そうって腹か!」
俺の行動に気付いたような言い草する悪魔。動き回り続ける俺にあの悪魔がとった行動は、
「ガキ風情の知恵なんざ、俺に通用するかよ!」
背中に蝙蝠のような翼を広げ、力強く動かし始めた。
その拍子に、土煙が吹き飛ばされてしまった。
でも、そんなことされることぐらい俺も分かっていた。煙が吹き飛ばされたと同時に
無防備な悪魔に突貫し、拳を前に突き出した。―――刹那。俺の拳は、
悪魔の前に現れた魔方陣に直撃した。魔方陣を壊すことができず、俺の拳はそこで止まった。
「―――掛かったなぁ?」
「っ・・・・・!」
「さっきの一発を倍返しにしてやらぁ!」
カッ!と魔方陣が光り輝いた。今の状態で避けることはできず、
ドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!
魔方陣から出てきた数多の魔力の塊に直撃した。
「イ、イッセェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!」
リアス・グレモリーが悲鳴をあげた。
「(やっぱり・・・・・俺はまだ弱いのか・・・・っ)」
グレートレッドさんに鍛えてもらって数ヵ月。まだまだ強くなっていなかった。
『一誠、我が鍛えるのだ。お前は誰にも負けてはならないぞ?負けたら許さない。よいな?』
―――――っ!
そうだ。あのヒトが言ったじゃないか・・・!そして、俺も誓ったんだ。
もっと強くなるって・・・!
「っ・・・!」
ズザザッ!
「な・・・・・」
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
倒れそうになった。でも、足に力を入れて何とか立った。
「・・・・・俺の攻撃をモロに食らったんだぞ。
普通、人間のガキなら意識を失うか、死んでいる。
俺は手加減なんてしていねぇ・・・・・なのに、お前はどうして立っていられる!?」
どうして立っていられる・・・・・?・・・・・はっ、決まっている。
と、心の中で笑いながら、真っ直ぐ悪魔に瞳を向ける。強い決意を籠めた瞳を―――。
「俺は絶対に誰にも負けれないんだ。負けることも許せない。
どんな時でも何事でも絶対に、負けられないんだ・・・・・」
「・・・・・」
悪魔は俺をジッと見つめる。その瞳に恐怖の色が浮かんでいない。
まるで懐かしそうに何かを見詰めているような感じだった。
「・・・・・お前の名を聞いてやる」
「・・・・・姓は言えない。名前は一誠だ」
「一誠・・・・・」
ポツリと俺の名を呟いた。
「・・・お前みたいな人間のガキを見るのは初めてだ。
どこまでも純粋で真っ直ぐ、勝利に向かうその心を持っているガキをな」
「・・・・・」
急に殺意がなくなった。戦意も消えた。でも、腕を頭上に翳した。
開いた手の平の先に魔方陣を展開させて―――大きな魔力の塊を放った。
一拍して、花火のように魔力の塊は轟音と共に散った。
「これで、魔王や神王がここに駆けつけてくるだろう。俺は逃げさせてもらう」
悪魔は足元に魔方陣を展開した。ここからいなくなろうとする悪魔に口を開いた。
「どうして、戦うのを止めたんだよ」
「・・・・・はっ、お前を殺しても結局は魔王たちが駆けつけてくるだろう。
どっちに転んでも俺は良い状況には転ばない。なら、諦めて逃亡するだけさ」
「・・・一つ聞きたい。シャガとシャーリーって悪魔は知っている?」
「・・・・・悪いが聞いた事のない名の悪魔だな」
そうか・・・・・知らないか。心の中で嘆息する。
「クソガキ。俺は何時かお前に再チャレンジをする。お前が成長するにつれ、
俺も強くなっているだろう。そんでお互い、今より強くなったらもう一度死闘をするぞ」
と、一方的にそれだけ言い残して悪魔は俺の前から姿を消した。
リアス・グレモリーたちを縛っていた縄も消失した。
「・・・・・不完全燃焼だよ。あの木端悪魔」
「―――イッセーッ!」
愚痴を言う俺は、リアス・グレモリーに呼ばれた。
振りかえって、「大丈夫か?」と言おうとした。
「お前ら、だい―――」
と口を開いたその瞬間。リアス・グレモリーに抱きつかれた。
「・・・・・はい?」
なぜ、俺を抱きしめる・・・・・?訳が分からないと唖然となった。でも・・・・・。
「ありがとう・・・・・ありがとう・・・・・イッセー」
「・・・・・」
感謝された。他の四人も近づいてきて俺に感謝の言葉を送ってくる。
「イッセーくん凄い!はぐれ悪魔を追っ払うなんて信じられない!」
「凄い怪我・・・・・シア。イッセーくんに回復魔法を」
「勿論だよ!」
「イッセーさま、横になってください」
ワイワイと俺を介護し始める。リアス・グレモリーも加わり、そんな五人に困惑する。
―――その時だった。この公園に数多の魔方陣が現れた。
そして、魔方陣の光と共に大人数の男と女の人が姿を現した。
中には武器を持っている人もいた。
「あっ、お父さん!」
「・・・・・え?」
リシアンサスの口から出た言葉に耳を疑った。
うん、どう見ても・・・・・強い人たちばかりだよ。
「シア!大丈夫だったかぁ!?」
「ネリネちゃんとリコリスちゃん!」
「ソーナちゃーん!」
「リアス・・・・・良かった。無事のようだね」
四人の男女の人たちがリアス・グレモリーたちに詰め寄ってきた。
「すまねぇシア!会議に夢中になってお前を放ってしまった俺を許してくれぇ!」
「ああもう、お父さん。そんな泣かないでよ。
私たちこそ勝手にいなくなっちゃってごめんなさい」
「ネリネちゃんとリコリスちゃんもごめんよ。こんなパパを許しておくれ」
「だ、大丈夫ですお父さま」
「うん、寧ろ私たちが謝らないといけないよ。ごめんなさい」
「リアス・・・・・今度から私に一言告げてから遊んで欲しい」
「はい・・・・・ごめんなさい」
「ソーナちゃん!ソーたん!ソーナちゃん!ソーたん!」
「お姉さま!私の愛称に『たん』を付けないでください!
か、彼が見ている手前で抱きつかないでください!」
・・・・・なんか、個性豊かな人たちだな。
この人たちが五人のお父さんとお兄さんとお姉さん?
「(というか・・・・・そろそろいなくなった方が良さそうだな)」
嫌な予感と言うか、厄介事が怒りそうな予感がしてしょうがない。
物音立てず、ゆっくりとこの場からいなくなろうと―――。
ガシッ!
「おっと、ちょい待ちな」
・・・・・つ、捕まった・・・・・。
俺の肩を力強く掴む人に恐る恐ると首だけ後ろに向ける。
「坊主だな?娘のシアを守ってくれたのは」
「えっ、えっとぉ・・・・・」
「あぁ?そうなのか違うのかハッキリと言いやがれ!」
な、なんなのこの人は・・・・・!?
とてつもない威圧感を放つ男の人に思わず頷いてしまった。
「こらこら神ちゃん。私たちの娘をはぐれ悪魔から救ってくれた彼に
そんなことをしてはいけないよ」
「むっ・・・そうだったな。すまねぇ・・・・・」
肩を掴む手を離してくれた。ジンジンと鈍く痛みが伝わる肩を擦って、警戒する。
―――逃げるために。
「警戒しなくても大丈夫だよ」
リアス・グレモリーと同じ色の髪を持つ男の人が、苦笑して言う。
「私はサーゼクス・グレモリー。リアスの兄だ」
「あなたが・・・・・リアス・グレモリーのお兄さん?」
「ああ、そうだよ。すまないね。どうやら怯えてしまったようだね」
いや、怯えているわけじゃないんだけど・・・・・。
早くここからいなくなりたいから警戒をしているだけで・・・・・。
「ねぇねぇ、キミの名前は?私、セラフォルー・シトリーっていうの。
ソーナちゃんのお姉さん☆」
ツインテールの女の人がニッコリと笑みを浮かべる。
そこへリアス・グレモリーが口を開いた。
「お兄さま。彼は一誠と言うの」
「姓の名を教えてくれませんが、決して怪しい子じゃないです」
「うん!私たちを守ってくれたもの!絶対に悪い子じゃない!」
そこっ!話しを広げないでくれ!これ以上言ったら―――。
「「「「一誠?」」」」
・・・・・あっ、聞き覚えがあるぞ?って感じに言ったよこの人たち・・・・・。
「・・・・・サーゼクス。もしや・・・・・この子があの例の子では?」
「・・・・・確かにあの二人の面影があるな・・・・・」
―――やばい、俺のことを探している人たちか!?
「―――さようなら!」
ドヒュンッ!
「あっ!?」
「イッセー!?」
リアス・グレモリーたちが何か言ってくるけど、答えている暇はない!
「まさか、本当にあの二人の子供か!?」
「だとしたら、直ぐに保護しないと!」
「ここで見逃したら次どこで見つかるか分からないぞ!?」
「衛兵!あの子を追うんだ!決して手荒に捕まえるな!」
『は、はいっ!』
「というか、俺たちが追いかけて行った方が早い!」
げっ!?一番厄介そうな人たちが追いかけてくる!
「おい待て坊主!」
「待てと言われて待つ人はいるかよ!」
「話しを聞いて!私たちはあなたとお話がしたいの!」
「さようなら!」
「即答!?」
ダダダダッ!と俺は駈け出す。だけど、残念だ。あっちの方が速い!
「ぼぉーうぅーずぅーっ!」
やばい!このままだと捕まる!どうすれば―――!
『―――主、グレートレッドから伝言です。そのまま走れと』
不意に、俺の中から声がした。このまま走れって・・・・・!
と、焦心に駆られながら疑問を浮かべていると、目の前の空間がぽっかりと穴が開いた。
―――あの穴の中に飛び込めってことか!
「不味い―――!」
リシアンサスのお父さんがさっきよりも速く駆けつけてきた!
そして、俺の向かって手を伸ばしてくる。
「逃がすかぁ!」
「っ・・・・・!」
穴の中に入る前に捕まる。と、そう感じて後ろに振り返り、
俺に伸ばす手を右手で反らし、左拳を男の人の腹部に思いっきり突き出す。
「ごめんなさいっ!」
「っ!?」
ドゴンッ!
男の人を吹っ飛ばそうとしたが、逆に俺が吹き飛ばされた。か、硬い・・・っ!
今の絶対にダメージなんて与えた感じじゃなかった!でも・・・俺は穴の中に飛び込めた。
「(できれば、もう二度と会いたくない人の類だな)」
俺はそう思いながら、出口へと転がり落ちていくのだった。
―――○●○―――
「神ちゃん!」
「・・・まー坊」
「・・・・・あの子は?」
「逃げられた。この俺に一撃を与えてな」
「あの子が神ちゃんに?」
「ああ、その上・・・いい一撃だった。魂が籠った拳を俺の胸に突き刺したんだぜ?」
「しかし・・・・・どうしてあの子は私たちから逃げたのだろうか?」
「私たちを怖がっているような感じじゃないけど・・・・・どうして・・・・・」
「だが、間違いなくあの子はどこかで生きている。それが分かっただけでも十分な情報だ」
「でも・・・・・変なところで育てられていないかしら・・・・・」
「いーや、あの坊主は間違った育てられ方をしていない。坊主の一撃を受けた俺が分かる。
その上、『ごめんなさい!』って謝ったんだぜ?」
「・・・・・そうか。とりあえず、会議が終了次第。
他の魔王の方々にもお伝えしなければならないね」
「こっちもそうだな。ヤハウェさまがこの事を聞いたら安心するだろうよ」
「では、あの子たちのもとへ戻ろうか」
「あー、何て言えばいいんだがなぁー」
「そうだね。それが一番の難題かもしれないよ」