バーン!バーン!
球技大会を知らせる花火が空に響く。今日の天気予報では夕方から雨だそうだが、
例え雨がいま降ろうとも学校に結界を張れば雪だろうが何だろうが、中止になることはまずない。
なので、降ったとしても球技大会は中止にはならない。
『漫画研究部の塚本、くん橋岡先生がお呼びです。至急、職員室まで―――』
校庭に設置されたテントのスピーカーも休みなしでアナウンスを発し続けている。
体育着に着替えた俺とリーラ、清楚と和樹、龍牙とカリンは肯定の一角に集まり、
それぞれのリラックスする方法で時間まで体を休めていた。
デイジーは放送部なので、最後の部活対抗戦まではずっとアナウンスを発し続けている状態。
さっきのアナウンスはデイジーの声だ。
そんな彼女の声を聞きながら最初に行う競技はクラス対抗戦。
「俺たちのクラスは野球だったな?」
「うん、そうだったよ」
「何時ものメンバーと数揃えとして数人、動ける人で十分でしょう」
「緑葉と当たったら、あいつの眼鏡を粉砕してやる」
「デットボールする気満々の人がいるよ。ダメだからね?」
チッ、ダメか・・・・・。まあ、次がある。男女別の種目だ。で、昼を挟んで部活対抗戦だ。
「さて、部活対抗戦の競技は何でしょう?」
「簡単な奴が良いな。ドッチボールとかで」
「まず最初に一誠が狙われるね確実に」
クスクスと笑む和樹。くそ、こいつの言う通り、ドッチボールだったら真っ先に狙われるのは
俺だろう。だが、やられっぱなしでいる俺じゃない。倍返しにしてやり返すぜ。
「あっ、デイジーさんが来ましたよ」
タタタッと駆けてくるデイジーを龍牙が捉えた。
「部活対抗戦の競技が分かりました!」
「そうか。それで、なんなんだ?」
尋ねる。彼女は「はい」と言って告げた。
「ドッチボールです」
「「「「「・・・・・」」」」」
その一言で全員が俺に視線を向け始めた。
「頑張ってください、の一言です」
「・・・・・全て、薙ぎ払ってやる」
「因みに部活対抗戦で優勝したら、部費が多く貰えるから頑張ろうね」
そっか。それならデイジーのために頑張るとしよう。
―――○●○―――
バコーンッ!
クラス対抗戦があっという間に終わったいま、男女別の種目を俺はしていた。
いましているのはテニスだ。
「いやー、まさか・・・・・こんな形で勝負することになるとはな」
相手から放たれた豪速球を打ち返しながら、相手に向かって言う俺。
「これはこれで楽しいではないか、兵藤一誠」
相手はなんと三年S組のサイラオーグ・バアルだ。何と言うか・・・決着が全然つかない!
かれこれ、テニスをして十分は続いているぞ。どちらも0-0だ。
あっちが打てば、俺が打ち返して、俺が打ち返せば、あっちは打ち返してくる。
そんな永遠に続くかのようなテニスをしていても、
「サイラオーグさまぁ!頑張ってくださぁーい!」
『サイラオーグ!サイラオーグ!サイラオーグ!』
俺たちの試合を全校生徒は見飽きない。おお、声援が凄いな!何気に女子の声援が多い。
「モテモテだな」
「俺のことを信用、信頼してくれる故であろう」
「うわ、恰好いいなおい」
「そう言うお前はどうなんだ?」
あー、俺か・・・・・。
「負けろぉー!兵藤ぉー!」
『全ての男の敵!ここで死ね!』
こんな感じで、ブルーな声援ばかりなんですよ。
「俺って嫌われ者で、一部の奴らしかしてくれないさ」
「ふっ、そうか」
ガッゴンッ!
サイラオーグが異様な音を出してボールを弾き返した。そのボールを打ち返さずスルーすれば、
ボールは真っ直ぐ俺の背後に飛んで、フェンスをぶち抜いて、
テニスコートの付近に生えている木を真っ二つにへし折った。
『・・・・・』
「試合中に兵藤一誠に対し罵倒する者は誰であれ容赦しない。―――静かにしろ、最終警告だ」
本気とも言える闘気、プレッシャーを放つサイラオーグ。その言葉に嫉妬集団が静まり返った。
全校生徒の中で最強と称されている男に逆らえば、鉄拳なんて生易しい体罰じゃないだろうによ。
「さっきのはノーカウントだ。いくぞ―――?」
「ああ、そろそろ穴を埋めないとな」
「先に埋めるのは俺だがな」
そう言ってボールを上空に放り投げて激しく打ってくるサイラオーグ。
とても今を楽しんでいるような笑みを浮かべて。
―――○●○――
―――昼休み
「で、結果ドローと言うわけになった一誠くんでした」
「ははは、相手が相手だし、どっちも一ゲームすら手に入れられなかったんだから
しょうがないよ」
「どっちも負けず嫌いな感じで打っては打ち返すばかりでしたね」
「見ていて『凄い』の一言が尽きた」
「お疲れさまでした一誠」
外にとある場所でブルーシートを敷いて昼食している俺たち。
皆、俺とサイラオーグのテニスの話で盛り上がっている。
「ラケットの網がもう少し丈夫だったらなぁ・・・・・」
「本気でやっちゃうと破けるとか?」
「だな、サイラオーグも軽く打ってあの速さと重さだ。
本気で、全力で打ち返してきたらラケットが耐えきれずに使用不可の状態に陥っていた」
「うわ、流石は最強の生徒だね。」
「打ち続けるとこんな感じだ」
右腕を見せ付ければ若干震えている。疲労困憊で右腕に力を籠められない。
「マジで・・・・・?」
「途中で両腕でやっただろう?あれ、右手が握れなくなってきたからカバーしてたんだ」
「・・・・・あの人、どんだけパワフルな人なんですか」
若干、恐れ戦きだす和樹と龍牙。
「次の部活対抗、大丈夫?」
俺の右腕を掴んでマッサージをしてくれる清楚が、不安げに上目づかいで訊いてくる。
「サイラオーグ並みの力のある奴じゃなきゃ、皆に任せられる」
「うん、任せて。一誠くんを守るから」
「ん、ありがとうな」
お礼と称して黒い髪を撫でたら、清楚は嬉しそうに笑みを浮かべた。
「・・・・・なんだろう、物凄くいい雰囲気なんだけど」
「葉桜さんがついに春到来ですかね?」
「不純異性交遊ではないなら・・・・・問題ないか」
「・・・・・」
俺たちを余所に、和樹たちは何か言っていた。
リーラが羨望の眼差しを向けてくる。後で撫でてやるから我慢してくれ、
―――○●○―――
「まさかのまさか、ここで対決するとはな・・・・・」
部活対抗の時間となり、デイジーと協力を得たシア、ネリネ、リコリスと合流を果たし、
俺がいま放送部とドッチボールする相手と話しているのは―――、
「本当ね」
苦笑するオカルト研究部部長ことリアス・グレモリーだ。
放送部はオカルト研究部と戦う事になったのだった。
「サイラオーグとのテニス、見てたわ。とても楽しそうに打ち合っていたわね」
「おかげで右腕に力が入んない結果になったぞ」
「あら、それじゃあ私たちに勝ち目があるということね?」
「お前たちじゃなきゃ、皆に任せる予定だったがな」
白い髪の小柄な女子生徒、塔城小猫を一瞥する。
「グレモリー眷属一の馬鹿力を誇る猫がいるからそうもいかなくなった」
「うふふ、今度、私とデートするならお手柔らかにしてもいいわよ?」
「それ、お前が俺を当てたらしてもいいぞ?」
「―――そう、なら、あなたは私の獲物ね」
ギラリ、とリアス・グレモリーの目が獲物を狙う鷹のような眼つきになった。
「・・・・・ところで訊いて良いか?」
「なに?」
「あいつ、どうした?」
俺が向ける視線の先、ボーとしている木場祐斗がいる。
「・・・・・私も分からないの。最近ああで・・・・・、どうしたのかしら」
「悩み・・・・・って感じじゃなさそうだな。遠い目をしているし・・・・・・」
「取り敢えず、しばらく様子を見るわ」
だから――と、リアス・グレモリーは言う。
「あなた、私以外に当てられないようになさい」
「時間以内に当てられなかったらソーナお菓子を食ってもらうからな」
「―――――」
俺の言葉を聞いて、リアス・グレモリーの顔に血の気が引いたのが分かった。
「あ、あなた・・・・・死ねと言いたいの?」
「大丈夫、俺が『リアス、大丈夫か?』っと、感じでずっと傍にいて介護するさ」
そう言うと、
「考えようによってはいい?でも・・・・・彼女のお菓子を食べて生死を彷徨うなんて嫌・・・。
・・・・・だけど、リアスと呼んでくれるから・・・・ダメダメ、ソーナのお菓子は―――ああ、
どうしよう・・・・・っ!」
葛藤しだしたリアス・グレモリーだった。くくくっ、悩め悩め悩みまくれ!
フッハッハッハッハッ!
「・・・・・あれ、一誠の背中に悪魔の翼と尻尾が見えるんだけど・・・・・」
「気のせいです」
「えっと・・・・・私もちょっと見えなくないんだけど」
「気のせいです」
「そ、そうなのか・・・・・?」
「でも・・・・・」
「気のせいです」
「リーラさん、実は見えているんだよね?あれ、幻覚と幻とかじゃなくて・・・・・」
「そのような幻覚を見える訳がございません」
「な、何か怖いっす」
「そ、そうですね・・・・・」
後ろで何か言っているような・・・・・まあいい。
『それでは、オカルト研究部VS放送部の試合を行います』
アナウンスが流れ始め、
『―――試合、開始!』
開始宣言が放たれた。最初にボールを持ったのは―――塔城小猫!
「先輩、覚悟です」
小柄な体に見合わぬ力でボールを俺に向かって投げてきた。右手は―――まだ駄目か。
「やらせない!」
俺の前に清楚が移動してきた。豪速球のボールを簡単に止めた。
「てや!」
お返しとばかり可愛い声を出しながらボールを投げ返した。
そのボールを小猫は受け止めようと構える。
「・・・・・っ!?」
ボールを難なく受け止めた。だが、小猫の体が数十センチ地面を滑った。
受け止めた本人も目を見開く。
「・・・・・強い」
「私だって何時までも皆に守られてばかりじゃ嫌だし、今日はスポーツだから本気を出すよ」
俺を一瞥して、
「今度は私が一誠くんを守る番!」
小猫から放たれたボールを何と片手で止めた清楚。
あれ・・・・・清楚ってこんなに恰好よかったか?
「・・・・・イッセーを倒すならまず彼女を先に倒す必要があるようね」
リアス・グレモリーの瞳がマジになった。全身から魔力を迸らせて、やる気全開だと伺わせる。
「葉桜清楚、あなたは私が倒すわ。イッセーを倒すためにも」
「やらせないよ。一誠くんを守るんだからね。一誠くん、後ろに下がって」
「お、おう・・・・・」
なんか、逆らってはいけない雰囲気に呑みこまれ思わず頷いてしまった。
後ろに下がって待機する姿勢になった。
「乙女の本領発揮というやつですかね?」
「なんか、逆らってはいけない感じがしたぞ」
「あー、わかる。たまに逆らえない時もあるよ」
そうなのか・・・・・しかし、時々見せる有り得ない身体能力は何なんだ?
清楚のイメージとは裏腹の行動をする時がある。
「えい!」
ドゴォォォォォォンッ!
「はうっ!?」
「イ、イッセーさぁぁぁんっ!?」
・・・・・分からん。解せない。