―――放課後。
「そんじゃ、帰るか」
「はい」
最後の授業が終わり、学校は無事に終了した。
清楚たちと別れの挨拶をし、リーラと共に一年生の教室にへと赴く。
俺たちと家に住んでいるプリムラを迎えに。プリムラは一年F組にいる。
「プリムラは友達を作れているかな?」
「シアさまたちと接しているのですから、問題はないかと」
「人との付き合いが疎そうだからな。変な奴らに話しかけられていないといいんだが―――」
一年のクラスの廊下に辿り着いた。その直後だった。俺の視界に薄紫のツインテールの一年生が、
のっぽとデブ、チビの三人組に話かけられている光景が飛び込んできた。
「・・・・・あれ、何だと思う?」
「・・・・・呼吸が荒く、目が血走っていなければ、友好的な場面だと伺えます」
「そうか・・・・・この時、俺があの三人を火達磨にしてプリムラを保護するなんて、
ことしたら?」
「ただの変質者であれば、お咎めなしかと思います」
そうか、変質者ならばか・・・・・。よし、
「プリムラー」
取り敢えず呼ぼうか。彼女の名を発すれば、プリムラは顔をこっちに向け、
俺たちの存在に気付き、三人組から離れてこっちに来る。
「イッセー、リーラ」
「帰ろうか」
「うん」
頷くプリムラ。彼女の頭を撫でて玄関へと赴こうとする。
その時、背後へ一瞥すれば、三人組が俺に嫉妬の視線を向けている事に気付いた。
「(プリムラのファンクラブまでできそうだな)」
あながちその通りになりそうなことを思い浮かべ、二人と帰路する。
「そういやぁ、プリムラ。友達はできたか?」
「何人か」
「そっか、それはいいことだ。が、変な生徒と友達にはなるなよ」
「変な・・・・・?」
首を傾げるプリムラ。「自分が変な人だと思った奴だ」と説明する。
「うん、わかった」
「まあ、よく話し合って、相手を知ってからそうするんだぞ?」
プリムラはコクリと頷く。素直でいい子だ。
―――兵藤家
「よーう、一誠殿お帰り!」
「おかえり、一誠ちゃん」
家に着いて早々、騒がしい王二人に話しかけられた。
「た、ただいま・・・・・」
「どーした、もっとシャキ!と返事をしねーか!」
「突然、出迎えられて、驚いて困惑しているんだよ・・・・・」
「おお、そいつはすまねぇな。今度はもう少し抑えて出迎える」
腕を組んでそう言うのは、天界の王、神王のユーストマ。
「で、どうして二人揃って外に佇んでいたんだ?」
「いやー、いま学校では球技大会というものが行われるそうじゃないか。
それで、私たちも娘たちの応援でもしに行こうかなって思っていたんだ」
「(絶対に恥ずかしがるぞ。この二人が見に来る時点で)それで、球技大会と二人が外にいる
理由と関係が?」
「正直と言って、全く関係ないんだ。ただ、一誠ちゃんを待っていたというのは関係あるよ」
そう言うのは、冥界の王の一人、魔王フォーベシイ。俺を待っていた?
「俺に話しか?」
「ああ、できればシアたちには知らせたくねぇ話しだ」
ユーストマの表情に真剣さが帯び始めた。フォーベシイも瞳がマジになっている。
「・・・・・取り敢えず、中で話しを聞くよ」
家に向かって親指で差す。二人は頷いて、俺たちと一緒に家の中へ入る。
玄関で靴を脱いで部屋に行かずリビングキッチンに赴いた。
「それで、あいつらに知られたくない事情って?」
ソファーに座って開口一番に問うた。まず口を開いたのはユーストマだ。
「話す前に訊きたいことがある。一誠殿、聖剣ってやつぁ知っているか?」
「聖剣?聖なる剣と書いて聖剣のことか?」
「ああ、あながち間違っちゃいねぇ」
深々とユーストマは頷いた。聖剣については毛が生えた程度でしか知らない。
精々、悪魔を屠るための武器としか知らない。
「聖剣は私たち魔王と悪魔を倒すために生まれた聖なる武器、それが聖剣なのさ。
その武器を太古から人間たちが使い、振るい、悪となる存在である魔物やドラゴン、
神すら倒した」
「ふーん、そうなんだ」
「・・・物凄く軽く受け入れられたけど、その聖剣に関してちょっと問題が起きたんだ」
苦笑を浮かべたフォーベシイが気になる発言を零した。
「一誠ちゃん、自分の中で一番有名な武器って何だと思う?」
「ドラゴンスレイヤー」
龍殺しの剣と称されている有名な武器の一つ。
ドラゴンと関わっているからドラゴンと対なるものに興味が付かない。
それに俺も人事ではないからだ。フォーベシイは頷いて口を開く。
「うん、確かにその武器も有名だね。なにより、一誠ちゃんにかなりの威力を誇る武器だ。
その身にドラゴンを宿す一誠ちゃんに大ダメージを与えるのだからね。
でも、ドラゴンスレイヤーだけじゃない」
「―――エクスカリバー」
神王が腕を組んで、瞑目したまま何かの名前を言った。
「エクスカリバー・・・・・?」
「勝利の剣、魔法で鍛えられた剣、色々と言われるその聖剣がね、
数時間前に何者のかの手によって保存、保管していた教会から奪われていたんだよ」
・・・天界と教会からしてみれば、大変な事件だことで。
でも、どうして魔王のフォーベシイが知っているんだ?
「神ちゃんから聞いたんだよ」
「人の心を読むな。それで、神王。
アンタが知っているという事なら、天界にいるヤハウェたちの耳にも入っているんだろう?」
「ああ、当然だ。この件にあの方は随分と驚いている様子だったぜ。
なんせ、相手が相手だし、どんな目的で聖剣を三本盗ったのか未だにわからねぇ」
三本・・・・・?エクスカリバーは一本じゃないのか?ユーストマから発した気になる発言に、
疑問をぶつけた。
「エクスカリバーは数本あるのか?」
「そうだよ。だが、本来エクスカリバーという聖剣は一本だったんだけど、
大昔の戦争で一本だったハズのエクスカリバーは折れ、四散したのさ。
そこで、教会側は四散したエクスカリバーを新たなエクスカリバーへと
折れた刃の破片を拾い集め、錬金術で再構成し、七つのエクスカリバーを作り上げたのだよ」
「カトリック教会、プロテスタント教会、正教会にそれぞれ二本ずつ聖剣を保存、
保管していたんだ。残りの一本は三大勢力戦争の折に行方不明だ。いまでも探しているんだがな」
ふぅ、と一息吐くユーストマに、リーラが現れて俺たちにお茶とコーヒーを配ってくれた。
二人は彼女に短く感謝の言葉を言い、一口飲む。
「だがな、行方が分からない一本のエクスカリバー以外の六本のうちの三本が奪取された。
それぞれの教会から一本ずつな。ついでに七本の聖剣の名前は―――」
『
『
残りの聖剣は『
『
これが新たに作られた七本のエクスカリバーの名だ。
「それで、教会から聖剣を盗んだ奴って誰なんだ?」
「「・・・・・」」
二人は一度、顔を見合わせた。
「堕天使だよ」
「―――――」
「しかも、大昔の戦争に生き残ったかなりの実力を有する堕天使だ。
『
堕天使・・・・・だが、あいつじゃないようだな。少し、残念だった。
「四種交流をしている私たち悪魔と天使、堕天使、人間から大問題を起こすようなことがあれば、
どんな方法でも人知れず解決しないといけないんだ」
「小規模な事件だったら警察やら一般人の間で事が済む。
だが、町一つ、国一つ、世界を巻き込む大事件が俺たち神々と魔王、悪魔と天使、堕天使、
人間が起こしてしまえば、四種交流が非常に危ぶまれる。
永い時をかけてせっかく俺たちの存在を認められ、堂々と人間界に生活できる状況と
状態になったんだ。平和を守るためにも今回の事件を水面下でケリを付けたい」
「そこで、一誠ちゃんに頼みがある」
二人が真剣な面持ちで俺を真っ直ぐ見詰めてくる。
「後日、教会から派遣してくるであろう二人の教会の者がこの日本に訪れてくる。
その二人と一緒にコカビエルを探し、奪われたエクスカリバーを奪還してほしい」
「もちろん、強制でもないしタダとも言わない。これは私たち魔王と神王、神、
ヤハウェからの依頼だよ。依頼を達成したら、キミが望むものを叶える」
俺が望むものね・・・・・。
「その望みって何でもか?」
「私たちができる範囲であればね。女の子が欲しいというのなら、
ネリネちゃんとリコリスちゃんをオススメするよ?」
「シアもだぜ!」
「・・・・・絶対だな?」
念を押す。余計なことは言うなと、意味も込めて。
「ああ、魔王はラスボス的な存在だけど嘘は付かないよ。
魔王フォーベシイの名に誓って嘘は付かない」
「俺も嘘は言わん。神王ユーストマの名に誓って絶対にな」
二人はハッキリとそう言った。そうか、なら・・・・・。
「もし嘘をついたら」
「「嘘をついたら・・・・・?」」
「―――仮にシアたちと結婚しても、アンタらのことを魔王さま、
神王さまと死ぬまで呼び続けるから♪」
ニッコリと笑みを浮かべた。すると―――。
「「―――――」」
ユーストマとフォーベシイの背に落雷が落ちた幻想が見えた。
絶句し目を丸くし、開いた口が塞がらないでいる。しばらくして―――。
「「絶対に嘘は付かないからそれだけは勘弁してくれぇっ!」」
号泣の如く、涙を流し、詰め寄ってきたのだった。ええい、鬱陶しい!
―――???
某国、様々な国へ赴くために空港を利用する大勢の客がいる中、
白いフードを身に包んだ二人がいた。
「準備は良いな?」
「うん、勿論よ。久々の日本、楽しみだわ」
「極東の地は私にとって未知な国だ。キミは小さい頃、住んでいたそうだね?」
「そうよ。それに・・・・・(私の幼馴染がいた国だもの・・・・・)」
一人の人物が徐に顔を曇らした。そしたら、
「イリナ?」
もう一人の人物が不思議そうに黙った人物に話しかけてきた。
イリナと呼ばれた人物はハッ、と意識を戻して首を横に振る。
「どうした?急に元気をなくして」
「ううん、何でもないわ。そろそろ出発する時間ね。行きましょう」
「ああ、早く神王さまのもとへ行こう。それに、気になる人もいるしね」
「気になる人?」
「シアさまと魔王の娘たちの許婚候補の男の事だ。どんな男なのか、早く会ってみたいんだ」
「きっと素敵な人だと思うわ。シアさまが好意を寄せる人なんて滅多にいないもの」
「―――神にも魔王にも人王にも凡人にもなれる男・・・・・か。面白い男だと言いな」
「あなたが言う面白いってどんなのよ?」
「会ってからのお楽しみと言う奴だよ」
二人は悠然ととある場所へと目指した。
―――とある目的のため、日本に飛び立つ飛行機に乗り込むために。