ハイスクールD×D×SHUFFLE!   作:ダーク・シリウス

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Episode4

 

部活対抗競技は殆ど清楚や他の皆の活躍によって、放送部が優勝した。

優勝したことで放送部の部費はアップし、デイジーは俺たちに感謝を述べた。

それから球技大会が全て終わる頃、空は朱に染ま―――

 

ザァァァァァァァァッ!

 

―――らなかった。予報通り、夕方の時刻になるや土砂降りのように雨が降り出したのだった。

傘を事前に持っている者と持っていなかった者の末路は歴然としていた。

火を見るより明らかでもあった。

 

「リーラ、帰るか」

 

「はい」

 

和樹たちは先に帰っている。俺たちも帰るため、一年のクラスにいるプリムラを迎えに行く。

階段を下りて、一年の廊下に辿り着けば何時ぞやの三人組がいた。

まるでここから先は行かせないとばかり横に並んで、立ち並んでは俺たちを見るなり口を開いた。

 

「プリムラちゃんなら先に帰った」

 

「ん?そうなのか?」

 

「ああ、教室にはいなかった」

 

「そうか、ありがとうな」

 

と、言いながらも携帯を取り出して操作する。

プリムラに持たせてある携帯に番号を入力した。数秒したところで繋がった。

 

「もしもし、俺だ」

 

『どうしたの?』

 

「どこにいる?」

 

『教室』

 

「そっか、それじゃあ悪いけど先に帰ってくれるか?」

 

『わかった』

 

通話を切り―――目の前の三人に視線を向けた。

 

「そこ、どいてもらおうか?」

 

「な、プリムラちゃんはいないって言っているだろう!?」

 

「いないなら教室を覗いても問題ないよな?

つーか、お前らがそこにいると帰る生徒が通るに通れないからどけよ」

 

実際に俺とこいつらが話している間にも帰りたがっている生徒が遠巻きで見ている。

 

「お前がいるからいけないんだ!」

 

「俺の所為かよ?まあ、話なら壁際でもいいだろう。

そうすればあいつらだってここを通れて帰れる」

 

そう言って先に俺が壁に沿って立つ。

 

「ほら、お前らも俺と対峙になるよう壁に沿って立て。

廊下を空ければあいつ等は問題なく帰れる」

 

「「「・・・・・っっっ」」」

 

背色んな事を言う俺に対し、あいつらは廊下を未だに塞ぐ。―――その時だった。

 

ガラッ!

 

と、プリムラがいる教室の扉が開いた。

中から、薄紫のツインテールの少女、プリムラが出てきた。

 

「・・・・・イッセーとリーラ?」

 

「よう、やっぱりいたか。おいで」

 

「うん」

 

「―――お前らは邪魔だ」

 

徐に三人組に近づいては二人の頭を掴んで壁に叩き付けた。

 

「ひっ・・・・・!?」

 

「一つ、言っておくぞ?」

 

真っ直ぐチビの生徒の耳元で呟いた。

 

「プリムラに手を出したら神王と魔王が絶対に黙っちゃいない。

彼女は神王と魔王に娘のように可愛がられているからな。

自分の娘を傷物にしたら―――お前らの存在なんて軽くこの世から抹消できるんだぜ?」

 

「っ・・・・・!?」

 

「俺たちを騙して、プリムラから引き離そうとしたお前らの行動は今回だけ見逃す。

だがなぁ、もう一度だけこんなことをしてみろ。直ぐに神王と魔王に報告してやる。

プリムラの害となる三人組がいるとなぁ」

 

殺気を放ってチビを睨みながら脅迫。そうする間にプリムラはリーラの所に、

壁に押し付けている二人の頭を放して踵を返す。

 

「いいな。今回だけだ」

 

それだけ言い残し、リーラとプリムラと一緒に一年の廊下から遠ざかる。

 

―――○●○―――

 

「ん?清楚とデイジー?」

 

「あ・・・・・一誠くん」

 

玄関に赴けば、困った顔をした清楚とデイジーがいた。どうしたんだ?

 

「二人とも、帰らないのか?」

 

「そうしたいんだけど・・・・・」

 

「傘がなくなってしまって・・・・・」

 

傘がない?玄関に設けられた傘の置き場に目を向ければ、空の状態の傘置き場。

 

「雨が振るって分かって傘を持ってきたんだけど、誰かが持ってちゃったみたいなの」

 

「私もです。ですから、どうやって帰ろうか困っていたんですよ。

ここから寮まで離れていますし・・・」

 

あー、それは災難な目に遭ったな・・・・・。

 

「デイジー、寮に予備の傘あるか?」

 

「いえ、無いです」

 

「そうか・・・・・よし、ちょっと待ってくれるか?」

 

瞬時でこの場から遠ざかって理事長室の扉の前に立った。

扉のノックすれば、中から声が聞こえた。

 

「二年F組の兵藤一誠です」

 

『入りたまえ』

 

アッサリと入室の許可を貰った。ドアノブを回して扉を開ける。

中に入れば、何故かシルヴィアがいた。

 

「どうして彼女が?」

 

「ああ、彼女は私の補佐をしてくれているのだよ」

 

「ああ、そういうこと」

 

「それで、私に何かな?」

 

俺は頷いて口を開いた。

 

「今日一日だけ寮で暮らしているデイジーという生徒を俺の家に泊らせたいんだ。いいか?」

 

「デイジー?・・・・・ああ、神王ユーストマの兄の娘だね?」

 

知ってたか。いや、知らない訳もないか。肯定と頷いて説明に入る。

 

「傘を持ってきたんだけど誰かが持って行ったらしくてさ、このまま寮に送ってもいいんだけど

明日も予報では雨だろう?だから今日だけ俺の家に泊らせて明日、寮に戻らせるつもりだ」

 

「なるほど、わかった。寮監から私が伝えておこう。

それに彼女は神王の娘とは従姉妹同士の関係だ。

ゆっくり彼女と話をして絆を深めることもいいだろう」

 

「ありがとう」

 

「なに、私にできることがあれば何でも言ってくれ。キミには本当に感謝しているからね」

 

大方、リアス・グレモリーのことだろうな。

と、思っていたらサーゼクス・グレモリーが笑みを浮かべ出した。

 

「未来の義弟のお願いを聞くことも義兄としての務めだよ」

 

「―――ちょっと待とうか。いま、聞き捨てならないことが聞こえたんだけど?」

 

誰が義弟で、誰が義兄だよ!?

 

「ふふっ、なに、彼女が自らキミを婚約者候補に選んだのだ。

私自身もキミならリアスを任せてもいいと思っているんだよ?」

 

「・・・・・マジかよ」

 

「キミと言う男を接していると、リアスは心から笑顔を浮かべる。

あんな楽しそうな妹を見るのは久し振りなんだ。私はあんな妹を見て安心する」

 

だから、キミには本当に感謝しているんだ。

サーゼクス・グレモリーは笑みを浮かべて俺にそう言う。その笑みは理事長としてじゃなく、

悪魔としてじゃなく、一人の兄としての笑みだった。

 

「・・・・・本当にアンタは悪魔か?」

 

「勿論、正真正銘の悪魔だよ」

 

その証拠にと背中から蝙蝠のような翼を生やしだした。

 

「リアスのこと、これからもよろしく頼むよ」

 

「・・・・・危険な目に遭わないように善良すると言っておく」

 

「ははっ、そうか。では、そんなキミにプレゼントだ」

 

魔方陣を展開するサーゼクス・グレモリー。怪訝に見ていると一冊の本が浮かんで出てきた。

 

「『リーアたんの成長記録』。

この中に妹の赤ん坊から高校二年の時までの写真が保存されている」

 

「―――ほう?それはとても魅力的なものだ」

 

「ふふふっ、やはりそう思うかい?」

 

「色々な意味でな」

 

アルバムを受け取って早速、開いた。・・・・・はっ?

 

「なあ・・・・・」

 

「なにかな?」

 

「―――どうして、この写真に父さんと母さんが映っている?」

 

信じられないことに、若し頃の父さんと母さんが赤ん坊の頃のリアス・グレモリーと映っていた。

そのことにサーゼクス・グレモリーは「ああ」と懐かしそうに語った。

 

「キミのご両親と私の両親とは古くから関係を持っていてね。

リアスが赤ん坊の頃、キミのご両親が遊びに来た時に撮った写真だよ」

 

「・・・・・で、どうして俺まで映っているんだ?」

 

ページを捲れば、黒い髪の赤ん坊が父さんと母さんに抱えられ、

リアス・グレモリーの両親と思しき人物と若いサーゼクス・グレモリーが一緒に映っていた。

 

「それは一年後の写真のことだろう。キミが生まれた時に撮った写真だ。懐かしいな」

 

最後の言葉に疑問が沸いた。視線をアルバムから外せば、

これと同じアルバムを見ていたサーゼクス・グレモリーがいた。

 

「このこと、あいつは知っているのか?」

 

「いや、知らないよ。何せ自分のアルバムを恥ずかしがって見ないからね」

 

「・・・・・昔から俺は彼女と知り合っていたのか」

 

「運命的な出会いだと私はそう思うよ。

よもや、キミがリアスともう一度出会うなんて思いもよらなかった。

そして、この学校に編入し、リアスと再びであった。これは必然的な出会いだと私は思う」

 

必然的な出会い・・・・・か。

 

「おっと、長く語ってしまったね。キミは帰るといい。待たせているんだろう?」

 

「・・・そうだったな。それじゃ、帰らせてもらう」

 

「ああ、また学校で会おう。義弟くん」

 

最後の言葉を無視して、理事長室から出た俺は瞬時で玄関に赴いた。

 

「悪い、遅くなった」

 

「急にいなくなってどうしたのですか?」

 

リーラが首を傾げて訊いてきた。まあ、そうだろう。悪い。だが、収穫はあった。

 

「理事長に頼んで一日、デイジーを俺たちの家に泊らせることにした」

 

「え・・・・・っ?」

 

「そう言うわけだ。デイジー、俺たちと一緒に家へ戻ろう。清楚も来るか?

一人暮らしだし、一日泊っても大丈夫だろう?」

 

清楚にも尋ねたら案の定、目を丸くした。と、デイジーが口を開いた。

 

「で、でも・・・私は寮で暮らしているんだよ?寮監の人に黙って外泊したら・・・・・」

 

「理事長が寮監に口添えしてくれる。だから、問題無く俺の家に寝泊まりできるぞ」

 

「ほ、本当に・・・・・?」

 

「嘘は言わない。もしもデイジーが叱られるようなことがあれば俺が代わりに叱られよう」

 

不安げに尋ねるデイジー。安心させるように言うと、恐る恐ると頷いた。

 

「分かりました・・・・・じゃあ、今日はよろしくお願いします」

 

「おう、お願いされた。清楚、どうする?」

 

「・・・・・私も大丈夫なの?」

 

「大丈夫だ。だから一緒に帰ろう」

 

「・・・・・じゃあ、お言葉に甘えて一誠くんの家に行くね」

 

コクリと頷いて俺の家に来ると言う清楚。

 

「それじゃあ、帰るとするか」

 

バサッ!と六対十二枚の金色の翼を展開して、雨に濡れないように清楚たちの全身を包んだ。

 

「・・・・・凄い、布団の中にいるみたいに柔らかい」

 

「自慢の翼だ」

 

自前の傘を差して外へ出た。雨の降る強さは若干だが弱まっている。

それでも傘を差さずに外へ出歩いたら確実に濡れる。

 

「濡れないか?」

 

「はい、大丈夫です。寧ろ、兵藤くんが濡れないのですか?」

 

「翼以外は濡れないさ」

 

それでも、水を弾くように濡れないようにしているけどな。

 

「ああ、そうだ。俺の家の近くに神王と魔王がいるから騒がしくなったらゴメンな」

 

「えっ!あの神王さまと魔王さまが!?」

 

「しかも御近所だ。だから必然的にシアたちとよく会う。呼べばくるんじゃないか?」

 

パーティをしようと一言で言えば、喜んでくるであろう神王と魔王。

ハメをハズ過ぎないように制止役としてついてくる二人の王の娘たち。

もう分かってきたよあの家族たち。

 

「だから一緒に登校していたんだね・・・・・」

 

「同時に嫉妬集団に襲われる」

 

あははは・・・・・と渇いた笑みを浮かべる清楚とデイジー。今日も二回は襲撃された。

 

「(いつか、見せしめとして残虐的な事でもするか・・・・・?)」

 

その時だった。嫉妬集団に対してそんな事を思った俺の裾が引っ張られる感覚が覚えた。

 

「・・・・・イッセー」

 

「プリムラ?」

 

チョイチョイと裾を引っ張るのはプリムラだった。上目づかいで俺の顔を覗きこむ。

 

「どうした?」

 

「ん」

 

指をとある方へ差した。なんだ?と思いながらもプリムラが差す方へ視線を向けると・・・・・。

野良猫が一人の男に追いかけられていた。しかもこっちに来ている。

 

「よう分からないけど、動物虐待と見做して助けるのもありかなっと」

 

片翼の翼を動かして男の前に突き刺した。もう片翼で野良猫を包んで保護する。

 

「っ、天使か・・・・・」

 

俺の翼を見て男は唸るような声で呟いた。いや、人間ですけどね?

 

「野良猫一匹追いかけまわして何をしている?動物虐待なら容赦しない」

 

「そいつはただの野良猫ではない。いまは猫の姿をしているが、正体は猫の妖怪だ」

 

妖怪?この猫が?でも、何で妖怪の猫を追いかけまわしているのか理解できないな。

 

「俺は猫の妖怪を眷属にしようと探し続けていたんだ。

猫の妖怪、猫又は仙術という力を有している。

その能力を持つ妖怪を探し続けてようやく見つけたのだ。―――渡してもらうぞ」

 

「いや、逃げられている時点でお前の眷属になりたがっていないじゃないか。

無理矢理は良くないぞ」

 

「貴様には関係のないことだ。さあ、そいつを渡せ。俺の邪魔をするなら容赦しないぞ」

 

名の知れぬ悪魔は臨戦態勢の構えになった。

どれだけ苦労して猫の妖怪を見つけたのか俺には分からないが、

 

「―――殺すぞ、木端悪魔」

 

ゾク・・・・・ッ!

 

嫌がる相手を無理強いしてまで眷属にしようだなんて、自己中にもほどがある。

相手の人生すら考えていない悪魔に渡せるか。

殺意、殺気を木端悪魔へ向けると、一歩だけ後ずさって顔を強張らせた。

 

「俺は悪魔が嫌いなんだ。だから、お前を躊躇もなく殺す。命が欲しかったら冥界に帰れ」

 

「貴様・・・・・!」

 

俺の発言に気が触れたようで、怒りで体を振るわせ始める。

 

「あっ、言っておくが、この町に神王と魔王がいるぞ。

お前が魔力を放ったら、神王と魔王はここに駆けつけてお前を捕えようとするぞ?」

 

「そんな虚仮威しが通用するか!」

 

怒りで我を忘れたのか、あの悪魔は魔方陣を展開して巨大な魔力の塊を放ってきた。

清楚とデイジー、猫を完全に翼で覆い、迫ってくる巨大な魔力の塊を腕で上に反らした。

 

ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!

 

上空で爆発が生じた。だが、雨の音で雷か何かだろうと勘違いするだろう。いまが雨で良かった。

 

「さっさとその猫又をよこせ!長年探し続けた猫又なのだ!」

 

「どれだけの時間を懸けて見付けたのか分からないが、悪魔の眷属になりたがらないんじゃ、

諦めが肝心だろう」

 

「ふざけるな!」

 

更に魔方陣を幾重にも展開し、複数の魔力の塊を放ってきた。

実力からして・・・上の中というところか。

 

「それでも俺は負けない」

 

スパンッ!

 

金色の翼で全ての魔力弾を上に弾いた。手を出すまでもなさそうだ。

 

「くっ・・・ならば、直接―――!」

 

魔力での攻撃は通用しないと悟った悪魔が接近戦に持ち込んだ。

 

「おっと、ちょいと待ちな」

 

ガシッ!

 

が、悪魔の肩を誰かが背後から掴んだ。

 

「未来の息子に怪我なんてしたら、ネリネちゃんたちが悲しんじゃうから

そこまでにしてもらうよ?」

 

前からも悪魔に話しかける存在が現れた。

 

「―――だから言っただろう。神王と魔王がいるからってさ」

 

悪魔の前後に傘を差して現れた神王ユーストマと魔王フォーベシイ。

戦闘で放った魔力を感知したのか、ようやく二人が登場した。

 

「ま、魔王さま・・・・・!」

 

「事情がどうであれ、この四種交流を象徴とする町中で戦闘をしてはならない。

と、誰でも知っているはずなんだけどねぇ?」

 

「そんで、戦闘を行った悪魔と天使、堕天使は危険人物と見做し、悪魔と堕天使は冥界、

天使は天界で二年~百年の間、人間界に訪れることを禁じて、

それぞれの異界で過ごすっつー規則も忘れたわけではあるまいな?」

 

あれ、俺は知らなかったぞ?首を傾げる俺だが、悪魔は俺に指を突き付けた。

 

「あいつは俺の邪魔をしたんですよ!俺が眷属にしようとした

猫又をようやく見つけたと思った矢先、横から掻っ攫ったんです!」

 

「・・・一誠ちゃん、本当かい?」

 

フォーベシイが真意を確かめようと話しかけてきた。俺は肯定と頷く。

 

「ああ、横から掻っ攫ったなんて言い方はちょっと違う。

悪魔に追いかけられている野良猫を保護したら、

無理矢理俺から野良猫を奪おうとして襲ってきた。

それにこの町には神王と魔王がいるからと、

教えたんだけど・・・・・虚仮威しだと攻撃されたんだ」

 

「「・・・・・」」

 

二人は顔を見合わせて沈黙した。状況を整理しているんだろう。

視線だけやりとりして判断を検討中。

 

「―――彼の言っていることは殆ど本当よ」

 

野良猫を包んでいる翼から声が聞こえた。その直後、不意に翼に重みが増した。

 

「私を眷属にしようとしたその悪魔は、私が拒否したら執拗に迫ってきたの」

 

翼を動かせば、包んでいた翼から銀色の髪が覗かせた。

 

「それで、隙をついて逃走したらそいつは追いかけてきた」

 

銀色で華やかな着物を身に付けていて

 

「雨の中を逃げている最中、私はこの子に助けられた」

 

頭部に猫耳が生えている。

 

「それが真実にゃん」

 

青と金のオッドアイ。腰辺りにユラユラと二つの尻尾を揺らしながら女性が口を開いた。

 

「なるほどな。眷属にされそうになった本人がそう言うんなら間違いなさそうだな」

 

「そうだね」

 

フォーベシイがパチンと指を弾いた。すると、魔方陣が展開した。

見た事もない文字を表現した螺旋状の魔力が現れて、縄のように悪魔の体を縛った。

 

「それじゃ、私は冥界に連れて帰るよ」

 

「おう、俺は一誠殿たちと一緒に帰るぜ」

 

足元に魔方陣を展開するフォーベシイに手を振りながら見送るユーストマ。

悪魔は俺を睨みながらフォーベシイと共に光る魔方陣の中で姿を消した―――。

 

―――○●○―――

 

―――兵藤家

 

 

「ふーん、そう言うわけか・・・・・分かった。この証言の下でまー坊に任せてみるぜ」

 

トントンと野良猫もとい、猫又の女性から聞いた話を纏めた紙を纏めて

一段落とばかり言うユーストマ。

 

「ありがとう神王」

 

「どういたしましてだ。にしても、どうしてまた猫又の上位種である猫魈のお前さんが

この地に?」

 

猫魈?猫又より強い存在のことを差しているようだが・・・・・。

 

「ちょっと妹の様子を見ようかなって思って」

 

「妹?この町にいるのか?」

 

「ええ、そうよ?えーと・・・・・名前、なんだっけ?」

 

ああ、そういや、名乗っていなかったな。

 

「兵藤一誠だ。メイドの彼女はリーラ、ツインテールの少女はプリムラだ」

 

「私の名前は銀華。銀の華と読んで銀華よ。助けてくれてありがとうね。

あのままだったら私、無理矢理転生悪魔にされていたかもしれないわ」

 

「最初に見つけたのはプリムラだ」

 

「そう、ありがとうね?」

 

彼女、銀華は感謝を籠めてプリムラの頭を撫でる。プリムラはコクリと頷くだけで返事をした。

 

「それで、妹ってのは?」

 

「もう一人、妹いるんだけどいまどこにいるのか分からないのよね。

だから、私のもう一人の妹を見に来たの。お互い、顔をすら知らないけどね」

 

「その妹って名前は何だ?」

 

「白音よ」

 

白音・・・・・?どんな子だろうか。銀華の妹と言うならば猫魈の妖怪なんだろうな。

 

「特徴は白い髪に小柄な女の子って話だけどね。

もう一人の妹の話じゃあ、情に篤い悪魔の眷属として生きているって訊いたから」

 

「情に篤い悪魔・・・・・?」

 

「グレモリーって悪魔よ。四種交流の象徴とするこの町の人間なら、

名前ぐらいは知っているでしょう?」

 

―――あいつかぁっ!しかも白い髪に小柄の少女って塔城小猫しかいないし!

銀華は俺の顔を見て確信したかのように笑みを浮かべた。

 

「どうやら、知っているようね?」

 

「知っているも何も・・・・・同じ学校に通っているし、銀華が言う白音って少女も

俺と同じ学校に通っているぞ」

 

「あら、私って運がいいわね。妹を知っている子と出会えたなんてラッキー♪」

 

「だけど、白音って名前じゃないぞ。塔城小猫って名前だ」

 

「塔城小猫・・・・・そう、違う名前で生きているのね」

 

彼女は何か悟ったかのように呟いた。

 

「というか、銀華のもう一人の妹って誰だ?」

 

「今じゃSS級のはぐれ悪魔。元猫魈の『黒歌』って名の妹よ」

 

うわぁ・・・SS級のはぐれ悪魔って・・・・・この三姉妹、訳有りが絶対に物凄く抱えているぞ。

 

「あなたも・・・・・はぐれ悪魔なんですか?」

 

デイジーが問う。その答えは銀華が首を横に振った。

 

「んにゃ、私は純粋な猫魈よ?妹の白音が生まれる前に、

私は世界に興味持っていままで一人旅をしてきたの。その途中、久し振りに黒歌と出会って、

白音の存在を知った。その時、もう一人の妹の顔を見に行こうと思っていてね?

いい機会だから数日前にこの町へ訪れたの」

 

「で、猫又を眷属にしようと探していた悪魔に運悪く見つかってしまい追いかけられていたと」

 

「そういうこと」

 

なるほどなーと、ユーストマは新たに書き留めた。

 

「まったく散々な目に遭ったにゃん」

 

ゴロリと、猫のように横に寝転がった。俺の太腿に頭を乗せてだ。

 

「うーん、それにしても居心地良いわね」

 

「急にどうした?」

 

「猫って温かいところが好きなのよ。私もそう。だから、あなたの温もりがとても心地好いの」

 

あー、よくガイアもこうやってしてくるよな。その理由も銀華と同じ理由だ。

と、言うことは・・・?何気なく彼女の銀色の髪を撫でた。

 

「ん・・・・・」

 

目を細め、俺に委ねてくる。そして、猫だからと顎下を掻くように撫でれば・・・・・」

 

「ふ、ふにゃぁぁぁぁぁぁ・・・・・」

 

気持ち良さそうな声を放った。―――まさしく、塔城小猫の姉だ!

 

「・・・・・なぁ、銀華」

 

「にゃぁぁぁぁ?」

 

今度は耳を触るとピクピクと体を震わせた。ここが弱点のようだ。

 

「この家に住まないか?」

 

「この家に・・・・・?」

 

「ああ、それに世界中を旅した銀華の話を聞きたい」

 

優しく銀華の頭を梳かすように撫でながら提案を言ってみた。

 

「・・・・・そうね」

 

俺に頭を撫でられながら、心地好さそうに瞑目し、彼女は脳裏でどうしようかと、

悩んでいる様子を伺わせる。しばらくして、銀華の口が開いた。

 

「私のこと束縛しない?」

 

「自由にして良いさ」

 

当然のことだ。人を束縛するほど俺は鬼じゃない。自由にこの家で生活してほしい。

 

「時々でいいからこうやって頭を撫でてくれる?」

 

「望むならいつでもどこでも」

 

ガイアも気が済むまで撫でろというしな。

 

「・・・・・黒歌のこと救ってくれる?」

 

「なに・・・・・?」

 

ここで妹の話が出たか。だが、どうしてだ?

 

「あの子は、自分からはぐれになったわけじゃない。

白音という妹を救うため、家族を守るために力を欲し、悪魔として転生し、更なる力を得た。

でも、その代償は大きかった。主の悪魔は姉がこの力ならば、妹の白音もそうだろうと思い、

妹にも悪魔に転生させようと無理強いをした。事前に黒歌はそれを察知し、

制止をしたけど主の悪魔は耳を傾けてもらえず、あと一歩のところで―――」

 

黒歌に殺された。

 

「あの子は、本当は優しい妹なのよ。でも、私が世界に興味を持ったせいで母が死んで、

黒歌と白音は辛い人生を歩ませてしまった。知らないでしょうけど、

彼女の髪は本当は綺麗な金色の髪だったのよ?いまじゃ、闇のように真っ黒な髪に・・・・・」

 

ポツポツと彼女の口から出てくるのは姉妹猫の話だった。

 

「主を殺した黒歌は必然的にはぐれとなる。だから、黒歌は敢えて白音を残して姿を暗ました。

自分と一緒に逃亡し続けたら白音まではぐれになり、討伐対象に含まれるから。

苦渋の決断の末に黒歌は妹を置き去りにしていなくなった。

本当は連れて行きたかったでしょうね。

ただ、どんな辛い人生でも仲良く一緒に暮らせればそれで良かった。

それだけなのに・・・・・その思いが悲劇を招いてしまった」

 

『・・・・・』

 

「私がこの地に来たのは本当の理由は白音に謝りたい。

そして、あの子のことを伝えたい。ただそれだけ・・・・・」

 

何時しか、銀華の目に涙が浮かんでいた。

 

「お願い、黒歌を救ってあげて。妹を助けてくれるなら私は何でもするわ」

 

その言葉に籠った想いは、紛れもなく妹を思う姉の思いやりだった。

 

「・・・・・それを聞いて、俺はますます悪魔が嫌いになったな」

 

「・・・・・」

 

「分かった。黒歌って言うはぐれ悪魔を救済しよう。どんな手を使ってでもな」

 

銀華の手を握り、約束だと告げる。

 

「―――ありがとう、兵藤一誠くん」

 

ついに、溜まった涙が頬を濡らした。そんな彼女の涙を指で拭いて告げた。

 

「何でもするって言ったな?」

 

「ええ、私にできる事なら何でも」

 

「じゃあ、家族になってくれ」

 

「・・・・・家族?」

 

キョトンと目を丸くした。なんか、変なこと言ったか?まあ、続けよう。

 

「ああ、家族だ。一緒に暮らそう。さっきの話とは別で」

 

「それ・・・・・暗にプロポーズしていない?」

 

「いや、してないけど?」

 

キッパリとハッキリと言ってやった。だから、清楚とデイジー。

そんな驚いた表情を浮かばないでくれ。

 

「私って魅力じゃない女のかしら・・・・・これでも世界中に旅していた時、

人間の男たちから告白されるほどだけど・・・・・」

 

「何故落ち込む?銀華は立っているだけでも絵になるほど綺麗だぞ?

それに綺麗な銀髪と金と青の瞳。着物も凄く似合っているし、

銀華って名前もいまの銀華にピッタリだ。誰もが身惚れてしまうのも頷ける。他に―――」

 

次から次へと、彼女の良いところを言って言いまくり続ける。その結果―――。

 

「も、もういいにゃん・・・・・十分ってほど、分かったから・・・・・」

 

照れているのか羞恥でいっぱいなのか、顔を真っ赤に染めた銀華は待ったを掛けた。

 

「そうか?まだ言えるんだけどな。因みに清楚とデイジーも一時間は言えるからな。言おうか?」

 

「は、恥ずかしいからいいよ!」

 

「訊いているとナンパしているんじゃなくて、

ただ純粋に褒めているだけだから性質が悪いですよ・・・!」

 

何時の間にか二人も顔を赤くしていた。どうしてだ?とリーラに視線を向けたら、

 

「あまり褒めすぎたらよくありません。逆に恥ずかしくて相手を嫌がらせ、困らせるだけです」

 

リーラに注意された。むぅ、褒めすぎるとダメなのか・・・。

ガイアは喜んで訊いてくれるんだけどな。

 

「・・・・・兵藤一誠くん」

 

「名前でいいよ」

 

「そう?じゃあ、一誠、あなたの願いを受け入れるにゃん」

 

手を掴んで握手をしてくる。俺も応じて握り返した。

 

「よろしく銀華」

 

「よろしくね」

 

「―――と言うわけだユーストマ」

 

いきなり神王に振った俺は笑みを浮かべた。

 

「銀華という新しい家族が増えた。

だからパーティをしたいからシアたちを呼んで来てくれるか?皆で集まって賑わいたいからさ」

 

そう言うとユーストマは。

 

「分かったぜ一誠殿!」

 

嬉々として笑みを浮かべて立ち上がった。騒ぐことが好きな神王だから、喜んで協力してくれる。

 

「フォーベシイにも伝えてくれるか?」

 

「当然だ!おーい、まー坊!今日は宴だ!盛り上がっていくぜぇ!」

 

ユーストマは足元の魔方陣を展開して光と共に姿を消した。

まさかだと思うが、直接冥界に向かった訳じゃないよな・・・・・・?

 

「清楚とデイジー、悪いけど料理作るのを手伝ってもらえるか?

神王ってかなりの大食いだからさ」

 

「うん、任せて」

 

「泊めさせてくれるお礼に頑張って作ります」

 

二人は頷いて了承してくれた。ありがたい。

 

「さて、飾り付けも大事だよな」

 

虚空から金色の錫杖を発現して掴んだ。

 

「それ、初めて見るね」

 

「『無限創造龍の錫杖(インフィニティ・クリエイション・メーカー)』という神滅具(ロンギヌス)だ。

初めて見るのはしょうがない。いままで一度も清楚たちの前で使っていないからな」

 

神滅具(ロンギヌス)!?私、初めて見たよ!」

 

「私も・・・・・綺麗な杖なんですね。メーカーと言う名ですから何か作れるんですか?」

 

「ものを創る事が能力の神器(セイクリッド・ギア)だ。他にも能力があるが、

大半はものを創る時しか使わない」

 

こんな感じにな、と錫杖で床を軽くついたその瞬間。

錫杖から一瞬の閃光が生じてリビングキッチンを照らす。直ぐに光が止み、辺りを見渡せば―――。

 

「な・・・・・一瞬で・・・・・飾り付けが終わっている・・・・・!」

 

「凄い・・・・・」

 

壁に様々な飾り付け、天井から『 祝!新たな家族 銀華! 』と書かれた看板が

ぶら下がっている。この光景に清楚とデイジーが目を丸くして絶句した。

 

「この家もこんな感じで作ったんだ。家具も食器もな」

 

「嘘、そこまできるものなの・・・・・?」

 

「無限に創造できる能力だからな」

 

「なんか・・・・・恥ずかしいにゃん」

 

と、銀華が照れくさそうに頬を掻いた。

 

「何を言うんだ。家族になる銀華のためのパーティだ。銀華は堂々と飲んで食ったらいいさ」

 

「私・・・・・猫舌でワサビ嫌いにゃん」

 

「分かった。なるべく熱くない料理を作ろう。ワサビを使う料理は作らないから安心してくれ」

 

「うん、ありがとう」

 

どういたしまして、と彼女の頭を撫でる。さぁーて、たくさん料理を作りましょうか!

 

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